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応戦3

 人妖機関上沢支所の2階廊下。


 玲奈が凶星の1人、高禍原 陣夜(タカマガハラ ジンヤ)と対峙していた。


 槍の使い手である陣夜連続突きに玲奈は圧倒されていた。


「姉さん!」


「大丈夫よ、このくらい」


 確かに所々服は斬られているが、血は流していない玲奈。


「図に乗るなよ人外。ここからが人の研鑽(けんさん)の本領だ!」


 陣夜の言葉通り、突きの速度が上がり、先程まで無傷で避けていた玲奈の腕をかすめる。


 叫んで駆け寄ろうとする走矢を手のひらを向けて制する玲奈。


「こっちも本気でいかせてもらうわ」


 そう言い放った玲奈の腕から流れ出る血が床に突き刺さると、槍を形作る。


「これで条件は同じよ!」


 そう言って玲奈も高速の突きを繰り出す。


 決して広いわけではない、廊下での槍使い同士の戦闘。


 槍を振り回す攻撃には適さないため、どうしても突きが主力になる。


 しかし、そう思わせる事が陣夜の狙い。


 彼の必殺の横薙ぎは、障害物が有ろうとそれを破壊して目標を粉砕する。


「ここだぁ!」


 それは突きの応酬の真っ最中に放たれた。


 信じられない事に、突くよりも早い横薙ぎ。


 それでも玲奈は反応し、自分の槍を床に突き立てて、ガードの体勢をとる。


 しかし、陣夜の横薙ぎは玲奈の槍をへし折り、彼女をふっ飛ばす。


「軽い?! 当たってないな!」


 陣夜の言葉の通り、横薙ぎが命中する前に横っ飛びで回避した玲奈は壁を蹴ってもとの位置に戻ってくる。


 と、同時に折れたはずの玲奈の槍が血液状になって、陣夜の槍を伝ってくるのを目視する。


「ちぃっ! これだから人外は!」


 そう言って槍を玲奈の方に投げ捨てる陣夜。


 手刀でそれを(はじ)く玲奈に、陣夜の手刀が迫る。


 槍の突き合いから手刀での斬り合いとなり、いよいよお互い無傷では済まなくなる。


「足は使わないの? 私が油断するのを待っているのかしら?」


「ちっ、やり辛い人外め! 大きなお世話だ!」


「さっきから人外人外って、失礼な物言いね。大体、私の父は人間よ!」


 そういえば、後ろにいる少年が彼女を姉と呼んでいたのを、陣夜は思い出す。


「ヴァンパイアは混血が産まれない人外だったか」


「また言った!」


 地域や時代にもよるが、人外と呼ばれる事を嫌う妖がいる。


 特に人間と親しい妖ほど、(ひと)と明確に区別するこの呼び方を嫌うと言われている。


「この!」


 感情的になったのか、玲奈が先に回し蹴りを繰り出すが、陣夜はそれをかがんで回避しようとする。


 しかし玲奈は蹴りを振り切らず、かがんだ陣夜の真上でかかと落としに切り替え、陣夜を撃破する。


「癖なのか挑発なのか知らないけど、口の聞き方には気をつける事ね」


 床にめり込んだ陣夜にそう、吐き捨てる。




 3階の階段付近、人妖機関の実務職員、蒼条 夏(ソウジョウ ナツ)三田村 日奈子(ミタムラ ヒナコ)は別の凶星のメンバーと遭遇していた。


「望月先輩……。どうしてあなたが……」


 夏が言葉を絞り出す。


「久しぶりだな、お夏。日奈子も。お夏はまた背が伸びたか? 日奈子は全く相変わらずだな」


 望月と呼ばれた日本刀を持つ30代の男は少し懐かしそうに言う。


「そうじゃないでしょ! 望月くん、なんで生きているの?! 1年前、綾瀬家の護衛任務中に殉職したはずじゃ……。わかった! 偽物ね、偽物だね! あたし達を騙して混乱させるつもりね!」


「事情はおいおい話してやるさ。冥土の土産にな……」


 日奈子の言葉を鼻で笑って、望月 勇(モチヅキ イサオ)は刀を抜く。




「すんなり合流できてよかった〜」


 桜達と遭遇した紗由理が安堵のため息をつく。


「護衛はお前だけでここまで逃げてきたのか?」


「そう、あたしだけ。他は敵の迎撃と足止めに徹しているよ。彼女達のいる場所がバレちゃったからね」


 桜の問に答える紗由理。


 紗由理は先発隊の獣人達の役目が、綾瀬姉妹の捜索と見抜き、すぐに移動する事を決めた。


「機関職員のとこまで護衛してくれない? 何とかこの支所から脱出しないと……」


「それってつまり、この支所が陥落するって見てるわけ?」


 春香の質問に紗由理は静かに頷く。


「なっ、なんだよそれ?!」


「君達も感じたろ? ここの結界を消滅させた妖力を。この支所にあの妖力の主を止める力は多分、無いよ……」


 その言葉に一同は沈黙する。


「とにかく、今は一刻を争うんだ。職員に接触して脱出とその後の受け入れ先の確保。そこまでの護衛を頼むよ」


「あっ、ああ……」


「それまでに、あの妖力の主と出会わなきゃ良いんだけどね……」


 春香が呟く。


「ところでさぁ、なんでカナちゃん達、ウチの高校のジャージ着てるの?」


 不意に飛び出した直の質問。


「ああ、月宮の制服は目立つと思ったから、交換したんだ」




 その頃、5階では綾瀬姉妹の制服に身を包んだ、サキュバスの夢子と、蝶の羽を持つヴァンパイア姉妹の姉、原口レイカが逃げ回っていた。


「あのチビ! あとで絶対に折檻(せっかん)してやるんだから!」


「それには同意ですけど……。|貴女(あなた)、よく走りながらそれだけ喋れるわね……」


 悪態をつきながら走る夢子を見て、レイカ場感心する。


「姉貴、あんまり先行するな! 待ち伏せがいるかもしれねぇぞ!」


 レイコが言ったそばから、曲がり角から槍が伸び、勢い良くそれが振られる。


『ひぃっ?!』


 レイコと夢子は悲鳴をハモらせ、後方にのけぞり、そのまま転倒する。


「姉貴?!」


「見つけたぞ! こいつらだろ? 兄者!!」


 槍を持つリザードマン、八郎が倒れた2人に近づく。


「てめぇ!」


 叫びながら飛び蹴りで八郎に襲いかかるが、槍でガードされる。


「よく見ろ八郎。そいつらは服を取り替えただけの偽物だ。まんまとハメられたんだよ」


 八郎の後方から現れた、刀を(たずさ)えたリザードマン、七郎が呆れた様子で口を開く。


「そういう事だ、マヌケ!」


 レイコが挑発して時間を稼ぐ間に、2人は立ちあがる。


「兄者達、コイツ等を生け捕りにすれば本物の居場所を吐かせられるかもしれない」


 七郎に遅れて姿を見せた九郎が提案する。


「へっ、上等だ!」


 強気な態度を見せるが、武器持ち3人を相手にするのは正直、辛い。


 しかし、姉も夢子も本来妖力で勝負するタイプで、その妖力を封じられた現状、戦力には数えられない。


「姉貴、離脱しろ……。夢子、姉貴を頼む」


 先を見据えたレイコは姉達に逃げるよう、指示を出す。

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