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九章 第5話 ヴィア先生とベサニア先生

「このように魔法はスキルがないと発動すら一苦労なものです」


 長広舌をぶったあとに『短縮詠唱』で水球を発生させ、私は練習場に集った生徒たちへ改めて言う。


「もちろんスキルがなくとも発動できますし、努力と練習を積み重ねていけばより自由な使い方もできるでしょう。そのことは先生のクラスの皆さんなら知っている人も多いですよね?」


 練習着を身に纏って杖を弄っているエレナさんを見る。担任の私が逆に魔法を教えてもらっている規格外すぎる生徒の一人だ。桁外れな、具体的に言うとスキルに頼らず複数属性の魔法を同時発動してみせるような才能の持ち主。やはり知っている生徒も多かったようで小さく頷く子がちらほらいる。


「でもやっぱり先生はまず先にスキルを一つとることをお勧めします。スキルを通じてコツを覚えていくのがいいと思うからです」


 左手を上げて集中し、スキルを使わずウォーターボールを発動させる。右手の上に浮かべたスキルの水球を見ながらだとすごくスムーズに出来上がった。詠唱なしの魔法発動に一部の生徒からは驚きの声が上がるが、私は仕上がりに些かの不満があるレベルだ。


「いま先生はスキルで出した魔法を見ながらイメージを固め、それから魔法を自力で発動させました。再現度は8割といったところですが、半年の成果としては悪くないと思いませんか?」


「半年だって」


「そりゃ先生は魔法のレベル高いし……」


 ひそひそと聞こえる言葉に苦笑が浮かぶ。きっと一年前なら私も同じことを言ったのだろう。でもこのクラスの生徒はみんな、もう魔法が使えるかその一歩手前といった状態だ。自分たちが思っているほど道のりは遠くない。


「スキルが使えればイメージを作りやすいですし、年季があるほど水魔法の動きに精通することができます。その方が自由は当然効きますよね」


「先生、質問です」


「はい、アイナさん」


 薄水色の髪の女子生徒をあてる。


「スキルに頼らない魔法の方が自由だと言われましたが、その部分に労力を割くよりスキルレベルを上げた方がいいのではないでしょうか。効率的でないと思います」


 ええ、そうですね。その指摘は全くもって正しいものです。


「どちらを取るかは一長一短だと先生は思います。スキルによる発動は安定していて一度習得すると失敗は基本的にしませんから」


 アクセラさんとエレナさんのやり取りを見ていて常々思わされるのは、どちらが優れているかを考えるのは不毛だということだ。性質の違うものが2つあるとして、一番建設的なことは使い分けについてだと思う。


「このいわゆる技術的な魔法は鍛錬を重ねることで、本来自分の発動できない規模の魔法が使えます。たとえばA、B、Cという目的を達成したいときに適する魔法がA、B、C、Dのことを行う魔法だったとします」


