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第二部

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(文中に性的な表現が含まれておりますのでご注意下さい)




ネ・・・・ネボスケ

長・・・・長老

若・・・・若頭

鶴・・・・鶴亀

チ・・・・チーフ





鶴 「どや。驚いたか。」

ネ 「・・・・単純に『なぜ?』って思った。」

鶴 「『なぜ?』やと?・・・・へん、愚問やな。」

ネ 「なぜ、『なぜ?』が愚問なの?」

鶴 「僕の一番好きな言葉、知ってるか?」

ネ 「え、知らないけど。」

鶴 「『本能のままに』や。」

ネ 「本能の・・・・ままに?」

鶴 「僕らセイシの生き方をすべて言い表している言葉や。理由なんているか!僕の本能が大女優になりたい言うてる。それだけのことや。」

ネ 「理由なんていらない、本能のままに・・・・か。さっき長老もそんなこと言ってたっけ。」

鶴 「セイシにとって当然の考え方や。理由が気になるなんてネボスケは相当変わりもんのセイシやで。」

ネ 「そうなのかな・・・・。」

鶴 「まあそれはええとしてやな、僕の夢の話の続きや。」


周囲ではセイシと白い悪魔の熾烈な攻防戦が続いている。


鶴 「まずはな、『カリスマ読者モデル』になんねん。」

ネ 「カリスマ・・・・読者モデル?何それ?」

鶴 「なんて言うたらええかな。まあ女優になるためのステップのひとつやな。あ~、もう、説明すんのしんどいわ。いいから聞いとけ。」

ネ 「・・・・。」

鶴 「でな、僕は女子中高生の憧れの的になるわけや。そうしたら今度は清純派女優として鮮烈デビューや。」

ネ 「・・・・。」

鶴 「ほんで、新人賞を総なめにしてやな、その内、歌手活動をしたりもするんや。」

ネ 「え、女優だけじゃないの?」

鶴 「そうや。本能のままにやりたい思たことをするわけや。いろんな経験をすることが演技力への糧になるんやで。それからな・・・・、」

ネ 「・・・・でもひとつ気になることがある。」

鶴 「なんや?」

ネ 「そもそも女に生まれるかどうかなんてわからないんじゃない?男に生まれるかもしれないし。」

鶴 「うっ。・・・・あほ言え。僕は女に生まれんねん。僕の本能がそう言うてる!」

ネ 「でも例え男に生まれても、役者にはなれるよね。」

鶴 「あほ言えて!僕は『大女優』にしか興味あらへんねん。それ以外は問題外や。もし仮に男に生まれたとしても、僕は『性転換手術』をしてでも大女優になったるわ!」

ネ 「すごい。迷いがない。これが本能・・・・。」

鶴 「そうや。僕は男に生まれようが、大女優になる。そしてそこに理由なんてあらへん。本能のままに、や!」

ネ 「・・・・。」

鶴 「人間になるとみんな『理由』や『意味』みたいなもんをちょこざいに考え、悩みよるやろ。『生きる意味』やらなんやらと。セイシの僕から言わせてもらえば、あほやな。」

ネ 「・・・・。」

鶴 「セイシのように本能のまま生きたったらええねん。ネボスケもそう思わんか?」

ネ 「うん、まあ。」

鶴 「だから僕は人間になったら、本能のままに生きる人間になろう思てる。ネボスケも理由や意味ばかり考えるつまらん人間にはなるなよ。」

ネ 「うん、わかった。」

鶴 「よし。じゃあ、僕の夢の話に戻るで。女優で賞を総なめにして、歌手で7週連続オリコン1位を獲るやろ。そしたら、きりのいいところで仕事を全部ストップして結婚すんねん。相手は、そうやなあ。『クリエイター』的なんがええな。なんか、一番本能のままに生きてそうな気ぃするやろ。ほんで・・・・、」



