一章 第9話 魔法使いへの第一歩
!!Caution!!
このお話は2話連続投稿の1話目です!
アンナが起こしに来てくれたのはひとしきり溜息をつき終えて3杯目の水を飲んでいたときだった。俺はいつもより少し遅めの朝を彼女の出してくれた服に着替え、エレナを待って朝食に向かうことで始めた。
「おはようございますお嬢様。エレナもおはよう」
「よい朝ですな、小さなレディたち」
食堂の無意味に長いテーブルにつくとすぐにラナとカイゼル髭の料理人イオが食事を持ってきてくれる。今朝は焼きたてのパンにサラダ、赤トウモロコシのポタージュ、茹でたソーセージ。貴族にしては質素だが俺にとっては十分に豪華な内容だ。
バランスのとれた朝食が並べられていく間、俺は隣でまだうつらうつらとしているエレナの髪を梳かす。子供特有の細い糸のような髪は指にひっかかることなくさらさらと流れるように手の中で泳いだ。
「むぅ……あくせらちゃん……」
俺に背中を預けるようにもたれかかって気持ちよさげな声を上げるエレナ。なんだかナズナや愛犬だったベルタを撫でているときの事を思い出した。
「さ、整いましたぞ」
しばらくすると用意が全て整った。赤トウモロコシの甘い匂いが漂ってくる。
「えれな、おきて」
「もすこし……」
「あさごはんだよ」
「やぁ」
彼女は甘えるように俺の胸元でごそごそと体を動かす。
寝心地の良い姿勢を探るんじゃない、俺はベッドか。
「ふにゃぁ……」
完全に二度寝体勢に入りつつある。起こすべき立場のラナに目をやると楽しそうに俺たちの様子を見ていた。止める気はなさそうだ。彼女は普段から俺とエレナが一緒に何かしているとあまり手を出さずに見ていることが多い。姉妹仲がよくなればと思ってのことなのだろうか。
誰も助けてはくれなさそうだし俺も腹が減ってきたし……しかたないなぁ。
「いお、あれおねがい」
「アレ……?ああ、アレですな。承知いたしましたぞ」
髭の下の口を微笑みの形にしていた中年料理人は直ぐに俺の意図を察してくれたらしく、いそいそと厨房の方へと取りに行ってくれた。
「えれな、めろるたべよ」
「めろる!」
「おふっ」
魔法の言葉に反応して彼女は跳び起きた。反動で勢いよく胸を押さえられた形の俺は思わず苦し気な息を洩らす。
「けほけほっ、すきだね……」
「うん!」
元気一杯の平常運転、もうすっかり目が覚めたようでなによりだ。
「お待たせしました」
イオが皿を2つもって戻ってきた。音もなくテーブルの上に置かれたそれには大人の女性の握りこぶしほどの丸い果物が。鮮やかな黄色のそれはメロルオレンジという蜜柑の仲間だ。
「わぁ!」
太陽の笑顔を浮かべて喜ぶエレナに俺やイオの顔もほころぶ。彼女は物心ついたときからこのメロルオレンジが大好物なのだ。俺には少し甘すぎて近縁種のシャコンマンダリンの方が好きなのだが、残念ながら今のところ転生して以降シャコンを見たことはない。大陸西側の植物だったから当然といえば当然だ。
皿に乗ったメロルを手で剥いて口に入れると、少し冷えた甘い果汁が口に広がる。なにかと寒くて辛い冬だが、魔道具無しでも食品が保存できるのと良く冷えた果物を食べられるのは幸せだ。
「エレナ、ちゃんとサラダも食べるのよ?」
「……はぁい」
小振りなメロルを食べ終わって即行ソーセージに手を出したエレナにラナが注意すると、少女はちらっと俺の手元を見て逡巡し、渋々頷いた。俺はサラダから食べているのだ。
「すききらいはだめ」
「むぅ……」
朝ごはんが終わるとしばらく自由時間だ。普段なら一日中自由時間なのだが、今日はラナからお昼の後話があると言われている。
さて、今日も今日とて外で遊ぶにはいささか寒すぎるわけだが、かといってそう毎日家にいてできることがあるわけでもない。エレナの大冒険も始まってから1年半、子供が立ち入らせてもらえる範囲では終了してしまっている。なんというか、屋敷自体は結構広いのだが使っている場所がそこまで多くないのだ。使用人の数自体伯爵家というには寂しいものがある。
「あくせらちゃん」
「ん?」
いつも通りの俺の部屋、お茶用の小さなテーブルセットについてしばらくお喋りをしていると、エレナが少し改まった様子で俺に話しかけてきた。
「あくせらちゃん、ものしりさんだよね」
