03.異世界での家族02
加執箇所
貴族の教養etc...部分。
室内は弾む会話が何時間も続いていた。
初めてこの家に来たらしい正妻と息子(長兄)を応接室で接待してるのだ。長方形のガラス机の上に並べられた数種類のケーキと紅茶、何分急な訪問に不備が無いかと今朝から母様は執事と相談しつつ慌ただしく用意していた。(突然の訪問は相手に迷惑です)
ぶっちゃけた話、何故正妻が押しかけて来たのか――けん制と観察。
近頃。お父様がこの家に頻繁に来るようになったから正妻としたら気が気ではなかったらしい。けれど、こうやって話してみるとお互い立場はあるものの通じる所があったのかそれ以外の話題で盛り上がっていた。
(まあ、うちの母様は権力とかそういうの興味ないし。むしろめんどくさそうだし。後継ぎ問題は正妻の生んだ長兄に決まってるし。)
私が今いる国はヴィルデリロ。その法律では、正妻の生んだ長兄が基本的に家の後継ぎになるのが普通です。よっぽど馬鹿とか問題無い限り。
子供には退屈そうな話だけれど。
(私?前世の記憶があるから聞きながらお茶してますよ。)
「貴女の娘さん可愛いわね。大人の話なんて詰まらないのに、じっとしてて偉いわあ。」
「うふふ、有難う。でもこの子ったら何にでも興味を持つ年だからか目が離せないのよ?」
ついこの間も。ちょっと目を離すとベッドから抜け出して屋敷内を探検したりした事。道に迷って帰ってこれなくなった事。本の読みすぎで熱出した事など。そんなことまで言わなくても……。
「あら。それが良い時期なのよー?」
と、正妻の隣に座っている長兄と目があった。艶のある漆黒の髪と瞳に日本人を連想しなかったのは彫が深い端正な顔立ちだったからか。切れ長の瞳は、自分の美的センスがおかしくなければ物凄い美形さんだ。あんまし好みでは無いけどね。一緒に居ると疲れそうだし。ふと兄の口元が笑った気がした。
「うちの子何て可愛かったのはその頃まで。いったい何をどうして、こんな澄ました子になっちゃったのかしら?」
「あらそんな。噂で聞いてますよ?文武両道で大層優秀でらっしゃるとか。」
「まあ有難う。でもほんとそれが救いなのよーこの子。」
家庭教師も唸らせる位優秀だけれど、それ故なのか冷血性格らしい兄。実の母にそこまで言わすとわ。日常思ってる事を正妻様は吐露します。兄の名前は”ディートリヒ”。
貴族の教養には一般学習の他に、ある程度の魔術の腕が要求される。元々国の成り立ちが魔術師が興した事で、その直系の子孫である貴族に求められているのだ。自然と一般人より魔力が高い者が多く生まれるので、主戦力として非常時には駆り出される。手柄を立てれば身分階級など関係なく出世できるので、家督を継げない息子達が入軍してくる。
義兄は、火系の使い手として既に有名人だとか。ていうか目の前の兄は7歳って。その年では異例だろう。将来有望で、群がる女子が目に見えてくる。
「シャロンちゃん、うちの息子とこれからも仲良くしてあげてね?」
と正妻様。「この子、友人少なくってー」って容赦ないですね。
「はい。こちらこそ仲良くしてくだちゃい」
「良かったわねー、ディー?これでお友達が1人増えたわよ?あ、可愛い妹か。」
テヘッと。……随分、ユニークなお方の様です。
ふぅ…とディー兄様。(くどいようですが……7歳児ですよね?)
一言。
「これからもよろしく頼む」