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狂戦士

 とあるビルの屋上。


 そこで双眼鏡を覗き込む、ツインテールの少女、オルトロスがいた。


 彼女は目視で上沢高校が結界に(おお)われるのを確認すると呟く。


「ここまでお膳立てしてあげたんだから、それなりの成果は出してもらわないとね」




「なっ?! 結界? 白昼堂々と仕掛けてきやがった!」


 授業中、結界の発動を感知した桜が叫ぶ。


「咲多さん静かに。こういう時こそ、避難訓練の通りに冷静に対処すべきなんです」


 パンパンと手を叩いて騒ぎを(しず)める理奈。


 意外な事に、ちゃんと教員免許を持っていた彼女の、まともな授業の最中だった。


 バァン、と音を立てて教室の引き戸を破壊しながストーンゴーレムがなだれ込んでこようとするが、それを回し蹴りで蹴散らし、教室の外に追いやる理奈。


 自分の人差し指を噛んで出血させると、その血を指で弾いて飛ばし、教室の前と後ろの出入り口を塞ぐ。


「これから私が様子を見てきますから、皆さんはここで大人しくしていてくださいね」


 理奈の作った出入り口を塞ぐ赤い壁。


 彼女はそれをすり抜け、廊下に出る。


 数体のストーンゴーレムを蹴散らした理奈は奥から自分を凝視するコボルドの存在に気づく。


 特別、変わったところの無いコボルドだが、その右手にはめられたブレスレットに理奈の注意が集まる。


 おそらく、かなり強力なマジックアイテム。


「いくぞ!」


 コボルドはそう言ってブレスレットの力を起動する。


 コボルドば黄金の鎧に身を包み、右手に剣、左手に盾が出現すると、亜空間結界を形成する。


 結界内は四角いマス目て区切られている、異様な空間。


 そのマス目から鎧の兵士達が現れる。


 その数は8体だったが、理奈はあっという間にその半分を蹴散らす。


 が、ふと気づくと、背後に馬面の騎士が2体彼女の背後に迫っていた。


 翼を広げて上昇すると、弧を描きながらな馬面の背後に周り、反撃に出る。


 しかしそれは、ゴツイ鎧の兵士に(はば)まれ、さらには浮遊する軽装の2体の追撃を受ける。


「これは……。この兵士達はチェスの駒ですね?」


 コボルドは言葉を発せず、剣を理奈に向けて攻撃を指示する。


「この兵士達が結界の効果ならば、結界の後出しで消す事ができるかも」


 そう言って理奈は、自身の血を上に向けて指ではじくと、周辺が赤く染まりチェス兵士達は消滅する。


 しかし、コボルドが再び結界を張ると新たなチェスの兵士達が出現する。


 先ほど倒したポーンも復活しており、理奈は結界の張り合いを中止する。


 実際、対峙すれば相手の力量から何度結界を張り治せるかが見えてくる。


 しかし、アイテム由来の結界ではそれが分からない。


「正攻法で攻略するしかなさそうですね」


 そう呟くと、自傷してその血を頭から浴びる。




 一方、教室に残った走矢達だったが、上の階の床をぶち抜いてオークが現れた。


 腕輪の力でオークキングなみの巨漢となったオークは巨大鉄球の武器、モーニングスターを片手に、走矢を目指す。


「ニャロお!」


 オーク目掛けて回し蹴りを繰り出す桜。


 その攻撃はガードされるが、同時に春香が放ったスライディングキックでオークは転倒する。


 その間に玲奈は床に穴を開け、自身の血液で簡易的な階段を作ると、他の生徒達を下の階に脱出させる。


「直、咲花、みんなを頼む」


「ガッテン!」


「わかったわ!」


 短いやり取りで役割分担を済ませる少女達。


「走矢くんも下へ!」


「いやっ、俺はここに残る。みんなと一緒に逃げたら巻き込んでしまいそうだ」


 ほんの数日前、俊紅をもとめて人妖機関の支所になだれ込んだオークの集団が脳裏に浮かぶ走矢。


 そしてその予想は当たっており、もし彼が他の生徒達と逃げればこのオークはそれを追ってきただろう。


 走矢を凝視するオークを見て、桜達もそれを察した。


「この豚、私の走矢を狙っているの?! いいわ、今夜は酢豚にトンカツ、チャーシュー麺よ!」


「……。コイツ食うんですか?」


「食べるわけ無いでしょ、こんなヤツ! 調理したらすぐに生ゴミ行きよ!!」


「環境に優しくないですね……」


 桜と玲奈のやり取りに春香が突っ込む。


「来るわよ!」


 玲奈の言葉で2人は気持ちを切り替え、戦闘モードに入る。


 (ほう)られた鉄球を散開して回避する桜達。


 まずは春香が自分の翼から抜いた羽根を投げナイフの様に投げる。


 オークはそれを腕で受けるが、同時に桜が繰り出した飛び蹴りが顔面にヒットする。


「なかなかのコンビネーションね」


 のけぞるオークを見て、玲奈が呟く。


 その後、玲奈も加わりオークはいい所がなく、劣勢に立たされていった。


「ガタイはあの王様と同じぐらいだけど、動きは全然だな」


「体脂肪を燃焼させる技も使えないみたいだし、あの鉄球も使いこなせていないわ!」


 3人は一気に畳み掛けたが次の瞬間、地に伏していた。


 オークはその姿を巨漢のボアヘッドに変え、その牙と鉄球、拳で3人を同時に迎撃したのだ。


「みんな?!」


 駆け寄ろうとする走矢を玲奈が静止する。


「来ちゃだめよ。コイツ、別人みたいに動きが変わった?!」


 牙が肩をかすめた玲奈が傷口を押さえながら立ち上がる。


「確かに動きが別人ね。こんなにキレイにカウンターをもらうなんて……」


「くっそ……」


 鉄球を食らった、1番ダメージを受けていそうな桜が、体を引きずるように立ち上がる。


「下がってなさい。そのダメージじゃ戦闘の継続は無理よ!」


 そう、桜に言い放つと、


「腕輪よ、パワーアップにしろ、何者かに操られているにしろ、あの腕輪が起点になっているはずよ」


 春香にはとりあえずの攻略法を授ける。




「やはり、私が直接操った方が効果的ですね」


 オルトロスの中に入り込んだ霊体の男は呟く。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

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