三章 第15話 第一の発明
「災いの果樹園」にて発見したシュリルソーン系の群生地攻略がある程度進んだ頃、俺たちはようやく完成させた商品の見本を持ってリオリー宝飾店を訪れていた。もちろん今回は冒険者としてではないので鎧無しの私服姿、移動も馬車。装備といえば最低限ベルトに魔法杖を挿しているくらいだ。出かけに一度意識が飛びそうな眠気に襲われて聖魔法を使ったため、頭はやけにすっきりしている。
「おお、お待ちしていましたよ!どうぞこちらに」
本当に心待ちにしてくれていたのだろう。店主のマイルズ=リオリー本人が真っ先に店先までやってきて奥へと案内してくれた。今回はアポイントメントをとったのが効いたらしい。普段からとるべきな気もするが、そうしないことでとった時は今回のように重要性を察してもらえる。そういう考えもあっての事だ。
「さて」
マイルズが期待に満ち満ちた声を俺たちにかけた。いつもの応接室にいつもの紅茶といつものお茶請けを並べ終わった店員たちはマイルズ1人を残して退室している。室内には俺たち3人と護衛の女騎士リベラが居るのみ。そのリベラにしてもソファーの背後でただ立っているだけだ。
「ん、試作品ができた」
「一応自信作です」
「素晴らしいです!」
まだ試作品を箱から出してもいないんだが。
「お2人が自信作だと言うなら素晴らしいに決まっています!私はそう確信してお2人にこの仕事をお願い申し上げたわけなのですから!」
今日の彼は一段とテンションが高い。
まあ、俺も発注していた新作の魔導具が届いたとなれば似たような状態になるか。
「まずはどちらから見せていただけるのですか?」
商売と言う事を本当に覚えているのかとツッコみたくなるような嬉しそうな顔で尋ねてくる。
「私から。私が作った物はエレナの作品にも関係あるから」
「ほうほうほう、それぞれ別の物をお作りになったのに連動した部分まであるのですね?興奮で倒れてしまいそうですよ!」
マイルズは相変わらずの技術オタクというか、人の事を言えた立場じゃないが、あえて言うなら変態だな。
脳内で盛大なブーメランを投げつつ、テーブルの上に置かれた木箱に手をかける。穴でも開きそうなほど凝視してくるマイルズの前で蓋を開けて中から3つの品物を取り出し、空になった箱を横に退けた。
「これが改良を施された魔導具ですか?」
「というより半分ほど新開発」
「新開発!!」
出会ったときに見せた商売の駆け引きを知り尽くしたような雰囲気はどこに行ったのだろう、この男。
「これは開発した物に合わせただけ。ただの飲料水をつくる魔導具」
1つ目に取りだした赤子ほどの大きさの魔導具を示す。そこそこ高いが裕福な商人くらいになれば馬車に積んで置ける値段だ。もちろん経費から引き落とした。保温の魔導具を解雇したのは時間がかかりすぎるのと熱いからだ。あの時監視をお願いしたリベラから苦情をいただいたのだ。
「こっちの2つは基本的に同じ物」
取り出した残りの2つは俺が取り組んでいた魔導カートリッジの完成品。片方は土と風属性、もう片方は火と水属性の魔石を砕いて詰めてある。ただし見た目はどちらも指1本分の銀の筒。
「これは魔導カートリッジ。魔石の代わりに動力として使える」
「魔石の代替エネルギーですか!?」
今のところ誰も想像さえしてこなかった新資源かと目を見開くマイルズ。だが残念ながらそうではない。
「ちがう。中身は魔石」
「魔石の代わりになる魔石……?」
「言い方が悪かった。普通に使う魔石の代わりに使用できる物」
それから俺は説明した。魔導カートリッジにはどんな細かな魔石やその欠片でも使用できること、反対属性を同量入れることで中和された無属性の魔力が得られること、できるだけ細かく均等に混ぜることで残存魔力をほとんど出さずに使えること。それらの事実を列挙するだけで意味するところを理解できる人物だと信じて淡々と。
「つまり……この発明を使えば今まで使い道のほとんどなかった小さな魔石でも、集めれば同質量の大きな魔石と同じ価値を持つということですか!」