鶴亀の夢の話はそのあとも延々と続いた。僕はそれをただ黙って聞いていた。気がつくと周囲に白い悪魔の姿はほとんどなくなっていた。



長 「よし!みなの者、ご苦労であった。ここらで一旦休憩を取ろうではないか。」



長老がセイシ達にそう号令をかけると、ここまで生き残れたという安堵の表情を浮かべ、みんなは休憩に入った。と、そのとき一匹のセイシが長老に何やら話しかけた。



チ 「長老、お疲れさまでございます。」

長 「おお、『チーフ』か。いやいや、なんのなんの。おぬしこそ大変じゃったのう。」

チ 「いえいえ、私は自分の役目を果たしただけでございます。」


ネ 「鶴亀、あのセイシは誰だい?」

鶴 「ああ、あれはチーフや。」

ネ 「チーフ?」

鶴 「そうや。アタッカーセイシの隊長が若頭なら、チーフはブロッカーセイシの隊長といったところやな。」

ネ 「そうなんだぁ。」


長 「それで、状況はどんな案配じゃ?」

チ 「はい。ここに至るまでに約二億四千万匹いたセイシ達の約99.9%が死滅しました。つまり生存率は約0.1%ということになります。」

長 「そうか~。おぬしはこの結果をどう見る?」

チ 「はい。決して悪くない結果であると考えております。」


ネ 「大勢のセイシ達が死んじゃったんだね・・・・。」

鶴 「そうやな。死んだやつらの分も僕らが頑張らなあかんな。」

ネ 「でもさ、チーフはどうして生存率とかそんなことがわかるの?数えたのかな?」

鶴 「ぷっ。あほ。チーフを『野鳥の会』みたく言うな!チーフはな、『テレパスセイシ』やねん。」

ネ 「テレパスセイシ?」

鶴 「そ。ごく一部のブロッカーセイシには、『離れた場所にいる相手と意思疎通ができる能力』が身に付くらしいんや。」

ネ 「テレパシーというやつだね。」

鶴 「そうや。チーフはうちのブロッカーの中で一番のテレパシー能力の使い手というわけや。せやから、生存率なんて一瞬でわかるらしいで。」


チ 「!!」

長 「どうしたのじゃ?」

チ 「長老、大変です!今、『先遣アタッカー部隊』からテレパシーで連絡がありました。」

長 「おお、わしらより先行して進軍しておる部隊じゃな。それで、なんと?」

チ 「はい。先遣アタッカー部隊からの情報によりますと、どうやら『先客』がいる模様です。」

長 「な、なんじゃと・・・・?!」

チ 「つまり、我々と『異なるルーツ』のセイシが、我々より先にこのシーワールドに侵入していたということになります!」

長 「なんということじゃ・・・・。」

若 「女は昨日、他の男とメイクラブをしていた。つまりはそういうことだろ。」


戦いから無事生還した若頭が話に加わってきた。


チ 「若頭か。」

長 「下世話に言えば、そうなるのう。」

チ 「長老、いかがなさいますか?」

若 「イカもタコもねえよ。んなもん、ぶっ殺すのみだろうが。」

長 「確かに、我々セイシにはそれしか道がないからのう。」

チ 「・・・・。」

若 「おいチーフ。敵セイシ部隊の情報は入ってんのか?」

チ 「・・・・先遣部隊はほぼ壊滅状態だ。この壊滅のされ具合から推測するに、敵セイシ部隊は我が部隊の三倍以上の兵力を有していると思われる。」

若 「三倍以上だと?・・・・・・・・・・上等じゃねえか。」

長 「まあ、そういきがるでない。ここはいったん冷静になって作戦を考えようではないか。」

チ 「おっしゃる通りです。」

若 「ふん。」

チ 「長老、それでは先遣部隊からの追加情報などを勘案しまして、私のほうからひとつ、作戦の提案をさせていただきます。」

長 「ふむ。」

チ 「まず我々の現在位置をP地点、敵部隊側主要陣営の現在位置をQ地点とします。このP地点からQ地点に移動するには大きく分けて二通りのルートが考えられます。」

若 「二通りだと?」

チ 「ええ。最短で行けるが、敵の真正面からぶち当たることになる『直線的Aルート』と、もうひとつは時間はかかるが、隙をついて敵の側面から突入できるであろう『迂回的Bルート』です。」

