06.異世界での家族05
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ディートリヒ視点
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あれから何年か経ち。時折訪ねた際に義妹と遊ぶ事が常だった。表情が豊かな女性というのは母以外には珍しい。立場や家の事を考えると軽い振る舞いが出来ないのは理解しているが、だ。女たちの中でも特に性質の悪いのが、私の周りに侍ってるのには正直参ってる。一応将来有望らしい自分の、あわよくば正妻候補になりたいと思ってる女性は多い。大人の思惑も絡み、女たちの熾烈な争いを成人前の自分に見せてるのだ。この中から選ぶなどぞっとする。
好みの女性は大抵、こういった争いの外だったりするが無暗に話しかけようとしても、取り巻き女が怖くて逃げられたりする。元々女性の扱いに慣れてもない自分にはどうしていいか分からない。父に相談したら、経験とのこと。この人の経験を自分も詰めというのか!?同年代の友人といっても、父の同僚の年の近い子供たちだが、どちらかというと仕事や交流が目的で、私的な付き合いが出来る者がいない。
義妹の母上が亡くなったと訃報を聞く。母も折角良い盟友が出来たのにと嘆き、あとに残された義妹の身を心配しこちらに引き取りたいと父に申し入れた。自分も賛成だった。ただでさえ物騒になってる世の中だ。けれど、謝りの返事を父から聞く。
「うん、こちらに来てくれれば良かったのだが。本人の意思が硬くってね。まあ、ずっと住み慣れた家を離れるのも不安だろう。しばらくそっとしておいてあげようと思ってね。」
「そうですね。残念だけれどしょうがないと思います。突然何もかも変ってしまうのは可哀想ですし……」
「護衛はどうなさるんです?これまで通りですか?」
「いや…私の配下の中で、何人か腕が立つのを付けておいた。」
流石父上、早いな。ああいってるからには大丈夫だろう。
義妹が邸の主人になると、何も怖いのは強盗や誘拐だけではない。年頃の若い男が最も性質が悪い。あわよくば既成事実をと狙ってるだろう。父の将軍職という威光にあやかろうと言うふととぎ者はザラにいるだろう。この国では、度々そういった事件が起きている。余りに身分階級に差があれば討ち棄てられるが、娘の世間体を考えそのまま結ばれるケースは決して珍しい事ではない。……ぞっとする。我が家の一人娘がそんな目にあわされたら(自分の火で消し済みにしてくれる――)
後になって、母上の配下が知らせを持ってきた。母はこの性格から、ちょっとした姉御で(昔、何かしたらしく、知名度が高く根強いファンがいるのだとか)ギルドにいっても将軍夫人様の、と顔がきいたりする。その知らせを受け取るとすぐ、表情が一変した。
「――な、なんですってっ!?……あ、の性悪くそ女!」
あ。この反応は…。母の癇癪を刺激する例の女性の事だろう。
「あいつ!……私がシャロンちゃん引き取るつもりなの分かってた上で、妨害のつもりか知らないけど夫に頼んでたんですって!?」
「はい、それも……」
キィィィーッ!!
例の女性とは、義弟の母の事だ。母が嫌いとしてる、陰湿な人物で今まで数多くの嫌がらせを受けてきた。年月が経ち、修復不能な犬猿の仲なのだ。母が例の女に密偵を飛ばしては、追い払われ(しかも殺すつもりで)同じように向こうもそれに負けじとまさにエンドレス状態。女の戦いは怖い。
――ああ、こうなったら長いな。
そう思い、お茶のお代りを頼んだのだった。