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反撃2

 1年前、獣人達に連れ出された奏美達の母、藍華。


 彼女が連れて来られた廃ビルの一室。


 そこは床だけではなく天井や四方の壁にまで魔法陣が描かれた異様な空間だった。


「藍華さん!」


 勢い良くその部屋のドアを蹴破(けやぶ)り、望月 勇と澄白 余白(スミシロ ヨハク)が突入してくる。


「遅かったな望月。すでに儀式は終盤だ。もうすぐ彼女はヘカーテとなる」


 部屋の中には藍華以外に、獅子島 光師(シシジマ コウシ)他、『血の浄化計画』の首謀格達が揃っていた。


「邪魔はさせんぞ!」


 大河 虎次郎(タイガ コジロウ)熊田 総士(クマダ フサオ)が勇達に襲いかかる。


「時間がない!」


 勇は愛用の日本刀に術式を込め、藍華目掛けて投げる。


「なに?!」


 予想していなかった勇の行動に反応が遅れた光師達。


 日本刀は藍華を(かす)め、背後の魔法陣を壁ごと破壊する。


「おのれぇ!」


 丸腰の勇に虎次郎が襲いかかる。


「モサオ!」


 咄嗟に余白は木の葉を一枚、勇に向かって投げると、それは一振りの刀に変化し、彼の手に収まる。


「すまん、余白」


 余白と呼ばれた妖孤。


 見た目は10代後半、巫女服に袴状のミニスカートを穿いた女性で、狐の耳と尻尾が生えている。


 元々封印されていたのを走矢の父、新矢が解いてしまい、当時すでに彼と結婚していたエリスと3人で行動していた頃があった。


 虎次郎相手に押し気味の勇に対し、フェイントと幻術を駆使して総士を圧倒する余白。


 本人に封印される前の記憶が無く、詳細は今も分かっていないのだが、相当な実力の妖だと予想されていた。


 総士を倒し、光師を追い詰めた余白だったが、藍華の変化に気づき、勇に注意を促す。


「おのれ、下等な人間の分際で……。よくも我の顕現を邪魔したな!」


「まずい!」


 咄嗟に刀変化した葉っぱを勇に化けさせ、彼がヘカーテにやられたように見せる。


 自身も大量の木の葉を使った目隠しで本物の勇と姿を隠す。


「さすがはヘカーテ様。あの様な下等な者共など……」


「黙れ! うつけ者。我の顕現が邪魔されたではないか!」


「もっ、申し訳ありません。この埋め合わせは必ずいたしますのでどうかお許しください」




「ふう〜、行ったみたいね。生きてる? モサオ?」


「ああ、何とかな……」


「藍華さんの事、間に合わなかったね……」


「余白、俺の死体を偽装してくれないか? 俺は機関を抜けて藍華さんを助ける」


「あ〜、やっぱりそうなるんだ……。機関に報告したら始末されちゃうもんね。藍華さん」


「すまん、みんなにはうまく言っといてくれ」


「何言ってんの? ボクも一緒に抜けるに決まっているじゃん? ボク、ウソ苦手だから、速攻でバレる自信しかないよ? 特にエリス(ねえ)に詰め寄られたらひとたまりもないから」