「はい」


「これとは別にCの目的を達成するには魔法に頼らない、より簡単な方法があったとしましょう」


 既存の魔法を使えばAからDまで全てをカバーすることができるわけです。


「もし技術的な魔法によってこの魔法のA、Bを達成する部分だけ独立して使えばどうなりますか?」


「えっと、A、Bを魔法でこなしてCを別の方法でするってことですか?」


「そういう選択肢ができてくるでしょうね」


「でも意味があるんですか?既存の魔法一回でできるならいいんじゃないかなと思うんですけど」


 アイナさんの質問を受けて私はアクセラさんとの問答を思い出す。技術の根幹は悩み、考え、別の手段を思いつくことにある。思考の幅そのものが技術の神髄なのだと。


「ではここに状況を加えて見ましょう。例えば旅の途中で魔物に襲われてしまった、あるいは領軍の作戦で戦闘しているなど魔力の温存が必要だったら、どうしますか?」


 貴族がほとんどを占めるこの学院でそうした状況は起こり得る事柄。だからこそ戦う術も学院で教わるのだ。


「CとDまで魔法を割り当てるよりいいと思いませんか?」


「それは、そうですけど」


 言葉遊びに惑わされているようで今一つ納得ができないらしいアイナさんは、眉根を寄せたまま首を傾げる。


「アイナさんが疑問に思う通り、今あげた状況は極めて特殊です。つまり限定的な状況で使い勝手の良い応用ができるのが技術なんです」


「ではやっぱりスキルを上げる方がよくないですか?」


「ところがですね、先生は水魔法をかなり上級まで使えるんですが……正直使い所はこっちもそうないんですよ」


 大勢が驚いた顔になる。それも仕方のない事だ。上級魔法、最上級魔法は憧れの的で一種神聖視すらされている。それが学生ともなればいよいよ。だというのに使える人間が「イマイチ使えないよ」と言ってしまえば、彼ら彼女らとしては困惑するしかない。

 でも残念ながら事実なんですよね。


「格の高い魔法なんてそもそも使いどころが多い、汎用性のあるものではありませんよ。規模が大きいだけに小回りは利きませんし、魔力消費が多くて詠唱時間も長いですから」


 その点、『詠唱短縮』をとってから発動する初級魔法は手数が補えて応用も利かせやすい。


「なのでどちらが優れているかではなく、どちらが自分に合っているかを考えた方がいいと思いますよ」


「……わかりました」


 頷くアイナさんに微笑みかけてから、いい加減に疲れてきたので両手の魔法を練習場の端に投げる。着弾したウォーターボールは弾けて一帯を濡らした。するとちょうどのタイミングで学院の一番高いところに据えられた黄金の鐘が鳴り始める。今日の授業はこれでお仕舞だ。


「もう一度言いますが、まずは一つのスキルを取得することが最善です。どちらを選ぶにしてもそれからですからね」


 初級魔法を使えるとあらゆる面で一つの余裕ができる。


「さーて、今日はここまでです。来週でもう授業開始から半月、遠征企画まで二週間です。戦闘を伴う課題が出る可能性もありますから、先生もビシバシ教えますよ!」


 やる気に溢れていたり疲労感を帯びていたり、思い思いの返事を聞きながら私は生徒たちを見送る。それから練習用に溜めておいた水を大きな桶から抜いて植え込みの方へ散らす。こんな風に水を魔法で操作できるようになったのもここ半年のことだ。

 偉そうに言ってますけど……私、どれだけ杓子定規に魔法を使ってたんでしょうね。

 そんな思いを抱えながら後片付けを終えて教員用の更衣室へ向かい、服を着替えてから図書館へ向かう。どうせ今晩は水魔法の授業の評価シートを作ったり明日のホームルームの資料をおさらいしたりと仕事が山積みだから、自分の勉強を先にしたいのだ。そのつもりでノートは最初から持って来ている。


「あら、お疲れ様です。ヴィヴィアン先生」


「あ、べ、ベサニア先生」


 重厚な扉を潜ったところで図書館の主と出会ってしまう。高齢のため銀灰色になった髪をひっつめにした背の低い女性。といっても私よりは高いのだが。三角形の眼鏡をかけていかにも教養深くキツい性格をしたオールドミスといった風情。

 何も間違ってないですけど!


「はぁ、ヴィヴィアン先生。私はもう教師ではありませんよ。貴女がそんなことだから生徒たちも私を殊更に恐れるのです。お止めなさい」


 キリッとした声で咎められても、恐れられているのは実際恐ろしいからではないかとしか思えない。なにせこの方は私の学院時代の担任であり、今現役で活躍する貴族たちの多くにとってもそうだった人。そしてこれからも大勢の生徒にとって大切な教訓と畏怖を教え込んでいく人だ。


「す、すみません」


「まったく、ドーニゲットといい貴女といい」


 口を真一文字に結ぶベサニア女史。しかし彼女はすぐ穏やかな光を目に浮かべて小さく微笑んだ。ことに口うるさく振る舞ったのも彼女なりのジョークなのだろう。学生時代の叱られた経験がフラッシュバックしてこちらは心臓がバクバクだ。ときどきそういうお茶目をする人だった、昔から。


