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応戦

「結界が消えた?! 走矢、私から絶対に離れないで!」


 そう言って走矢の手を握り、自分の方に寄せる玲奈。


「姉さん……。結界が消えたって今言ってたけど……」


「ええ、残念ながら……。敵はほぼ、素通りしてくるわ」


 結界というのは主に2種類あり、個人が状況に合わせて使用する『瞬発型』と特定の場所や施設を守るために使われる『持続型』。


 持続型と言うのはキメラこと英子が結界石を使って張った物がそれで、結界用の術具を使う事で常時結界を張り直している状態のモノを指す。


 そのため、結界の張り合いにおける後出し有利が通用せず、結界石の様な結界用の術具を排除するぐらいしか対抗策が無いとされる。


 それをこの襲撃者は力ずくで破壊してしまったのだ。


「各支所、支部に応援要請! 全準職員にも招集要請を!」


 中央室に駆け込んだ清十郎が、支持を出す。


「結界器の状態は?」


「ほぼ使い物にならないそうです」


「予備との交換を急がせろ」


 清十郎の指示に了解と返す職員。


 だが仮に結界が復活したとしても、再び破壊される可能性が高い。


 さらに、結界器の交換をみすみすやらせてくれるとも思えない。


「由利歌くんに連絡を。彼女達の解放も視野に入れる必要があると伝えてくれ……」




「せぇい!」


 掛け声とともに繰り出した前蹴りが、ワードックの顔面を捉え、戦闘不能に追い込む。


 機関施設内の2階。


 走矢を守るように、突然現れた獣人達を迎撃する玲奈だったが、何か腑に落ちないといった表情だ。


 すでに10体を超える獣人を返り討ちにしている玲奈。


「何、この娘達。まるで戦いの素人だわ」




「納得いかないか?」


 ワータイガー、大河虎次郎がいつぞやの秘書らしき女性に話しかける。


「いえ……。光師さんの指示ですから」


 目も合わせず女は答える。




 支所に攻撃を仕掛ける10分ほど前。


 五郎達は最後のミーティングをしていた。


「俺の影を使った転移は運ぶ数が多いほど指定した位置から外れる。これを利用して一気に全階層に兵隊どもをバラまく」


「前回、4階に居たんだろ?」


「こっちに転移術の使い手がいると知って、同じ場所においておくと思うか? 俺が(かくま)う側なら4階にだけは置かない」


 朔美の質問に答える五郎。


 他の者も大方彼に同意のようだ。


「今回はコボルドじゃなくって獣人か。これならいけそうだな!」


 増援の獣人達を見てテンションが上がる八郎。


 しかし、彼より上の兄弟達は、この獣人達の未熟さに気づいていた。


「下手するとコボルドの方がマシまであるな」


 七郎が呟く。




 佐伯清十郎は決して強いわけではないが、弱くもない。


 人妖機関の実働部隊として活動すれば、嫌でも戦いに巻き込まれる事もある。


 それに対処するための、言わば護身術くらいは身につけている。


 そんな彼は、中央室に飛び込んできた燕の獣人を、動きを先読みして迎撃する。


「さすかですね」


 職員の1人が声をあげる。


「いや……」


 何とも言えない返しをする清十郎。


「身体能力は高い。が、それに振り回されている様な動きだった。何とも違和感のある敵だな……」




 機関施設5階。


 この階には部屋を移動していた綾瀬姉妹が居た。


「おねぇちゃん……」


 震え声で姉を呼ぶ奏美。


「えっ? ああ、うん。大丈夫よ! お姉ちゃんがついているから」


 奏美が不安な理由。


 1つは先ほどから止まない侵入者を知らせる警報。


 もう1つは結界が破られた時から姉の舞の様子がおかしいからだ。


 妖の血を引く御子である、舞と奏美は結界が破られた事を何となくだが感じ取っていた。


 その時、感じた何かが舞に変化を促したのではないのか?


 奏美は今までに無い不安にかられていた。


「?!」


 その時、廊下に通じるドアが蹴破(けやぶ)られ、1人の獣人が乱入してくる。


「下がって、奏美。こいつは私が……」


「みやこ……」


 部屋に入ってきたワーキャットの姿を見て、奏美は友人の名前で呼ぶ。


「月宮に帰ろ、奏美」


 ワーキャットは微笑みながら手をさしのべる。




「ぎゃあー?!」


 同5階の廊下。


 ガシャドクロが容赦無く、獣人の少女を斬り捨てる。


「ガシャ姉、容赦ないなぁ……」


 蝶々の羽を持つ双子のヴァンパイアの妹、原口レイコ。


 まるで戦いの素人の様な獣人達に、戸惑う横で、一切の手加減なく斬り捨てるガシャドクロに、感嘆とも畏怖とも取れる調子で言葉を投げかける。


「もし君に迷いがあるのならば、それこそがこの(むすめ)達を送り込んだ者の狙いだろうな。ならば私は(れい)(てっ)する」


「冷たい様だけど、あの姿勢は一応、見習っておいた方がいいよ。結局のところ、この世……、特に妖の世界は弱肉強食。力が全て、勝者が全て。甘い考えは命とりになる」


 いつの間にか2人の背後に立っていた来島 紗由理(クルシマ サユリ)を名乗った魔女が語りかける。


 物陰にサキュバスの夢子と共に隠れる、姉のレイカを一瞥し、ため息をつくレイコ。


「わかったよ」


 手短に答えると、以前のスパルチス先での戦利品の曲刀を構える。


「確かに姉貴に何かあってから後悔しても遅い(おせぇ)からな!」


 それを見て微笑を浮かべるガシャドクロの手にも、スパルチスから奪い取った曲刀が握られていた。


 そんな彼女達のいる廊下に、奏美の悲鳴が響き渡る。


「しまった。あの姉妹のところには火織と羽月を向かわせていたんだけど、間に合わなかった?!」


 紗由理が焦りを見せ、声の方に走り出す。


「私も行こう」


 ガシャドクロも後に続く。


 綾瀬姉妹の部屋の前には火織と羽月。


 そして何者かに倒されたワーキャットが居た。


 ワーキャットには焼けたような傷があり、最初は火織が仕留めたのかと駆け付けた2人は考えた。


「私じゃないわ……」


 紗由理達を見ず、綾瀬姉妹の部屋を凝視する火織の言葉。


 釣られてそちらに視線をやる紗由理達。


 そこには、煙の立ち昇る市内を構えた舞の姿があった。

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