「本当にすまん!」


 土下座する勇を見てため息をつく余白。


「でも、以外だったね。隠れてやり過ごせるとは思わなかった」


「確かに……。妖力は凄かったが、感知能力はそれほどでもないのか?」


「かもね。そいで、そこがつけ入るスキかも」


「ただ倒すだけでは駄目だ。ヘカーテを藍華さんから引き離さないと」


「とりあえずは召喚の術式を調べないと。藍華さんを救いたいならそこからだね」




 あれから1年。


「この先に藍華さんが……」


 密かに五郎達のあとをつけた勇が拠点に潜入していた。




「そんなはずありません! ちゃんと今日泊まるって予約したんですから! ちゃんと調べてください!!」


 ヘカーテの拠点と報告されたビジネスホテルのフロントで揉める夏と日奈子。


「ですから、蒼条様という名義で宿泊の予約は入っておりませんと先程から……」


「じゃあ一体どこで寝れば良いのよぉ!」


 日奈子が床に仰向けになって駄々をこねる。


「凄いモンスターっぷりね……」


 夏に仕込んだカメラ越しに一部始終を見ていたエリスが呟く。


「地下施設の入り口が分かったそうよ。由利歌さんが内側から開けておいてくれたみたい」


 西倉 綾(ニシクラ アヤ)の報告を受け、一同は突入を開始する。




「いい加減にしろ! この人間ども!」


 モンスター客を演じる夏達にとうとうフロントスタッフの1人がブチ切れる。


「おい、やめろ!」


 年長者らしき男が制止するが、他のスタッフも我慢の限界だったようで、


「構う事はない。こんな大切な日にふざけた真似をする奴等が悪い」


「そうね。だいたい、人間どもを生かしておく理由なんてないんだから」


 次々と獣化していく。


「ひゃあ〜、お姉ちゃん怖いよ〜」


「化物ホテルだ〜、騙された〜、言いふらしてやる〜」


 2人はわざとらしく騒ぎながら逃げ回る。


「くそっ、なんて逃げ足が早いんだ!」


「バカが、絶対に逃がすな。死活問題だぞ!」




 地下施設に用意された客室。


 そこでリザードマン兄弟や彼らの仲間が休み、傷を癒やしていた。 


「一郎兄者、どこに行っていたんだ?」


「ああ、トイレだ」


「さっきも行ってなかったか?」


「ああ、体調が優れなくてな。情報を吐かせるために色々な術や能力を使われた影響かもしれん。すまんが先に休ませてもらう」


「そうなのか?! ならすぐに休んだ方がいい」


「ああ、悪いがそうさせてもらう」


 一郎が寝室に入っていったのを見て六郎が五郎に小声で話しかける。


「なぁ、五郎兄者。一郎兄者、少し変じゃないか?」


「変? 一体どこが?」


「何とも言えないんだが、何というか違和感のような物があるんだ」


「調子が悪い一郎兄者を見る事などないから、そんなふうに感じるだけじゃないのか? それにしても何か騒がしくないか?」


「ああ、一郎兄者が部屋を出て少ししてからだ」


 その言葉を聞いて、五郎の表情が険しくなる。




 獣人達の地下施設に突入したエリス達の前に、獣人や獣の姿の石像が立ちはだかる。


「久しぶりに羽が伸ばせるわね」


 羽月は漆黒の6枚羽を広げ、低空飛行で飛ぶ。


 高速で繰り出す足技で、次々と石像や獣人をなぎ倒す彼女に真紅の翼を広げた火織が続く。


「食らいなさい!」


 その翼から放たれる炎の(つぶて)が道を(はば)む者達を焼き払う。


「ちょっと、あっちこっちに火をつけないでよ! またスプリンクラーが作動したらどうすんのよ!」


「ならばスプリンクラーも焼きつくすまで!」


「バカバカ! そんなことしたって配管がむき出しになって水が出てくるの! ホント、燃やすしか頭にないの?」


 収容組の封印が一部を残して解除され、本来の実力が発揮される。


「獣人達はあたしが担当するから石像はそっちで何とかなしてよ!」


 夢子は悪魔の様な角、翼、尻尾を生やしサキュバス本来の姿で獣人達の精神を支配し、同士討ちをさせる。


「操った獣人に石像を壊させれば良いんじゃないの?」


 蝶々の羽を広げ、その羽にある目の様な模様を見た石像が動きを止める。


「それって石像にも効くの?!」


「姉貴のあの能力は視覚情報を通じてあらゆる情報をハッキングするんだ。『目』に相当する機能があればだいたい効く」


 レイコの説明に感嘆の声をあげる夢子。


「レイコ、おしゃべりは後にしなさい」


「おっと、いけねぇ」


 姉の催促に慌てて鱗粉を円盤状にして石像目掛けて放つレイコ。


  鱗粉の円盤は石像を容易に切り裂いていく。


「地味だけど結構攻撃力、高いわよね」


「あの子の鱗粉は高速で流動していて、触れたものを削り取っているの。石像を切り裂くぐらい朝飯前よ」


 レイカが誇らしく妹の能力を語る。


「それで、ヘカーテ対策は?」


 紗由理の懐に隠れたウィルウィスプがヘカーテへの対抗手段について尋ねる。


「一応、完成した。ただ、やっぱり相手をある程度弱らせる必要がある」


「ならばその役目、私にやらせてくれ」


 2人の会話に混ざってくる霧香。


「それは約束できないよ。まだ誰がヘカーテの前に立てるかもわかんないんだから」


「ならば私が立っていた時、その役目、任せてもらうぞ」


 そう言って霧香は前方の敵に斬り込んでいく。


「もう、勝手に決めないでよ……」


 ボヤく紗由理とため息をつくウィルウィスプの姿があった。

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