そこ止まりかな?と俺が思うよりも早く、目をカッと見開いて彼は叫んだ。
「いや、違う!違いますね!?これはむしろ逆なんです!」
「ん」
「2つの属性を掛け合わせて属性を消すということはどの魔導具にも使えるということです。しかし大きな魔石では均等に混ぜ合わせることはできない。エネルギー源としてはむしろ細かい魔石の方が重要になってくるではありませんか!」
「魔導具側がカートリッジに対応していないと使えないけど」
既存の魔導具を対応させるのはなかなか難しい。今日持ち込んだ試作品の魔導具も安定したパフォーマンスで作動する代物を作るのはなかなか大変だったのだ。技術の蓄積ができて来れば改造を請け負うこともできるかもしれないが。
「なるほど、それで新ブランドを立ち上げようとしている今がちょうどいいと」
「ん」
リオリー魔法店で取り扱う魔導具は全て魔導カートリッジ式にする。そして魔導カートリッジを在庫切れにならないよう大量に用意する。
魔導カートリッジに必要な魔石はタダ同然なので、既存品に使用される動力源の魔石よりトータルのコストは安い。いっそカートリッジ自体は劣化するまで同じ物を使ってもらって、中に入れる魔石の配合と量り売りを行うのもいいかもしれない。
「なるほど!たしかにスタートダッシュの今だからこそこれを導入できれば商機はとてつもなく大きい物になりますね。なにより新しい価値を生み出すというのは商売人としてとても心の踊る取り組みですよ!」
マイルズの興奮に歯止めが効かなくなってきている。
「しかし制作のコストはいかほどになりますか?」
「内部の導線や魔力を吸いだす機構はほぼ既存品と同じでいける。最適化の研究はそちらでしてほしい。筒に関しては回収式にするなら弱くてもいい。充填式なら頑丈な方がいいけど、数はいらない」
魔石の配合比率は理論上1:1以外ありえない。あとは魔石の大きさをどうするかだが、そこもリオリー商会側で研究を重ねていただけるとありがたい。
「とりあえず実演してみる」
「ええ、お願いします」
まず先にカートリッジを開けて中の魔石を見せる。緑と茶色の斑模様だ。
「このカートリッジは風と土の魔石なのですね」
「ん」
魔導カートリッジを給水魔導具にセットする。そして自分の紅茶を飲みほし、そのコップに水を注ぐ。
「おお、本当に別属性で動くのですね」
「一応出せる水の量も確認する?」
「ええ、是非」
そんなわけでエレナに頼んで魔導具からあふれ出る水を全て空中に水球として集めてもらう。携帯型の給水魔導具は設置型の物より非効率だが、それでもカートリッジ1つ分となると溜めて置ける器がすぐには用意できない量になる。
「ん……もう魔力切れたみたい」
しばらくして空中に人1人がすっぽり入れるくらいの水が溜まった。
「アクセラちゃん、これどうすればいいの……?」
「えっと……分けて凍らせる?」
そこはちゃんと考えていなかった。
エレナの氷魔法で一抱えほどの氷に分割し、マイルズが呼んでくれた店員たちに運び出してもらう。別に欲しくもないので食べ物を冷やすなり、砕いて手足を冷やすなり好きに使っていいと言うと喜ばれた。
「えっと、もう片方も試す?」
「いえ、すでに実験されていらっしゃるのでしょう?」
「ん」
持ってくる前に当然テストはした。風と土でも水と火でも中和されて出力される魔力の量は変わらない。なのでどの属性のカートリッジをとりつけても魔導具は同じ時間、同じ量の仕事をこなしてくれる。
「ああ、素晴らしいですね!やはり素晴らしかったです!是非とも採用させてください。むしろこれを基幹技術としたいです!」
「ありがと」
そこまで喜んでもらえるとこちらも作った甲斐があったというもの。それにこれで晴れて大手を振って給料がもらえる。自分で言いだしたこととはいえ、給料がある安定感を放棄し続けているのは楽しい状況ではなかった。特に先日のリハイドレーターの件で思いのほかビクターの食いつきがよかったせいで、俺の思っている以上に伯爵家の財政がよろしくなさそうなことに察しがついてからは。
