八章 第6話 夕食会
「なんか肩透かし喰らったようなカンジだね」
「ん。でも油断は禁物」
時刻は夕食会の直前、すなわち夜だ。トライラント伯爵城ツアーは想像していた以上に面白かった。特に案内してくれたエヴィンの語り口が上手だったことが大きい。ただしさすがはトライラント家、ときどき魔力が大きく動く気配を彼から感じた。決まってこちらを見ているときだったので、魔眼か何かを持っているのかもしれない。
「魔眼かあ……興味あるけど聞くわけにいかないもんね」
好奇心を抑え込めるようになった点が幼少期の彼女から最も進歩しているのだと、俺が最近で一番実感する部分だったりする。
「トライラント家はオルクス家に対して肯定も否定もしていない珍しい大貴族、だよね?」
「ん」
初めて王都の屋敷にお邪魔したときは使用人たちから若干危険視されていたように感じた。ただあれは家としての判断ではないようで。実際6年前も最初以外は歓迎されたし、ビクターからの事前情報でも中立を貫いているとされていた。
「ネンスとのことで探りを入れたかった、程度ならいいんだけど」
「アクセラちゃんが封殺しちゃったから、たぶん警戒されてると思うよ?」
「それは仕方ない。魔眼の種類が分からない以上、正面から効果を貰うわけにいかないし」
「むぅ、たしかに」
「ん、準備完了」
着替え終わった俺たちは会話もそこそこに部屋を後にする。あくまで私的な夕食ということで、気楽な私服でいいと言われたのだ。よってエレナはブラウスとスカート、俺はブラウスとズボンを着ている。
普段着用のドレスも嫌いじゃないけど、やっぱり動きやすい方がいいよね。
~★~
「ほう、それではアクセラ君は刀を使っているのか」
夕食会が始まるとトライラント夫妻は積極的に俺とエレナを会話相手として選んできた。まだギリギリ未成年の俺たちはハーブティーで、夫妻だけ食前酒を呷る。前菜は酸味のあるサラダと薄切りのハム。
「ん、はい」
食欲を刺激する芳ばしいお茶を飲み干してから返事をする。彼が真っ先に興味を示したのは俺たちの戦士としての日々だった。具体的には冒険者という仕事について。俺とエレナだけでなく、レイルやネンスたちも登録をしたことが大きいようだ。
「レイル君は騎士の見本のようなスタイルだったな」
「はい、そうです!」
威勢よく応えるレイル。その横で前菜の皿を下げ、粛々とスープを配膳する侍女たちが対比じみて少し面白い。ちなみにスープはセロリと牛のコンソメだった。
「ティゼル君もそうだったろう?」
「ええ、そうですね」
「剣と盾によるバランスはやはりどの世代でも支持されるものだな」
やや統計的な物の見方は情報通である家柄か。
どうでもいいけどスープ美味しい。
「聞くところによるとシネンシス殿下は王族の正当を選ばれたようだが」
「盾のない騎士式ですね。王族の盾は近衛騎士がつとめるというスタンスの」
「ティゼル君はよく知っているのだな。そうとも、あれは王家に伝わる由緒ある戦い方。近衛騎士とスキル相性がいいのだ」
そういえば本人もそんなことを言っていたような気がする。あるいはマレシスだったかもしれない。実際に相手をしていても、レイルやマレシスの使う騎士の剣に共通する部分が多い印象だ。その2人にしても太刀筋や動きに細かい違いがあったが、三者に共通するベースのようなものが感じられた。
「盾を持たないという点ではアクセラ君と通じ合うものもあるのではないか?いや、武器の使い方自体が違いすぎるか……こういうところで武人でない私には分からない部分が見えてしまうな」
