七章 第3話 狂宴の廃城
「狂宴の廃城」と呼ばれるダンジョンがある。王都から馬車で半日ほどのところにあり、比較的若いダンジョンとされる。建国から400年ほどを誇るユーレントハイム王国、その三代目国王に仕えた狂気の技師サザールが居城。つまり誕生から300余年しか経っていないのだ。それでも指定ランクはC、大国の王都に近いダンジョンとしてはあり得ない危険度だ。これを超えるのは不可侵迷宮「ヅーロス宝物殿」の上に立つロンドハイム帝国帝都くらい。
「レイル、準備はいい?」
俺は傍らに立つ少年に確認する。少し前に買った卑金虫のフルプレートを着こみ、手には同じく茶色の剣と盾を携えている。試着したときと違うのは腰に幅広のベルトが回されて、後ろ側にガラス瓶とポーチがいくつか固定されている点。それから冒険者御用達のワンタッチで外せる肩掛け鞄も。
「おう!」
腹から声を出して己を鼓舞するその姿に微笑ましさが湧いて来る。
「私たちが入れるのは外庭と城の1階部分だけ」
「お、おう」
「今のレイルには十分大変だから、気を抜かないで」
今日はレイルの待ちに待ったダンジョンデビューだ。本当ならエレナと2人でサポートするつもりだったが、状況が状況なので俺1人で来ている。
「オレが前衛でアクセラが遊撃か?」
「私は後衛。今回は魔法使いとして参加する」
「へ?」
自信満々に体操をしていたレイルが素っ頓狂な声を上げた。それからちょっとだけ考えて納得したように手を叩く。
「そういえば魔法剣士だもんな」
魔法剣士は魔法使いで剣士。両方の役割を完璧にこなせて初めて名乗れるものだ。だから当然魔法使いとしてのロールを担当することも可能である。
「危なくなったら斬り込む」
紅兎の柄をとんと叩いて見せた。
「頼むぜ」
その他細々とした確認と点検を済ませた俺たちは目の前の巨大な門をくぐる。
「狂宴の廃城」はその名の通り小さな城であり、ぐるりと高い壁で囲まれている。中にはだだっ広い外庭が広がり、中心に地上4階地下4階の城が建つ。ランク付けが特殊で外庭と城の1階部分はDランク相当、他がCランク。出現する魔物はゴーレム系が主体。王都に近いため一定の人気はあるものの、収穫がよろしくないのでDランクエリアは閑散としている。下の階層や最上階付近は魔鉄のゴーレムが出るとかでそこそこ賑わっているらしい。
「おお!……おお?」
初めてのダンジョンに感動の「おお」。続いて困惑の「おお」がレイルの口からこぼれた。それもそのはず、俺たちが入った門のすぐ傍はおおよそダンジョンらしさなどない様子なのだ。
いや、正しくはこれこそダンジョンらしさなんだけど。
色の悪い芝生と下草の茂る外庭に入ってまず目に入るのはテントだ。それも1つではなく8つもある。そのうち4つは持ち主が敷物を広げて露店をしている。
「な、なんだこれ」
「これがダンジョン」
ケイサルと「災いの果樹園」くらい近ければこういう風景は見れないのだが、ここは王都近郊といっても足の遅い乗合馬車で半日。簡単に物資を補給できない以上、こうして薬や食料を売る出店が生まれるのだ。
「でも気を付けて。滅茶苦茶高いから」
「おいおいお嬢ちゃん、ここじゃコレが適正価格だよ!」
「準備するに越したことはない」
野次を飛ばすポーション屋台の店主に手をひらひらとさせる。あちらもそれは当然と思っているのか肩をすくめてそれ以上何も言わなかった。
「手に入りにくい物は高い。必要な物ほど、高い」
「ちげえねえや!」
黙っててくれないかな……。
「あと3つは何だ?」
「食品だと思う。ここの魔物は食えない」
「ああ、なるほどな」
さすが実戦派の家柄だけあってレイルは魔物を食うことに忌避感はないようだ。とはいえここでその心配はどのみちない。ゴーレムは食える部分がない。冒険者もそこまで食品ばかり担いで来れないので、食材を売る店は一番需要がある。