「え……うん?」
いきなり何の話だ。確かに俺は前世の経験も相まってそこそこ色んな事を知っているとは思うが、あえて今確認されるような理由も思い当たらない。
「くーはくのまがんて、わかる?」
「くうはく……?」
このタイミングでエレナが聞いてくるということは、おそらくそれがステータスで確認した彼女の魔眼なのだろう。たしか魔眼は称号に『魔眼持ち』と記載されるだけで、その魔眼がどういう効果を持つかは明確に書かれなかったはずだ。
「くうはく……そんなまがんきいたことない」
俺が知ってる魔眼自体そこまで多くはないのだ。
「あくせらちゃん」
不思議そうな、困ったような顔でエレナは首をかしげる。
「まがんてなーに?」
あー……そうか、そこからか。
「まがんはとくべつなめのこと」
「とくべつ?」
「まりょくがみえたりする」
「まりょく?」
「これ」
俺は自分の手を彼女の目の前に差し出し、火属性の魔力糸を何本か生み出して見せる。
「……?」
なぜそこで首をかしげるのだ、妹よ。
「これ?」
「ん、魔力」
「いとじゃないの?」
おいおい、流石の俺も糸は出せないぞ……というか俺を一体何だと思ってるんだよ。
「まりょくをいとみたいにしてる」
そう言って一旦糸状でない魔力を放出する。どういう風に見えているのかはわからないが糸ほど収斂されていないのだろう、エレナはさっきより広範囲を見ているような気がする。
「これがまりょく」
「きれー」
「これをこうするといとになるの」
再度糸にしてみせる。
「いとになった!」
エレナは一々反応が大きくて楽しいな。
「こういうこともできる」
もっと多い魔力を集めて高密度に固める。イメージは羽ペンの軸くらいの、魔力棒とでもいうべきもの。
「わ、ぼうになった!」
よし、ちゃんとイメージ通りにいってるらしい。
次は少し捻ってみる。ネジのような螺旋模様の棒に変化したはずだ。
「ねじねじ!」
今度は液体のように一度形を失わせる。重力に引かれないそれは掌の上で漂いだそうとするが明確に支配する意思を以って留める。
「あ、みずになった!」
はしゃぐエレナに合わせて俺は支配力を引き上げる。どうも火属性魔力は気を抜くとエレナの支配下に移ろうとする。それだけ彼女の火属性に対する適性が高いのだろうが、実際問題どれくらいの適性があれば素手で触れた他人の魔力の支配権を奪えるのだろうか。
「えれな、ちょっとさわってみて」
再三糸の形にして差し出して見せる。
「いーの?」
心配そうな顔で俺を覗き込むエレナ。
これまでは結構嫌がってたからな、俺。
それでも本人はずっと触りたかったのだろう、小さく笑って頷き返すと喜々として手を伸ばしてきた。
「ん……」
遠慮していたわりにはしっかりとつかむエレナ。その瞬間、握られた部分が俺の物でなくなる。だがすぐに集中して支配権を奪還する。糸の姿を維持できなくなって解けかけた魔力がすんでのところで形を取り戻した。
「?」
一連のやり取りに不思議なものを感じ取ったのか彼女はまた首をかしげる。そしてなぜか握る力を強めた。
「!」
特に明確な意思を持ってのことではないだろうに、それだけで魔力を奪われそうになった。俺も細心の注意を向けてそれを阻止する。
「むぅ……」
「ん……」
そこからはしばらく両者無言での陣取り合戦になった。2、3本の魔力糸を巡って支配力が交錯する。しかしまあ、戦闘時に比べれば集中力もやる気も低いとはいえ、2年間鍛錬を繰り返してきた俺とほぼ同じ力を才能だけで発揮するとは。ミアが警告をしてくるほどのことはあるのかもしれない。
小さな友人の言葉を考えている間にも勝負は進行し、気が付くと段々俺の方が押され始めていた。
人は1つのことに集中しているつもりでも細かく他の事にも意識を向けてしまうものだ。そうしなければ周りが見えなくなって危険に陥る。そういた注意力の分散はある意味生物として当然の安全装置なわけだが、彼女はそんな意識の間隙をついて魔力を奪うようになってきている。
この短いやりとりでコツを掴みつつあるのか、たしかに恐ろしいな。
なら俺も、そう思って少し戦闘時のような意識に切り替えようとして固まる。
突ける隙がほとんどない、まさかエレナは周りをシャットアウトして集中しきっている?