「今日も例の女生徒に教えるのですか?面倒見が良いのは素晴らしいことですが、一人の生徒に肩入れしていると思われないよう振る舞いなさい」


 随分柔らかくなった声で注意をされる。例の生徒とはエレナさんのことだ。


「あ、あはは……お恥ずかしいのですが、実は先生が習う方なのです」


 この図書館の中では私が生徒でエレナさんが魔法の先生。技術による魔法の可能性をアクセラさんに示された私はいつの間にかエレナさんの弟子にも似た状態に落ち着いているのだ。最近はアクセラさんと言葉を交わした記憶自体がほぼない。


「あら」


 驚いたような顔になるベサニア女史。彼女がそういう表情を浮かべるのは珍しいことだった。


「そうだったのですか」


 自他ともに厳格な性格で知られる彼女は、しかし私の不甲斐ない告白を聞いても怒ることはなかった。


「よかったですね、ヴィヴィアン」


「え?」


「生徒から何かを学べる教師はよい教師になれますよ。己の幸運を噛み締めなさい」


 言われて思い出す。ベサニア女史は、私の恩師は貴婦人然とした姿からは想像もつかないほど多芸だ。料理に詩作に手芸などはもちろんのこと、この見た目で剣舞も球技も道具弄りまでもやってのける。その全てが教師として生きるうちに、生徒と関わりながら身に付けたものだということを私は知っていた。

 そうか、私は先生と同じ道を歩けているんだ。

 そう思うと少し体が軽くなる。我知らず微笑みを浮かべてベサニア女史の顔を見た私は、そこに珍しく悪戯っぽい表情を見つけてしまった。


「それに「先生」ですか」


「あっ」


 つい生徒にしているように自分のことを先生と言ってしまった。教師相手には、特に自分の担任だった大先輩を前にしては恥ずかしすぎるミスだ。


「あ、あう、あう!」


 顔が熱くなる。爆発しそうだった。


「ふふ、だめね。私がいつまでも自分で貴女を生徒扱いしていたのでは。さあ、お行きなさい」


 ありがたいことにそこを深堀するような人ではなく、雑談を切り上げてベサニア先生は立ち去ってくれた。もしかして彼女は私が根を詰めていると思って声を掛けてくれたのだろうか。

 かなわないなぁ。

 本棚の森に消えていく濃紺のシャツに頭を下げてから個室タイプの自習室がある方へ向かう。利用状況は5割くらいか。利用者が名前と時間を描き込むために設置された帳面を覗き込む。明らかに書かれている名前と部屋の数が一致していないのは、この帳面の存在をみんな忘れるからだ。


「まあ、先生が……私が学生の頃からそうなんですけどね」


 独り言から一人称を直していこう。

 そんな虚しい決意をしながらエレナさんの待つ個室を叩く。すぐに扉は開いて蜂蜜色の髪をした少女が迎え入れてくれた。ふわりと嗅ぎ慣れたハーブの香りがするのは、着替えのときに市販の制汗剤を使っているからか。


「お疲れ様です、先生」


「ごめんなさい、待たせてしまいましたね。エレナさん」


「いえいえ!わたしも今部屋に入ったばっかりですから」


 柔らかく笑う少女はその実、私より知識と発想に富んだ魔法使い。彼女を前にしているとどうしても学生だった頃のようにワクワクしてしまう自分に気づかされる。それでもまったく改めようという気にはならなくて、むしろ少しでも長くその常識外れな思考を聞いていたくなってしまう。