長 「なるほどのう。」

チ 「多少時間はかかりますが、敵部隊との兵力差を勘案し、少しでも勝率を上げるために迂回的Bルートから行くことを私は提案致します。」

若 「はん!ふざけんな。迂回なんてしてられっかよ。真正面からぶち当たる?上等じゃねえか。それがセイシの生き様ってもんよ!」

チ 「戦とは勝算を推し量ってするものだ。いくらセイシとは言え、なんでもかんでも真正面から攻めればいいというものではないぞ、若頭。」

若 「・・・・勝算か。勝算ならあるぜ。」

チ 「なんだと?なら、聞かせてもらおうか。」

若 「勝算はずばり、このオレだ!」

チ 「は?」

若 「アタッカーセイシ最強のこのオレが、敵部隊の大将首を電光石火で獲ってきてやるよ。」

チ 「ほう。それがお前の勝算というわけか。長老、是非長老のご意見をお聞かせ下さい。」

長 「うむ。まあ、慎重に攻めるに越したことはないのう。」

若 「!」

長 「・・・・が、しかし、時間がないのも事実じゃ。玉姫様を敵セイシに奪われてしまっては、何の意味もないからのう。」

若 「長老のおっしゃる通りだぜ。モタモタしてたら先を越されちまう。」

長 「若頭、この戦はおぬしの腕にかかっていると思うが、やれそうかのう?」

若 「当然ですよ。セイシに二言はありません!」

長 「・・・・よし。若頭を信じて、わしらはAルートから攻めることにしようぞ。」

チ 「長老がそうおっしゃるのなら、我々はそれに従うまでです。」

若 「へん。オレは幸せもんだぜ。セイシとして生まれ、こんなに血湧き肉躍る思いができるんだからな。」

チ 「長老、出発は何時間後ぐらいに致しましょうか?みなの体力の回復を待たなければいけないので、少なくともあと・・・・、」

若 「今すぐだ。」

チ 「は?」

若 「今すぐ出発だと言っている。」

チ 「何を言っているんだ?試練の道と白い悪魔との戦闘で消耗しきったみなの体力を回復させるために、少なくともあと数時間の休息は必要。それぐらいのことはわかるだろう?」

若 「オレらアタッカーはそんなにヤワじゃねえ。てめえらブロッカーはどうだか知らねえけどよ。」

チ 「・・・・なんだと?!」

若 「さっき言ったろ。オレたちにはのんびりしてる時間なんかねえって。」

チ 「しかしだな・・・・、」

若 「先遣部隊は壊滅こそしたが、先遣部隊との戦闘で敵部隊の陣形は今かなり乱れているに違いない。」

チ 「!」

若 「チャンスは今しかねえ。それとも、先遣部隊の死を無駄にするってえのか?」

チ 「うっ・・・・。」

長 「・・・・うむ。」



若頭のこの一言でみんなの気持ちはひとつになり、僕らはろくに休息も取らず、直線的Aルートを通って、敵地へ攻撃を仕掛けに向かった。体力が消耗しきっている状態であったにも関わらず、僕らは予想以上の速さで敵地に到着し、そして若頭の予想通り、陣形の乱れていた敵セイシ部隊へ一気に奇襲を仕掛けたのだった。


僕らの部隊は数では圧倒的に劣っていたが、若頭の獅子奮迅の活躍と、チーフのテレパシー能力を駆使した緻密な連係プレーを背景にして、短時間の内に敵部隊を制圧し、圧倒的勝利を飾った。