「他のテントってもしかして」
「ん、冒険者の」
片道半日のダンジョンに日帰りで来ることはできない。俺とレイルも週末を加えて3日の連休だから来たのだ。そんな冒険者たちがどこに拠点を構えるかというと、最も安全な入口のここになる。商人たちが金を出し合って雇った護衛にタダ乗りさせてもらう形で。それも含めて考えると商品が高いのだって我慢できる。
「けど、大丈夫なのか?」
「冒険者のテントから盗むのはご法度。ばれればギルドからペナルティが与えられる」
「ペナルティ?」
「問答無用でランク1つ降格」
「うっわ」
ランクに全てがかかっている冒険者にとってこれは辛い。しかしギルドとは互助組織であり、何よりも冒険者の不利益や命の危険に対して敏感な集団だ。自分も恩恵に与っていながら他の冒険者を危機に陥れるなど万死に値する、というスタンスなのだ。
「じゃあ心置きなく使えるな。テント張ろうぜ」
レイルが拠点を確保しに向かおうとする。向かって左側はテントの数が5、右側は3なので右側に設置したいところだ。とはいえ、物事はそう簡単じゃない。
「待って。おじさん」
「お?早速お買い上げか」
色めき立ったのは最初に声を掛けてきたポーション屋台の店主。いそいそと価格表を取り出して見せてくれる。こうして最初から書いておくとイチャモンをつけられる心配が減るらしい。
「買いたいのは情報」
「なんだ……ま、いいや。んで何が知りたい?」
「宿泊中のお客さんについて」
「へへ!可愛らしいお嬢ちゃんだと思ってたら、案外抜け目ないんだな」
店主はサングラスの下で目を三日月にする。冒険者同士の盗みは生死に直結するためギルドが重罰を科しているが、それ以外の小競り合いは関知しない。執拗に絡まれたり決闘騒ぎになったり、あるいはテントに連れ込まれたり。そんなトラブルは当事者に投げっぱなしだ。
「けどまあ心配しなさんな。左が多いのはテント2つ持ち込んだパーティーがいただけだよ」
「ん、ありがと」
大した情報でもなかったので小銅貨を投げ渡す。山なりのそれを上手くキャッチした店主はほくほく顔だ。
「そういうのも必要なんだな」
「ダンジョンでも敵は魔物だけじゃない」
世の中、突然足場が崩れて魔獣と戦闘になる可能性もあるんだから。
「いやそれは想定できねえって」
だよね。俺もそう思う。
そんな他愛もない話をしながら右側にテントを張る。ここでもレイルは足手まといにならず、きちんと作業を完了した。重装備のまま野営をする訓練も父にさせられたとか。
「……もしかしてテント1つか?」
「レイルが持って来てるなら別だけど」
「いやだって、お前が持ってくるからいらないって!」
「ん、2人くらい余裕で入る」
「……」
顔を赤らめて閉口するレイルを放置して中に入る。彼が変な気を起こさないのはマリアとの様子を見ていれば分かるし、俺もレイルにそっちの興味はない。そもそもそんな元気は残らないはずだ。
「オレも男なんだけど……」
「マリアにだけはね」
「うっ」
恋人を蔑ろにするには若すぎる。ワンナイトスタンドなんて大抵が分別を学んだ大人のやらかすことだ。分別とワンセットになっている妥協を学んでしまった大人の。
「安心して。見ても婚約しなくていい」
愛用の特注鎧、ディムライトの喉当から覗くシャツの襟を摘まんで見せる。
「お前なあ!」
からかいながら置いて行く荷物を配置し、魔石のトラップもしかけておく。テントに入って30秒以内に解除しないと落ちにくい塗料を水魔法でぶっかける、リオリー魔法店の新商品候補だ。
「ん、行こう」
「はあ、もう疲れてきたぞオレ」
頑張れ少年。
~★~
散々からかわれた後、オレはアクセラの前に立って外庭探索に繰り出した。テントが集まっている場所から離れると冗談がぱたりと止んで、代わりに指摘や解説が入り始まる。
