夢の舞台は飛び立つ小鳥
オリンピックに出て、金メダルを手にするというのは、一人のアスリートが見た夢であって、僕が見た夢じゃない。
小学生の頃に始めて、十年以上も続けた陸上を、高校三年で引退し、そのままやめたことに未練はない。
昔はもっと、一生続けると思っていたし、確かにオリンピックに出たいとも思っていた。と思う。
だけど、僕は自然とやめた。
続けられたし、始めなおすこともできたけれど、やめ続けた。
無意識的に、自分の意思でやめた。
やめるという道を歩くことは、僕にとって、とても自然なことだったのだ。まあ、言い換えてしまえば、僕は流されただけなのだけれど。昔から、病的なほど運には見はなされてきた。
でも僕は、確かに、自分がやめたいからやめたはずだ。
離れたくてグランドを離れたはずだ。
練習に嫌気が差したのかもしれない。三角形の頂点どころか、台形の上底にも手が届かないと思ってしまったのかもしれない。もしかしたら、またいつでも戻って来れると思っていたのかもしれない。
なんにしても、不思議な話だ。どうして僕は、かつての同級生で、部活のマネージャーで、幼少期からの友に、その頭に、拳銃なんかを突き付けているのだろう。