この戦はのちに、『オケケハザマの戦い』と呼ばれて語り継がれることとなる。



鶴 「ひえ~。ほんまに勝ちよったで・・・・。」

ネ 「そ、そうだね。数は多かったけど、案外弱いセイシ達だったのかもね。」

鶴 「それはちゃうぞ。向こうは十分強かってん。ただ、若頭の強さが半端なかったゆうこっちゃ。」

ネ 「そうなの?」

鶴 「若頭一匹で、何千匹の敵セイシをぶっ殺したかわからん。まったく、敵に回したら恐ろしいが、味方にいてくれたらこれほど頼もしいセイシはおらんで。ほんまに。」

ネ 「若頭が人間になったらものすごい人間になりそうだね。」


長 「若頭、ご苦労じゃったのう。さすがのおぬしもヘロヘロじゃろう。」

若 「ふう~。いえいえ、まだまだいけますよ。ただ他のアタッカーのやろうどもは相当へばってますがね。半日ぐらいはまともに動けないんじゃないすかね。」

長 「そうじゃのう。だが、本当にみなよく頑張ったのう。玉姫様のおわす子宮殿はもうすぐじゃ。ここでしっかり休息を取ったのちに向かおうぞ。」


一同 「おーーー!!」


長 「さあて、あとは生き残った敵捕虜セイシの処遇をどうするかじゃな。チーフよ、敵の生き残りはどのくらいおるんじゃ?」

チ 「・・・・。」

長 「ん?チーフ?」

チ 「・・・・はっ!申し訳ありません。」

長 「どうしたのじゃ?」

チ 「今しがた、後方に残って防衛線を張っている『後方ブロッカー部隊』からテレパシーによる連絡がありました。」

長 「ほう。それでなんと?」

チ 「大変申し上げにくいのですが・・・・、」

長 「なんじゃい。勿体ぶらんと言え。」

チ 「はい。新たな敵セイシが現れたということです。」

長 「な、なんじゃとー?!」

チ 「しかも、後方部隊が張っていた第一防衛線、第二防衛線を共にいともたやすく突破されました。敵は相当のつわものセイシであると言わざるを得ません。」

長 「なんということじゃ・・・・。」

若 「あの女、やってくれるじゃねえか。三夜連続ってわけかよ・・・・。」


鶴 「信じられへん。三夜連続別の男とって、ありえへんやろ。」

ネ 「発情期だったのかな。」

鶴 「あほ。サルやあるまいし。あ~ぁ、今度こそ、僕ら終いや。」

ネ 「まさに『セイシのバトルロワイヤル』だね。」

鶴 「のんきなこと言っとる場合か!」


動揺を隠せないセイシ達に長老が語りかけた。


長 「みなの者、よう聞け。今、新たな敵セイシ共が後方から向かってきておる。チーフ、やつらの予想兵力数はどのくらいじゃ?」

チ 「はい。我々が先の戦で半数以上の犠牲セイシを出したことを考えますと、敵セイシの兵力数は最低でも我々の七倍以上だと考えねばなりません。」

長 「そうか。みなの者、聞いての通りじゃ。次の戦は我々にとって、非常に分の悪い戦になろう。」

一同 「・・・・。」

長 「しかも、みなの体力は限界を超えておる。まさににっちもさっちもいかん状態というわけじゃ。」


長老のその言葉を聞いて、落胆の色を隠せないセイシ達。


長 「そこでわしは考えたのじゃが、エッグゲッター達を先行させて行かせようと思うとる。」

ネ 「え、僕らだけ?」

長 「そうじゃ。戦に参加していないエッグゲッター達は比較的体力が残っているじゃろうから。」

ネ 「いや、僕らだって、ここまで必死に走ってきてヘロヘロですよ・・・・。」

若 「甘ったれたことぬかしてんじゃねえぞ。」

ネ 「・・・・はい。」

長 「それにこの先には、もう白い悪魔もあまり出んじゃろうから、エッグゲッター達を単独で行かせても大丈夫じゃろうと踏んでおる。」

鶴 「この先は僕らエッグゲッターだけの戦いが始まるゆうわけですね。」

長 「うむ。わしらブロッカーとアタッカーはこの場にとどまり、玉砕覚悟で敵を一秒でも長く足止めすること。これが我々に残された最後の使命じゃ。みなの者もそう心得てくれ。」