その可能性に気づいたとたん、俺の脳は回転速度を上げた。彼女の状態は俺の長い人生でもほんのわずかしか見たことのない事例だった。まるでスイッチのように完全な集中状態と注意散漫な状態が切り替わり、集中している間はその一点に特化しきる。もし彼女の隙の無さがそれだとするなら、彼女はかなり特殊な天才ということになる。本来かかるべき生物的なセーフティがかからない、諸刃の剣を振るう天才ということに。
ク、ククク……ナズナと同じタイプの天才、これは教え甲斐があるぞ!
もし正しい教育と強敵に恵まれればエレナはナズナと同じく人類最強、超越者の一角を占められるかもしれない。
「あ」
興奮で集中を乱してしまった俺は完全に支配権をエレナに奪われ、まだ支配はできても扱えない彼女の手の中で魔力は雲散霧消した。
「きえちゃった!」
楽しそうに顔を輝かせるエレナ。彼女は本当になんにでも楽しそうな反応をする。
「えれな、まほうすき?」
「うん!」
「れんしゅうしてみる?」
「うん!!」
過去最高の好奇心と歓喜が大爆発といった笑顔で即答する妹に俺も笑みがこぼれる。ずっと俺が練習している間キラキラとした眼差しで見ていたし、彼女が魔法に興味津々なのは知っていた。いい機会なので今日から少し練習をさせてみるとしよう。
「こっちおいで」
テーブルをはさんで教えるのも難しいのでベッドの上に移動する。
「すてーたすに『まほうてきせい』ある?」
「まほーてきせー?うーん……どれ?」
ステータス欄はなぜか絶対に自分で読める仕様なのでどれが『魔法適性』かわからないということはないと思うんだが。そう伝えるとエレナは首を横に振ってこう答えた。
「すごくいっぱいあるの」
「いっぱい?」
「うん。えっとね、ひーふーみー……むっつあるよ?」
俺の脳みそが停止した。
「…………」
何を言っているのだろうか、この子は。
「あくせらちゃん?」
名前を呼ばれてもどこか遠い所の音のようだ。先程より大きいショックをこの短時間で味わうと思っていなかった。バラバラになる思考を無理やりまとめ上げて回転させる。
「むっつ」と、たしかにそう言ったよな?
魔法は基礎属性である火土水風、上位属性である氷雷光闇の合計8属性しかない。そして3つもっている俺でさえ属性に恵まれている方なのだ。それが6つもなんて、生前含めて聞いたことがない。
「え、えっと、くわしくおしえて」
6属性持ちというのは前代未聞だが、もし各適性が大きくなければ大したことではない。逆にこれだけの才覚と素養に加えて適性が1つでも極級であれば、それはもう大魔法使い決定コースともいえる。
「えっとね……」
結果、エレナの魔法使い人生は大賢者様決定コースとなった。
いやー、まさかエレナの属性がここまであらぶってるとは思わなかった。ハハハ、もう興奮通り越して心が凪のようだよ。
『火魔法適性・極』:火属性の魔法に対する極めて高い適性。火属性の魔力変換、火魔法の習得を補助する。
『土魔法適性・大』:土属性の魔法に対する高い適性。土属性の魔力変換、土魔法の習得を補助する。
『水魔法適性・極』:水属性の魔法に対する極めて高い適性。水属性の魔力変換、水魔法の習得を補助する。
『風魔法適性・大』:風属性の魔法に対する高い適性。風属性の魔力変換、風魔法の習得を補助する。
『氷魔法適性・極』:氷属性の魔法に対する極めて高い適性。氷属性の魔力変換、氷魔法の習得を補助する。
『雷魔法適性・中』:雷属性の魔法に対するやや高い適性。雷属性の魔力変換、雷魔法の習得を補助する。
極3つに大2つ。前代未聞どころか下手をすると神代の時代にもいたかどうかという存在じゃないのか。
何でも知ってるお姉さんからのコメントを待ちわびるような顔でじっとこっちを見ているエレナには悪いが、ちょっと意識を手放したくなった。
だって、6属性天才級って、俺は魔法もある程度詳しいがあくまで剣士の類だぞ!
