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続、決戦の後

 獣人達の拠点であったビジネスホテル。


 そこから離れた雑居ビルの屋上で、様子を見ていた霊体の男、オルトロスが口を開く。


「八岐大蛇に兄上までも……。これは0から、いえマイナスから計画を練り直す必要がありますね」


「大蛇はともかく、蒼炎って強い? それほどのプレッシャーは感じなかったんだけど?」


 霊体の男に付き従う少女が言う。


「そこが兄上の怖いところです。エキドナを相手しながら私達の方にも意識を向けていたんですよ?」


 えっ?! と驚く少女。


「さらに、いつでもやれるぞ、と威嚇までしていましたよ。」


「…………。ねえっ、そんなすごい人を殺した奴って、一体何者なの?」


「わかりません……。それを調べるためにも、走矢くんの肉体が欲しいのです」


 そう言うと、オルトロスは少女を連れてその場を去る。




 ビジネスホテル、秘密の地下通路。


 そこから密かに脱出を図る大柄の男が2人。


「もうすぐ出口ですよ、お兄ちゃん」


「私達の所業が同胞達にバレてしまった恐れがあります。もう、仲間たちの元には戻れませんよ」


 エリスにぶっ飛ばされた兄、総士を助け出し、逃走を図る房士。


 あと少しで出口というところで、何かが房士の頭に落ちてくる。


「何ですか一体……。へっ蛇ぃぃぃ?!」


「落ち着きなさい、房士。おや? もしかしてラードンさんですか?」


「そうです、僕です。命、3分の1だけ何とか封印を免れまして。僕もご一緒させてください」


「ええ、ぜひとも。旅は道連れといいますしね」


 そしてラードン達とは別に、ビジネスホテルから脱出する者がいた。


「母様……。必ずあたしが復活させてみせる……」


 そう言って振り返るケルベロス。


 忌々しそうについ先程までいたビジネスホテルを睨みつける。


「そのためにも俊紅だ。俊紅があればあたしはもっと強くなれる、母様だって復活させられる!!」


 そう言い残して夜の闇に消えて行く。




 オルトロスに宿る、雨上蒼水の手により、上沢支所に残った者達まで獣人達の拠点であったビジネスホテルに飛ばされたため、戦闘終了後、別の混乱が生まれた。


 その混乱の中に、由利歌に詰め寄る羽月がいた。


「流石に飛んで帰れは無いでしょ。こっちは戦闘でヘロヘロなのよ?」


「そうは言ってないでしょ。ただ、飛ばされた人たちの中には昼間の戦闘で怪我をしていた人とかが結構いるのよ。その人達から優先的に運ぶって言ってるの」


 羽月と由利歌のやり取りの横で、


「お母さんは私が運びます!」


「私は大丈夫だから……。それと貴女も疲れが溜まっているはずよ? 無理しちゃ駄目」


 小夜子が火織にたしなめられていた。


「理奈さん、まさかとは思っていたけど、あのヘルマリナだったのね」


 この、アリスの一言が、新たな騒動を起こす。


「そんなに有名だったの? リナちゃん」


 直の問いかけに、自信満々に頷くアリス。


 気まずそうな理奈、死んだ目で沈黙する玲奈。


「確か今から何百年も前よ。暴れ周っていたのは」


 当時の理奈は、人間の術師や他の妖にけんかをふっかけ、派手に戦闘を起こしたり、吸血、セクハラとやりたい放題だったと言う。


「ちょっと待って、セクハラって何? なにやったの?」


 思わず突っ込む咲花。


「すっごいハイレグの衣装で飛び回ったりしていたらしいわ」


「ハイレグって……。何百年も前なんだろ?」


「そうよ、この国で最初にハイレグで飛び回った痴女がヘルマリナよ」


 桜の問に痴女という言葉でアリスは返す。


 一同の視線が自然と理奈に集まるが、そこには両耳を塞いでしゃがみこむ理奈の姿があった。


「あら、ちょっと可愛いわね。今度アタシもやってみようかしら」


「ちょっと母さんやめてくれ」


 エリスの独り言を聞き逃さなかった走矢が突っ込む。


 エリスはそんな走矢をじっと見ると、耳を塞いでしゃがみこむ。


「だからやめてってば!」


 必死に母を立ち上がらせようとさる走矢だが、エリスはテコでも動かない。


「まぁ、吸血も普通じゃなかった様よ。今で言うイケメンばかり狙っていたとか。夜中に布団の中に入り込んで襲ってたそうよ」


「あははっ、それじゃサキュバスじゃん!」


「直、近くにサキュバスがいるんだから、言葉には気をつけなさい!」


 直を注意する咲花だったが、


「しかも段々とターゲットの年齢が下がっていって、小さい子どもばかり襲うようになっていったらしいの」


 アリスの追加情報を聞いて絶句する。


「あたし、そんなちっちゃい子を襲ったりはしないわよ」


 いつの間にか会話に参加していた夢子が冷たい口調で言う。


 そして、再び一同の視線を集める理奈は、さっきな体勢のまま地面にうずくまるようにしていた。


「ストップ、スト〜ップ。これ以上やると、いつぞやの誰かさんみたいに最終形態になっちまうぞ」


「えっ、リナちゃんの最終形態、見れるの!!」


 目をキラキラさせて期待する直。


「やめなさいってば……」


「ほんとよ、最終形態になる身にもなって欲しいものだわ。」


 咲花に続き、春香にまで注意を受ける。


「ちょっと母さん、やめてってば!!」


 走矢の声のする方を見てみると、母が理奈と同じ様に地面にうずくまっていた。


 しかし、こんな事をしているエリスには、非常に不安な事があった。


 それは愛美達から受けた報告。


 彼女達はアルテミスの宝玉が本物かもしれないと言う事で、もとの所有者である柚木島家(ゆぎしまけ)についてしらべていたらしいのだが……。


 


「無かったのよ。柚木島家」


「無かった? 引っ越していたって言うことですか?」


 キョンとして顔で尋ねるエリス。


「違うの。最初からなかったみたいになってるの!」


 河童姉妹の妹、リルが説明する。


「柚木島家のお屋敷があった所に行ったんだけど、古い家が何軒も並んているだけで、もう20年以上住んでいるっていうんだ」


「それっていったい……」


「わからないわ。ただ、人々の記憶から柚木島家と言う存在は無かったの」


 愛美にも何が何やら理解できないようだ。


 しかし、柚木島家を知る者と知らない者。


 このどちらかが偽りの記憶を植え付けられているのではと愛美は考えていた。




「わかった。そのビジネスホテルの調査を進めてくれ」


 第18支部長、根谷 篤郎(ネヤ アツロウ)は一通りの支持を出して自室にこもる。


 自分のデスクの上に置かれた、とある資料に目が行く。


 それは上沢高校で起こった事件とその黒幕、浪川栄子について書かれた報告書だった。


「A号に記憶を操作する能力は無かったし、他の実験体にもそんな能力を持つ者はいななかった。一体、A号はどこでそんな能力を手に入れたのか」


 篤郎は疑問を口にしながら資料を机に置く。

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