「次はエレナの番」
俺が自分の試作品を箱にしまってエレナに促すと、彼女も覚悟を決めた様子で箱を開いた。中から取り出されたのは俺の時と同じく3つのアイテム。1つはすでにおなじみ魔導カートリッジ。ただし大きさがかなり小さい。そしてあとの2つは一見するとただのペンと紙だ。
「これはどういった魔導具なんでしょうか?」
見た目があまりにも普通すぎるため、マイルズもどうコメントしていいのかわからなさそうに尋ねる。
「えっと、名前は連写魔導筆です。紙の方はただ専用用紙としか呼んでません」
「連写魔導筆ですか。魔導筆というと魔法に使用する特殊な文様を記入するための筆ですね?万年筆型とは珍しい」
安上がりな羽ペンの方が主流ではあるが、万年筆というのも広く普及した筆記用具ではある。ただ万年筆の形をした魔導具となるとおそらく存在しない。そもそも筆記用具を魔導具にする必要性自体があまりないのだ。
「この連写魔導筆はそういう意味での魔導筆ではないんです。いえ、正しくはそれを兼ねられるように目指したんですが、出来上がったのは所謂魔導筆ではなくて……」
俺からすれば十分画期的な発明品であるこのアイテムだが、エレナとしては目指した性能が得られなかった不完全品という扱いらしい。
「この魔導具には火魔法の仕組みが組み込んであるんです。動力はアクセラちゃんの魔導カートリッジを専用に小型化したもので、インクも専用の特殊インクです」
「なるほど。しかしそれで具体的に何を書く道具なんでしょうか?」
「書類です」
「……書類?」
ピンとこないという顔でマイルズが首をかしげる。書類を書くための筆記道具ではただの筆記道具だ。そう言いた気な雰囲気だ。
「エレナ、まとめて言った方がいい」
「あ、そ、そうだね。すみません、思ったより緊張してて……」
あのエレナでも自分が作った魔導具を依頼人にプレゼンテーションするのは緊張するらしい。意外と可愛らしいところもあるもんだ。いや、エレナは最高に可愛いのだが、こう、しっかりしすぎていて可愛げに乏しい側面がある。
「こ、これは何枚も同じ物を書かなければいけない時に使用する魔導具でして、専用の紙であれば一番上に書いた内容を重ねた下の紙にもそのまま書くことができるんです。正しくは1番上の紙だけがインクで記入され、その下の紙には魔法による焼き付けがされる仕組みになっています」
「ほうほうほう!それは非常に面白いですね!」
つまりこの魔導具は何枚も何枚も同じ文書を書かなければいけない状況で、1枚1枚書いていく手間を取り払って一気に何枚も書けるようにしてくれるのだ。使えるのは専用の用紙だけだがその価値は絶大。なにせ王宮や貴族に使える文官たちは日々同じような書式の報告書を読む人物の分だけ作ったり、全く同じ内容の通達を山ほどの枚数書かされるのだ。そこにこれを持ちこめば全く同じ文書は1回で済むようになり、ほとんど同じな物は違う部分だけ個別に書けばいい。
しかもそれだけではない。本が高価な理由は1冊ずつ手書きで筆写されるからなのだから、これがあればより短期間で安価に、多くの写本を作ることができる。
「インクに細かく砕いた火の魔石を使っているので、そこまでコストカットはできないんです。それに1枚目はまだしも、2枚目以降はただの焦げ跡なので魔法の紋様には使えないですし、色々不完全なところが多いんですが」
申し訳なさそうにそう言うエレナだが、粉にした魔石でいいということは俺のカートリッジと同じでタダ同然の屑石でも使えるのだ。それに魔法に使う紋様を大量生産する状況自体あまりないし、ない方がいい。基本的に紋様を使う魔法は複雑な設置式、つまり戦争でトラップとして使う物なのだから。
彼女が主張する欠点を考慮してみても、画期的を通り越して革命的な便利道具なのだ。試作品を贈られたビクターなどは1日使ってみて、あまりの便利さにエレナを抱き上げて執務室でくるくると踊ったらしい。
