四章 第15話 シャルールの決断
お爺さまのお屋敷に行った翌々日、わたしたちはネヴァラを出発した。道は王都に向かったときのそれを綺麗になぞるように、レグムント侯爵領の街からメナ、キャンプ、シザリアの順番で。行きしなは怖がってたイトランデ街道でまったく伯母さまが動じなかったのが印象的だった。
「帰ったらすぐに手紙書こうね!」
「ん」
することのない馬車の旅、わたしはもう何回目になるか分からない同じ話をアクセラちゃんとする。最初はお茶会で仲良くなれたアベルくん、レイルくん、マリアちゃん、アティネちゃん、ティゼルくん……5人それぞれと文通をする約束をした話。学院や王都、みんなの領地について教えてもらったあと、滅多に合えないんだからということで手紙を書くことになったのだ。
「歌劇も面白かった」
「ね!」
そう、王都にいる間に歌劇にも連れて言ってもらった。それも4回も!
貴族街に建てられた巨大な建物で中に6つもステージがある、ユーレントハイム王国最大の歌劇場。演目は4つとも違って、どれも面白かった。
最初の演目は王国の建国物語。神聖ディストハイム帝国が滅んだあと、人の生存圏は都市国家レベルまで落ちることになる。ユーレントハイムはそんな都市国家の1つから一帯の覇者にまで上り詰めた。これはその歴史を初代国王さまや四大貴族さまの視点から描いた作品で、殺陣や演技の良さは4つの演目でダントツだった。
「内容が内容だから、たぶん看板役者さん」
「あ、そうか」
2つ目の演目はディストハイム時代のラブストーリー。身分違いの恋に焦がれる若い2人が引き裂かれ、最終的に心中してしまうというお話だった。書庫にも同じようなのが一杯あった、よくある悲恋の物語。でもありきたりな分、洗練されてた。
「音楽が素敵だったなぁ」
「イザベルも泣いてたしね」
「い、言わないでください!」
向かいに座った伯母さまが顔を赤らめた。
わたしも泣いちゃったし気にしなくていいのにね?
3つ目と4つ目はどちらも冒険活劇、というより前後編2つ合わせて1つのお話だった。勇者さま一行が魔界で戦争の準備を整える魔王を討伐に行く王道の物語。
「あれ実話なんだってね?」
「ん、まぁ」
前半が勇者さまの旅立ちから仲間を集める道中、後半が魔界に入ってからの冒険と魔王の戦い。最後は魔王を討伐した勇者さまが地位も名誉も受け取らず、世のため人のために一人旅立つところでお仕舞だった。
そこまで思い出してからふとアクセラちゃんの顔を見上げる。彼女はなんとも言えない微妙そうな顔をしていた。
「アクセラちゃん、劇の間もずっとそんな顔してたけど……どしたの?」
「……まあ、なんでもない」
「……?」
その後もこっそり冒険者ギルドに行ったりお店巡りしたり、2人で体験したあれこれを思い出して感想を言い合う。
「そういえば最後にホランさんに何か渡してたけど、なんだったの?」
「ちょっとしたメモ。帰ったら教えてあげる」
「むぅ、じゃあ待つ」
大事なことは全部話してくれる約束だもんね。でも本当に伝書鳩になった気分……。
「もう少しだけいたかったな、王都」
ケイサルも大好きだけど、王都には場所も物もたくさんあった。
「私はもっとアポルト見たかった」
「市場すごかったもんね」
行きでも素通りだった港町は帰りでも素通りだった。本当はもっと市場や船着き場を見て回りたかったけど、エベレア司教さまと面会する予定が差し迫ってしまって。
エベレア司教さまはわたしやアクセラちゃんの祝福式をしてくれた頃と同じで、元気いっぱいの楽しい人だった。アクセラちゃんの立場も分かった上でとっても親切にしてくれる。でも少し具合が悪いのか、薄っすら覚えてるよりゆっくりとしゃべってた気がする。
「あれから6年たった。当然」
「そっか……そうだよね」
エベレア司教は今ではレグムント侯爵領の教会を束ねる管区長になっていて、1時間しかお話する時間をとれなかったのが残念。
