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【脳筋】

 

 side.ケイン・ノスタルジア・ジアス



 うーん面白い~。

 王都から此方に来たの大、大、大正解だよねぇ。


 大事なことなので『大』を主張するために三度も言ってみたよ。



 幼い時より第2王子の側近兼友人として選ばれた僕等伯爵家の人間は、一部を除いて…バーンド家は此処では言えない、諸々の理由で現在は爵位を奪爵(だっしゃく)されて無くなっているが、家督を継ぐ筈だったアレス当人は元気よく庶民として城下町に紛れて生活をしている。

 だがよく『王都は暇だ』等と言う手紙が来る辺り、庶民としての淡々とした生活に飽きているのだろう。


 此方に来いって手紙を出すべきかなぁ~。

 アイツ普段は「飯が不味い」と言って食が細いから、レナちゃんが働いている食堂の飯を食えば食欲が戻って、細くなってしまった身体つきも少しは改善されると思うんだよねぇ~。


 それに以前の事柄でどうしても引け目を感じるらしくって、日中出歩くことは無くなったとユウナレスカから報告が来ているし。

 僕は気にしなくても良いと思うのだけど、彼のことだからなぁ。


 それにアレスにくっついている狐獣人のドミニク君、この街なら誰も差別等しないから王都よりも居やすいと思うんだよね~。

 この領地って比較的獣人が過ごしやすいのか、兎獣人とか猫獣人とか滅多にいないドミニク君と同じ狐獣人まで普通に生活しているし。

 ほんと、モイスト領って自由だよね。


 流石に大型獣人は滅多に姿を見ないけど、熊獣人とか町外れに住んでいて元気に畑を耕して居る。偶に街に来ると、一度しか会ったことがなくても大声で元気一杯の挨拶をしてきて驚いてしまう。普通大型獣人って王都だとコソコソしている印象があったから、どれだけモイスト領の領民の皆が過ごしやすく、穏やかに過ごしているかがわかるってもんだよねぇ。


 はぁ、我が領地であるジアス領も見習いたいものだよ~。

 父が魔法大臣なものだから王都から離れられないと、僕が幼い時から領地に滅多に帰って居なかったら父の命令を受けていた人物が色々やらかしてくれちゃっていた。

 何がって盛大な大失態を。


 この国は奴隷制度が禁止されて居るのにも関わらず、自身の私腹を肥やす為、身寄りのない子供や見目の良い幼児から青少年位までの年齢の男女問わずを攫い、奴隷制度がある国へと密輸していた。

 おまけに禁止薬物やら禁呪やらにも手を出し、馬鹿なことに自身で嵌って薬物の中毒症状を起こした。


 そのせいでボロが出たのだが、何と言うかまぁ…お粗末過ぎる展開に呆れてものが言えない。

 この失態に国王も呆然としていたが、諸々の件で宰相の代理まで押し付けられていた我が父であるハリントン・ノスタルジア・ジアス魔法大臣を、弾剤すると国力が落ちるのは目に見えている。


 更には、王国の普段仕事が忙しすぎるという理由で父であるハリントン魔法大臣を拘束しているのは国王自身。国王の我儘が招いた結果でもある。


 結果、処分は軽度の罰金と領地の一部没収。

 更には今回の事件を引き起こした罪人の首謀者及び下端した者を王都送りにし、首謀者や特に重い重罪の者は公開処刑。軽度の者は罪にもよるが、国への労働や賠償金支払い等の刑に処した。更には没収した財産はほぼ全て今回の件で苦労を負った被害者への補填へと回し、今後の生活の足しにして貰った。


 お陰様で現在のジアス領は、改革&粛清のお祭り騒ぎの真っ最中。


 とてもでは無いが過去やらかした輩達は排除したとはいえ、現在の領地にいる家臣や配下達だけでは領地経営等を任せるには不安過ぎる。お陰で王都にあるタウンハウスからギリギリ王都で回せる人材を残し、領地に有能な配下を何名か送らせ、更には父が信頼している人物から太鼓判を推される程、かなり優秀な人物をお借りした。


 正直これ以上身内の恥を晒すのはと思ったが、若輩者故自分が領地に行っても年若いと下に見られるのは分かりきっている。何せもう何十年も領地には帰っていない。そんな最中、自分が帰っても領主の息子だと顔もわからないだろうし、見た目が若いと侮られるのをへし折るのに数年掛けるよりは、現段階で速攻へし折る相手を送った方が良いと判断。

 そんな訳でモイスト領の補佐をしているアーノルド・フレッチーノ・ドードルグラン・ブロジア・グラシアーノ殿をお借りした。

 …長い名前だが、略してグラシアと呼んで欲しいと言った彼は普段モイスト家の執事をしている有能な男だが、確か幼少時はニキ付きの執事だった筈。今もそうなのだろうか?

