決戦9
「いくわよ!」
愛美の号令のもと、2人の栄子に一斉攻撃が始まる。
まず、愛美の羽根弾と河童姉妹の水流波が栄子達に襲いかかる。
「そ〜れ!」
舞の血を取り込んだ栄子が、燃えさかるフェニックスの翼を広げ、その炎で愛美達の攻撃を迎撃する。
「だったらこっちも炎よ!」
その翼を両手の炎の剣で斬り裂く火織。
桜と春香がそれに続き、2人同時に飛び蹴りをあびせる。
「くうっ?!」
ふっ飛ばされ、怯むフェニックス栄子。
「なら、こうよ!」
ヘカーテの血を取り込んだ栄子が妖力波を放つ。
「なんの!」
霧香が横一文字の斬撃波を放ち、妖力波を相殺する。
同時に両脇から回り込んだアリスと玲奈。
アリスがスライディングキックでヘカーテ栄子の体勢を崩すと、玲奈が両足で首をロックして地面に叩きつける。
「この!」
フェニックス栄子が反撃に出ようとするが、理奈のタックルを受けてふっ飛ぶ。
「な〜に? その地味な嫌がらせ!」
語気を強めるフェニックス栄子だったが、自分の身体が思うように動かせない事に気づく。
「はまったね〜、センセ」
直の亜空間の糸にハマり、動けなくなるフェニックス栄子。
そこにエリスが容赦のないかかと落としを決める。
「がぁ?!」
思わぬダメージに奇怪な音を漏らすフェニックス栄子。
「今度こそ完全に仕留めてあげるわ」
直の糸によって空間に固定された『敵』に容赦のない猛攻を加える。
「っていうか、流石に多勢に無勢じゃない? 私達が入る余地なんて無いでしょ?」
迂闊に参戦すると流れ攻撃を食らいそうな戦場を見ながら、レイカが声をあげる。
「んっ? どうしたんだ、星垂?」
レイコが気になったのは、戦況を見るウィルウィスプこと、藤崎 星垂の表情が険しいという事。
「以前、話したでしょ? 私は一度あのキメラに食われているって。なのにあいつら、どっちも私の気配が無いのよ」
「はっ? それっていったいどういう……」
「貴女を食べた奴を入れて、あのキメラは3人居たって言うことね。単純に考えて」
レイカの言葉に星垂は静かに頷く。
「そしてそれは、4人目が存在するかもしれないって事よね」
頷く代わりに星垂はため息で応える。
「ほらぁ、モサオがモタモタしてるからぁ!」
その声とともに。大広間に到着した一団があった。
走矢と共に転送された余白、小夜子、光師、そして彼女達が途中で合流した元人妖機関職員、望月 勇であった。
「藍華さん……。まい……ちゃん?!」
フェニックスの血に目覚め、翼が生えた舞を見て勇は言葉を失う。
「望月さん?! 違うの、これは。私が選んだ事だから……」
藍華の警護をしていた勇の人柄をよく知る舞。
真面目で責任感の強い彼が、自分のフェニックス化に責任を感じるであろう事は容易に想像がついた。
そんな勇の後頭部を余白がペチンと叩く。
「そういうのは後! とりあえず、みんな生きていたんだから、それ以外の事はこれから考えればいいの! まだヘカーテが憑いてるし、戦闘中なんだから割り切って切り替えて?」
「そうだな、すまん」
余白の言葉を聞き入れ、気持ちを切り替える勇。
「ヘカーテ、お前を封印する」
藍華の方を向いて静かに宣言する。
直の糸で空間に固定されたフェニックス栄子。
エリスの猛攻を受けながらも吹っ飛ぶことも倒れることもできず、サンドバック状態だった。
しかもフェニックスの再生の炎の力でダメージを受けたそばから回復し、屈辱と苦痛だけが残るという現状。
この状況から逃れるために彼女は切り札を使う。
「これは?!」
見覚えのあるフェニックス栄子の変化。
まるで空間に溶けるように広がり、大広間を覆う。
「取り込まれた……」
以前、栄子が使った自身を亜空間結界として、閉じ込めた者を取り込み、吸収するという能力。
しかしこれは過去に攻略済み。
「直!」
「アイアイサー!」
桜の呼びかけに応え、速やかに結界破りを披露する直。
「グゥァァァァァ?!」
大広間全体から断末魔のような唸り声が聞こえてくる。
「お行儀悪く、何でも口に入れるからよ」
由利歌ま五芒星を出現させると、空間にその形の穴が開き、断末魔のボリュームが上がる。
「あの子の結界破りを知らなかったって考えると、やっぱりあの時のキメラとは別個体って事?」
星垂と同じ疑問を由利歌も抱いていた。
「これでとどめよ」
理奈静かに言うと、彼女の手首から流れる血が魔法円を描き、それが増殖していく。
「なんだ……これは?!」
「そのまま自壊しなさい」
理奈は栄子が変化した亜空間結界をハッキングし、自壊させる。
「大勢は決したな」
戦いを見守っていた京花が呟き、凶剴が頷く。
(やっと、スキを見せたわね)
首を落とされたデルピュネの身体が動き出す。
蛇が脱皮するように、中から新しい身体が出現し、それはドラゴンの翼と首が生え、下半身は蛇という新しい姿で走矢に飛びかかる。
「俊紅の血、いただくわ!」
その場にいた全員、完全に油断していた。
テルピュネは死んだと思い、その亡骸に注意を払う者はいなかった。
その爪が走矢を切り裂き、ドラゴンの牙がのど笛を食いちぎるはずだった。
しかしそれは走矢を庇うように立ちはだかった光師によって阻まれた。
その爪は深々と胴体を切り裂き、のど笛に牙が食い込む。
おそらく即死だろう。
(自分が……であることを負い目に感じてはいけない)
少し前に走矢言った言葉。
それは成長した混血の息子に贈るはずの言葉だった。




