ハロウィンがやって来た
ハッピーハロウィン!
あくバスの番外編です。せっかくのハロウィンなので。
今年もハロウィンがやって来た。
俺がありのままの姿でいられる一日だ。
「て言っても。特にやることなんてないけどな」
ハロウィン特権で本来の、悪魔の姿で街を歩く。
道行く人達は俺を指差して何か話している。
本格的だと思ってるんだろうな。リアルだけどな。
それにしても暇だ。さて今から何をするか。
本来のイベントらしく、家々を周るか?
だったら。この国、日本ではなかなか難しい。
日本は世界でも珍しく、様々な宗教の文化が共存する国だ。
しかし、本格的に取り組むことはあまりない。
クリスマスに教会に行かない人間もいるし、盆に精霊馬を作らない家庭もあるし。
イースターなんて、『なんか卵とうさぎの可愛い要素が集まったイベント』みたいな扱いだ。
……まあ、俺も詳しくは知らないけど。
もし本格的にハロウィンをやるとしたら。
呼び鈴を鳴らしても家の人が出てくるか、確実とは言えない。
モニター画面で、コスプレした奴が家の前にいるのを確認したら……通報するか帰宅を提案するか。
そのどちらかになると思う。
もし出てきてくれたとしても。
「トリックオアトリート!お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」
と決まり文句を言って、本当にお菓子をくれる人間は、どれほどいるのだろうか。
大体は、「は?」と言いたげな顔をするか。
苦笑いを浮かべ「お菓子は無いよ」と帰らされるか。
そういう反応だと思う。
「やるなら外国だよな〜」
とはいえ、今から飛行機に乗って行くのは流石に面倒だ。
そのためだけに行くのが、何とも馬鹿馬鹿しい。
て、おい!俺はこの歳で、なに子供みたいなことをしようとしてるんだ。
俺の記憶が正しければ……今は20歳前後だ。
途中で数えるのが面倒になって、やめてしまったが。
その歳でやろうとしたこと自体が恥ずかしい。
「やっぱりコスプレして暴れる馬鹿どもを見物してるか」
俺は渋谷へと向かった。
▲ ▲ ▲
まだ午後3時。
渋谷でコスプレしている人間は、まばらだった。
「さて……高いところから見物しますか……」
俺は近くのビルの屋上へと登った。
跳力を爆上げする魔法は習得してないから、非常階段を使った。
流石にこんな時間から暴れる馬鹿はいない。
だけど、酒を飲んでいる奴はいた。
「マジか……こんな真っ昼間から呑んでるのかよ……」
いくらなんでも引く。これには。
特に大きな問題が起こることなく時間が過ぎ。
時刻は午後7時を迎えた。
この時間になると、騒ぎ出す奴が出てくる。
「こうして見ると、人間も悪魔も変わらないんだな」
ふと、西側の悪魔達を思い浮かべた。
あいつらはイベント時だけではなく、何もなくても騒いでいる。
どこにそんな元気があるのか、あいつらの体の作りが全くもって理解できない。
すると、一人の男が女性に絡み始めた。
女性は長い金髪に、異世界もののキャラのような服装という出で立ち。
耳を尖らせているあたり、エルフのコスプレをしていることが分かった。
彼女は困った顔で、首を横に振っている。
一方の男はアイスホッケーのマスクを被り、片手にはチェンソーを……なるほど、あいつか。
一日限定で出てくる奴な。
どうやらデートにでも誘っているようだ。
おおかた。綺麗な女性を見つけ、彼女と遊びたいと考え酔った勢いで声をかけたのだろう。
よくもまあ、初対面の女性に酒くさい息をしたまま、デートに誘えるものだ。
あ。ちなみに“デート”って、柔らかい表現にしてるだけだからな。
本当の目的は……ま、言わなくても伝わるだろ。
ついに男が限界を迎え、女の手首を掴んだ。
そのまま、どこかへ連れて行こうとする。
彼女は「いや!」「やめてください!」と声を上げ、必死に振りほどこうとする。
が、力の差があってできない。
このままにするのは……気分が悪い。
俺は背中の翼で滑空し、着陸した。
男の傍に寄る。
「【ウルメン・ユー】」
呪文を唱えると、男の動きが止まった。
「え……?」
女は何が起きたのか分からず、固まった。
すると、男がふらりと床に倒れ込んだ。
「きゃっ……!」
女の手首を離し、床にうつ伏せに倒れる。
そ〜っと。女が男の顔を覗きこむと―――
「ぐ……ぐがぁぁ……すぅ……」
男は気持ち良さそうにイビキと寝息を立てている。
「へ……?」
女は呆然と、その場に突っ立っている。
さっきのは対象を眠らせる魔法だ。
金縛りしても良かったが……ここでやると面倒なことになりそうだと思って、それはやめた。
俺は二人を後にして、その場を去る。
「久しぶりに良いことしたかもなぁ」
う〜んと背伸びをして、空を見上げた。
もう既に濃紺に染まった空には、星が点々と輝いている。
「来年は面白いハロウィンになるといいのにな」
そんな言葉が口から溢れ落ちた。
俺はそのまま、その足で悪魔の国へと向かった。
なんか辛辣なグレッ厶になりました。
本編でもグレッ厶の年齢を明かすつもりです。




