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あくバスシリーズ

ハロウィンがやって来た

作者: ボマー
掲載日:2026/10/31

ハッピーハロウィン!

あくバスの番外編です。せっかくのハロウィンなので。

今年もハロウィンがやって来た。

俺がありのままの姿でいられる一日だ。


「て言っても。特にやることなんてないけどな」

ハロウィン特権で本来の、悪魔の姿で街を歩く。

道行く人達は俺を指差して何か話している。

本格的だと思ってるんだろうな。リアルだけどな。


それにしても暇だ。さて今から何をするか。

本来のイベントらしく、家々を周るか?


だったら。この国、日本ではなかなか難しい。

日本は世界でも珍しく、様々な宗教の文化が共存する国だ。

しかし、本格的に取り組むことはあまりない。

クリスマスに教会に行かない人間もいるし、盆に精霊馬を作らない家庭もあるし。

イースターなんて、『なんか卵とうさぎの可愛い要素が集まったイベント』みたいな扱いだ。

……まあ、俺も詳しくは知らないけど。


もし本格的にハロウィンをやるとしたら。

呼び鈴を鳴らしても家の人が出てくるか、確実とは言えない。

モニター画面で、コスプレした奴が家の前にいるのを確認したら……通報するか帰宅を提案するか。

そのどちらかになると思う。


もし出てきてくれたとしても。

「トリックオアトリート!お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」

と決まり文句を言って、本当にお菓子をくれる人間は、どれほどいるのだろうか。

大体は、「は?」と言いたげな顔をするか。

苦笑いを浮かべ「お菓子は無いよ」と帰らされるか。

そういう反応だと思う。


「やるなら外国だよな〜」

とはいえ、今から飛行機に乗って行くのは流石に面倒だ。

そのためだけに行くのが、何とも馬鹿馬鹿しい。

て、おい!俺はこの歳で、なに子供みたいなことをしようとしてるんだ。


俺の記憶が正しければ……今は20歳前後だ。

途中で数えるのが面倒になって、やめてしまったが。

その歳でやろうとしたこと自体が恥ずかしい。


「やっぱりコスプレして暴れる馬鹿どもを見物してるか」

俺は渋谷へと向かった。


  ▲  ▲  ▲


まだ午後3時。

渋谷でコスプレしている人間は、まばらだった。

「さて……高いところから見物しますか……」

俺は近くのビルの屋上へと登った。

跳力を爆上げする魔法は習得してないから、非常階段を使った。


流石にこんな時間から暴れる馬鹿はいない。

だけど、酒を飲んでいる奴はいた。

「マジか……こんな真っ昼間から呑んでるのかよ……」

いくらなんでも引く。これには。


特に大きな問題が起こることなく時間が過ぎ。

時刻は午後7時を迎えた。

この時間になると、騒ぎ出す奴が出てくる。

「こうして見ると、人間も悪魔も変わらないんだな」

ふと、西側の悪魔達を思い浮かべた。

あいつらはイベント時だけではなく、何もなくても騒いでいる。

どこにそんな元気があるのか、あいつらの体の作りが全くもって理解できない。


すると、一人の男が女性に絡み始めた。

女性は長い金髪に、異世界もののキャラのような服装という出で立ち。

耳を尖らせているあたり、エルフのコスプレをしていることが分かった。

彼女は困った顔で、首を横に振っている。


一方の男はアイスホッケーのマスクを被り、片手にはチェンソーを……なるほど、あいつか。

一日限定で出てくる奴な。


どうやらデートにでも誘っているようだ。

おおかた。綺麗な女性を見つけ、彼女と遊びたいと考え酔った勢いで声をかけたのだろう。

よくもまあ、初対面の女性に酒くさい息をしたまま、デートに誘えるものだ。


あ。ちなみに“デート”って、柔らかい表現にしてるだけだからな。

本当の目的は……ま、言わなくても伝わるだろ。


ついに男が限界を迎え、女の手首を掴んだ。

そのまま、どこかへ連れて行こうとする。

彼女は「いや!」「やめてください!」と声を上げ、必死に振りほどこうとする。

が、力の差があってできない。


このままにするのは……気分が悪い。

俺は背中の翼で滑空し、着陸した。

男の傍に寄る。

「【ウルメン・ユー】」

呪文を唱えると、男の動きが止まった。

「え……?」

女は何が起きたのか分からず、固まった。


すると、男がふらりと床に倒れ込んだ。

「きゃっ……!」

女の手首を離し、床にうつ伏せに倒れる。

そ〜っと。女が男の顔を覗きこむと―――


「ぐ……ぐがぁぁ……すぅ……」

男は気持ち良さそうにイビキと寝息を立てている。

「へ……?」

女は呆然と、その場に突っ立っている。


さっきのは対象を眠らせる魔法だ。

金縛りしても良かったが……ここでやると面倒なことになりそうだと思って、それはやめた。


俺は二人を後にして、その場を去る。

「久しぶりに良いことしたかもなぁ」

う〜んと背伸びをして、空を見上げた。

もう既に濃紺に染まった空には、星が点々と輝いている。


「来年は面白いハロウィンになるといいのにな」

そんな言葉が口から溢れ落ちた。


俺はそのまま、その足で悪魔の国へと向かった。

なんか辛辣なグレッ厶になりました。


本編でもグレッ厶の年齢を明かすつもりです。

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