【三男】
「あります。私と姉は昨夜の暴漢の元妾です」
当然嫌々妾にさせられたのですけどね!
どうせなら詳細にと思い、事細かに今迄実家であった事柄やら妾時代の事柄やらをベール等には一切包み隠さず、洗い浚い全部ぶち撒ける。
糞ったれ親父のカルロスのこととか。
長男で無駄に父親ソックリのカイデンのこととか。
その長男であるカイデンが家督も継がずに何故か唐突に家出し、吟遊詩人目指しているらしいとか。
幼少時に実の父親であるカルロスに売られ、隣領のロドリゲス家に借金の代わりに妾としてかなりボロボロな東屋で生活していた事とか。日々食べるのに苦労したとか。
ひとつ上の姉が王国で決められている年齢以下でゲシュウが手を出し、子供を作らされたとか。私自身は二人っきりになる前に逃げ出したり、蹴りを入れたりして徹底的に逃げ出して手を出されないようにしていたとか。
そしてついにロドリゲス家の悪事がバレ、姉とその子供を三男であるジーニアス兄さんの所まで逃した後、幼い時からずっと憧れていたモイスト領に働きに来た、と。
(前世からの推しが居るからとか、聖地巡礼とかは勿論言いません。乙女ゲームとか説明が出来ないからね!)
全部話して思ったことは、これってただの身の上話と言う名前の苦情だよね?ということ。
お上(王家)ちゃんとお抱えの貴族の事柄ぐらい把握していてよ!と言う苦情。
男爵家等、庶民と同等と言われてしまえば仕方がないのですけどね~…とほほ。
「ん?っと言うことはアレイ男爵家のご令嬢で、ジーニアス・アルセーヌ・ガルニエ伯爵殿の妹君か?」
騎士様が驚いたように此方を見詰めている。
けど、あれ。
ニキ様とケイン様は驚いた風も無く納得をした顔付きでいるだけ。嗚呼でも苦々しげなのはその顔を見れば解るかな。特にニキ様はケイン様とは違っていて、悔しそうにして居る。
これは…知っていた、とか?
…考えてみれば、三男で今はガルニエ伯爵であるジーニアス兄さんは元第二王子で、現在は王位継承権を破棄して公爵へとなったユウナレスカ様の元側近の近衛騎士。現在は近衛騎士副隊長となっていた筈。乙女ゲーム通りならね?ゲーム終了後のジーニアス兄さん攻略後で少しだけ背景が出ていた様な気がする。勿論ジーニアス兄さん攻略後で。
となれば、乙女ゲームでは第二王子であるユウナレスカ様の御学友であるニキ様やケイン様は当時側近でもあった訳で。それならば兄、ジーニアス・アルセーヌ・ガルニエ伯爵の事は知っている筈。
…それに、あの涙を流したと思われる手紙を送ってくる兄のことだ。何度か周囲に相談と言いながらも愚痴やら現状の状態やらと話していそうではある。
ううん、『話していそう』ではなく、確実にしていそう…。
しかも涙ながらに。
ダダ漏れとも言う。
幼い時から涙脆かったからなぁ、ジーニアス兄さん。
子供の時道端で転んで足を軽く怪我した時、どういう訳か鼻血も出ちゃって鼻から下が全身血だらけになり、驚いたジーニアス兄さんが大号泣。
泣きながら私の怪我やら何やら治療してくれたのだけど、滝のような涙なんて前世なら漫画でしか見たことが無かったから目の前で実兄にやられた時はどう対処していいのかわからなくて、動揺してオロオロしていたものなぁ…。
逆に冷静に処置をしてくれたディラン兄さんと「泣くな!男だろう!」と、ジーニアス兄さんに叱咤してくれたシドニー姉さんの方が男らしくて笑ってしまったけれど。
ジーニアス兄さんの所に次女であるデュシー姉さんが向かってから数カ月後。ジーニアス兄さんから送られてくる手紙とは違い、商業ギルドから私宛に何度か長女のシドニー姉さん、それから末っ子で四女のオルブロン、更には母であるモーリーから手紙が届くようになった。
その中でもモーリー母さんからは淡々とした文章ながらも身体は大丈夫なのかと気を使った文が届き、その際何度も文章にて『貴方達姉妹を守ることが出来なかった』と後悔の言葉が綴られて謝られている。
母は決して強気な人では無く、正直言うと弱い人だ。
それでも何度か父を止めようとしていた様だが、その度に何度も馬鹿にされたり罵倒されたり、父からスルーをされて居たりしていて、全く母の事を顧みなかったようだ。
そんなカルロスだが、唯一良かったのは母に暴力を振るわなかったこと。
これには父なりに理由があったようだが、私達は当時父が何を思って居たのかは知らないのでわからない。…予想なら出来るけど。
何だかんだ言って母の事を大事にして居たのではないのだろうかとか、良心の呵責があったのでは無いかとか、色々思うことはある。
私達を売りに出した父ではあるが、母にだけは愛情があったのかも知れない。
今となっては推測でしか出来ないのだが。
さて、そんな三男のジーニアス兄さんだがどれだけ昇進した?等と言いたい位昇進しまくりで現在独身の伯爵家当主。
当然王都周囲の貴族子女や一般の独身女性達、更には一部の男性達からもモテモテ状態らしいけど、当人であるジーニアス兄さんは今も誰ともお付き合いせずに独身を貫いている。
何故かと言うと次女の連れ子が可愛いからと、実父のせいで苦労を掛けた三女が心配で仕方がないからだと言う。
「えーと、まぁ、そうですね。でも私自身は大っぴらにしたくないですし、男爵家の実家等庶民と同等もしくは貧乏だったので貴族とは言えないです。教育も受けていませんから庶民と一緒ですし。ですから内緒でお願い致します」
それに貴族の長男や次男は当主候補やスペアとして実家に残ることが多いけど、私みたいな下っ端貴族の三女等成人してしまえば家を出ても良い所…伯爵家等の貴族家にメイドとして入り込めればラッキー。そしてちょっとでも裕福な商家に嫁げれば大ラッキー。
器量良しならば何処かの身分の高いお貴族様の第二夫人か妾になれれば良いだろうけど、私は学校にも家庭教師にも学問を習っていない身。貴族社会の常識等知らないし、ダンス等も一度も踊ったことが無い。当然社交界のマナーも知らない。
ならばそんな雲の上みたいな話は無理だろう。
幾ら前世の記憶があってもこの世界の学問が同等かどうかは判断していないのよね、何せそこまで器用じゃなかったし、生活苦だったから手に職を付けなければと焦っていたし。
器量だって男爵家という事で普通程度だろうし、夜の職業をしているお姉さま方よりは圧倒的に色気が足りない。
夜のお姉さま方みたいな匂い立つ色気はないが、健康的な愛らしさは多少はあると思う。た、たぶん。自信は無いが。
「ああ、わかった。とは言え此方も伯爵家のご令嬢となると…うーむ」
ん?
伯爵家のご令嬢?
男爵家でしょう、どうみても。アレイ家が潰れたとなればジーニアス兄さんが抱え込む可能性は無きにしもあらずだけど。
読んで頂き有難うございます。
(*´∀`*)
表ではお久しぶりです。
近頃月ばかりです…
今年中にこのお話を何とか終わらせたいなぁと思います。た、多分…




