決戦10
「こっ、このぉお!」
絶命してもデルピュネを掴んで離さない光師。
「走矢!」
半狂乱と言ってもいい取り乱し様のエリスが抱きかかえる様にして庇う姿勢をとる。
「この!」
リリスが普段、見せないような形相で、動けないデルピュネに爪弾を撃ち込む。
「ぐっ!」
苦痛の表情のデルピュネだが、鱗がそのほとんどを弾いてダメージらしいダメージは入らない。
しかし、そんなデルピュネを理奈が無言で蹴り飛ばす。
「封印式は完璧だった……。だったのに……」
魂が抜けたような表情で紗由理はブツブツと独り言の様に呟く。
「対ドラゴン用の封印式。確かに封印式に問題は無かった。だが、奴が自身の半分をドラゴンから蛇に変化させた事で効果が半減させたのだ」
一郎が術師としての見解を述べる。
「そんな……。そんな事……」
「ああ、不可能だ。普通はな」
そして紗由理がハッとして何かに気づく。
「首?! そっちも生きてるかも!」
紗由理が言い終わるよりも早く、デルピュネの首は飛翔し、ヘカーテ栄子に口づけする。
「うっ? ぐっ!」
もがきながらデルピュネの首を引き剥がし、地面に投げつける栄子。
その口からは血が流れ出している。
「お前の正体はドッペルゲンガーなんだろ? あいつらが記憶や人格までコピーするのを利用しておまえは自分のコピーを作った。私もその手を使わせてもらう」
言い終わると同時に、栄子がデルピュネの首を踏み潰す。
「私を乗っ取ろうだなんて……。私を……。わた……」
うつむき、顔を両手で覆う栄子。
両手を離したその顔は、デルピュネのモノになっていた。
ドラゴンの尾と翼を生やし、鱗に包まれていくかつて浪川栄子だったモノ。
「正真正銘、これが最後だ」
宣言すると、理奈に蹴り飛ばされたドラゴンヘッドが立ち上がる。
「気をつけて。あの鱗、相当な硬さよ」
爪弾を弾かれたリリスが注意を促す。
バサリと翼を広げて浮き上がるデルピュネ。
同時にドラゴンヘッドが口からは炎を吐きだす。
『このぉ!』
河童姉妹が声を揃えて水流波で迎え撃つ。
炎と水流が激突し、相殺されるが、並んで水流波を撃った姉妹の間に、いつの間にかドラゴンヘッドが立っている。
「なんだ! いつの間に!!」
「危ない、避けて!」
驚く桜を他所に危険を知らせる春香だったが、2人が反応する前にドラゴンヘッドが伸ばした爪が姉妹を貫く。
「ルリさんリルさん?!」
愛美がその翼に風の刃を纏ってドラゴンヘッドに斬りかかる。
「刃が通らない?!」
勢いでドラゴンヘッドをふっ飛ばしはしたが、サラマンダーを斬り裂いた愛美の翼は、鱗に阻まれ、刃が通らない。
「そっちばかり気にしていていいのかしら?」
栄子を乗っ取ったデルピュネが右手を傷つけ、流れ落ちる血に妖力を込める。
「この妖力波は一味違うわよ?」
血と妖力が混ざり、龍達を形作ると近くに居た玲奈やアリスに襲いかかる。
「くっ?!」
何とか両手でガードするが、ふっ飛ばされるアリス。
「本体の方を!」
一瞬のスキをついてデルピュネに手刀を叩き込む玲奈。
しかし、それも鱗を斬り裂くことはできず、デルピュネの爪による反撃を食らってしまう。
「アリス、義姉さん!」
すでにリミッターを解除しているエリスは、その状態で反対の手を噛みもう一段階リミッターを解除する。
二重のリミッター解除。
母はこれを暴走状態と言っていた。
エリスはその状態で、暴れ狂う龍達を撃退する。
「いくわよ、貴女達」
星垂の合図と共にレイカとレイコがデルピュネに仕掛ける。
「打撃や斬撃が駄目なら炎なんてどう?」
ウィルウィスプの青い炎がデルピュネを包む。
「あら、目が合ったわね」
レイカの羽の模様がデルピュネの視界に入る。
「身体が動かない?!」
「食らいやがれ!」
レイコの鱗粉が円盤状になり、デルピュネの肩や腹部、翼に命中する。
高速で流動する事で対象を削り取るレイコの鱗粉攻撃。
無敵に思えたデルピュネの鱗を削っていく。
「ぐっ、このままでは……」
デルピュネはグッタリとして諦めたように見えたが、その背中が破れ、新たなデルピュネが飛び出してくる。
「なっ、なんだぁ?!」
「脱皮よ! 脱皮をして逃げたんだわ!」
驚く妹に説明する姉。
「邪魔ね、貴女」
デルピュネは先程ほど傷つけた右手のひらをレイカに向けると、流れ出る血に妖力を込め網状にして拘束する。
「その羽、切り落とさせてもらうわよ」
「やっ、やめろぉ!」
「この程度の事で取り乱すんじゃないの。羽を切り落とすと言うのなら、そのスキに喉笛にでも噛み付く。そうやって生きてきたでしょ。私達」
レイカはそう言って妹をたしなめる。
「大したものね。感心するわ」
ほくそ笑むデルピュネに霧香の白刃が迫る。
余裕ぶっていたデルピュネだったが、その刃をチェーンソーの刃のように妖力が高速で回転しているのを見て、のけぞって回避するが、その頭部をエリスに掴まれる。
「ここには鱗、無いわよね?」
そのままデルピュネの脳天を地面に突き立てる。
桜達はドラゴンヘッドと交戦していたが、その動きに翻弄されていた。
「これでどう?」
春香の羽根が舞い、彼女の結界が張られる。
「くっ、幻影か」
幻の桜を攻撃したドラゴンヘッドは、苛立ちを見せる。
そこに本物の桜と火織の攻撃が決まり、更にイライラがつのる。
「小賢しいまねばかり!」
そう言って炎を全方位に吐き、攻撃しながら春香の羽根を焼きつくさんとする。
「くそっ、また姿が見えねぇ」
桜が叫ぶが次の瞬間、春香と羽月のそばに突然現れ、攻撃する。
「春香ぁ!」
ドラゴンヘッドに飛び蹴りを見舞う桜だったが、その攻撃は避けられ、姿を見失う。
「多分、保護色かなんかだわ。突然現れるのは多分、そのせいよ」
やられながらも敵を分析していた春香。
「きゃっ!」
突然の悲鳴。
その方向を見ると、ドラゴンヘッドが下半身の蛇の部分でリリスをしめあげていた。
「リリスさん!」
「さっきの爪の攻撃、傷つきこそしなかったが痛かったぞ?!」
そう言ってさらに締め付けようとするんだが、ドラゴンヘッドの動きが鈍くなり、リリスは脱出する。
「さっき、捕まっている間に爪弾を一発だけ撃ち込んだの。そしてその爪を中心に結界を張り、貴女の動きを遅くしたのよ」
リリスが張った結界は内側の時間の流れを遅くするというモノで、ドラゴンヘッドだけがそこに閉じ込められていた。
「可愛い初孫を、貴女なんかの好きにはさせない」
リリスがそう言うと、ドラゴンヘッドを閉じ込めている結界が小さくなっていき、ドラゴンヘッドは押しつぶされていく。
「首をはねても死なないんじゃ、こうするしかないじゃない」
ドラゴンヘッドはスローの断末魔をあげ、爪ほどの塊になる。