自嘲気味に笑う伯爵。食前酒で饒舌になっている、と見せかけて完全にシラフのまま学院の内部事情を透かして見ようとする質問が混じっている。
「基礎的な動き方、躱し方、体術あたりは、時々相手をしてもらっています」
「よく言うぜ、毎週散々にどつき回して地面に転がしてるじゃんかよ」
お調子者が魚料理を口にしながら笑う。こういう時はレイルの食事しながらでも汚く見せずに喋る謎技能が鬱陶しいばかりだ。というか、最初は騎士団らしい実用性と気品を兼ね合わせる業だと思っていたコレ……マレシスやティゼルがしているのを見たことがないんだが。
口の動き、どうなっているのさ。
「はっはっは、殿下を転がしているか。それは中々に豪気なことだ」
得体の知れない相手に情報を与えたくないんだけどね、レイルくんよ。
アベルの実家を不審扱いしたくはないが、エヴィンの態度やアベルとヴィントのやり取りを踏まえるとどうしても勘ぐってしまう。
「しかし、刀などどうやって手に入れたのだ。西方の品はガイラテイン聖王国を経由するルートしかあるまい」
ユーレントハイムを含む大陸東端の国々と大陸中部以西は「魔の森」と呼ばれる不可侵迷宮、最高位のダンジョンによって分断されている。人が行き来できるのは北の山脈を超えたところにある創世教の総本山、ガイラテイン聖王国を通るルートが1つ。もう1つに南方のジントハイム公国を通るルートがある。それ以外は大きく船で迂回でもしなければ到達できない。
ジントハイムが鎖国している以上、実質道は一本なんだよな。
「領都に西と取引のある大店で学んだ商人がいたので」
「なるほど、個人的な伝手か。いや、それくらいしかないだろう」
それ以外、トライラント伯爵が把握していない方法で武器が持ちこめるはずもない。あるいは密輸を疑われたのかもしれない。残念ながらそこは全く探られても大丈夫な部分だ。
痛くもない腹を探るのは止せと、多くの者が言う。ただ痛い腹を抱えた者、たとえば俺のような御家転覆を謀っているような者からすれば、痛くない腹くらい存分に精査してくれて結構だった。
「使い勝手は?」
「いいです。でも下手に扱えばすぐ折れる」
「それは冒険者向きな武器だと言わざるを得ないな」
個人の技能を重んじる冒険者だからこそ使える武器。そう言われてしまうと返す言葉がないのは、少しだけモヤっとする。スキルによる恩恵と画一的な装備を標準とする軍隊に導入はできないのは、誰が見ても当然なのだが。
「エレナさんも冒険者をしているのでしょう。魔法使いですって?凄いと思うわ」
一同がホワイトソースがけのグリルフィッシュを食べ終わり、皿が小さなガラスの器に代わったタイミング。それまで主に話していた伯爵が口を噤んで夫人とバトンタッチした。彼らは前菜が運ばれて来るまでの時間でも数度これをやっている。
「い、いえ」
いまだ緊張が抜けないエレナは背筋を伸ばして応じている。一旦解放された俺はというと、握り込める大きさの四角いガラス容器を覗き込んでいた。細かく砕いた氷に果汁をかけてミントを乗せた、グラニテ。赤くて綺麗だ。
「しかも複数属性が使えるなんて、ご両親も鼻が高いわね」
属性の話はある程度伝わっているのか。まあ、あんまり自重してないもんな。
氷、水、火、土は冒険の最中でもかなり使っている。ただ最近は火の頻度が落ちているから、王都では知られていないかもしれない。学院内では雷以外全て目撃したという者もいるだろう。ファティエナ先輩とか。
「成績優秀だとも聞いているわ。卒業後は研究職を目指したりしないのかしら?」
俺の専属侍女だと知っているはずだが……?