お爺さまのお屋敷に行った翌日はメイス孤児院の子供たちともう一回遊んだ。孤児院と提携してる工房を見せてもらってから、まだ訓練のない子供たちにネヴァラの名所を案内してもらった。初代レグムント侯爵の石像とか。今の侯爵さまにはあんまり似てなかった。
「エレナ、もうつくよ」
アクセラちゃんに言われて窓の外を見てみる。すっかり色づいた赤トウモロコシの畑が広がっていた。
「ほんとだ」
ゆっくりと近づいて来る外壁を超えて大通りを進む。遠目に屋敷が見えてくると、門の前に何人もの人が立ってるのがわかった。
「おかえりなさい!!」
父さまと母さま、それにお屋敷の人が一杯待っててくれたのだ。
「ああ、おかえり!」
「ん」
「きゃ」
父さまが目に涙をためてわたしとアクセラちゃんを抱きしめる。文官の父さまだけど、大人の男の人だからわたしよりもずっと力が強い。
ちょっと苦しいよ……。
横目で父さまの首越しにアクセラちゃんを見ると、彼女はとくになんともなさそうな顔をしてる。やっぱりアクセラちゃん、父さまより力があるんだ。
「お屋敷の前でお嬢様を抱きしめたりしたら何事かと思われますよ!」
即座に母さまに叱られて離れる父さま。
嬉しいけど、わたしもそう思うよ?
「いや、ごめんごめん。つい嬉しくって」
むぅ、やっぱり。お爺さまって誰かに似てると思ったら、父さまにそっくりなんだ。
「ビクター、ホランから手紙がある」
「そうか、わかったよ。夕飯の後で執務室に来てくれるかい?」
「エレナとトレイスも一緒でいい?」
「ああ、それがいい」
父さまとアクセラちゃんがそんな会話をする。ちゃんと教えてくれる約束は守ってくれるみたい。
「でもとりあえず、2人ともお帰り」
「お風呂を入れてありますから、しっかり浸かって休んでください」
「ん。ただいま、ビクター、ラナ。アンナたちも」
「ただいま帰りました!」
長いようで短い初旅はこうして終わった。明日からは普通の毎日に戻るんだ。
そう、わたしは思っていた。
~★~
「お嬢様、ちょっとワガママ聞いてもらっていいっすか?」
アタシがアクセラお嬢様にそんなことを言ったのは、皆で王都から帰ってきた2週間後だった。日課の剣の鍛錬をしに騎士の練習所に出て来たところに近寄って、できるだけ真面目っぽい顔で言ったつもりだ。
「シャル?」
小さく首を傾げるお嬢様。この人はそんな仕草だけで見惚れるほどキレイだ。光にキラキラ光る白い髪も、真っ直ぐな紫の瞳も、普段のたたずまいも……全部が整っていて、まるで人形みたい。あんまりよくしゃべる方じゃないけど、アタシみたいな侍女にも構ってくれる。
キレイで優しくて賢い、それで魔法の才能も豊かなんて……これだけならまだ嫉妬もできるんっすけどね。
お嬢様は剣も使える。というか、アタシが見た限り剣が一番強いと思う。
「アタシと試合してもらえないっすか」
「……急だね」
「申し訳ないっす」
本当に少しだけお嬢様の眉根がよった。それは不快だとかめんどくさいとかいうことではなく、単純にどういうことか分かっていないかんじの表情だ。
あ、意外とお嬢様の表情わかるようになってたんすね、アタシ。
ふとそんなことに気づいて複雑な気分になる。
「理由を聞いてもいい?」
「あっと……試合の後でいいっすか?」
「ん、わかった」
「自分で言っといてあれっすけど、いいんすか?」
「ん」
首肯するその姿にためらいはない。自分の腕に絶対的な自信を持っていないと出せない、大木のように泰然とした余裕がそこには見える。それが慢心でないことはよくよくわかっている。
「どっち?」
お嬢様の視線が練習場のすみの模擬武器置き場と腰の剣を順番に指示した。木剣でやるか真剣でやるかを聞かれていることくらい、察しの悪いアタシでもすぐにわかった。
「そっちでいいっすか」
