再会
新型パワードアーマーによる模擬戦は、死闘の末タカサカの駆る紫電が勝利を収めた。
その後後始末を終えて休憩所へと移動する相内はオペレータの岡島綾、模擬戦の相手のウィリアム・タカサカとそのオペレーター橘香織と出会う。
しばしの休憩の時間を無駄にはしまいと、相内は休憩室へと早歩きで移動する。休憩室まではまだ階段を下りたり、廊下を曲がったりと少し遠い。できればその間を行く途中で話相手でも見つかれば暇はしないだろう。ちょうど階段の踊り場まで降りたところで先ほどまで一緒に戦ったパートナー、オペレータを担当した岡島綾と出会った。綾はこちらに気づくと少し難しい顔をしながら話しかけてきた。
「相内さんお疲れ様です。 先ほどの模擬戦はこちらの力が及ばずすみませんでした」
謝罪の言葉を述べると、軽く頭を下げてきた。
「岡島さんのせいじゃないよ。結局は俺の実力と時の運さ」
実際綾はオペレータとしてやれることはすべてやってくれた。謝られるのは違和感があると思った。
「特に最後の一撃は時の運というか、なんかいろいろ重なってこういう結果になったんだし」
「確かに最後の一撃はかなり運というものがあったように思えます」
最後の一撃は相内が先にレーザーブレードの刃っ先で相手をとらえたが、その前に紫電が上げていた砂煙により粒子の威力が減衰し、ダメージが少なかった。一方後に手を出した紫電は殴るように相内にレーザーブレードを突き当ててきた。その距離はほぼ零距離つまり砂煙による影響はほとんどなかったため相内の敗北になった。
「もし、それを狙ってやっていて、わざと砂煙をあげていたら…」
「まさか! さすがにそれはないですよ! できてたら天才ですよ!」
戦略によるこちらの敗北は全力で否定された。
「じゃあ、そうしていた俺は天才かな」
日系アメリカ人、ウィリアム・タカサカが少し黒い顔で笑顔をつくる。 隣には長身のいかにも真面目そうな女性、橘香織が立っている。
「タカサカさんと橘さん!」元気に綾が挨拶する。タカサカもそれに手のひらを見せて返す。そして自慢げに自己の行動を解説する。
「あれは戦略的なもんさ、お前と高校時代をずっと過ごしてきたから分かるんだよ。 あんなときお前はきっと勝負を焦って周りが見えなくなるってのをね」
「うげ…」
タカサカに心の中を見透かされていたようで、なにか気持ち悪い。例えるならば背中に水滴が落ちてきた後の感触のような。
「それできっと相内は砂煙を舞上げてもレーザーブレードの弱点を忘れてくれると思ったんだ」
「うげげ…」
さらに今度は深層心理まで見透かされていたようで、背中に寒気が走る。
「まさにビンゴさ。しかも一番威力の低いブレードの刃っ先で攻撃してきたさ。ほんと、完全に忘れてたんだな相内」
「うげげげ…!」
もう最高に気持ち悪い。まだ占い師やメンタリストなる人に心の中を読まれるのはわかるが、高校時代一緒に過ごしてきた男友達、今までそんな観察されたように行動を分析される。高校時代そんな目で見られていたと思うと、こいつはゲイなんじゃないかと思えてくる。
「待ってください! でも今言ってることは本当かどうかかくしょうがありませんよ」綾が心の中を察したように、気持ち悪さに半身を浸からせていた相内に助け船を出す。
「いや、タカサカの行言っていることは本当だわ。 私が聞いていたもの」隣の香織が早々に綾の助け船を沈める。
「彼のあの行動には私も付いていけなかったわ。 一対一で逃げてどうするのかなんて思ったわ」
「あぁ、そういえば逃げてるときすごい焦ったように『どういうつもりよ!』なんて聞いてきたな。 砂を巻き上げる、あとは考えろって言ったけど、やっぱ人の考えられないことをするんだから俺は天才かな」自信に満ちた笑顔で自画自賛をする。
「タカサカさん、すごい…。 本当に天才ですね!」綾が感嘆の声を上げ目を見開く。確かに彼の思考の速さ、戦略性ともに”天才”と言っても過言ではなかった。
相内は高校時代からの付き合のため彼が天才的な思考を持っているのはもちろんわかっていたし、この模擬戦で改めてそう思った。
しかし「お前、変態だな」相内は先ほどの自分を観察し、知り尽くしたかのようなタカサカが気持ち悪くてしょうがなかった。




