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四章 第1話 反乱の始まり

 初夏をやや過ぎたある日、オルクス伯爵家の領地邸はあわただしい気配に包まれていた。侍女たちは走る一歩手前の速度で廊下を行き交い、執事たちも羊皮紙に書かれた点検項目を見ながら部屋から部屋をせわしなく移動している。手が空いているのは伯爵家の嫡男であるトレイスだけだった。明日は王都で行われる貴族子女のお披露目パーティーに向けて俺が出発する日だ。


「次にここをこうして・・・これで・・・できた!」


 後ろでエレナが歓声を上げる。やりきった満足感に満ちた声だ。


「おー、大分いいかんじになってきたねー。どうです、お嬢様は苦しくないですかー?」


「ん、それなりに」


 屋敷の誰もが騒がしさこそないままに上を下への大忙しとなっているその時、俺だけは自室でただ立っていた。とはいえこれでも仕事はしている。ステラ直々の指導をエレナが受けているので、その実験台としてドレスを着つけられているのである。


「それなりに苦しい、でしょ?」


「ん」


 エレナの苦笑が混じった問いかけに俺は頷く。我慢できないわけじゃない。だってコルセットは()めてもらったから。あの締め付けには殺意を感じる。


「お嬢様はまだコルセットなしでも許されますけどー、学院に行った後はちゃんとしてくださいねー」


 9歳は子供だからいいが、15歳になればドレスにコルセットは必須。それが貴族社会の定番である以上、必要があればそれに倣うのがマナーというもの。

 正直言って使徒の権限を使ってでも回避したいけど。


「あれは拷問器具。貴族の女性はいつか皆あれに絞殺される・・・」


「さすがにそこまではいきませんよー」


「騙されない」


 服飾のエキスパートであるステラがそういうのならそうなんだろう、なんて甘い希望はもう捨てた。夏の衣装のフィッティングで着せられたときに既に体験している。そしてもう一つ重大な事実を俺は知っている。


「ステラは貴族じゃないからコルセットは使わない、でしょ?」


「アクセラちゃん、ステラさんは自分で作ってるんだから当然着たことくらい・・・」


「ないかなー」


「ないんだ・・・」


 エレナのフォローをステラはのんきな声でぶった切った。


「あんな苦しそうなもの、わざわざ自分で着ないよー」


 く、やっぱりか!だろうとおもったよ!

 コルセットの締め方だが、左右の紐を侍女が1人ずつ掴んで引っ張る。明らかに服の着方じゃない。首なら余裕で折れる力だ。さらに恐ろしいことに、ふくよかな女性や一際細く見せたい女性は専門の男衆を雇ったり、果ては魔導具で締め上げたりもするらしい。コルセットを締める係に扮して肋骨が折れるほど締め上げ殺すという暗殺方法がなんで流行らないのか理解できない。


「・・・学院にいる間は制服で過ごす」


 貴族の子女はすべて学院に通うことが義務付けられているわけだが、実は平民にもその門戸は開かれている。こうなってくると身分によって問題が起こりそうだが、表向きそんなことはない。というのも設立時の国王が定めた校則には生徒の所属階級、生まれによる差異を学院内で持ち出すことを禁じる項目があるのだ。これを体現するために制服が学院側から支給されていて、生徒である限りは極力それを着用することを求められる。


「社交界なんかはドレスですよー」


「・・・ん、考える」


「あきらめてくださいよー・・・」


 そんな話をしていると扉が軽くノックされる。


「どうぞ」


 俺が答えると、扉を開いてラナが顔を出した。


「あら、よくお似合いですよ」


「・・・ありがと」


 今着ているドレスは所作やダンスを練習するためのものだ。それでも飾りが少ないなりにシンプルでかわいらしいデザインをしている。似合うと言われて嬉しくないでもない。とはいえ動きにくさを考えると微妙な気分だ。


「ビクターがお話ししたいと。服を着替え終わったら執務室まで来てください」


「ん、わかった」


 出発は明日の朝、話をするなら今の内ということだ。

 内容はきっと・・・親父だろうなぁ。


 ~★~


「いらっしゃい、まずは座って」


 ドレスからいつものシャツとスカートに着替えた俺をビクターが迎え入れてくれる。明日の準備で忙しいのか、ラナはいなかった。同じ理由でエレナもいない。


「だいぶ暑くなってきたね。はい、紅茶」


 執務室の主は水晶のグラスに飲みなれたお茶を注ぎ、壁際に取り付けられた冷却魔導具の中から氷を2つ入れて机の上におく。ちょうど自分の正面になる位置、いつもは退けられている来客用の椅子の前だ。