「ああ、もし王宮にこれを売り込めたなら……それだけで王都での店の地位は盤石になりますし、この領地の名誉回復にも大きく貢献できます!しかも魔導カートリッジのこれ以上ない宣伝にもなるでしょう!ああ、今から5年後が楽しみで仕方がありませんよ、この2つの発明は!!」
興奮で爆発してしまいそうなほどテンションが上昇しだすマイルズ。熱い物を胸に秘めているのはいいのだが、多少は制御してほしいところだ。
「でもこの専用用紙以外に書くと火魔法が効きすぎて焼けこげたり、最悪机の表面まで印字されますから……」
「注意喚起が必要なわけですな。その専用の紙の製法とコストも気になりますね。できればアクセラお嬢様の魔導カートリッジ共々専門の研究実験部署を設立して低コスト化と汎用化を図りたいところです」
「そこら辺は全部任せる。開発部門の職員として受けた仕事だから、全てのデータは提供する。所有もそちら側」
そう伝えると彼はホッと息を吐く。
「ギリギリになってそこをゴネ始める工房というのは意外とあるので、そう言っていただけると本当に助かります」
あれだけの好条件からさらにゴネるなんて一体どんな業突く張りだ。少なくとも相当な守銭奴と罵られるのは避けようがないだろう。
「お金は欲しいけど、執着するべきではない」
「いやはや、金言ですな」
昔のアピスハイムのギルマスが聞いたらどの口が言っているのかと怒鳴りそうだが。
いや、あれは金に執着していたのではないのだ。実際金離れは昔の方がいいくらいだし。ただ、稼げるとみれば真っ先に食いついて離さなかっただけで。
「2つとも採用?」
「もちろんですとも!きっちり手当を振り込ませていただきます。売り上げ報酬は5年後ですが、このマイルズ=リオリーが保証いたしましょう。絶対に良い結果をご報告させていただくと!」
「期待してる」
「お任せください!」
そんなわけで俺とエレナの開発した魔導具は共に正式採用となった。マイルズが責任者なので、彼がいいと言えばその時点で正式採用なのだ。
「商品はできるだけカートリッジに対応させて」
「ええ、そうしないと魅力が半減ですからね」
どの魔導具にも同じ規格のカートリッジが使えるというのがメリットなのだから当然だ。
「試作品は置いていく。あとこれが資料」
テーブルの下に置いていた鞄から紙束を取り出す。
「これは……」
「ん、早速使ってみた」
それは全てエレナの発明した連写魔導筆によって専用紙に書かれた物だった。俺たちが保管する分、マイルズに渡す分、そしてそれぞれの予備を全て手書きするのは大変だ。それならデモンストレーションも兼ねて使ってみたほうがいいと思ったのだ。
「ははー、これは綺麗に焼き付けられていますね。しかも裏は焦げてはいない……おや、表面をこすっても煤が紙を汚さないのですね?これは面白い!」
いいけどわざわざ大切な報告書で試さないでほしい。折角あげたのだから試作品でやってくれ。
一通り感心し終えたマイルズは次に資料を読み始める。俺は氷の搬出の際に淹れ直してもらった紅茶を飲んで待つ。
「ほぅ……」
斜め読み程度だろうが、予想よりはるかに早く読み終わった彼は息を零した。
「まさしく「技術」の真骨頂ですね、これは」
興奮が行くところまで行ってしまったのか、やけに落ち着いた声で彼はそう言った。
「魔法を使ったとはいえ、こう言っては失礼かもしれませんが、加工は子供の手で試作できる難易度。それなのにこれほど革新的で便利で面白いとは……お2人にお願いしようと思ったあの日の私にご褒美を持って行ってやりたいくらいです」
そろそろ彼のオーバーな表現には慣れてきたので適当に微笑んでお茶を啜る。
「では、この2つを本店の方の職人連中へと送らせていただきます。きっと大混乱ですよ」
彼はえらく嬉しそうに人の悪い笑みを浮かべた。
「技術を学んだ人材というのはこの国では希少でして、レグムント侯爵閣下が少し取り組んでおられる以外はほとんどさっぱりですから。この2つを見ればきっと大いに刺激されてくれることでしょう」
