決戦3
「コイツが黒幕か……」
落ちたラードンの首の髪の毛を掴み上げ、京花は呟く。
その首を落とされた身体が、足元から石化していく。
「命の封印だ。これで復活できない」
一郎が説明する。
そして、首を失った身体が完全に石化すると、京花の持つ首が石化し始める。
「はっ、命がいっぱいあるとかぬかしてたくせに、あっさり封印されてやんの」
「油断のしすぎですね。エキドナ様にいただいた100の命を使いこなせずに倒されるなんて」
ヒドラとデルピュネは、ラードンを馬鹿にした様な口調で、彼の成れの果てをあざ笑う。
「あのヒドラって奴、神話のとおりなら火で倒すしかない。火織、あいつをお願い。羽月もサポートしてあげて」
紗由理の指示に従う火織と羽月。
「私はいかなくていいの?」
「少し、手の内を見てから……」
懐に隠れるウィルウィスプに紗由理は応える。
「くたばれぇ!」
四屍竜の1人、青い髪の女、サーペントが桜達に先制攻撃をかける。
「させないよ!」
サーペントが放った水流を同じ水流で相殺する河童姉妹、ルリとリル。
「なら今度は……」
「貴女の相手はこっちよ!」
何かを仕掛けようとする赤い髪の女、サラマンダーに羽根弾をあびせる愛美。
「私のスピードについて来れるか?」
緑の髪の女、ワイバーンは翼竜の翼を広げ、飛翔する。
「コイツはあたしが!」
デルピュネに向かっていくアリス。
アリス渾身の回し蹴りを避けようともしないデルピュネに違和感を感じる玲奈。
「気をつけなさい! 何かを狙っているわ!」
アドバイスを与えるが、すでに遅く、地面から蛇の形の妖力波が伸び、アリスに襲いかかる。
「しまった?!」
咄嗟にガードするアリスだったが、ダメージは免れない。
しかし、突然現れた何者かが蛇を切り裂き、アリスを救出する。
「貴女は?!」
「お母さん!」
それは突然、空間を割って現れた走矢の祖母、雨上 理奈だった。
「母さん、アイツは倒したの?」
「追い詰めたんですけど、逃げられちゃいました」
困った様な表情で、娘の質問に応える。
「貴女達はエリスさんの援護を。この人は私が相手します」
エキドナとなった奏美からヘカーテを守るように立ちはだかるエリスを横目で見ながら、理奈は提案する。
「よぉ、骸骨女。この間の続きをやろうぜ!」
舞を気遣うガシャドクロ、霧香の前にケルベロスが立ち、挑発する。
「ガシャ姉、そんな奴の挑発、聞く必要ないぜ。そいつの相手はあたいがしてやる!」
ケルベロスの背中を槍状の鱗粉が襲う。
「ふんっ」
レイコの攻撃をあっさり回避するケルベロス。
しかし、その回避した先に先回りしたレイコがカウンターキックを繰り出し、ケルベロスにヒットする。
「てめぇ……」
「てめぇじゃねぇ。レイコだ。レイコ様でもいいぜ!」
人差し指で誘うように挑発する。
サラマンダーと戦う愛美。
距離を取りながら羽根弾を撃ち込む愛美だったが、サラマンダーが纏う炎に焼かれ、ダメージを与えられない。
「とうしたヴァンパイア? それて終わりか? ならばお前の運命は決まった!」
そう言って両手を愛美に向けてかざすサラマンダー。
彼女を包む炎がその両手に集まり、渦巻きながら放たれる。
「?!」
驚く間もなく、炎の渦に飲み込まれる愛美。
「ふんっ、あっけない?!」
サラマンダーが気がついた時には、すでに愛美は彼女の背後に立っていた。
風の刃を全身に纏い、炎の渦を切り裂きながら飛翔し、その刃ですでに、サラマンダーを斬り捨てていたのだ。
「いつのまに……」
サラマンダーは何が起きたか理解できず、その場に崩れ落ちる。
大広間を飛び回るワイバーン。
春香が幻影結界を張り、攻撃をしのぐが、反撃の糸口が掴めなかったが……。