「ん、ありがと」


 素直に座ってグラスをとる。すっかりアイスティーのグラスが手に気持ちいい時期になってしまった。


「エレナが魔法を習得してからお屋敷では氷が使い放題で嬉しい限りだよ」


 自分も氷を2つ入れた紅茶を飲みながら幸せそうにビクターはそう呟いた。氷を作る魔導具もあるにはあるがとても高価だ。貴族家とはいえ実入りの少ないウチには置いてない。その分エレナが作った氷を冷却の魔導具に入れて保存しているのである。

 製氷の魔導具が高いのは使用する魔石が希少な氷属性だからだし、魔導カートリッジを使えばなんとかなるかな・・・。

 自分の発明品のさらなる拡張性に思い至ったので脳内のメモに書き留めておく。あとからリオリー商会に連絡をして製氷の魔導具を取り寄せてもらおう。もし失敗しても修理して置いておけば、俺たちがいない間でもたまには氷が使える。


「さて、お嬢様を呼んだのはほかでもない、オルクス伯爵と王都のお屋敷について伝えておかなければいけないことがあるからだ」


 ひとしきり2人でお茶を楽しんだ俺たちは本題に入る。

 オルクス伯爵家現当主アドニス=ララ=オルクスは俺ことアクセラ=ラナ=オルクスの生物学的な父親だ。先代伯爵との確執がもとで現在じゃ領主の仕事と収入を家宰であるビクターに投げ渡し、王都での権力を得ることに没頭している。その活動資金を調達するために奴隷商会を経営しながら。


「王都には奴隷商会が3つある。犯罪奴隷を主に扱う国営の王立刑務奴隷館、貴族御用達の高級奴隷に力を入れるシティオス商会、そして格安の奴隷から高級奴隷まで幅広くそろえるボスボン商会」


 もちろん小さい奴隷商まで含めればもっと多くあるだろう。ただ力を持った商会と言えるのはこの3つだけだそうだ。そして王立刑務奴隷館は労働刑を科された犯罪奴隷を中心的に扱うため特に後ろ暗い側面はないらしい。そもそも王命によって運営されているので、国の威信に傷がつくような商品を扱うわけにはいかない。


「シティオス商会がどこまでクリーンな組織かはわからないけど、貴族向け高級奴隷商会を名乗っているだけあって商品の扱いには注意を払っているみたいだね」


 そうか・・・「魔の森」の西側より奴隷に関しての認識が古いとはいえ、奴隷商会が全てイコール虐げる者とは限らない。昔のアピスハイムの常識で見ちゃ駄目だ。

 そもそも犯罪奴隷や身売り奴隷などは制度上なくなると困るという意見も多い。犯罪者を殺してしまってはなんの利益も回収できないし、赤貧から一家餓死寸前といった家族にとって子供を売るのは生き残るため必要な選択だ。それらの受け皿として奴隷市場は必要であり、正しく奴隷を扱える知識を持った商会というのは悪どころか善ですらあるといえる。

 ・・・諸々言いたいことがないじゃないけど。


「さて、最後のボスボン商会は複数の商会による合議制の組合のようなもので、全体で見ると幅広い奴隷売買に手を出しているんだ。身売りした子供を安く売買する商会もあれば、貴族向けに高度な教育を施した秘書候補の奴隷を売る商会もある。本当にいろいろだよ」


 ビクターは一言、ただしと言った。

 ほら、来たぞ。


「その分傘下には後ろ暗い奴隷を扱う商会もある。不当な価格で買い上げられたり支払いを踏み倒されたりした身売り奴隷や、果ては奴隷狩りによって無理やり捕らえた不法奴隷・・・当然それらは証拠のある話じゃなく噂だけど、公然の秘密と化しているという面もあるとは思う」


 不法奴隷とは奴隷狩りと呼ばれる、人間が人間を狩る異常な行為によって奴隷に落とされた者たち。原価がないに等しいため極端な安値で取引され、安いがゆえに徹底して使い潰される。多くの場合家族や村が丸ごと狩られるために被害を届け出る者も探す者もほとんどいない。奴隷の中でも最も残酷で最も忌むべき存在だ。