長 「ネボスケ、ちょっとこっちに来なさい。」

ネ 「はい、なんでしょう?」

長 「おぬしに渡すものがあるんじゃ。これは我々一族に代々伝わる由緒ある『指輪』じゃ。」

ネ 「指輪、ですか?」

長 「この指輪はセイシを人間へと導くチカラがあると言われておる。それをおぬしに託そう。」

ネ 「え、なぜこれを僕に?」

長 「一番可能性を感じたエッグゲッターにこれを託すこと。それがわしの隠された役目なんじゃよ。」

ネ 「僕なんかでいいんですか?だってもっと他に・・・・、」

長 「おぬしは自分の可能性に気づいていないだけじゃ。わしはおぬしをひと目見たときから、なにか光るものを感じておったよ。」

ネ 「でも、でも、こんなすごいものを託していただいて、それで人間になれなかったら、僕はみんなに申し訳なくて・・・・、」

長 「行け。時間がない。」

ネ 「でも、でも・・・・、」

長 「おぬしが道半ばで朽ち果てるようなことがあれば、わしの目が狂っておったというだけのこと。おぬしは気に病む必要などないんじゃ。」

ネ 「・・・・。」

長 「本能のままに、じゃ。」

ネ 「・・・・わかりました。」

チ 「・・・・。」



僕は長老から指輪を託され、そして他のエッグゲッター達と共に先を急いだ。その場に残った僕らのセイシ部隊と後方からやってきた新たな敵セイシ部隊との戦いは、壮絶な天下分け目の一大決戦となり、のちに『セイキガハラの戦い』と呼ばれて語り継がれることになるのだが、先を急いだ僕にはどんな戦いが繰り広げられたのか、詳しくはわからない。



