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決戦6

「ぐわぁぁぁぁあ!」


 悲鳴にも雄叫びにも聞こえる、不快な音を発しながらエキドナ、奏美の身体が作り変えられていく。


 ドラゴンを思わせる角、翼、尾が生え、身体が鱗に覆われていく。


「奏美?!」


 舞の悲痛な叫びが大広間に響きわたる。


「とんだ獅子身中の虫が居たもんだな……」


 一見、冷静な口調の蒼炎だが、デルピュネのこの行動は全く読めていなかった。


 「おそらく、あちらの方が全ての黒幕なんだと思います」


 蒼炎のそばに降り立った理奈が自身の見解を述べる。


 奏美の変化を見て微笑むデルピュネだったが、何かを感知して慌ててその場から逃げるように離れる。


「チッ、逃げるな!」


 デルピュネの居た場所に五芒星が出現し、由利歌が叫ぶ。


「それにしても、まずいな。こりゃあ……」


 変わり果てた奏美を見て、蒼炎がボヤく。


「貴方がそんな弱気になるなんて、余程の事態ですね」


 煽るつもりは無いのだろうが、理奈の言葉にムッ、となる蒼炎。


 そんな2人目掛けて、暴走状態のエキドナが突っ込んでくる。


 理奈が前衛に出てその突撃を食い止める。


「おぉ! 助かったぜ、ヘルマリナ」


「その名前で呼ぶのやめてください! あと、その身体は走矢の物なのを絶対に忘れないで下さいよ!」


「俺が誰なのか、わかって言ってるのか?」


 そう言って左手の人差し指と中指を合わせて立て、手印を形作ると、手のひらサイズの五芒星が奏美の四肢にハマり、動きを止める。


「妖力にしろ『気』にしろ、暴走状態のモノはハッキングしづらくなる。貴方(あなた)とは相性が悪い様に思いますけど、勝算はお有りですか?」


「お前を散々返り討ちにしてきただろう? ヘルマリナ。 お前も妖力を暴走させて、俺の乗っ取り(ハッキング)に対抗してきたけど、それならそれでやりようがあるんだ」


 暴走状態と言うのは、他人どころか本人でさえ力のコントロールが困難な状態を指す。


 しかし、コントロールができていないと言う事は、それだけ無駄が多く、消耗が激しい。


「とにかく、消耗させて弱らせる。そのあとは煮るなり焼くなりだ」


 そう言うと、奏美の四肢に取り付いた五芒星から、妖力が吹き出す。


「またその名前で……。走矢の声と顔で言うのは本当にやめてください! たしかに、過去それで私はやられましたけど、今の相手は桁違いの妖力を持っているんですよ? しのぎきれるんですか?」


「お前らの協力があればな……」


 苦笑いを浮かべながら応える蒼炎を見て、理奈はため息をつく。


「だ、そうです」


「アタシは最初からそのつもりよ」


「是非もない」


「乗りかかった船ですしね。走矢ちゃんに無理はさせられないし」


 理奈の言葉に呼応するエリス達。


 エキドナに受けたダメージを咲花にある程度まで治療してもらい、万全ではないが普通に戦える状態にはなっていた。


「我々に手伝える事はあるか?」


 ラードンを封印した一郎達、術師が合流してくる。


「何か封印式は使えるか? 何でもいい、アイツの妖力を削ぐ必要がある」


「心得た」


 そう言って奏美の四方に散るリザードマン兄弟。


「ぐうぉぉぉぉ!」


 少女とは思えない雄叫びを上げて、全身から大量の龍の形の妖力波を放つ奏美。


「やるよ、リル!」


「ガッテン!」


 四屍竜との戦闘後、対エキドナチームに交流していた河童姉妹が前に出て、渦巻く水流で壁を作る。


 しかし、ほとんどの龍は壁を貫通し、エリス達に襲いかかる。


「この!」


 愛美は猛禽類の翼を羽ばたかせ、羽根弾で龍の迎撃を試みるが、大した数は減らせない。


 残った龍を各々(おのおの)で対処するエリス達。


「まずいわね……。そう、何度もしのげないわ」


 傷は癒えたとはいえ、エキドナとの戦いでの消耗は少なくないエリス達。


 その姿を見て愛美に焦りが生じる。


 そして再び奏美が全身から妖力波を放つ体勢に入る。


「リル、出し惜しみは無し! 最大出力の水流障壁だ!」


「わかった、姉ちゃん!」


 しかし、奏美の妖力の高まりがさっきの攻撃のときより大きい。


「気をつけて、さっきのよりも強力なのが来る!」


 無駄かもしれないと思いながらも注意を促す愛美。


 その予想通り、今度の龍は河童姉妹の水流障壁を消し飛ばし、エリス達に襲いかかる。


 消耗の少ない愛美が少しでもエリス達の負担を減らそうと羽根弾の発射体勢に入った愛美。しかし、その背後から巨大な火の鳥が龍を迎撃する。


 それはフェニックス化しつつある舞が発したモノだった。


 フェニックス化が進行したのか、その背の翼は先程よりも大きくなり、炎の様な妖力を(まと)う舞。


「わたし……だって……」


 今ので相当な消耗をしたのか、ガクリと両手、両ひざをつく舞。


 そして三度、奏美の妖力が高まる。


「今度こそ、今度こそとめるよ!!」


「ガッテンだよ、姉ちゃん!」


 これまで以上に荒れ狂う水流障壁。


 何体かの龍に突破されるが、それを一郎の指示で援軍に駆けつけた残りのリザードマン兄弟が対処する。


 兄弟の中で無傷で消耗していない三郎は、鎖鎌で龍の1体を捕らえ、地面に叩きつける。


 七、八、九郎は3人がかりで、十郎と朔美は2人でそれぞれ1体ずつ迎撃する。


「おい、二郎兄(ジロウにい)。あんたが1番重傷なんだから引っ込んでろよ」


「バカ言うな。兄者の復帰戦、ボーッと見てられるかよ!」


 利波は体内にしまいこんだ鎖で龍を拘束すると、二郎が大剣を振り下ろし、撃退する。


「来たか! よしお前達、もう1つ封印式を組んでコイツを弱体化させるぞ!」


 一郎の呼びかけに応える術師達。


 ぐっ、と短い悲鳴をあげて奏美は片膝をつく。


「頃合いだな」


 呟く霧香の視線は紗由理の方を見ていた。


 先程から彼女が切り札の使い所で悩んでいたのを霧香は見ていた。


「紗由理、お前はデルピュネ対策だけ考えろ。こっちは私がなんとかする」


「霧香……」


 霧香の言葉で覚悟を決めた紗由理は、ヘカーテから妖力を奪い、封じた粘土玉を霧香に投げる。


「これを使えというのか? 結構な無茶振りだぞ……」


 そう言って粘土玉の妖力を取り込むと、その刀を地面に突き立てる。


「ガシャドクロ最後の切り札、『外連餓者髑髏(ケレンガシャドクロ)』。その身に味わえ」


 霧香の背後に、彼女と同じ骸骨を模した鎧を纏った巨大武者が出現する。

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