〜第5章 事態の進展?〜
そしてマスターの正体を考えている生徒達。
「まず、こんなに部屋があったら、捜索が大変だ。早く行くぞ。」
そう言い、全員が緊張感を持って捜索を行う。
「この部屋開かないぞ。」
「こっちもだ。」
開かない扉が何箇所かある。
「ここは開くみたいだぞ。」
実際に開いたのは10箇所あった扉のうち、たった1箇所。
「写真…、卓先生と黒く塗りつぶされた人が写ってる。そこに赤ん坊。」
「昔の写真だ。これがマスターなんだとすれば…」
「犯人は女性という事か。」
「赤ちゃんを抱えて写っているという事は、
卓先生と犯人の女性は婚姻関係にあり、
その子供が母親の計画に共鳴し、
このクラスに潜入し協力者として加担している。」
「そうなるな。」
犯人の正体にいち早く気づいたのは純也。
その推測を全員に説明するため悠々と喋り出す。
「待て、分かったかも知れない。」
「犯人の正体に気づいたの⁉︎」
「あぁ、まず俺達はどうやってここに来た。」
「それは、犯人に誘拐されて…」
「違う。その前に教室で意識を失って、誘拐されたのよ。」
「意識を失ったのって…」
「そうだ。西谷先生の差し入れを食べてからだ。」
全員が犯人の正体に確信をついた。
「そう言えば、教室で薄れゆく意識の中、
扉が開かないのに誰かが入って来て、何かを言っているの聞いたわ。」
「ふむ、犯人は西谷先生だ。」
部屋に戻り、マスターとテレビ電話する。
「あなたの…マスターの正体は森近学園 指宿分校副校長でもあり
私達の担任でもある西谷 純子先生だ。」
マスターは笑った。これほどかというふうに笑った。
「正解だよ。」
そう言ってマスターは機械音を切り、マスクも取った。
「皆さんお久しぶりです。改めまして、このゲームのマスターの西谷です。」
「先生だったんですか。こんな事をした犯人は。」
「えぇ、そうよ。大変だったんだから。
こんなに大規模な施設を作るのにお金もいるし、時間もかかるし。」
「あなたはこの犯行の目的が私達の卓先生いじめへの復讐。
と言っていましたが、あなたをそこまでさせるのは何があるからなんですか。」
当然の質問を生徒たちはする。
「私と卓先生は夫婦だったのよ。順風満帆に生活を始め、子供も生まれ、
そんな矢先に卓は死んだのよ。あなた達のいじめにあってね。」
「……」
「そんな卓先生の後任に私が選ばれた。
死んだ当時は何だか分からなかったけど、何とか受け入れようとした。
職務として与えられた事を全うしようとした。
そんな中、いじめの事実を把握した。
犯人があなた達と知った時は、絶句ですよ。」
「西谷先生の子供が協力者なんでしょ。誰なんですか。」
「それは、言えないわ。」
「これからどうすれば良いの?」
「私の正体を知った上で、ステージを進めてもらうわ。
次のステージはあなたたちがどれだけ反省しているのか。
卓先生をどんだけ尊敬をしているか。クイズを解きなさい。
その前にニュースを定期的に見せることにしよう。」
そう言ってニュース映像が西谷によって見せられる。
「続いてのニュースです。学校法人『森近学園』指宿分校の生徒達が
集団失踪した事件で政府は対応に乗り出しました。
具体的には国際刑事警察機構に捜査依頼ではなく協力を依頼しました。
山下官房長官の会見映像です。」
「先ほど臨時閣議にて学校法人『森近学園』の生徒が集団失踪した事件で
国際刑事警察機構に捜査協力を依頼する旨の通達、
捜査の主権を警察庁へ移管する事を森近国家公安委員長より
ご発言がございました。それに伴い官邸対策室を設置し、
政府3役で情報収集及び捜査指揮に務めます。」
映像は切られ、西谷の映像となった。
「良かったわね。あなた達は日本政府に気にかけてもらえて、
さらには国際警察の力をかりる事が出来て。
