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2つ月の異世界で  作者: 綾女
序章
5/12

05.異世界での家族04

兄視点。次回も続く予定。

13才になった頃、母が儚くなりました。流行り病だったそうです。ある日突然の分かれにただただ放心としてました――



親族が集まりごたごたの整理がついた後。父が来て、今後の私の身の上について尋ねてきました。


正妻様が私を引き取ろうとしてくれてると聞き、そこまで面倒は掛けられないからと丁寧に断りを頼んだ。そして何故か会った事のないもう一人の兄(次兄)の母まで私を引き取りたいと申し出たのには驚いた。今まで連絡もなかったのに…?疑問が沸くし、当然そちらも断った。


母様のご実家もあったけれど、父様が傍に置いておきたいからと先に断ったらしい。どうりで、お爺様が何か言いたそうにしてると思った。けれど私の望みは――


「父様、私はこの邸から離れたくないです。」

「シャロン…まだ年若いお前がここの女主人になると言うのかい?」


誰かの庇護の元、暮らした方が良いのは分かっている。ヴィルデリロの王都は、治安が決して良いわけではない。貧富の差は社会問題にされていて、強盗・誘拐などここ最近でも良く耳にする。そんな中。年若い女の家と侮って狙ってくる輩が居るかもしれないというのだろう。


「強盗とか心配するかもしれないけど、今まで守ってきてくれた皆も居ます。不用心かもしれないけれど、隙を見せないように気をつけるから――」


お願いっ…と、父様の目を見ながら説得しばし。「はあーっ」諦めた様に大きく息を吐き頭をぼりぼりと掻いて。降参だそうです。やった。あ、声に出てました?だって知らない家、知らない環境にいくのは出来る限り避けたいじゃない。善意で言ってくれる申し出には申し訳ないけれど。


この邸に住み続ける事になったけれど、外出時には執事の許可が要る事。定期的に見に来る事が条件で二つ返事で頷いた。


・・・


--------

ディートリヒ視点

---------

私には尊敬する父とミーハーだが優しい母がいる。


父はこの国の軍人で少将と高い地位にいる。魔術の腕もさる所ながら指揮に至るまで有能な軍人だった。武勲をたててるのに関わらず、上にありがちな奢りを感じさせない。気さくに人と接する彼の姿は、民衆にとって憧れの姿だと聞くたび誇りとその後継者として重圧プレッシャーを幼いころから感じていた。


周りは努力してもしなくても、父の面影を自分に見出す。幼い頃より感じていた事だった。だが、それに負ける様な弱い心ではなかった。自分なりに見出すため、日々努力をし続けてきた。その甲斐あって、魔術の腕が徐々に認められるようになった。周囲の評判も上々で「流石、少将の後継者様だ」と認められるようになったが……けれど本当に自分が頑張って来たのには、父と母が褒めてくれる事が、何より嬉しい褒美だったというのは言わない。


そんなある日。父の娘が出来たとの知らせを、慌てて駆け込んできた従者が持ってきた。前々から通っていた女の中でもお気に入りらしいと言う事で、母の顔色が青ざめる。……我が父は、軍人としたら有能で尊敬できる人だが、女性からすると悩みが尽きないらしい。困った人だ(自分も一応被害者だが)


「ま、まあ……あの人に娘が……そう…お、お祝いしないとね」


何かしら愛人に祝品を渡そうとするのは、正妻としての権威を示すためか。けれど、その内返事が返ってきて更に顔色が悪くなる母。それには、綺麗な文字で感謝の手紙が届いた。その中には、立場的に煩わしい筈の女に気を配ってくれた事に対する母への謝罪も含まれていた。想像していたより出来た女性だと思う。実際、愛人なんてと普段軽く見ていた母だったが、その1件以来気になりだしていった。


そしてとうとう……以前から気になって仕方がなかった、その女性の邸へ突然訪問する事になった。なぜ、突然?相手に失礼だろうに。母は「ふふふ、突然だからこそボロが出るのよ~?」細かい所までみようとする。姑になると嫁いびりしないか心配だ。けれど、確かに突然の訪問にどんな反応をするか興味はある。あの風来坊で、女を渡り歩いている父が、ここ何年か頻繁に出入りしてる女性。


実際に会ってみて、繊細な造形、美しさを際立たせる長いストレートの銀髪。華奢だが、庇護欲が沸くその姿に、まるで妖精が森から抜け出した様だと思った。綺麗な人……隣の母がぽそっと呟いた。


しかし種類が違うが母とて美しい。金髪碧眼で快活。ころころ変化する表情は見る人を魅了させる。性格だって意地悪い貴婦人が多い中、陰湿な物を嫌う母は直接本人に言うし。そういった真っ直ぐな性格は見ていて男女ともに好感が持てる。


何時間か経った。立場をお互い分かっていて、性格がこれまた違うからこそ気があった様だった。こんな事がなければ、もっと親しくなっていたかもしれない。


自分は2人が喋るのをただ聞いていた。出されたケーキをゆっくり食べるが、この邸のは外部のケーキ店より糖分が抑え気味で好感が持てた。(美味しい)甘い物が苦手気味な自分だが自然手が伸びる。


ふと、目の前の女の子と目があった。隣に並ぶ母親とよく似た愛らしい少女。異母妹いもうとか。贔屓目を除いても、きょとんとするその姿に無垢で可愛いなと思う。こんな仕草に新鮮さを感じるなんて普段計算高い女たちが近くにいるから余計にそう思えた。

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