細い腰に下げられている黒鞘の剣を指さす。ケイサルに店を構えているリオリーとかいう商人にお嬢様が取り寄せさせた西の国のカタナ。
「シャルは?」
「部屋に置いてるんで取ってくるっす。お嬢様も鎧着といてもらえるっすか?」
「ん、わかった」
それ以上何も聞かず、お嬢様は自分の部屋に戻ってくれた。あんなこと言い出したら、普通ならその場で解雇されるのに。下手をすれば手打ちにされるかも。
いや、ラナさんやアンナ先輩にバレたらただちにお仕置き部屋直行っすね。
ステラ先輩やビクター様ならなんだかんだで許してくれるけど、あの2人は絶対に怒る。使用人としての感覚がマヒしていない……わけではないけど、このお屋敷ではまともな方だから。
なんだかんだと考えながらも体はちゃんと準備をし続け、20分もするとアタシとお嬢様は完全装備で対峙していた。2人とも革の下地に金属を縫い付けた、防御力と軽さを両立した防具。お嬢様の腰の刀は普段用ではなく冒険用の頑丈なベルトにつなぎ変えられている。
「シャルは槍使い?」
「そうっすよ」
右手に握った短鎗を掲げて見せる。穂先から石突まで全て金属製で穂の根元に小さなクリスタルが埋め込まれた、いわゆる魔鎗だ。アタシが冒険者をやってる間に買った一番高いモノで、パーティーが全滅したときも壊れずアタシを守ってくれたパートナーでもある。
そしてアタシのジョブ『鎗術士』は総金属製の鎗を扱うスキルがいくつも集まったモノ。『短鎗術』や『投擲鎗術』が中心で、完全にこの鎗を使うことに特化している。それを今回は無制限で使うつもり。つまり本気の本気だ。
「いい鎗」
「えへへ、うれしいっす」
「ん、はじめよ」
その一言で空気が入れ替わった気がした。戦いの空気、試合と言いつつそれは戦と言ってもいいほど強烈な気配だった。まっすぐな瞳には年相応の稚気が宿っているのに、それが獰猛な魔物に睨まれているような圧力を伴っている。いつもは薄っすらとしか見えない笑顔も心なしかはっきりしている気がする。
「……」
距離をとってからアタシは槍を構える。この名前もない魔鎗は短鎗の中でも短く、射程距離が広くないかわりに取り回しがいい。逆に言うとあまり距離をあけることにメリットがない。
でもお嬢様は絶対に足が速いっす。あの体格で戦うには爆発的な加速がないと……むしろあっちが槍使いだと思っておかないといけないっすね。
両手で鎗を握って斜に構える。少ない魔力を最初から流し込んで準備しつつ、お嬢様の挙動をじっと見る。カタナは鞘に納められたまま、仁王立ちで右手を柄の上に置いている。甲を下に、手のひらを上に向けて。
あれは見たことあるっすね。初めてカタナを使ったときの、抜きざまに斬る一撃っす。
脳裏をよぎるのはあの澄んだ太刀筋。その幻の残光に背筋が寒くなる。それでも挑んだアタシから攻撃するのがスジだと腹を決めて足に力を入れる。『筋力強化』と『跳躍強化』のスキルを重ね、さらにアビリティ『跳ね馬』で限界までジャンプ力を高める。
「!」
地面を削る一歩で足にため込んだエネルギーを爆発させる。加速の圧がぐっとかかり、風が耳元で唸りを上げる。この体そのものを鎗として打ち出した直後に攻撃用のスキルを重ねる。
『鎗術士』鋭刃、『鎗術士』一点突破
『鎗術士』内包スキル『短鎗術』貫突鎗
穂先が真っ赤に色づく。突き技に特化した強化が2つも乗って空気すら貫く勢いに達する。アタシが一番得意とする、何度も繰り返してきた一撃だ。それがお嬢様の左肩へ、寸分たがわず吸い込まれていく。
あれ、鋭刃かける必要あったっけ……。
そんな思考が浮かんだのはもうあと30センチのところ。慣れた一連の動作をそのままに繰り出したわけだが、別に切れ味を増す必要なんてなかったことに気づく。当たればお嬢様の細い腕なんて簡単に千切れ飛ぶような一撃だ。もし躱せなかったら大参事になる。
や、やりすぎたっす……当たらないで!!
