決戦2
奏美達の父、綾瀬 公生の正体は、エキドナが産んだ怪物の一体、ラードン。
神話では100の首を持つと言われているが、この男は首は1つしかないかわりに、命を100個待っていた。
「良い不意打ちでした。しかし、知ってのとおり僕には100の命があります。貴方はその内の1つを奪ったに過ぎません」
余裕の笑みすら浮かべる、ラードン。
「100もあるまい。20年前の戦いだけで3個は狩ったぞ」
「うるさい、黙れ! 嫌な事を思い出させやがって! だから僕は、お前が大嫌いなんだ!!」
「奇遇だな、俺もだよ。気の合うところで、今日こそ決着つけようぜ?」
ぐふぅっ、と苦しみながら、凶剴の刀から逃れる公生。
「お前達は20年前から……。いや、もっと前からエキドナの顕現を目的として動いていた。その計画の1つとして、獣人達の血の浄化計画を利用した。計画側と計画を止める側。それぞれの主要人物が暗殺され激突するハメになった」
この計画を止める側の主要人物とはエリスの父、条牙咲走司。
「そして決定的な事件が20年前のリザードマンの隠れ里の大虐殺。とある隠れ里に行方をくらましていた首謀格とその取り巻きが匿われているという情報が、俺達、復讐代行者や戦闘集団にもたらされた。同時に俺達に情報が流された事が獣人や他の里のリザードマン達にも知らされた。これにより、復讐代行者、戦闘集団対、リザードマン、獣人という、大規模な戦闘が勃発した」
「そこまでは上手くいったんだけどなぁ、詰めが甘いんだよ」
凶剴の昔話にエキドナ配下の女が茶々を入れる。
「うるさいよ、ヒドラ! 僕は母様のためにいっぱい働いているんだ。君みたいに遊んでばかりいる人にとやかく言われたくないよ!!」
それを受けて、突然癇癪を起こしたようになるラードン。
「あの日も最後はそんなだったな、ラードン。復讐代行者と獣人達の争いの最中、お前が現れエキドナを召喚した。それまでに流れた血と失われた命を供物に捧げてな」
「ですが少し功を焦ったみたいですね。母上の顕現は完全ではなく、当時の凶星のリーダーとリザードマンの術師の命がけの抵抗に会い、祓われてしまいました」
先程とは別の女がたしなめるような口調で言う。
「あぁぁぁぁっ、デルピュネ! 君までそんなふうに言うのか?! うあぁぁぁぁぁっ!」
先程以上に取り乱すラードンを無視してデルピュネと呼ばれた女は続ける。
「たしか、影井 零怒とか言いましたっけ? あのリザードマンの術師。かなりの手練でしたね」
「その名前を言うんじゃないぃぃぃぃっ! あのクソトカゲめ! 僕と母様の神聖な儀式を邪魔してえぇぇぇぇっ!」
「ふん、そのせいで生き残った俺達凶星は、大量殺戮の汚名を着せられたんだ。その話が面白くないのはこちらの方だ」
デルピュネを睨みつける凶剴。
それを見て微笑み返すデルピュネ。
「以上が犯人達の告白よ」
突然、思わぬ方から響く、女性の声。
それは、ラードンと凶剴のすぐそばいつの間にか立っていた、早川 由利歌なモノだった。
彼女は片手にスマホを持ち、その画面にはスピーカーモードと表示されていた。
『ああ、言質は取れたな。お前の言う取り引き、応じよう。五郎、転移だ!』
由利歌のスマホからその様な声が聞こえてくると、ラードンを包囲するように、何者かが現れる。
それは、一郎、四郎、五郎、六郎のリザードマン兄弟だった。
「親父の仇、取らせてもらうぞ」
そう言って術を発動させる。
「走矢! 無事か!!」
リリスをかばうように四屍竜の残り3人と対峙する走矢を見て、桜が彼を守るように、その前に立つ。
「何なのあいつら。はじめて見る顔だけど、かなり手強そうね……」
「とりあえず、ソウちゃんを襲おうとしてる人達からだね」
「怪我は無さそうね。良かった」
春香、直、咲花も桜に続く。
「走矢くん、どうしてここに?!」
「ガシャ姉! もう始まってんのか!」
火織、羽月、レイコ、レイカ、夢子も決戦の場に到着する。
そして、エキドナ達が空けた天井の穴から舞い降りる影があった。
「エリスさん、みんな……」
「良かった、知ってる人と合流できて」
それは愛美と河童姉妹だった。
「先生、どうして?」
「支所に戻った途端、ここに転送されたのよ。誰の仕業なのかしら……」
「雑魚が何匹集まったところで、僕や母様を止められるわけないだろ。四屍竜、ナーガの分まで汚名返上して来い」
「まず、自分の心配をしたらどうだ? お前はすでにコチラの術にかかっているんだぞ?」
影井兄弟が仕掛けている術を無視するラードンに一郎が警告する。
「フン、不死身の僕が君たちごときの何に心配しろと言うんだ?」
「お前の不死身は有限だろ? その有限の命を封印した。お前の命は今、生きている1つだけだ」
「なっ、なんだとぉぉぉっ?! うそだ! 僕の命を封じただなんて、絶対にうそだぁぁぁっ!」
「なら試してみると良い」
ラードンの前に立つ、凶剴。
そしていつの間にかラードンの背後に立つ京花。
2人はラードンに対して同時に斬りかかり、彼を挟んで交差する。
「腕を上げたな、凶剴」
「まだまだだよ」
ラードン、綾瀬公生の首が、ぼとりと落ちる。