彼女を最高の魔法使いに育て上げるには俺の知識だけだとおそらく足りない。だがこの国にいるだろう古ぼけた魔法使いでは彼女の才能を十全に育てられない。エクセララか、せめてアピスハイムの王立学院研究所くらいなら……。
「あくせらちゃん?」
気がつけば見上げるエレナの目に不安げな色が映っていた。そういえば返事もせずに考え込んでいたのか。
そもそもエレナ自身がその道を選ぶかどうかも分からないのに、何を俺は考えているんだろう。
「えれな、すごい」
「ほんと!?」
「ん、さすが」
「えへへー」
沈黙など一瞬たりともしていなかったかのように頭を撫でて褒めちぎる。撫でられた彼女も緩い笑みを浮かべていつも通り抱きついて来た。
天才のくせに可愛い奴め。いや、ナズナも天才で可愛かったな。
「やってみよっか」
「うん!」
とりあえずは約束通りエレナの魔法の練習をしてあげることにしよう。ゴチャゴチャ考えるよりまず魔力量と操作の精密さを鍛えることが大事だ。属性に関してはなんとでもなる。俺だって生前は全属性を扱っていた経験があるからな。
「もうまりょくはわかった?」
「うん!」
「つぎはまりょくをさわる……のはできるよね」
「うん!」
元気のいい返事と共に手をにぎにぎとするエレナ。おそらくそこら辺の魔力を触っているのだろう。
「えれな、さわらずにうごかせる?」
「さわらずに?」
「ん」
魔力を認識するのが最初の壁なら魔力を動かすのが次の壁だ。エレナは天才だが、これだけ早い成長は魔力が見えているからという理由が大きいだろう。だがこの壁は見えているからといってどうこうできるものではない。
「まりょくにめいれいするの」
「めーれー?」
「ん、みてて」
魔力を完全に掌握した状態から一度全て手放す。
「いま、ぜんぶはなした」
「うん」
次いで周囲の魔力を認識して支配下に置く。
「……あくせらちゃんのいろになった」
「わたしのいろ?」
魔眼を通すとそんな風に見えるのか。
「うん、きれい」
自分に見えない部分で褒められるのはなんだかくすぐったいな。
「ひ、ひのまりょくにするよ」
誤魔化す様に次の工程に移る。支配下に置いた魔力を火属性に変換するのだ。
これくらいは慣れたもの、あっという間に部屋に漂う魔力は火属性になった。
「あかくなった!」
「やれる?」
とんでもなく大雑把な説明に思えるだろうが、魔法を教える最初の部分というのはこんなものだ。魔力を感じ、魔力を認識し、魔力を操る。ここまでは感覚的で、慣れるまで根気よく繰り返し魔力に接するしかない。
「やってみる!」
とりあえずなんでも体当たりしてみるのはエレナのいいところだな。
元気に答えた彼女は虚空をじっと見つめる。たぶん今から命令を出して指揮下に置く魔力を見ているのだろう。
「……」
段々と睨みつけるような眼力になってきたエレナを俺は黙って観察する。彼女の中の魔力は緩やかにうねり、外の魔力も無節操に傘下へと収まろうとしている。しかしこれは彼女が意図しているわけではない。あくまでエレナの高すぎる資質に魔力が反応しているだけだ。
「…………」
さらにしばらく待ってみるが一行に魔力を意思で従わせることはできない。そう簡単にできるものではないのは確かだが、俺は原因が別にあると感じた。
「ね」
「もうすこし」
「えれな」
「もうちょっと!」
子供らしい負けず嫌いを発揮して一層強く中空を睨みつけるエレナ。
「すとっぷ」
「うわ!?」
目を両手で覆って強制的に止める。
