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応戦5

『俺は突入と撤退を術でサポートする役回りだ。六郎、兄者達の捜索はお前に任せる』


 施設突入前に、五郎に言われた言葉を思い出す六郎。


 ゴーレムや使い魔を使って、捕らわれた兄達を探すが未だに見つけ出す事ができない。


 撤退の基準は目的を果たすか、こちらが予想以上の戦力を失うか。


 このどちらかの条件を満たせば、兄達を救出できていなくても、退却しなければならない。


 焦る六郎の視界に、厳重に封のされた扉が入ってくる。


「これほどの封印、よほどの手練が捕らえられているに違いない!」


 意を決して封印の解呪に挑む六郎。


 かなり高度な封印で、解呪には予想通り時間がかかってしまった。


 もしこれで空振りなら、痛い時間のロスだ。


 封印が解け、恐る恐るとを開ける六郎。


「誰だ」


 部屋の中から聞き慣れた声が聞こえてくる。


「一郎兄者!」


 部屋の椅子に腰掛ける、リザードマン兄弟の長兄、一郎の姿があった。




「大トカゲは玲奈姉さんが仕留めちまったぞ」


「もう観念した方が良いんじゃない?」


 桜と春香が挑発気味に投降をうながす。


「フン、誇り高き獣人の信念はそんなことでは揺るがない。覚悟の違いを見せてやる!」


「あんな素人みたいな獣人を斥候(せっこう)に使っておいて、大した信念と覚悟ね」


 虎次郎の宣言に対する火織の言葉は挑発では無く、軽蔑を意味していた。


「どけ、凶剴。あの男はこの件の首謀格だぞ!」


「悪いが今の俺はあの男の側についている。どうしてもと言うのなら、力づくで排除してくれ」


 京花と凶剴の姉弟対決は続き、実力は拮抗していた。


 姉の死後、40年近く研鑽を積んできた凶剴と、死亡した10代後半の時のままの京花。


 本来なら互角というのはありえない話なのだが、京花の才能がそれを現実のものとしていた。


 その時、1階から物凄い轟音がするのが2階にまで伝わってきた。


「今度は下か?!」


「この建物、大丈夫かしら?! この妖力は結界を破った時の……」


 その場にいた誰もが沈黙し、妖力の持ち主の動向に注意を払う。


「ヤバイ?! アイツが動いた」


 中央室内で綾瀬姉妹の移送について話していた紗由理が、青ざめた顔で警鐘けいしょうを鳴らす。


 コツン、コツンと階段を上る音が近づいてくる。


 息をのんでその時を待つしかできない桜達。


 ついに修道女が姿を見せたとき、


「ヘカーテ様!」

「お母さん?!」


 虎次郎と中央室のドアから外の様子を伺っていた舞が同時に叫ぶ。


「ヘカーテ? お母さん?!」


 2人の言葉を聞いた走矢は困惑する。


「うっ、ぐっ?!」

 

 奇妙な声が桜の口から漏れる。


 ヘカーテと呼ばれた妖の妖力が強大すぎて、存在しているだけで周囲に圧力をかけてしまう。


 特に妖力を感知できる者はその影響をまともに受ける。


 まともに動けない桜達を無視して、ヘカーテは枚の前に立つ。


「久しぶりね、舞。迎えに来たわ。お母さんと一緒に行きましょう」


「お母さん?! 本当にお母さんなの! でもこの感じ、お母さん、人間じゃ……」


「人間じゃないと言うのなら、貴女(あなた)もよ、舞。私達の祖先、フェニックスの血が目覚め始めているんじゃないの?」


 母の言葉に沈黙する舞。


 ここ最近、自分が自分でなくなるような感覚に襲われる事があった。


 アレを目覚めと言うのだろうか?


 攻撃した相手を燃やす力も強くなっている。


 もし、このまま目覚めが進んだ時の、妹を傷つけたりしないだろうか?


「お母さんといっしょに来れば大丈夫よ。私の言うとおりにすれば、力を制御できるようになるわ」


 舞の不安につけ込む言葉。


「駄目だ、聞いてはいけない! 今、喋っているのは君の母君(ははぎみ)ではない。彼女の身体を乗っ取っているヘカーテの奸計(かんけい)だ!」


 舞を制止する様に、霧香が2人の間に割って入る。


「あら、邪魔をするの? それなら容赦しないわよ?」


「望むところだ」


 すでに御子の血の効果の切れた霧香は、着物姿に戻っており、愛用の刀も消えていた。


 代わりに二郎のグレートソードを持ち、構える。


「霧香!」


「駄目! 今行っても犬死だよ!」


 中央室の中から様子を伺っていた紗由理。


 その紗由理の元からウィルウィスプの星垂(ホタル)が飛び出そうとするが、紗由理に止められる。


「霧香さん、邪魔をしないでください。私はお母さんと一緒に行きます」


「駄目だ! その選択は君を不幸にしかしない……」


 言い終わる前に、霧香は舞の表情を見て察する。


 今ここでヘカーテと戦えば多くの犠牲を出すことになる。


 舞は自分を差し出す事で手打(てう)ちにしようというのだ。


 彼女の覚悟を()んで、グレートソードを下ろす霧香。


「お姉ちゃん!」


 走矢の制止を振り切って、中央室から飛び出してくる奏美。


「お姉ちゃん、行かないで! どうしてもって言うなら私も……」


「駄目よ! お母さんは私を選んだの。選ばれていない奏美は来ちゃ駄目!」


 キツイ言葉で妹を遠ざける。


「まぁ、確かに全然目覚めていないようだし、1人いれば十分だわ」


 ヘカーテもその言葉に同意する。


「お世話になりました」


 中央室の方に向かってお辞儀すると、母と共に階段を降りていく。


 虎次郎と凶剴もそれに続き、戦闘は終了する。


「不甲斐ない!」


 それは霧香の口をついて出た言葉だった。


 普段はクールな彼女が、拳を床に打ち付ける。


「みんな、よく我慢したね。大丈夫。反撃の糸口は掴んだから」


 紗由理が力強く呟く。

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