ネ 「鶴亀、おしゃべりな君がなんでさっきから黙り込んでるの?」

鶴 「今はおしゃべりしてる場合とちゃう。敵が襲ってくるかもわからんから神経研ぎ澄ませなあかんねん。」

ネ 「そっか。そうだよね。僕ら戦闘能力ゼロなんだもんね。」

鶴 「・・・・ほんまは悔しいねん。」

ネ 「え?」

鶴 「長老が最後に選んだのが、僕やのうてネボスケやったのがむっちゃ悔しいねん。」

ネ 「・・・・。」

鶴 「でも安心しい。僕もセイシの端くれや。その指輪を奪おうとかそんなことは考えてへん。他の連中も同じ考えやと思う。」

ネ 「・・・・。」

鶴 「だが、僕は僕で最後まで最善を尽くすで。指輪があろうが、なかろうが、や。」

ネ 「鶴亀、僕は君のほうが・・・・、」


と、その時、後方から一匹のセイシがやってきて僕らに声をかけてきた。


チ 「待ちたまえ。」

ネ 「え?・・・・チーフ?」

鶴 「なんで?・・・・なんでチーフがこんなとこにおんの?」

チ 「君らに追いつくためさ。」

鶴 「いや、でも戦のほうはどないなったんすか?」

チ 「知らない。」

鶴 「は?・・・・だって、戦の司令塔であるあなたがいなければ、みんなはどないして戦うたらいいんすか?」

チ 「はっはっは。今頃、困っているだろうな、みんな。」

鶴 「・・・・気でも狂いましたんか?」

チ 「いいや。私の目的は最初からひとつだ。それは指輪だ。」

ネ 「!」

チ 「その指輪のために、私は我慢して長老に仕えてきたのだよ。指輪を手放した長老は私にとって、ただの目の上のタンコブでしかない。」

鶴 「なんやて?」

チ 「それと邪魔者の若頭。あの二匹は死んでもらったほうが、私にとってはありがたいのさ。」

鶴 「チーフはん、長老らを裏切る気なんか?」

チ 「はっはっは。裏切るもクソもない。我々は『たまたま同じバスに乗り合わせた乗客』に過ぎない。すべては見せかけなのさ。見せかけの連帯感。見せかけの友情。」

鶴 「あほか!セイシにだってなあ、やっていいことと悪いことがあるんや!」

チ 「くくく。鶴亀、君の最も好きな言葉はなんだったかな?」

鶴 「そ、それは・・・・。」

チ 「『本能のままに』、だったね。私は今、本能のままに行動しているに過ぎない。」

鶴 「くっ・・・・。」

チ 「さあネボスケ君。君が長老から託されたその指輪、私に譲ってもらおうか。」

ネ 「ちょっと待ってくださいよ。長老に託されたこの指輪、そう簡単には渡せません。それに第一、ブロッカーのあなたがこの指輪を手に入れてどうするっていうんですか?」

チ 「その指輪さえあれば、ブロッカーの私でも人間になれる。私はそう確信している。さあ渡しなさい。」

ネ 「嫌です。」

チ 「そうか。なら殺して奪うまでさ。」

ネ 「!」

鶴 「ネボスケ、やつは本気や。このままやと、戦闘能力ゼロの僕らエッグゲッターは全滅する。」

ネ 「せっかくここまで来たのに・・・・。」

鶴 「そうや。子宮殿はあともう少しなんや。せやからネボスケ、よう聞け。」

ネ 「う、うん。」

鶴 「僕らでやつをなんとか足止めしたる。その間にネボスケは先に行くんや。」

ネ 「えぇ!そんなぁ・・・・みんなを残して僕一匹でなんて行けないよ。」

鶴 「あほ。ええか。こういう状況に陥った場合、指輪を託されたお前を生かすことを優先すんのが、セイシとしての僕らの使命や。」

ネ 「でも・・・・、」

鶴 「今この場に長老がいはったら、同じ事を言うとるはずや。」

ネ 「長老が?」

鶴 「ああそうや。長老もそれを望んでるはずや。」

ネ 「でも鶴亀、君の夢はどうなる?あんなに具体的に思い描いていたあの夢を、君は・・・・、」

鶴 「はよ行かんかいっ!あほ!ぼけ!かす!ちんたらしてっと、ほんまはっ倒すでっ!!」



鶴亀にそう発破をかけられた僕は、決心のつかぬまま、半ば強引に押し出され、そして走り出した。そう、考えることを止め、走り出してしまったのだ。みんなを置き去りにして・・・・。


僕は自分に残されたチカラを振り絞って、全力で走った。しかし、非情にも、ものの数分もしない内に、僕はチーフに追いつかれた。



チ 「やあ。また会ったね。」

ネ 「ハア・・・・ハア・・・・。」

チ 「彼ら、私を足止めするつもりだったようだけど、所詮は戦闘能力ゼロのエッグゲッター。クソの役にも立たなかったようだね。くくく。」

ネ 「鶴亀を・・・・殺したのか?」

チ 「あの夢見るロマンチストは、あの世で永遠に夢を見続けていればいいのさ。」

ネ 「鶴亀・・・・。」

チ 「さあ、君も大人しく死になさい。」

ネ 「(どうすればいい・・・・。万事休すなのか。いや、最後まで諦めちゃだめだ。みんなに報いるためにも。・・・・戦ったら、負ける。では誰かに助けを呼べないだろうか。・・・・呼ぶ?・・・・テレパシー!僕にもテレパシーが使えたら。ひょっとしたら使えるかもしれない。長老、助けてください。誰でもいい。助けてください。助けてください。助けてください・・・・、)」


テレパシーのやり方など、全くわからなかったが、僕は必死に心の中で助けを呼び続けた。


チ 「なんだなんだ。テレパシーの真似事か?くくく。無駄だ。それに今から呼んだところで、時すでに遅しだな。」

ネ 「(タスケテタスケテタスケテ・・・・、)」

チ 「あの世で鶴亀とゆっくり夢でも語り合っていなさい。じゃあな。」


そしてチーフは僕に剣を振り上げた。




つづく




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