 さあ、今日も魔法の探求だ。


 ~★~


「はぁ……」


 大きく息を吐く。背筋を伸ばし腹筋を広げる。意識的に骨格を動かして肺の容積を変え、構造的に体内の空気を調節する。残量は2割前後のイメージだ。


「すぅ……」


 ゆっくりと大量の息を吸う。肋骨を開いて肺へ新鮮な空気を流し込む。この世界でもっとも潤沢なリソースを俺という小さな世界に取り入れる。


「はぁ……」


 空気に含まれた酸素も魔力も逃がさない。吐きだす息は空虚で、吸ったときより随分減っていることを脳裏に描きだす。


「すぅ……」


 俺という体は今や一つの炉だ。一呼吸で取り入れたものは一呼吸の内に消費する。魔法の炉にくべて全てを使い果たす。体内で酸素を燃焼させてエネルギーにし、魔力を魔法へ変換していく。肉体を強化する魔法、知覚を広げる魔法、思考や反射を制御する魔法、人体を全て一つの目的に従って再設計し鍛造し直す魔法。


「はぁ……」


 内側に封じ込められた魔法が吐く息に混じって溢れだす。魔眼で見ればまるで炎を口からチロチロと零す鬼のようだろう。それだけではない、骨や血管や神経に至るまで全てが魔法の影響下にある今、全身から揺らめく力が立ち昇っているはずだ。


「すぅ……」


 呼吸が脈動へ伝わり、体を魔法とエネルギーが駆け巡る。限界を越えた信号に神経が灼け、膨張しすぎた筋肉は千切れ、高ぶる生命力に細胞が悲鳴を上げる。それがまるで電流のように手足へ痺れを伝え、再生の魔法が強引に修理と破壊を同時進行させていく。


「はぁ……」


 魔法の演算と知覚の処理に加えて体の各部から矢継ぎ早に送られる異常報告に脳が沸騰しそうだ。あまりの負荷に耳の奥でバチバチと音がする気さえする。その痛みを誤魔化すために脳内麻薬が壊れたように垂れ流され、早鐘の心臓と相まってまるで性愛を貪るような高揚感と吐き気を催す中毒感を生じさせた。


「すぅ……」


 肌の下がドロドロに溶けた熱の塊になる感覚は、おそらく薬物でハイになるより数段高い快感だ。脳の回転は凄まじく早いのに思考がまともについて来れない。汗で重くなった服が煩わしくて脱いでしまいたい。


「はぁ……」


 肌から、髪から、口から火色の魔法が靄のように溢れて消える。燃焼の概念を司る魔法が漏れだして足元を焼く。夕日の中にあっても赤く全てを焦がしていく。俺の体も、心も。


「すぅ……」


 嗚呼、斬りたい。

 煮溶けた鉄の体に焼け焦げた炭素の心。その奥から懇々と溢れる透明な欲望はそれだった。足元に転がる建物だって今らなら正眼に構えたこの刀の一振りで両断できることだろう。何故それをしないのか、その理由すらだんだんと分からなくなってくる。振り上げて振り下ろす、ただのそれだけのことでいいはずなのに。

 手の中に納まる紅兎の感触はキモチイイ。過剰な魔力と強化魔法を与えられた兎の牙は夏至の頃、南の空に輝く星のような深紅に輝いている。熱量に姿を揺らめかせる様はまるで生き物のようだった。


 斬ってみたい。


 俺の刀はどこまで届く。


 俺の刀には何が斬れる。


 俺は刀で何を斬る。


 何のために斬る。


 そう、何のために。

 忘れるな。見失うな。持っていかれるな。


 ふと意識が途切れる。ほんの一瞬だ。次に目を覚ましたとき、俺の頬は冷たい石材に振れていた。学院の屋上の床だ。淫靡な高揚感も研ぎ澄まされた破壊衝動も去っていて、とりあえず体がだるい。校庭の方からは魔力が漂ってこなくなっていて、魔法の授業も終わったと分かった。


「おなか、すいた」


 燃焼魔法の使い過ぎで体力がもう残っていない。朝からずっと使っていたのだから当然だ。大量に持ち込んだ揚げパンや串焼き、揚げ芋といった高カロリーな食べ物ももうなくなっていた。袋に纏めてあった串や包装紙に至っては魔法の余波で黒く焦げている。あやうく火事になるところだった。