そんなこちらの疑問が伝わったのか、夫人はニッコリと笑って続ける。
「貴族って忙しいようで意外と時間があるのよ?」
本当だろうか。俺の知る中で最も貴族らしい貴族の仕事をしているのは、貴族を辞めたビクターになる。生まれてこの方つい半年前まで見てきた彼の仕事ぶりはどう考えても研究の余裕などないものだった。なんとか見つけた時間で俺やエレナを構いに来て、しばらくすると執務室へ帰っていく。思えば切ない生き物と化しているものだ。
「教養の範囲を超えて専門的な研究をしている人も多いのよ」
「領地を持たない貴族には、爵位に与えられる手当だけ貰い官職や軍職を得ず研究者となる者もいる」
グラニテを咀嚼していた伯爵が一言添えれば、夫人は我が意を得たりと頷いてからエレナ以外にも視線を向けた。エレナはその隙に赤い氷菓を食べ始める。すぐに思っていたのと違った、そんな顔になったが。
意外と甘さ控えめでサッパリしてて、本当に氷っぽい味がするよね。
甘党の彼女には口直しとしても薄味すぎたらしい。
「これは他の皆にも言えることだけど、卒業して家を継いだり結婚したりしたからといって人生がそれだけになるわけじゃないのよ?だからこそ、学院にいる間に自分の興味を育てることも考えた方がいいと思うわ」
含蓄のある人生の先達からの言葉だ。俺は夫妻を足したより長生きで、エレナはそんな俺に鍛えられているのであんまり響いてないのだけれど。しかし他の面々、特にティゼルは何か考えることがあったようで小さく頷いている。女遊びが彼の中で趣味に分類されていなさそうなのは喜ぶべきか、あるいはその裏にある感情を推察するべく頭を悩ますべきなのか。
それからはメインディッシュの肉料理が運ばれて来ると共に会話のホストが伯爵へと戻る。細々とこちらへの探りが挟まれるのは同じだが、客にばかり喋らせては申し訳ないと思ってくれたのか、トライラント領とガウルフの話がテーマになっていった。
「諸君も船から見ただろうが、この肉はクロカモメといってガウルフの特産品だ」
肉料理は鳥のもも肉をコンフィにしたものだった。表面は揚げたようにカリっとしていて、中は煮物のように柔らかく焼いたように肉汁たっぷり。塩も甘めで肉の味が引き立っている。
「カモメとは名ばかり、遠目に見ればそれらしく見えるだけで中々の巨鳥よ」
夫人が言うには草食性でなければ冒険者か領軍を出して駆逐する大きさだそうだ。幸い好戦的でもないので、肉がそのままでは硬いのと時々マストに激突して漁師や船乗りが迷惑する以外は文句の付けどころのない食料資源になっている。
んー……コンフィだけはイオでも負ける出来栄えだな。
料理上手なオルクス家領都屋敷の料理長を思い出す。
「今日はオーソドックスなコースにしたけれど、湖畔の街だからお魚が美味しいのよ。是非色々と食べてみてね」
食べ物のオススメは本当に多いようで、相槌と質問を交えて聞き始めると出てくる出てくる。いくら貴族界に恐れられる伯爵でもご当地自慢は口の滑りを良くするのか。貝類が実は一番美味しいという話から治安のいい場所にある大衆食堂、お忍びで行くと面白い場所、船で出るならどこがいいかといった観光情報まで教えてくれた。
「本当にトライラント領は遊べる場所が沢山あるんですね」
「こ、こんなにあるって、知らなかった」
俺もここまで多いとは思っていなかった。観光に特化し過ぎじゃないだろうか。
「こういう場所ってガウルフ以外にもあるんですか?」
そんな中でエレナが発した質問は、俺にとって非常に都合のいいものだった。意図したのならファインプレーだ。トライラント領内にガウルフと同じ観光地や静養地がいくつもあるのか否か。俺の探し物の難易度が変わる大きなファクターだ。
「あるにはある」
それが伯爵の答えだった。
「有力貴族の頼みで土地を貸している場所がいくつか、ほとんどが静かな静養地といった具合だが」