心の底から自分の鎗が外れることを願うなんて生まれて初めてだった。心臓が止まるかと思う程の一瞬、ぐんぐん迫るお嬢様は……直前で横にずれた。
「あ」
心配なんて無駄だった。丁寧な足さばきで横に避けて見せたのだ。空を切った鎗を握りしめてアタシはお嬢様の隣を駆け抜ける。がら空きの背中を、予備動作を済ませた相手にさらしながら。
あれ、これむしろアタシが絶体絶命なんじゃ……?
ところがそれも杞憂に終わる。アタシが勢いを殺して着地し、態勢を整えなおして構えをとるまでお嬢様は始まりと同じ格好で待っていた。お嬢様を起点にアタシが場所を入れ替えただけ、そんな状況に頭が追い付かずつい首を傾げてしまう。
「シャル」
「は、はいっす」
「怪我をさせるのが怖かった?」
「あ、ご、ごめんなさいっす……せっかく試合してもらってるのに気散らしちゃって」
「ん、しかたない。でも武器は模擬にして」
お嬢様はカタナから手を離してもう一度模擬武器置き場を指さした。
「……はいっす」
一度やらかした手前、否と言えるはずもない。真剣勝負を挑んでおいて躊躇うなんて失礼過ぎる。
「刃引きした鎗があった、これでいい?」
「あ、それでいいっす」
柄が木製の槍だと重心が違いすぎて使いづらい。全部鉄製の模擬武器なんてよくあったと思う。たぶんリベラさんが趣味で集めた私物を訓練でも使えるよう置いてあるのだろう。
「……刀ない。鞘でいい?」
「もちっす」
アタシたちはそれぞれ武器を整えてからもう一度対峙する。鞘にいれたままの刀と刃引きした短鎗で。お嬢様の刀は鞘がすっぽ抜けないのかと疑問に思って見せてもらったところ、もともと柄の仕掛けを押さなければ抜けない構造らしい。
「じゃあ、いくよ」
「は、はいっす!」
「ふっ」
アタシが頷いたと同時に踏み込むお嬢様。柄に手を乗せた構えのまま、一瞬でアタシの鎗の切っ先付近まで潜り込んできた。
「はっ」
とっさに鎗を立てる。その判断が賢明だったと、カタナの鞘が鎗の柄を殴りつけた衝撃が教えてくれた。鎗を支える両手が想像以上に押し込まれる。別に押し合いになったわけでもないのに、押し負けそうな重い一合だった。
そ、その細腕のどこにそんな筋力があるんすか!?
そんな叫びを上げる暇もなく次の一撃が加えられる。それを『短鎗術』のパリィで弱めて、顎を狙って石突を跳ねさせる。スキルなしとはいえかなりな勢いのある打撃を、お嬢様はわずかな首の動作で躱した。
「ちっ」
がら空きになった脇腹に迫る鞘を感じて横へ跳ぶ。着地と同時にお嬢様に穂先を向けて腕の動作だけで繰り出し、引き戻すタイミングで『短鎗術』の三連突きを発動。追撃への牽制とフェイントを兼ねた一撃目が戻るのを待って踏み込んだお嬢様に赤い光が3発、ほぼ同時に打ち出される。
「ん」
呼吸が乱れたなんて口が裂けても言えない程度の声が柔らかい唇からこぼれる。たったそれだけの反応でお嬢様は三連突きを迎撃して見せた。ほぼ同時に繰り出された3発をそれぞれ足捌きで回避し、鞘で受け止め、鞘で逸らして。
ちょ、極近距離用の連撃スキルをスキルなしでいなせるもんなんすか!?