 今度聞いてみようかと思ったが、彼が帰って来てからでも良いだろう。


 何せ先日『目処が付きましたし、新しい配下の教育もある程度致しました。そろそろご主人様の元に帰ります』と言う手紙が届いた。同時に領地に居る家臣からも『良い塩梅になりましたよ』と言う報告が入ったので、父は一度領地へ確認のために帰るらしい。

 …仕事が無事終わればだが。


 そして今後二度と同じ様な事が無いようにと、最低でも年に二回、父は何とか仕事の工面を付けて領地に帰る様に国王と約束をした。

 出来るかどうかは別な気がするが、ゴリ押しするそうだ。


 …頑張れ、父よ。

 多分国王は離さない筈だぞ…仕事から。


 そうして国王、頼むからそろそろ新たな宰相か魔法大臣の何方か決めてくれないかなぁ~…。派閥争いがあるのはわかるけど、兼用している父が疲労で倒れないか心配だよ~?


 そして僕も経験を積むという理由で今此処、親友のモイスト領に『遊び』に来ていると言う風を装って来ているのだけど、これが中々面白い。


 いずれ父の命令で政略結婚をしなくてはならなくなるだろうけど、それまではキッチリ『遊び』という趣の人生経験を積み、後継のための勉強をしていこうと思う。

 思うけどね?

 でも楽しみはキッチリ楽しむつもりだよ。


 さてさて、アレスにはなんて理由をつけて呼ぶかな。

 それとレナ嬢の兄上さんにも報告しておこうかな。彼には貸しを作っておいたほうが、後々の為には有意義になる筈だから。何せガルニエ伯爵は類稀なる幸運と、実力があるから。

 胆力もかなりあるし、見習うべき人物ではある。

 あるが、何と言うか、こ~……極端に自身の女姉妹に弱いみたい。

 王都に居る時にも何度か、商人の嫁になった姉である女性に頭が上がらないらしい様を何度か見たことがあって、微妙に好感が持てる。


 その様を僕以外の町民も見ているらしく、彼の人気は王都周辺ではかなり高い。

 勿論独身の伯爵様という事で元々貴族のお嬢様所か、若い貴族の子息達にも人気が高いのだが、物腰が柔らかで見目が良いと来ている。


 …ま、僕はどっちかって言うとジーニアス・アルセーヌ・ガルニエ伯爵よりもその兄、ディラン・アレイ殿のが好感度高いけどね。


 このニキが居るモイスト領に来る前、アレイ男爵家の事柄で王都に呼ばれた次男ディラン殿。父や長男のこと、更には妹達の事柄や嫁いだまま会って居なかった長女の事といい、色々な事柄で心労を重ねてぐったりとした姿だった。

 だけど話してみると穏やかな気質で、この人が居なくなった長男の代わりに今後アレイ領を継ぐのならばいい領地になるのではと僕は期待している。何なら、ちょっとは手助けしてみたい。

 …その前に自分の所の領地であるジアス領の修正が先だが。


 だからこそ、彼の妹である人がこの領地に居るかも知れないとニキから聞いた時、『面白そうだ』と思って此方に来た。


 ふっふっふ~ん。

 鼻歌が出てしまう程、此処に来てから毎日が楽しい。

 鼻歌を歌うのは貴族としてははしたないけど、今の身分はただの剣客…何方かと言うと剣よりも魔法の方のが得意なのだけど…の扱いだから気にすることは無い。いや、しないの方かな~?

 見た目この領地の騎士っぽい格好なら、この領地の人々は特に何も言わない。騎士であるニキの側に居るからかも知れないけど。


 ニキも何だかんだ言って、一緒に通った学園の時よりも伸び伸びとしている。

 それは幼い時から抱いていた想い人が毎日楽しそうにイキイキとして居るからかも知れない。



 さて、そろそろ本気を出しているニキを止めないと面倒臭いかな~?

 オルフリオも何だかんだ言って実力はかなり高い方だし、下手すると僕では魔法が無いと対抗できない。しかも風魔法最大威力ぶっ放して辛うじてって感じ。酷くない?アイツ僕が魔法使わないと余裕なんだよ~?



「ニキ~!そろそろ止めないと、引っ越して来たばかりなのに周囲に被害が出るだろ~!」


「わかった、結界を張る!」


「そうじゃねえ、ボケ!粉塵とかご近所さん達やレナちゃん達に被害が行くだろ!!」


「あ!」



 ニキのボケ、レナちゃんと言う名前が出たら油断したのか早速オルフリオに接近させられ詰め寄られているし。咄嗟に避けた所は流石だけどさぁ。



「上司とは言え、ニキ殿。中々の腕前ですね」


「ハッ!言うねぇ…リオ?」


「…」



 おお、怖いこわい。バチバチって火花が散っているよ?

 青春ですか?うわ~い。



 結局その後、一時間以上練習試合と言う名の戦闘を続けていても決着が泥試合となるだけでつかず、途中で僕が無理矢理止めた。何せ最後の方は互いに魔法を使おうとしたから。


 脳筋どもめ、ご近所迷惑だっつーのっ!


読んで頂き有難うございます。


えーと。

本編とIFとは色々と違っているため、本編終了後の世界とIFとはお話の筋が違っております。

これ、あえて言っておきますね(^_^;)

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