個人所有の船も何隻かはあるそうで、それ以外は狭いビーチと釣りができる桟橋くらいの設備しかないという。もっと遊びたいという場合には船でガウルフまで来て遊んでいくのだと。
「別荘が近いかしら」
なるほど。
「王家は天領ですか?」
「そうね、アクセラさん。王族の方々は湖の東側にある天領の湖畔を避暑地にされているわ」
どっちみちネンスとは日程が噛みあっていないから関係ないか。
しかし貴族所有の施設が別荘程度とはいえガウルフの外にあるのなら、俺の母親がどこにいるかはかなり分かりづらくなってしまった感がある。若干の閉塞感を先行きに感じたとき、またもエレナがいい塩梅の質問を投げてくれた。
「じゃあ誰か知り合いが来てるかもしれませんね」
「君たちにゆかりのある貴族で別荘を持っているのは……レグムント侯爵とザムロ公爵だけではないか?」
「あれ、そうなんですか?」
「貸し出しているからといって、誰でも借りられるわけではないからな」
「ほとんどの方はこのガウルフに泊まって行かれるわね」
どちらの家も俺の実母、セシリア=ナタリ=オルクスを匿っている可能性を否定できない家だ。現オルクス伯爵と仲が良く、俺たちの陣営とパイプがないザムロ公爵が有力か。あるいは何かの理由でビクターにも明かさずレグムント侯爵が秘匿している場合もあり得る。まったく二家とは関係なくガウルフにいるパターンも外せない。
少なくとも絞り込んで探せるようにはなった。そう思った矢先、また新しい情報が飛び込んでくる。
「先代の頃にはオルクス家もガウルフに来ていたのだが」
「あなた」
「ああ、いや、ここでする話ではないか」
残念そうな声で言う伯爵を奥方が遮った。しかし俺としてはヒントになりそうな情報は逃したくないところ。
「いえ、お気遣いなく」
小さく笑ってそう伝えてから、完全にでっち上げの話を投げ込む。
「父と母も馴れ初めはこちらだと聞きました」
案の定伯爵は意外そうな表情を浮かべて食いついてきた。
「ほう?初耳だ。私はてっきりお見合い結婚だと思っていた」
「お見合いかどうかは存じ上げないけれど、お母様は北のオルダリン領出身でしょう?湖には来られないと思うわ」
え!?
伯爵から何かしら手掛かりでもと思って言った嘘が、まさかの否定を喰らってしまった。
俺の母、セシリアは湖にくるはずがない?
「北方の山々が美しいのは分かるが、どうしてそれで湖を受け入れられなくなるのか……まったく、オルダリン領民の頑固さは嘆かわしい限りだ。もはや信仰の粋に達している」
呆れた調子でため息をつく伯爵が思わぬ方向に逸れ出した話を補強する。オルダリン領という土地はあまり知らない。ただ伯爵の説明を受けると、一種の山岳信仰を実際に持っているような印象を受けた。
「父上と母上はアクセラさんのお母様を知っているのですか?」
夕食会が始まってから何か考え込むような表情で押し黙っていたアベルだったが、ここに来てようやくまともに口を開いた。彼は彼で、俺たちがツアーに出ていた間に何かあったようだ。それでも以前頼んでいたからか、彼は俺の母の話題になった辺りから意識を集中させてくれていた。
「あまり交流はなかったわね。でも結婚式には招かれていたし、一度か二度ならサロンでお話したことがあるはずよ」
「私も美しい銀髪の女性だったことしか覚えていないが、結婚してすぐに長患いとなって表舞台に出てこなくなってしまってな」
その辺りは俺の認識と対して違わないんだな。
「お母様は今も領地でご静養されているのかしら?」
「ん、学院に入ってからは連絡を取っていないので」
「そうか、それは心配だな。楽しむ時には十分楽しむといいが、一度顔を見せて安心させてあげたまえ」
貴族でも切れ者でもなく、家族としての言葉を口にする夫妻。普段ならこうした人間らしい温かみに触れることが好きな俺も、しかし今は気が回らない。
「はい、そうします」