「もうちょっとさせて!」
「させてあげるから、ちょっとまって」
「……むぅ」
駄々をこねるように拘束から抜け出そうとするエレナだが、俺の筋力は成人男性ほどでなくとも子供を遥かに凌駕する。正真正銘3歳のお嬢様が逃れられるはずもない。
「えれな、あつくなりすぎ」
「……」
「もっとおちつかないとだめ」
熱くなるほど人は集中力を欠く。今の彼女はまさしくその状態だった。
「あと、めをとじてみて」
「でもみえないよ?」
「まりょくはふつうみえないから」
魔眼を通してエレナは魔力をくっきりはっきり見ている。それが逆に距離や形という物質的な先入観を持たせてしまい、うまくコントロールできない現状を作り出しているのだろう。
「めをとじて、ゆっくりいきをして、おちついてやってみて」
「……うん」
エレナが言う通り呼吸を整え始めたのを確認するまでなだめるように肩をなでる。
「……」
「!」
手を放して数秒、エレナの纏う空気が変わった。まるで違う人格にでも切り替わったかのようにガラリと。ピンと張り詰めたような気配を放ちつつも一切無駄な力が体に入っていない。集中のスイッチが入ったのだろう。
「……」
おお、少しだけ魔力が恣意的な動きを見せ始めた。
その動きはただエレナの資質に引かれているのではなく、おぼろげにだが彼女の意思を反映している。言ってみたものの、まさか1分そこらで物にするとまでは思っていなかったので驚きだ。
「ん、そうだ」
いいことを思いついたぞ。
集中して魔力に指示を出そうとするエレナをそのままに、俺はこっそりと魔力糸をつくる。属性のない透明なやつだ。これだけ無心に感覚を魔力へ向けている彼女に気づかれず魔力糸を作り出すのは今の俺では無理な話だが、だからこそある実験に使える。
スキル『完全隠蔽』の発動を脳内で意識すれば隠蔽対象を求められる。手元の魔力糸を指定し、そのまま魔力糸を紡いでいく。
「……」
「……」
「……」
「……」
目を閉じて周囲の魔力をまさぐるエレナ。
その鼻先でこれ見よがしに魔力糸をつくる俺。
なんなんだこの絵面。
そんな不可思議な状態がしばらく続いたころ、唐突にエレナが目を見開いた。
「もう!」
そして憤慨したように目の前を漂っていた魔力糸をつかみ取った。
「きになる!」
あれ……隠蔽してるはずなんだが。
「えれな、わかったの?」
「いとはみえなかったけど、なんかまりょくがどっかいくんだもん!」
あ、あー。『完全隠蔽』が魔力糸に効いていても、魔力糸をつくるのにその周りから魔力が減ったから分っちゃったのね。そしてそれが気になって集中が切れたと。
しかしおかげで『完全隠蔽』の性質がおおまかに分かった。隠蔽した対象は完全に隠せるが、それが外の物に影響すると間接的にばれるわけだ。
「ん、えらい」
「えー、なにが?」
満足して頭を撫でてあげたら混乱された。好奇心爆発で根掘り葉掘り聞かれても説明が大変だから何がとはいわないが。
「よしよし」
「ねー」
「いいの。よしよし」
「むぅ、よくわかんないけど……いっか」
しばらく撫でてやるとどうでもよくなったらしく、自分から頭を押当てだすエレナ。なんかこう、猫か犬でも愛でているみたいだ。
明けましておめでたい方もおめでたくない方も、今年もよろしくお願いいたします。
実は今回の更新、2話連投だって告知し忘れてました(∀`*ゞ)テヘッ
えっと・・・すみませんm(__)m
~予告~
2話連続なのでこの回は次回予告お休みザマスm(__)m




