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反撃4

 主力が出払った上沢支所。


 復旧した結界に阻まれて思うように攻め入れない獣人達は切り札を投入する。


「ふっふ〜。この対結界用ゴーレムならば支所程度の結界は問題なく破壊できるでしょう」


 上沢支所攻撃の指揮を取るのは、熊田 総士(クマダ フサオ)の弟、熊田 房士(クマダ フサシ)


 対結界用ゴーレムというのは、決して安い代物では無いのだが、結界に対処できる人物がいない以上やむ得ない選択だった。


 基本的に使い捨てで、結界を中和して出入り口を作り、そこを人員が出入りするというのが、一般的な対結界用ゴーレムだ。


 ただ、ヘカーテのように、結界器にダメージを与える様なものでは無いため、時間経過により結界の出入り口は塞がれてしまう。


 また、ゴーレムにはサイズがあり、小型の物だと人1人が出入りできる程度で、そこを集中的に時間切れまで守られると、無駄にゴーレムを消費したことになってしまう。


「な、何をやっているんですか?! モタモタしているうちに穴が塞がってしまったではありませんか! あのゴーレム、一体いくらすると思ってるんですか!!」


「房士さま、結界に穴を空けても、そこを職員達に待ち伏せされては経験不足の月宮獣人達では返り討ちに()うだけです。もっと一度にたくさん穴を空けて職員を分散させないと……」


「ええぇい、わかってます! 経費をかけすぎると、お兄ちゃんに後でネチネチ言われちゃいますが、やむを得ません。ゴーレム大量投入です!」




 一方、施設内。


 走矢と小夜子は非戦闘員として施設地下のシェルターに避難していた。


 シェルターはいくつかの区画に区切られているのだが、走矢達のいる区画にはエリス達が助け出した獅子島 光師(シシジマ コウシ)も居た。


 総士達との戦闘で負傷した彼は治療を受け、安静にしている状態だった。


条牙咲 エリス(ジョウガサキ エリス)の子、リリスと走司の孫か……」


 走矢を見てそう呟く光師。


 走矢もまた、この一件の首謀者の1人で、祖父の死に関わっているとされた光師に複雑な感情を抱いていた。


貴方(あなた)が奏美ちゃん達のお母さんを、ヘカーテにしたんですか?」


「そうだ。俺がやった」


「このぉ!」


 光師に手を上げようとする小夜子をそうやが止める。


「駄目だよ、小夜子ちゃん。相手は怪我人何だから」


 光師からすれば不思議な光景だった。


 20代後半ぐらいの小夜子を高校生の走矢がたしなめる。


 加えて小夜子の言動にはどこか(おさな)さが見える。


 不安定な妖力を持って生まれたがために、肉体が急成長してしまった小夜子。


 実年齢はまだ、12歳の彼女は光師に対する感情が抑えられずにいた。


「殴りたければ殴れ。それで気が済むのならばな」


「なら、貴方の怪我が治ったら、思う存分殴ってもらいます」


 走矢にたしなめられて、矛を収める小夜子。


「本音を言えばヴァンパイアの様な、混血が産まれない種族が羨ましい。もし、獣人がそういう種族だったら、こんな真似はしなくて済んだ」


「そうですか? 俺は半分でもヴァンパイアに産まれたかった。もし、そうだったなら、少しでも母さんの負担を減らせたかもしれない」


 光師はその言葉を聞いて苦笑する。


「何がおかしいんですか」


「君は自分がどれだけ恵まれているのか分かっていない。妖の世界は弱肉強食。弱い妖は強者に良いように利用されるだけだ。しかし人間ならば人の法によって守られる。これが君のお母さんの負担をどれだけ軽減しているか。自分が人間であることを負い目に感じてはいけない」




 かつて獅子島光師には妻と幼い息子がいた。


 妻は混血の弱い獣人だったが、光師は彼女を愛し、結ばれた。


 しかし、弱いとされた妖は常に強者に利用され、時には狙われる。


 結界器やマジックアイテムの材料に、妖力石と言う物がある。


 この妖力石の入手方法と言うのは、一般的に2つ。


 1つは自然界から発掘すると言う方法。


 もう1つは妖を素材にして妖力石を精製すると言うもので、このために弱い妖達が連れ去られるという事件が昔は多かった。


 光師の妻と息子もこれに巻き込まれ、仲間と共に精製所に乗り込んだ時には、妻も息子も姿は無かった。


 代わりに見つけた木箱いっぱいの妖力石の中に、妻と我が子の妖力をかすかに感じ取れた。


 30年前、丁度血の浄化計画が始動したのはその後だった。


 光師はこの事を決して自分からは話さない。


 妻と息子の悲惨な最期を、自分の所業の言い訳にしたくなかったからだ。




 その頃、攻撃組の中でも紗由理が主力と見ている、エリス、リリス、アリス、理奈、玲奈の5人が、ヘカーテの居る大広間の前で、獣人達の幹部と遭遇していた。


「大広間に入れさせるわけにはいきませんね」


 総士はそう言って獣化し始める。


 迎え撃つ、獣人側の幹部級は4名。


 総士、虎次郎、ニセの光師、そして緋都女(ヒヅメ)


 双方が対峙する中、突然霧が立ちこめてくる。


「来ましたね……」


 理奈はそう呟くと、何もない空間に飛び蹴りを放つ。


 その蹴りは、丁度その場所に出現したスーツ姿の女、サイクロプスの新崎(ニイザキ)を捉えるが、両手でガードされてしまう。


「読まれていたか。やり辛い女だ」


「それはこちらのセリフです」


 理奈と新崎はお互い目を離さずに、相手の出方を伺う。


「やるぞ、緋都女!」


「はい」


 昼間の戦闘のダメージが残る虎次郎と緋都女は何やら宝玉を取り出して、自身の体内に埋め込む。


 彼らが体内に埋め込んだ物は、アルテミスの宝玉のコピー品。


 ただ、コピーといっても完成度は高く、偽物の中では高額で取引される様な代物で、獣人のパワーアップアイテムとしては非常に高スペックだ。


 2人は獣化するが、どこか禍々しさを感じる姿だった。


「では、いきますよ」


 総士とニセの光師も獣化し、襲い掛かってくる。

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