「私の敵はボスボン商会の中の裏商会、ね」


 エクセルは奴隷の守護者だが、奴隷をすべからく救い上げる神じゃない。無理やり奴隷にされた者や、度を超えて酷使される者を守るのが使命だ。つまり目下の標的はボスボン商会の暗部であり、必要があるなら奴隷商会を経営する父親とも連携をとる必要があるわけだ。


「・・・その、お嬢様」


 方向修正の可能性を検討し始めた俺にビクターが申し訳なさそうな、それ以上に悲しそうな顔で語りかける。


「ボスボン商会の暗部を担っているグレーテル奴隷商会こそ、オルクス伯爵の活動資金源なんだ」


「・・・」


 そう、来たか。

 いや、想像していなかったわけじゃない。というより可能性は十分にあった。それでもこの国の奴隷事情が想像していたより、俺の体験してきたより随分マシだったから・・・つい楽観的な、ある種の油断が心に生じていた。


「具体的には?」


「お嬢様、無理に聞かなくともいいんだよ?なにも今回でケリをつけられるわけじゃない。うっかり問題を起こさない程度に知識があればいいんだ」


「教えて」


 いくら使徒でもまだ9歳。そう思ってかビクターが一度切った言葉の先を、俺は要求する。どうせ実体験として一番酷い奴隷の在り方を知っているんだ。いまさら臆すことなんて何もない。それよりどこまで悪い状況なのかを知ることの方が先決だ。


「・・・はぁ、わかったよ。うちのお嬢様は言い出したら聞かないんだったね」


 あきらめたように肩をすくめるビクター。けど俺はそこまで強情じゃない。


「私が知っている、というより調べてわかったのは不確定な情報だ。それだけは念頭に置いておいてほしい」


 慎重に防衛線を張る彼の言葉に状況がどれだけ悪いのかを察した。


「まず身売り料の踏み倒しや不払いだけど、さすがに自分たちで買い取る場合はちゃんと払っているようだ。しかしまあ、そういうことをする悪質な業者からかなり買い付けているらしいし、不正な奴隷売買の温床になっているという点では情状酌量にはならないね」


 安すぎる理由には触れずに買ってくれる取引先が確保できる。その事実が身売り料を踏み倒すような奴隷商人の支えになっていることは誰にでも想像がつく。


「問題は奴隷狩りなんだけど、これは直接的にグレーテル奴隷商会が関与しているみたいだ。冒険者崩れを雇い入れて辺鄙な村を襲い、丸ごと奴隷に落としたりもするらしい」


「そんな大きなこと、よくバレないね」


 辺鄙な村といえどこの国にある以上どこかの貴族の領地。それが丸ごとなくなるような事件が起きれば領主は威信のためにも捜査せざるを得ない。1件2件ならまだ見過ごせるかもしれないが、何件も続けば税収は減るし領民からの感情も悪化するはずだ。


「グレーテル奴隷商会が狙う村はユーレントハイムの国境を出たすぐ、どの国も治めていない自由村落が多いんだ」


 自由村落というのは国や領主の傘下にない、ただ村があって人が住んでいるだけという場所だ。大陸にある居住可能地域がすべて国の監視下にあるわけじゃないので、意外と自由村落はそこら中にある。当然それらを守る者は存在せず、国の庇護下にないのだから法も彼らを擁護しない。

 あ、冒険者ギルドと教会は依頼すれば動いてくれるか・・・依頼者がいればだけど。


「国内で奴隷狩りを行うこともあるようだけど、その場合は領主もあまり保護していないような村をターゲットにするようだね」


「獣人の村?」


「まあ、そういうことだね」


 獣人は群れ意識が強くなかなか街の暮らしになじまない者が多い。街の方も上流階級になるほど獣人を忌避する傾向はこの国でもある。そんな両者の事情もあって獣人の集落というものが各地に細々と形成されている。


「でも彼らは領民でしょ?」


 いくら馴染めなかった者たちの村といっても領地にある以上領民であり、管轄とする領主はそこから税を徴収して守っているはずだ。それがなぜ自由村落と同じように狩られるのか。そんな疑問にビクターは心底苦々し気な表情を浮かべる。