ゴーレムの特徴は人に似た形をしていること。武器も人間と同じ物が使える。大抵は防具が必要ないほど頑丈で、時々鎧そのものがパーツの個体がいる。そんな有様だから勘違いしやすいが、あくまで人工物にすぎない。だから関節の稼働や致命傷の場所も人間とは違う。肘も膝もほぼ360度回るし、魔石の位置は腹か肩が主だ。
草場での戦い方はそう難しくない。視界が開けている分奇襲は基本的にないと思っていい。ただ草丈によって警戒することが変わってくる。短ければ気にしなくていい。やや長ければ地を這う蛇のような敵や攻撃に気を付ける。さらに長ければ足に絡まる危険が出てくる。雨が降った後はなおさら。いよいよ長いと背の低い相手や屈んだ相手、あるいは獣などが隠れられる。今回はくるぶしと膝の間だから、蛇と絡まりに注意だ。
「狭い場所、動かなくていい場合、草を斬るのもアリ」
草刈りしたり踏みつぶしたり、活動範囲から丈の長い草を消してしまえばいい。その作戦は今回使えない。広い外庭を探索して回るのに全て草むしりは、ぶっちゃけしたくない。
「焼き払うのも手だけど、被害が出る」
城にまで燃え移ったら大事だ。それでなくてもテントのあたりまで燃え広がるかもしれない。それに火はオレたちも苦しめる。そのくせ本命のゴーレムは火に強いと来れば悪手中の悪手だ。
「外庭のゴーレムは遅くて単純。そのかわり筋力がある。できるだけ手早く倒して」
「おう!」
「早速いた」
オレが返事をするのとほぼ同時、アクセラが白い杖で進行方向を指示した。
いいけど、それ室内杖じゃね?
一抹の不安を感じながらも指示された方を見る。オレと同じくらいの背丈のゴーレムがいた。焼き物のような色合いのそいつは手も足も頭もひょろっとしていて、可愛くもかっこよくもない人形みたいだ。一番シンプルな人型の模型とでもいうのか。
「ポタリーゴーレム、最下級の一種。Eランク」
「お、おう。来い!」
顔も何もない人型が草むらの中に立っているのは結構不気味だ。そんな気持ちを吹き飛ばすように腹から声を出した。
カチャ……カチャカチャカチャ
こっちを認識した。音を立てながら走ってくる。早歩きくらいの速度で本当に遅い。
「最初は魔法なしで」
「もちろん!」
充分に近づいて来るのを待つ。手には焼き物の剣……じゃないな、鈍器のような物を握っている。
カチャカチャカチャ
あと剣2本の距離でポタリーゴーレムが鈍器を振り上げる。遅いけど、重い。そういう音がした。
「やぁ!」
気合いを発して右手の剣を真横に構える。左手の中盾を前面に立てる。そしてスキルだ。
『騎士』内包スキル『中盾術』シールドチャージ
青い光に盾と足が包まれ、すごい勢いで前へ押し出される。2歩の距離を大股で突進したオレの体はそのまま正面からポタリーゴーレムに激突。皿を落としたような嫌な音が耳に響いた。
「まだ!」
「おう!」
目の前のこげ茶色野郎はまだ立っている。シールドチャージの硬直が解けた直後、突きだした右腕の剣で次のスキルを発動する。
『騎士』内包スキル『剣術』横薙ぎ
薄青い光に腕が引っ張られる。真横に切りつける技はポタリーゴーレムのがら空きの横腹を強かに叩く。シールドチャージで罅だらけになった体が大きく割れる。肩から先がぼろりと取れて持ち上げていた鈍器も地面に落ちた。
「しゃあ!」
『騎士』内包スキル『盾術』シールドフィスト
盾で殴りつける単純なスキル技。それがうまく胴体の真ん中に命中すると、残っていた半身の罅から真っ二つに割れてしまう。ポタリーゴーレムは中空だったようで、上下に分かれた体の断面は伽藍洞だ。そこからぽろりと小さな石が飛び出す。
「魔石、か?」
茶色の半透明な小石、土の魔石だ。濁りが酷いし形も歪で歪みもある。たぶんギルドに持ち込んでも売れない。