「なっ、何だこれは?!」
直が張った糸状の亜空間。
それに囚われたワイバーンが激しく取り乱す。
これは、直の一族に伝わる結界術なのだが、使い方次第では捉えた者の四肢をもぎ取り、命を奪う事もできるというモノ。
直は過去に、邪な相手とはいえ、友人を襲った妖をこの業で殺害していた。
以降、この業を封印し、一生使わないと誓っていたが、舞や奏美の件。
そして自分が今のままだと足手まといにしかならないと感じ、この業を使いこなす覚悟を決める。
「直はなぁ、生半可な覚悟でこの業を解禁したわけじゃねぇ。奏美や舞やそのかーちゃんを、絶対に助け出すって覚悟の証なんだよ!」
「おちゃらけて見えるけど、辛い気持ちとか見せないだけなのよ。周りを気遣ってね」
中空に固定されたワイバーン目掛けて、桜は足を振り下ろし、春香は振り上げる。
2人の足技に挟まれ、白目をむくワイバーン。
戦闘不能なのを確認して直が結界を解除すると、緑の髪の女は落下して、地に伏す。
サーペントと河童姉妹の戦いは水流の撃ち合いが続いていた。
「リル、このままじゃ埒が明かない。一気に接近して、河童相撲で決めるから、援護して!」
「分かった、姉ちゃん!」
リルは水流の出力を上げ、ルリは河天狗の翼を広げる。
地面を滑る様に急接近するルリ。
「よし、掴んだ……?!」
サーペントを捕まえたルリの表情が険しくなる。
「違う、コイツは偽者だ!」
ルリが捕まえたサーペントは、水になって地面にこぼれ落ちる。
と、同時に、ルリの足元から強烈な水流が噴き出し、彼女を宙に舞わせる。
「姉ちゃん?! うわぁっ?!」
リルの足元からも水流が噴き出し、サーペントは河童姉妹を翻弄する。
そんなふっ飛ばされたルリを愛美が空中でキャッチする。
「大丈夫、ルリさん?」
「これは厄介ね……」
リルをキャッチした春香が呟く。
あたり一面、霧が立ちこめているのだが、この霧はサイクロプスが使うような、結界によるものでは無い。
「あの女が妖力を込めて操った水が変化した物ね。そのせいであの女と同じ妖力を発しているから、本体がどこにいるのか、感知しづらいのよ」
「なら、咲花の出番だな。頼めるか?」
「まかせて!」
春香の分析から咲花に話をふる桜。
咲花がその案を了承すると、頭上に天使の輪とも言える光輪を出現させる。
するとその輪が一瞬で部屋いっぱいに広がると、元の大きさに戻る。
「見つけた、そこ!」
そう言って自身の白い翼から抜き取った羽根を、とある場所目掛けて手裏剣のように投げると、何かに刺さる。
「くっ、くだらぬ真似を! 貴様らに私の本領を見せてやる。迂闊者のナーガとも、未熟者のサラマンダー、ワイバーンとも違うぞ!!」
腕に刺さった羽根を抜きながら吠えるサーペント。
「あの羽根で私の気配をマーキングしたんだけど……」
「大丈夫、これならどんなに姿を隠しても追えるよ。ありがと」
そう言ってサーペント目掛けて突撃するルリとリル。
霧にまぎれて逃げようとするが、咲花のマーキングのおかげで、動きがまるわかりだ。
「そこだぁ!」
水流を纏って飛翔するルリ。
頭からサーペントのみぞおちに突っ込み、その動きを捉える。
「必殺脳天河原落とし!」
そのままサーペントを地面に叩きつけようとするが、彼女の操る水が落下地点に集まり、クッションの役割をしようとする。
「リル!」
「ガッテン!」
姉妹の以心伝心。
リルは河天狗の翼を広げると、サーペントの脳天目掛けて、ドロップキックの体勢で上昇する。
地面の代わりにリルのドロップキックに脳天を命中させられ、意識を失ったサーペント。
操っていた水はただの水に戻り、クッションのなくなった地面に容赦なくサーペントの脳天を突き立てる。