卓が死んだ時は、ちょっとしか報道されなかった元 教員が自殺しただけだと。」
少し涙を拭うようにして、西谷はそう答えた。
「第1問…」
そう言った瞬間、部屋へ戻り、席へついていた全員の手足が金具で拘束された。
「何なんだ。この拘束は。」
「このクイズに溶けた人のみがその拘束を解き、生きて帰る一歩を踏み出せる。」
緊張した面持ちで、クイズに臨む。
「第1問 進級した当時、卓先生が進級・入学式で副校長として挨拶をしました。
挨拶で何を主題として話したでしょう。」
全員が目を瞑り、必死に考える。間違えたらどうなるか分からない。
という緊張感が冷静な判断力を鈍らせる。
「分かった。春夏秋冬を起承転結に例えた。
そして生徒たちに人生の大切さを説いた。」
「正解です。あなたは開放しますが、まだここにはいてもらいますからね。」
「何なんだよ。出してもらえるのじゃないのか。」
「言ったでしょう。脱出の一歩を踏み出せる。と。」
一方、その頃。純也達を探している警察庁の捜査本部。
森近国家公安委員長は警察庁を所管する国家公安委員会の定例会に出席する。
「只今より国家公安委員会 定例会を始めます。
森近委員長よりご発言がございます。」
「先般より話題となっております森近学園 指宿分校の集団失踪事件で
警察庁刑事局の捜査により誘拐事件であると断定されました。
それを受け、警察庁刑事局に特殊誘拐特別捜査室を設けたいと思います。」
刑事局に新組織が出来たことで誘拐事件の捜査にあたる。
森近国家公安委員長は刑事局の捜査の指揮を執る。
「只今より私立高校生の集団誘拐に関する捜査会議を始めます。
最初に森近国家公安委員長より挨拶を頂きます。」
「集団で高校生が一瞬にして連れ去られるという
日本の刑事史史上稀な事件が発生しました。
未だ犯行声明等がないうえに犯人の正体は謎に包まれていますが、
警察一丸となって捜査にあたり、人質の人命優先で頑張りましょう。」
「続いて捜査状況について報告。」
刑事2名が立ち上がり、スライドを使い報告する。
「生徒たちの最後の足取りについて現段階での報告を致します。
生徒のスマホのGPSが最後に反応したのは鹿児島県 駿河崎漁港で、
犯人は生徒たちを誘拐し改造へなんらかの手段を使い、
逃亡した可能性もございます。」
「次、容疑者について。」
「現時点では容疑者は不明であります。」
次々と報告をしていると、捜査会議室に捜査員が入って来た。
「何をしていたんだ。会議は始まっているぞ。」
「すみません。新事実が判明したので。」
「何だ。その新事実とは。」
「はい、誘拐された生徒の担任、西谷 純子が失踪しました。」
捜査員たちにざわめきが起こる。
「何で失踪したんだ。彼女には誘拐の恐れがあるから見張りがいたはずだろ。」
「それが、捜査員が少し目を離した隙にいなくなったそうです。」
「誘拐の可能性は。」
「周辺の防犯カメラを調べた結果、失踪現場付近を急スピードで走る怪しい車が
映っていましたので、現在照会中です。」
まさかの担任までもが失踪。
警察の警護対象者を見失うという失態を尻目に、事態は深刻化している。
「もし誘拐であれば、なぜ今なんだ。生徒達を誘拐した時で良いだろう。」
「確かに。今誘拐されるのは少し違和感があります。」
「根本的な事を調べていない。」
「根本的な事とは?」
「事件の背景だよ。なぜこの事件が起こったのか。
なぜ、3年2組の生徒が誘拐されたのか。それを調べれば自ずと分かるはずだ。」
「分かりました。調べさせます。」
警察の捜査も順調?に進んでいる。
まさかの、担任 西谷順子の失踪。純也達は犯人が担任である
西谷だと知っているが、
警察にまだ正体は知られていない。
どこにいるかも、誰が犯人かも。
警察の捜査はどうなるのだろうか。