「初討伐、おめでと」
「お、おお。そうだな……なんか拍子抜けだったけど」
普段からマレシスみたいな相手と戦っているからだろうな。Eランクの魔物がとても弱く感じた。ポタリーゴーレムが相性のいい敵だったからかもしれないけど。
「この石、何かに使えるのか?」
「リオリー魔法店なら買うけど」
前にちょこっとだけ寄った店か。アクセラとエレナが一枚噛んでいるとかなんとか。
「いや、記念にとっとこっかな」
「ん」
アクセサリーに填め込めたらマリアにでもあげようか。見た目のあんまり綺麗な魔石じゃないけど、俺の初戦果だったら喜んでくれそうだ。
「マリアに上げるならちゃんと処理してからね」
「うっ」
「未処理の魔石は暴発しかねない」
「わ、分かった」
なんでだろうな。アクセラには思っていることがほとんど把握されている。まるで親父の留守を預かるウチの家宰みたいだ。年寄り独特の勘の良さがあって何度も悪戯を防がれた記憶が……。
「次が来た。一気に3体」
言われてそちらを見るとポタリーゴーレム3体がゆらゆらと歩いてこっちに来ている。
「今度は参加する。でも火魔法はポタリーゴーレムに効きが悪い」
「じゃオレが攻撃でアクセラは牽制だな」
「ん」
魔法使いと連携するのは初めてだ。でもアクセラなら、なんとなく背中を任せられる気がする。
「まずは右のヤツからいくぜ。アクセラは左のをメインに頼む」
それだけ言って返事もまたずに走りだす。位置取り的にこっちから仕掛けた方が絶対安全だからな。
やべえ、楽しい!
初めての実戦は恐怖よりも湧き上がる高揚感が強かった。これなら夜までに外庭を制圧できるんじゃないかと思うくらいに。
~★~
「大丈夫?」
日もだいぶ傾いてきた頃、剣を支えに荒い息を吐くレイルに寄り添う俺は訊ねた。ペース配分を考えずに暴れまくったレイルは15体目のポタリーゴーレムを破壊したところで消耗してしまい、外庭の壁にすがるように休んでいるところだ。
「ぜぇ、ぜぇ……お、思ったよりキツいぜ」
ポタリーゴーレムとの連戦は意外な罠が隠れている。それは相手が脆いということ。必要量を超えて破壊に力を込めれば、余剰分の勢いを殺すために急制動を掛ける必要が出てくる。人の体は予想外への反射と急ブレーキにあまり強くない。自分が込めすぎた力でどんどん体力を奪われてしまう。
「突進系の方が実は向いている」
腕だけアシストがかかる打撃系スキルは体がつい反動を殺そうとしてしまう。それに対して全身にアシストがかかる突進系は相手を破壊してもそれを超えて駆け抜けるまでが一連だ。無駄な制動がない分負担も少ない。
「は、早く言ってくれよ」
「折角だから体感してもらおうかと」
教訓は痛い方が覚える。
「げ、団体が来たぞ……」
「レイルは休んでて」
立ち上がろうとする少年の肩をそっと押さえて前に出る。相手はポタリーゴーレムが3体にそれまで見なかった種類のゴーレムが2体。銀よりやや白っぽく鈍い輝きの金属でできたそれらは、形だけならほぼポタリーゴーレムと同じに見える。
「あれは?」
「ホワイトメタルゴーレム……私はツイてる」
ホワイトメタルとはピューターのこと。俺がリオリー魔法店の試作品を作るとき、金属部品の自作に重宝している素材のアレだ。このゴーレムを倒して回収すれば当分の間ピューターを買わずに済む。
「レイル、魔法使いは接近戦が苦手。そう思ってるでしょ」
「え、ああ」
突然振られた話題に戸惑いつつも頷くレイル。そこで俺は刀を抜かず杖だけ片手に小さく笑って見せる。
「見せてあげる」
地面を蹴って一番近いポタリーに狙いを定める。白木の杖にはその稀有な特性を生かしてしっかりと魔力が充填してある。魔力糸の応用でたっぷりと溜め込んだそれは火属性。焼き物の体を持つポタリーゴーレムとは相性がよくない。