あまりの精密な動作に顎が外れそうになる。でもそんな余裕はない。さらなる攻撃のために腕を戻そうとして……鎗を掴まれた。
「え!?」
穂の根元のくびれを左手の指に引っ掛け、右腕の鞘を横に下げたお嬢様。薙ぎが来るのを察して柄を握った手を緩める。石突近くまで引き下がる思いでバックステップを踏めば、ちょうど目の前を鞘の先が掠めて行った。なんだかよくわからない動物型の留め金に危うく鼻を食いちぎられるところだったが、これで大ぶりな攻撃を躱せた。
よし!
お嬢様の手が鎗から離れたと同時に引き戻さずに振り上げる。鎗は突きが一番強いとアタシの師匠は言ったけど、薙げば間合いの広い剣とも言っていた。それだけ槍の斬撃力は高い。刃引きだから実際には斬れないけど。
「やっ」
気合いを上げて薙ぎを放ち、避けられると距離を数歩調整しながらさらに薙ぎを繰り返す。
そろそろアレを試してみるっすか。
間合いを一定に保って穂で斬りつけ、石突で殴打し、柄で防ぐ。その全ての動作に『鎗術士』のアシスト系を折り交ぜて、段々と速度を上げる。さらに『筋力強化』『短鎗術』『跳ね馬』に加えて侍女になってから覚えた『舞踏』を発動させる。これはアタシのオリジナルだ。
「はぁあああああ!!」
スキルの反動を抑え込んでいる腕の筋肉が悲鳴を上げても、鎗を振り続けるのを止めない。まだクリーンヒットは取れていないが、お嬢様の反応がちょっとずつ遅れてきている。回避される攻撃も減ってきて、鞘で受ける回数が多くなってきた。
あとちょっとっす!
腕に力を入れなおしたときだった。
「いくよ」
囁くような小さな声が耳に届く。そこに疲労の色は微塵もない。
「は!?」
お嬢様が視界から消えた。逃げ場のないほどの連撃だったのに、警戒を強めたときだったのに、完璧に姿を消したのだ。
「おしまい」
首にピタリと冷たいものが当たる。視界から消えたお嬢様はアタシの後ろに立っていた。そして首筋にカタナの鞘を当てていた。
「ま、参ったっす……」
「ん」
降参すると首の冷たい感触はあっさり下げられた。アタシも鎗を下げて振り向く。お嬢様の額には薄っすら汗が浮かんで、人形めいた顔は上気している。
なんか、エロイっすね……。
場違いな感想が浮かぶ。とはいえあの連撃を捌き切ってこれだけなんて、スタミナお化けにもほどがある。
アタシの息は切れ切れなんすけど……て、もしかして?
「お嬢様、逸らしてたのわざとっすか……?」
「ん」
「うっわー、まじっすか」
お嬢様が回避を減らして鞘で迎撃していたのは疲れて余裕がなくなってきたからではない。動きを減らして消耗を抑えながら、アタシに鞘を叩かせて逆に体力を削っていたからだったのだ。
「最後のアレはなんだったんすか?」
アタシは質問しながら、体の疲労以上に精神的に疲れてその場にへたり込む。
「スキルで気配を消した」
お嬢様が言うには、人は情報のほとんどを目から得ているらしい。それでも戦いに身を置く者はその比率がやや低い。気配や音からも状況を読むよう鍛えているからだ。
「スキルで視覚情報以外を隠して、あとは速く動いた」
いや、速く動いたって……いくら見失いやすく誘導されたからってそれだけで見失うモンっすか?
そんな疑問もわくが、実際に見失ってあっさり負けた手前言うのもはばかられる。
「で、なんで試合?」
アタシの隣に腰を下ろしたお嬢様がこっちを覗き込む。理由も聞かずに試合を申し込んだのだから、ちゃんと思っていること全てを話すのが筋だろう。
「お嬢様……アタシ、侍女辞めようと思うんっすよ」
誤字報告機能に対応いたしました。
仕様がぶっちゃけわかってませんが、よろしくおねがいしますm(__)m
~予告~
歌劇に魅せられたエレナは決意する。
いつかすさまじキラめきを身に宿した、トップスタァになることを。
次回、スタァライトクルセイダーズ
エレナ 「ならないよ!?」
アクセラ 「タイトルが物騒すぎる」