「当然オルクス伯爵領やレグムント侯爵領はそこらへんを徹底しているよ。でも中には領内にある獣人の村から税だけとって放置しているような連中も、ね」


「・・・はぁ」


 結局獣人、奴隷、貴族とワードが揃えばそういう関係が出てくるわけだ。どうせここにブランクというワードが増えてもおそらくお決まりなポジションに落ち着くんだろう。


「お嬢様、こんなことを言うのは酷かもしれないけど、くれぐれも先走らないように気を付けてほしい」


 ビクターが釘を刺す。


「いきなり突撃するほど馬鹿じゃない」


「あはは・・・お嬢様がとても賢いのは重々承知しているよ。ただ、真っすぐだから少し心配になるんだ、見ていると」


 我ながら憮然とした声で返事をすると、彼は後頭部を掻きながら苦笑をこぼした。


「そう?」


「自分ではわからないかもしれないけど、お嬢様の真っすぐさは時に妥協してしまった人間の目には激痛を伴った光になる。それほど真っすぐだよ」


 妥協した者には、か。

 確かに俺という存在は妥協できずにこだわり続けて生きた結果の産物だ。そう見える部分はあるのかもしれない。


「さて、伯爵の仕事のことだけど、実はグレーテル奴隷商会にはボスボン商会の暗部以外にも仕事があってね」


 次に示されたのは新しい角度からの情報。


「才能のある奴隷に教育を与えて芸術家にするという変わった事業を行っているんだ。ついでに画商もね」


「どういうこと?」


「違法な奴隷以外にボスボン商会へ芸術家の奴隷を卸しているのさ。主な買い手は本職の芸術家で、用途は弟子兼助手が多いようだ。貴族に買われて専属の絵描きとして使われる場合もある」


「わざわざ教育を?」


「当然才能のある奴隷を選抜してのことだけど、しっかり専門の教育を受けさせているみたいだよ」


「どうして?」


 当然だが教育には時間、お金、人材・・・とにかくコストがかかる。それも芸術となれば一般的な教養に比べて教えられる者が少ない分余計に面倒だろう。今まで聞く限りのオルクス伯爵がそんな手間をかけるとは思えなかった。


「オルクス伯爵は、意外かもしれないけどかなりな文化人なんだ」


 保護されない村を襲って生み出した奴隷で儲ける奴が文化人とは、なかなか皮肉が効いている。全く面白いとは思わないが。


「いや、本当に。芸術、とくに絵画にはとても造詣が深いし審美眼も優れている。本人も画家としてかなりな腕前を持っているしね」


 ビクターが眉間にしわを寄せて微笑む。それはこれから反旗を翻す主人に対して向けるにはあまりにも優しい表情だ。


「ビクター、前から聞きたかったことがある」


「なんだい?まあ、おおよその予想はつくけど」


 オルクス伯爵の文化人説よりも俺が気になること。それは伯爵と家宰の間で取り交わされた領地をめぐる密約の文書を見たときから意識の片隅とどまっていたことだ。それを俺は単刀直入に言葉にする。


「ビクター=ララ=マクミレッツとアドニス=ララ=オルクス。2人は私とエレナのような関係?」


 ユーレントハイム王国でミドルネームには母親の名前が使われる。そして子供が貴族であればそれは実母じゃなく乳母の名前となる。つまり貴族とその周辺の誰かが同じミドルネームを持っているということは、その者たちが乳兄弟であるという意味だ。


「さすがにすぐ分かっちゃうか・・・そう、私はアドニスの乳兄弟なんだ」


 誤魔化すこともなく、ビクターはあっさり頷いた。ビクターの母、つまりエレナの祖母が伯爵の乳母だったのだ。代々お家の結束を高めるために家宰を継ぐマクミレッツ家の奥方が主家の乳母を務める、というようなしきたりでもあるのか。


「・・・つらくない?」


「お嬢様は優しいね。けど大丈夫。もう決断したから」


 ビクターの心が決まっていることは知っていた。尋ねなくとも分かっていた。それでも彼は伯爵について語るとき、決まって寂しさと懐かしさを含んだ優しく切ない表情を浮かべる。まだ家族としての情が残っているんだろう。

