予兆4
ワーウルフの首を掴むと、その女子生徒は早足でその場から立ち去る。
一瞬、遅れてそれを追うリリス。
だが、生徒の群れに紛れられて、見失ってしまう。
「これだけか? もっとメンバーがいなかったか?」
凶星との顔合わせ、二郎の第一声がそれだった。
「あれから何年だったと思ってる?引退する奴、離れる奴。面子が変わるのは当たり前だろ」
リーダー格の男が言う。
この場に現れた凶星は5人。
少数精鋭とはいえ、かつては20人ほど居たと伝わっている。
「隣の部屋を取ってある。基本は待機だ」
五郎の言葉に、大人しく従う凶星の面々だった。
「うい〜っす」
登校時、いつものように桜が声をかけてくる。
「おはよ〜」
と、普段の調子に戻った直。
「かーちゃん居ねぇけど、大丈夫か?」
「ああ、寂しくないってわけじゃないけど、玲奈姉さんと理奈さんが居るから……」
何やら少し端切れが悪い。
それというのも、今朝起きたら居ないはずの2人が走矢の両脇を固める様に彼の布団に入っており、今後しばらくこれが続くのかと思うと、色々と先が思いやられる状態だった。
「玲奈さん、一緒に学校来たりしないのか?」
「どうだろう、何も言ってなかったんだけど……」
「何か姿が見えないと、逆に不安になるよね〜」
「いや、変なフラグ立てるなよ!」
桜はああ言ったが、確かに直の言うとおり、何かが起きそうな予感がした。
ふと、一同が何かを感じ、住宅街に通じる小道に目をやると、桜達と同じ制服を身にまとった理奈が玲奈に取り押さえられている光景を目撃してしまう。
一瞬、固まりかけたが、何とか見て見ぬふりをしてその場を後にする一同。
「今の理奈さん……」
「あの格好はアウトでしょ……」
「学校に来る前に、玲奈さんが取り押さえてくれてたんだ……」
一同は何か見てはいけないモノを見た後のように、どこか遠くを見ながら語り合う。
「いや、あの人が制服着てたらもはやそういう商売の人だって、月宮の制服のとき証明済みでしょ……」
登校後、春香と咲花に登校時の出来事を話すと、春香から容赦の無い感想が返ってくる。
「は〜い、みなさ〜ん。相沢先生はとある用事でしばらくおやすみしま〜す。その間新副担任の私がこのクラスを受け持ちますのでよろしくね〜」
そんな陽気なセリフと共に教室に入ってきた女性教員。
「あ、自己紹介がまだでしたね〜。雨上 理奈で〜す。よろしくね〜」
突然、クラスの副担任として現れた理奈の姿に一同は固まる。
「りっ、理奈さんあんなキャラだったっけ?!」
「浮かれて調子に乗ってるだけよ。すぐに飽きて素に戻るわ」
春香の疑問に答える声。
それはいつの間にか走矢の後ろの席に陣取っていた、制服姿の雨上 玲奈だった。
「玲奈姉さん、これはいったい……」
「生徒として入り込むって聞かなかったのを、何とか説得して教員って事で納得させたの」
ぐったりとする玲奈が過程を説明する。
「今はあの女教師も母親もいない、絶好の好機だ」
そう話すのは奥井 トン助。
小久保 ケン太と共に生徒の姿で廊下を歩く。
「目的は陽動、できるだけ多くの生徒を巻き込んだ方がいい」
そう言いながら教室の出入り口付近に小砂利をばら撒いていくトン助。
「時間は1時間後。その時、どれだけ俊紅から関係者を引き離せるかだな」
そう言いながら、オルトロスに与えられたマジックアイテムの指輪に目をやるケン太。
「あくまでも俊紅の奪取が目的で、戦闘は手段だ。そこを間違えるなよ」
そう言ってケン太に釘を刺す。
復讐代行人。
それは人が妖を恐れ、妖が人を襲う時代に暗躍した妖専門の暗殺者。
凶星も元はその暗殺を主としていたのだが、26年前の事件のときからそれが変わり始めた。
人と妖の距離が近くなり、復讐代行人の存在意義が薄れていき、いずれは消えゆく役割と、考える者も多かった。
しかし、獣人達の一件でその考えは一転し、さらなる研鑽のため傭兵まがいの活動を始めたのがリザードマン達に雇われた方の凶星だった。
「たぶん、あの娘は昔ながらの凶星で、拝暗殺の機会を伺っていたんだと思うの」
リリスは同室のエリスについ先ほどおこった事を伝えた。
「それで、その拝みさんって人の遺体は?」
「私が戻ったらもう何者かに片付けられた後だったわ。もしかしたら最初からわたしたち、ずっと誰かにみはられていたのかも」
2人の間に緊張感が漂う。
上沢高校で事件が起きる。
突然、ストーンゴーレムが大量に発生し、生徒達を襲い始めたのだった。
神崎ら、陣容機関の準職員が対処に当たるが、数の多さに手を焼いていた。
「西倉先生、ここは任せて、佐伯くんのクラスに行ってください」
「バカ言わないで! 貴方1人で対処にできる数じゃないわ。それにこのゴーレム、一体一体な完成度がとても高いわ。1人じゃ無理よ!」
「機関にも増援要請を出しましたから、すぐに援軍が来ます。こっちはなんとかしますから……?!」
言いかけた神崎達は異様なプレッシャーを感知し、その正体が学校を覆い尽くすほどの結界だと理解する。