 意識を持っていかれるようでは駄目だな。

 ネンスの護衛をするにあたって落ちた剣力を補うために編み出した技法は、当初の予定と違って真逆の効果を示している。死ねない、失敗できない状況で死力を尽くしたいからこそ搦め手を模索しているというのに、この技はむしろ俺を戦いの深淵へと引き込んでいくのだ。


「ふぅ……」


 いい方法だと思ったのに。

 武術には武息と呼ばれる呼吸方法がある。これは逆腹式呼吸とも呼ばれる方法で、吸うときに腹をへこませ吐くときに膨らます。神経への作用を調整して精神を落ち着かせるこの武息は、戦いという神経が過剰に昂る環境で冷静さを失わないためのものだ。

 紫伝一刀流・武息の一「静息」という技は一般的な武息に該当する。対して紫伝一刀流・武息の二「駆息」という技は真逆、神経を興奮状態へいざない直観と反応速度で一気呵成に攻め込むために使われる。仰紫流ではこの二つの武息に魔法や魔力を絡めた派生技があるのだが、攻ノ型ムラサメに分類される呼吸法は一対のみ。


「げほげほっ」


 咽ながら少し離れた所に置いておいた水筒を取る。水を流し込むと乾燥した唇や傷の癒え切っていない喉に痛みが走る。


 仰紫流刀技術・攻ノ型ムラマサ「(ふいご)の吸気」

 仰紫流刀技術・攻ノ型ムラマサ「竈の呼気」


 どんなに浅い呼吸でも大量の空気を体へ強引に送り込む鞴の吸気は不慣れな者だと肺を傷めるが、代わりに慣れれば戦闘中の立ち回りで息切れすることがなくなる。吸った息を吐きだすときに魔力を奪い火属性に変えて全身に押し流す竈の呼気は、強力で潤沢な火の魔力による次の一手が魅力だが制御が難しく、途切れない魔力の代わりに継続的な火傷と魔力中毒の危険性をもたらす。どちらも生み出した人間が剣才に溢れる火神の加護持ちだったから使いこなせていたような危ない技術。


「あ、やばい」


 急激に体が寒くなってきた。体力を消耗しすぎたのだ。

 こういう副作用を抑える方法も考えないと。

 実験中の技に名前を与えることはないが、完成すれば仰紫流刀技術では魔ノ型ムラクモに分類されるだろう。鞴の吸気と竈の呼気を一つの循環として再構築したものだ。火の魔力を全身に押し流せば大火傷のところ、指向性の強い魔法として消費してしまうのがミソになる。火属性の大技につなげられるメリットを捨てて恒常的な強化と安定的な全能力の向上に振った思想だ。

 問題は魔法化に際して出た余剰分をさらに魔法にすることでロスを徹底して潰す設計のため、大量の魔法を同時に行使する煩雑な技であること。それから強化魔法を全乗せにしてフル稼働させると体にとんでもない負荷がかかること。あと副作用として脳内麻薬が思考をひどく鈍くすることだ。


「あー……」


 筋力から敏捷性、感知範囲、反応速度、思考速度……あらゆるものを数倍に引き上げることを思えば、まあ疲労感とかは仕方ないな。決戦用の切り札と思おう。

 最低限、思考をクリアにする方法を探さないといけない。可能ならスキル化させて魔法発動をマニュアル操作じゃなくしたいのもある。ただし時間はそう多くない。


「……とりあえず着替えないと」


 半日以上、脳内麻薬漬けになっていたせいで色々と人にお見せできない格好になっている気がする。シャツと下着がとにかく気持ち悪い。ブーツの中も雨に降られたみたいな感触だし。

 こればっかりは生理現象なので、諦めるしかないか。


~予告~

語らう先生とエレナ。

悩むこと、迷うこととは……。

次回、絡まる糸

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― 新着の感想 ―
[一言] どちらが優れるではなく、自分に合うか。凄く巧いセリフだと思います! それにしても、より上級の魔法だと詠唱などの制限や代価も多く成るか。それなら確かに上級過ぎる魔法では使える道が限られるでしょ…
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