腕自体は歴史あるリオリー宝飾店が抱え込んでいるだけあって信頼できるらしいので、きっといい技術者になってくれるだろう。俺も期待しておく。
「いやー、今日は想像していたよりもさらに素晴らしい物を見せていただけて、本当によかったです」
商売の話が終わりを迎えたことでマイルズは満足そうに笑った。そこで思い出したように自分の紅茶に口をつけ、茶菓子を頬張る。
「次の開発に必要な物があれば何でもおっしゃってください。すぐに揃えさせていただきますから」
何の気ないその言葉に、俺はふといいことを思いついた。
今はまだ宝飾店以外の業務を持っていないリオリー商会だが、そのコネ自体はかなり強力らしい。試作品のアイデアになればと最初にもらった魔導具や魔法使い用の品をよく見てみれば結構珍しい物が混じっていた。インスピレーションのためだけにあれほどの数を揃えられるのは商売人として顔が利くからだと考えるのが自然だ。
「開発に関係ない物でも取り寄せてもらえる?」
「関係ない物ですか?ええ、お代はいただきますが手に入る物なら揃えさせていただきますが」
突然の質問にも当然のように答えが返ってくる。今回の件とギルドでの依頼のおかげでそこそこ手持ちが増えたので、かねてよりどうしても買いたかった物を買う決心ができた。俺の魂ともいうべきものであり、難航するシュリルソーン系の核切断には欠かせないアレを。
「刀を取り寄せてほしい」
「刀というと、エクセララの剣士たちが使う珍しい剣でしたね。どうしてまた?」
「あれは普通の剣と使い方が違う。私はあっちの方が使いやすい」
それ以上の事は何も言わない。マイルズも冒険者に手の内を聞くのはマナー違反ということくらい知っているのだろう、追及はなかった。
「使うとなると、美術品としてではなく実用性の高い物をということですね。おそらく手に入ることは入りますが……どのような刀が手に入るかまでは」
「別にいい。エクセララ製でそこそこの品質なら素材も拵えも気にしない」
「それならば3週間ほどで手に入りそうですね。以前お話したエクセララとの貿易をしている私の師が今でも少量扱っているはずですから」
てっきり半年くらいはかかるかと思っていたら、3週間とは。それでは今使っている鋼のショートソードが勿体ないな。といってもすでに相当無茶な使い方をしているせいで刃こぼれが目立ってきているのだが。
生前なら剣でもあの複雑な核を軽く一刀両断できたはず。それを思えば刃こぼれだらけにしてしまう今の腕が本当に腹立たしい。当然腕の低さを道具で補うのは趣味じゃないが、しかし刀の勘を取り戻すことが腕のさび落としには近道だと思う。
納得できるかといえばしかねる判断だ。それでも昔のような時間の余裕はないかもしれない。剣でも訓練していられたのは師匠という圧倒的な存在が守っていてくれたからだと、今ならわかる。形容しがたい焦りのようなものが俺の心に溜まっていた。
「急がなくても大丈夫」
口から心と反対の言葉が出る。
「かしこまりました」
マイルズからも、思っていることと真逆だろう言葉が出てきた。彼の口元は悪戯を企む子供のように笑っている。これなら3週間で本当に刀が手に入りそうだ。
「よろしく」
念を押すようにそう言った俺の口の中で、うっすらと血の味がした。
活動報告では言ったんですが、こちらではまだだったので。
作って放置していたTwitterアカウントを発掘、再稼働させました。
といっても全然使い方が分からないわ、言いたいこともないわ・・・
たまに活動報告じみたことをしようかな程度に思っています。
もし興味を持っていただければ作者のマイページ下部からどうぞ('◇')ゞ
~予告~
マイルズは拳を握りしめた。
かならずこの魔道具を世に広めなければならないと。
次回、走れマイルズ
マイルズ 「え・・・え?」
アクセラ 「気にしなくていい。どうせ時間切れで雑なこと言っただけ」