中身のない返事をしながら頭を回す。夫妻からは嘘を吐いている気配を感じなかった。情報のプロである以上欺かれている可能性は念頭に置いておくとしても、彼らのあずかり知らぬ場所にいる線が濃厚なのではなかろうか。
山岳信仰を持つ土地出身の人間を静養させるのに湖の近く……違和感がぬぐえない。
せっかく近くまで来たのだからと手を出した謎は、余計にこんがらがって俺の意識に居座ることとなってしまった。これは腰を据えてしっかりとした調査を考えるべき時期に到達したのだと、そう思うこともできる。
どちらにせよ、気がかりな点はもう1つでっかいのがあるしな……。
~★~
「どう思う?」
夕食会が終わってから、部屋へと引き上げた俺はエレナに尋ねる。2人ともすでに薄手のネグリジェに着替えてあとは寝るだけだ。
「お母さんのこと?」
「ん」
「わたしもアベルくんのご両親、嘘を吐いてる気はしなかったな」
エレナの観察眼は確かだ。スキルとしても技能としても。
「だよね」
それだけで自分の考えに確証が持てた。柔らかいベッドの上に並んで座る妹の髪を手で梳いてやる。
「でもそうなると別荘?」
「湖が嫌いな人を湖畔の別荘で静養させる?」
「オルダリン領の人が皆そうってことじゃないでしょ?」
エレナの主張は確かにその通りだ。けれど育った環境による刷り込みは馬鹿にならない。俺が今でも食べられない恐怖から逃れられないように、エクセララの民が湿潤な土地を苦手とするように、山を崇めて育った人間は水より山に安らぎを覚えるのではないか。
「……はぁ、アベルに無理を聞いてもらおっか」
思考を放棄して安易な方法を選びたくなってしまう。湖から吹く風が涼しいとはいえ、暑苦しいこの季節についつい氷魔法を解禁したくなるのと同じだ。
「まあ、頼んでみるだけならタダだしね」
風魔法で窓からの空気をたっぷりとり込みながらエレナは足をパタパタとさせる。少し前までならもっと考えてから答えていたのに。それが良い変化なのかは置いておいて……
「エレナも図太くなってきた」
「誰のせいだと思ってるの!?」
悪い方にもとれる言葉だったからか、それとも「太い」が気になるお年頃なのか。声を荒げて食ってかかる彼女を押しとどめ、俺はその頭を両手で撫でてやる。
「よしよし」
「ほんと誤魔化し方が雑になってきてるよね……」
頬をリスのように膨らませるエレナ。我ながら宥め方がワンパターンだとは思う。でもこれがよく効くのだ。
「なでなで」
「むぅ……むぎゅう」
やはりというか、いつも通りと言うか、すぐに大人しくなる。ただ今日は何故かそのまま俺の胸に飛び込んできた。胸骨に鼻先が押してられる感覚。
「……?」
「すー……」
何故か深呼吸を始めた。お風呂は夕食会の前に入ったので気温と相まって若干汗をかいているんだが。
「すー……はー……」
「エレナ、胸に顔を押当てたまま息するのやめて」
「やだ」
きっぱり断られた。
これはあれか、雑な対応をしていることへの仕返しか?
「くすぐったいし、若干恥ずかしい」
素直に言うと胴へ回された手が心なしか強く締められる。胸が押さえられて結構苦しい。あと吐く息が熱くて辛いです。
「いい匂いがする」
最近のエレナは輪をかけて理解しにくいうえに、若干変なモノに好奇心を向けている気がする。この前も俺が脱いだシャツを嗅いでいたし……。
「ん」
性癖がねじ曲がっても困るので矯正しよう。物理的に。
「あだだ!腕、腕、極めないで!!ていうか今、どうやって抜け出したの!?痛い痛い痛いって!」
背後を取って腕を締めあげておいた。非常に痛いかわりに肩や腕の凝りを解して休ませる効果もある技だ。分かりやすく言うと不必要な激痛を与えるストレッチ。体術の研究中にできた懲罰専用の極め技だな。どんな懲罰も本質的に体を傷めては元も子もない。
「オシオキ」
「ごめんなさいってば!!」
~予告~
夏だ!湖だ!水着だ!
少女は笑い、少年は悩む。
次回、一夏の男/女




