第二話
遅くなりました。
俺は部屋の中に入ると、急いで部屋のドアを閉める。
「ふぅ・・・ったくイキナリとんでもない事言い出すんだから・・・。」
額についた汗を腕で拭って壁に掛かった時計を見る。
時計の針はちょうど八時を指している。
「あ~、まだ八時か・・・まぁいいや、着替えたらまた公式でも見て時間を潰すか。」
俺はそう独り言を呟いて着替えを始める。
今日は出かける予定も無いので、この前安売りセールで買ってきたジャージに着替える。
「っうし、それじゃあサイトでも見てみますか・・・なんか更新されてるかな?」
中学生の時に買った勉強机の前に座り、ノートパソコンの電源を入れる。
三十秒くらいしてしてからタスクバーにあるアイコンをクリックして、Yearhoo!を開く。
そして検索ワードに「IMO 公式」と打ち込み、検索結果の一番上のサイトをクリックする。
するとページが更新され、IMOの情報やイメージ映像が見れるサイトが画面に表示される。
「更新は・・・無しか。ん~そんじゃあ・・・最初の街の情報とかでも見とくか。」
俺は特に新しい情報が更新されていなかったので、無難に最初の街のマップやどんな魔法使いが居たかを調べ、片っ端から頭の中に入れていく。
「・・・それにしても魔法使いの種類多いなぁ・・・まぁ、それが売りなんだけどろうけど。」
俺はゲーム開始直後プレイヤーが居る街、「クリーア」のマップと、何処にどんな店があるかを見て、そこに表示されている魔法使い(NPC)の名前をクリックし、どんな魔法を使えるのかを一つずつ見ている。
百近くもいる魔法使いはそれぞれが違う魔法を持っているので、見ているでけでも面白い。
身体強化のみの魔法、水系統で攻撃に特化した魔法、作物などの成長を早め、それらを操る魔法。
どれ一つとして同じものは無く、どれにしようか迷ってしまうし、しかも・・・
「これで全部じゃないんだよなぁ・・・。」
そう、運営が管理しているこのサイトに、まだ載っていない魔法使いがこのクリーアには居るらしい。
しかし、それらのキャラクターについての情報は「この街の何処かに居る」という情報しかない。
ネット上では特定の条件で現れるや、この街の住人がすべて魔法使いなのでは?という意見、むしろ俺はもう魔法使いなど、少し違う意見もあったが概ねどの掲示板やスレで大いに賑わしている。
「う~ん、確かに載っていない魔法使いを探すのも良いんだけど・・・見つかんなかった時の為に何個かはピックアップしとくか。」
そう言い、俺は気になった魔法使いの名前や場所をメモに書いていく。
ざっと書き出した後、ピックアップした魔法使いが余りにも多かった為、それらを吟味した上で五人の魔法使いに絞った。
「う~ん、とりあえずこの五人の居場所は頭の中に入れとくか~。」
そう言ってメモ帳には五人の魔法使いの名前と魔法名が書かれていた。
一つ目は「クロイツ」の「黒炎魔法」。
これは俺が中二病や邪気眼だから選んだわけではない。
この黒炎魔法というのは、この系統ほぼ全ての魔法にデバフの効果がついている魔法らしく、魔法のダメージ+呪焼という、「浄化」や聖水といった聖なる加護を持った魔法やアイテムではないと継続ダメージを与え続けるという、かなりイヤらしい魔法なのだ。
・・・決して黒い炎が格好良いからとか思ってないからなっ!格好良いからとか思ってないからなっ!!大事なので二回言いましたとも。
二つ目は「バーニャ」の「聖天魔法」。
この魔法は天使の力を借りてその力を行使したり、その身に天使を宿し、擬似天使化するといった魔法だ。
この魔法はなんと言っても擬似天使化できるという「天鎧」が魅力的だ。
天使の力を宿すというだけあって、一時的だがステータスが軒並みパワーアップするし、更には天使にも種類があり、その天使によって使える固有魔法が使えるらしいのだ。
三つ目は「グラム」の「吸魂魔法」。
これは通常攻撃もすべて含めた攻撃に、攻撃を加えた相手から微量だがHPを吸収し、その吸収した分だけ自分が回復するという、どこかの死神を彷彿とさせる魔法だ。
しかもこの魔法の上級位ともなると、一定範囲の敵からHPを吸収するという、半ばチートじみた魔法と言えるだろう。
四つ目は「チャミル」の「操植魔法」。
名前から察しがつく人もいるだろうが、この魔法は植物を操り、それらを使い戦う魔法だ。
消費MPが少なく、最初から生えている植物を操ったり、生えていなくても植物の成長を早める魔法もあり、その草木の種類によっても効果が変わるという、対処がしづらい魔法だ。
そして最後に「バーボン」の「爆発魔法」。
この魔法も名前の通り爆発を主体とした魔法だが、この魔法は攻撃が当たった瞬間や指定した場所が爆発するだけでなく、爆発の力を一定方向に向けたりすることができ、足の裏や肘から爆風を起こし、一気に加速させることができらしい。
と、以上の五つが俺の上げた候補だ。
「おっ、サービス開始までいよいよ五分前か。」
どうやら思ったよりも魔法の吟味に時間がかかってしまったらしい。
時計を見ると長身が11を少し過ぎたあたりまで来ている。
俺はパソコンの電源を切り、ベットに横になって「IMO」のゲーム機---フルフェイス型のヘルメット---を被り、電源を入れてその時を待った。
---3
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時計の長針がちょうど12を刺した瞬間、俺はゲームを起動させた。
---シンクロ・ドライブ---
そう言い終わった瞬間、俺の意識は闇に堕ちていった。
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