それも、使い方次第。
「ふっ」
緩慢な人型の腕をかいくぐって腰の継ぎ目に杖先を突きつける。チャージしてあった魔力を半分ほど注ぎ込む。
「!!」
神経の代わりに魔力の指示系統を持つゴーレムはその違和感に硬直した。しかしすぐに前も後ろもない構造を活かして殴りつけようとする。横薙ぎに振るわれる腕を掴んで力の向きにいなし、勢いよく空ぶったその胴体にもう一度杖を突きつける。
「セット」
小さな魔力糸を継ぎ目から体内へ入れてやる。その端は杖につながったままだ。体勢を立て直す前にポタリーの腕を左手で捕まえる。右手で腹の継ぎ目を掴み、懐に潜り込んで重心を近づける。
「や」
肩に乗せるように力を加えてポタリーを担ぎ、重たい体を勢いのまま投げ捨てる。柔術の技に近い投げで放物線を描かされたポタリーゴーレムは、回避もできずにもう一体のゴーレムに見事命中。
「着火」
杖を振って魔力糸に命令を伝える。それは簡単な魔法化の命令。火の魔力を現実の火に変えるだけのものだ。して、その効果は絶大。体内の魔力が一気に魔法化した一体目のゴーレムは成す術もなく爆発し木っ端微塵だ。ぶつかって下敷きにされたもう一体を自分の破片で粉砕しながら。
「2体」
レイルに視線を送る。彼は目を見開いて固まっていた。魔法使いがあのレンジで戦うところを目にする機会、この国ではなかなかないはずだ。
「あとは」
3体目のポタリーまでは結構な距離がある。ホワイトメタルの方が近い。ただホワイトメタルゴーレムは丁寧に解体したいので先にポタリーを始末したい。
「青き火よ」
最後のポタリーゴーレムに向けた白木の杖の先、酸素と火の魔力が混じり合って灯るイメージで魔法を発動させる。生じるのは青いファイアボール。中心からやや暗い青、眩い青、薄く揺らめく青と3つの層に分かれた拳2つ分の火球。エクセララの青い炎と呼ばれる魔法系技術の代名詞だ。
「ん」
更なるイメージを足す。薄い色で揺らめく部分からもっと深部へ酸素を引きこむようなイメージだ。すると次の瞬間にはファイアボールが一色に染まる。白っぽい青、最も温度の高い外側の色に。
ろうそくの火は酸素が十分な外炎、不十分だが明るい内炎、ほぼ燃焼していない炎心に分かれており、温度は順番に下がっていく。それと同じことがファイアボールにも起きているのだが、これは意図的に全体へ酸素供給を行って全体を外炎にしたものだ。普通のイメージではなく風魔法との混合魔法として発動する。
「……燃費わるい」
理論的に可能なのは知っていたけど、やったのは初めて。特殊な状況でない限り必要ない代物だな。今はその温度が必要な特殊な状況というわけだ。
「バーンバレット」
撃ちだした蒼炎の弾丸は真っ直ぐに遠くのポタリーゴーレムへ着弾。その上半身を真っ青な炎で包み込んで焼き始めた。魔力をたっぷり練り込んだ魔法は轟々と燃え上がって消える様子がない。
「……」
物言わぬゴーレムはそんなことに気を取られもせず、淡々とこっちを目指している。だが俺はもうそっちを見ていなかった。大事なピューターの塊が2つ、もうすぐそこまで近寄っているから。杖を腰に戻して紅兎を引き抜く。
「いくら浮くかな」
皮算用を始めながら踏み込む。
解体作業を行う際中、陶器を地面に投げ出したような騒音がどこかで聞こえた。
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喜んでいたのですが、知り合いには遅くね?と言われてしまった次第です。
遅いんですかね……読者さん諸氏、是非ポイント贈呈のひと手間を拙作にしてやってください。
この後書きのちょっとしたの方で3回くらいクリックするだけなので、是非是非。
~予告~
覚悟とは。
その問いにかつての敵は怒り、執事は微笑む。
次回、一歩の幅