 もし俺がエレナと敵対しなければいけなくなったら、どんな気分になるだろう。そのとき、俺は・・・。

 全く想像もつかない疑問が心に生じた。だが当のビクターはそれ以上この話を広げるつもりはないらしく、2杯目のアイスティーをそれぞれのグラスに注いで話題を引き戻す。


「伯爵は書類上グレーテル奴隷商会に出資しているだけでそれ以上の付き合いはない。商会の方も表向きは格安奴隷と芸術関係の中価格奴隷、芸術品そのものの商いしかしていないんだよ。お上の手が入らない程度にはどちらも周到に自分たちの行いを隠しているんだ」


「切り崩すのはかなり難しい?」


「正直かなりな難易度だと思う。なので今回はとりあえず実際に伯爵を見てお嬢様がどう思うかを確かめる意味合いが強いかな」


 懐柔できるかどうか、という段階は過ぎている。どう切り崩すか、あるいは最悪物理的に斬り捨てることも念頭に置いた考える材料集めになる。


「向こうのお屋敷の従業員はほとんどが伯爵のイエスマン、あるいは事なかれ主義の一般的な使用人だ。こちらから連れていく人員がいる以上お嬢様の身の回りの世話なんかに面倒な連中が噛んでくることはないと思うけど、もしなにか言われるようなら年配の侍女を頼ってごらん」


 王都の屋敷はオルクスともレグムントともつながりの薄い人員で固められており、しかもスキル至上主義者が多い伯爵好みの構成になっている。それでもいくらか古参の者もいて、年嵩の侍女などがそれに当たるのだそうな。


「あとは向こうの執事頭ホランがなんとかしてくれるよ」


 執事頭といえば王都の屋敷じゃ家宰のような役割を担う立場のはず。それが味方というのはいくらビクターの言葉でも疑わしく思える。そんな俺の内心をこの鉄面皮から読み取ったのか、彼はくすりと笑った。


「いぶかるのも当然だね。けど大丈夫、ホランはラナの実家の関係者なんだ」


 ラナの実家といえばレグムント侯爵領に居を構える大店だったか。

 というかビクターもさらっと俺の表情が読めるようになってる・・・。


「正しくはラナの実家が王都に出している分店の支配人の三男さ。遠い親戚でもあるけどね。頭は切れるし性格もよく、スキルにも恵まれているけどなにせ三男だから行くあてに困っていたんだ。だから裏から手を回してもぐりこんでもらったというわけさ。ホランは手堅く高収入な仕事につけて、私は内情を探れる間者が手に入ると思ってね」


 笑顔でさらっと恐ろしいことを言うビクター。

 やっぱりこの男、かなり黒い。


「執事頭まで上り詰めたのは彼自身の才覚だよ、言っておくと」


 付け足すように言ったビクターの表情に嘘の気配はない。そもそも彼はそこまでの権力を王都の屋敷に持っていないか。


「執事頭のホラン、覚えておく」


「うん、一応後で手紙を渡すよ」


 今日伝えたいことはそれだけだったのか、彼は残りのお茶を一気に呷って手を打ち合わせた。


「王都そのものについてはイザベルにまとめた文書を渡しておくから、道中ゆっくり読んでごらん。もちろん観光名所も書いておくからね」


「ん、わかった」


 オルクス伯爵領の領都ケイサルから王都まではおよそ6日ほど、十分勉強する時間はある。


「ん、お茶ありがと」


「準備は忘れ物のないようにね」


「お母さんっぽい」


「お父さんだけどね」


 反乱の直前とは思えないようなほのぼのとしたやり取りで俺たちの打ち合わせは締めくくられた。


スズメバチって怖いですよね。

家の前の斜面に穴を掘ってオオスズメバチが巣をつくっていました。

市役所にお願いしたら即日対処してくれましたが、愛犬が刺されないか心配しましたね><


それとご報告です。

この作品のタグから「主人公最強」を削り、新たに「主人公、つよめ」を付けました。

理由としてはアクセラが現段階で全く最強ではなく、また今後最強まで至るか不明であるなどがあります。

この世界、人類が強すぎるからね・・・(笑)


~予告~

コルセットによる絞殺・・・。

それは凄惨なる事件の預言でしかなかった。

次回、真実はわりと数ある場合があってだな


アクセラ 「長い」

ビクター 「まあまあ、ちょっと昔の流行を入れたかったんだよ、きっと」

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