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怪盗

 桜達とわかれて自宅に到着した走矢達を留守番していたアリスが出迎える。


「遅くなるなら連絡ぐらいよこしてよ」


 そして、自宅に入るとそこには無かったはずの(とびら)が2つ。


 それはアパートの両隣(りょうどなり)の部屋へ出入りできる物だった。


「今日からお隣さんね」


 そう言ってリリスは左側のドアを開ける。


「私はこっち」


「私『達』でしょ!」


 理奈の言葉を玲奈が修正する。


 突然両隣の部屋に、実の家族と義理の家族が住む事になったこの状況に、エリスはあ(ぜん)とする。




 数日後、学校が再開し久々に登校する走矢。


「うい〜っす」


 聞き慣れた桜の声に反応し、振り返る走矢。


 親しげな挨拶を返すつもりだったのだが、桜の姿を見て言葉に詰る。


「ああ、これな……。ちょっとめんどい事があって、元気が無いんだ……」


 桜の言う『これ』とは、普段の姿からは想像もつかない、グッタリとした直だった。


 彼女は桜におぶられ、焦点の合わない目でどこか遠くを見ていた。


「具合が悪いんだったら、家で休ませた方が良いんじゃないのか?」


「いや、それが……。家にはいない方が良いんだ……」


 桜の返答に首をかしげる走矢だったが、どうも直がこうなった原因が家にあると言われている気がしていた。


「なに?! 直に何があったのよ!」


「あんな直、はじめて見たわ……」


 春香と咲花も直の状態に驚く。


「おいおい話すからさぁ……」


 心なしか、桜も元気が無いように見える。




「そういえばエリスさんは?」


 午前の授業が終わり、時間は昼休み。


「機関の関係で、しばらく学校は休むって」


 春香の問いに、走矢が応える。


「それにしても……」


 春香の視線の先でモクモクと昼食を食べる、直の姿があった。


「朝に比べればだいぶマシになったけど……」


「やっぱりいつもと比べるとおかしいわよねぇ」


「桜が何か知ってそうなんだけどなぁ……」


 走矢と春香の2人は、直の隣で昼食をとる桜に視線をやる。


 すると突然、ガタッという音がする。


 音の正体はすぐに分かった。


 桜の隣でチュウをとっていた直が急に立ち上がり、早足で走矢の所にやってきたのだ。


「走ちゃん、今日、走ちゃん家に泊めて!」


 直の急な頼みごとに走矢と春香は呆気にとられる。




「事情は……。泊めてくれたら話す……」


 下校時間になり、帰り支度をはじめる一同だったが、直は頑なに走矢宅への宿泊を望んだ。


 帰るのが嫌なら桜の家にでも泊まればいいのに。


「駄目、桜の家じゃすぐ見つかっちゃう」


 まだ何も口に出していないのに、走矢の考えが分かるのか先回りして答える直。


「母さんに話してみるけど、その段階では事情を説明してくれないと厳しいと思うぞ。駄目なら理奈さんかリリス……。お祖母(ばあ)ちゃんに頼んでみるけど……」


「ありがとう走ちゃん!!」


 直は今日一番の元気な笑顔を見せる。


しかし一同は下校途中、異変に見舞われる。


 まだ明るいはずの空が真っ暗になり、人気(ひとけ)が無くなる。


「この結界は……」


 呟く桜の横で、アワアワと取り乱す直。


「直、一体どこに行くつもり?」


貴女(あなた)のお家はそっちじゃないわ!」


 見れば民家の屋根の上に2人の少女らしき影。


 声の主はこの2人らしい。


 そして、少女達は背中から生えたコウモリの翼を羽ばたかせて、走矢達の間近に降り立つ。


 見た目は桜達と(おな)(どし)くらいの、ショートヘアとロングヘアの少女達は、アイドルが着るようなヒラヒラの衣装を身に(まと)い、互いに鏡写しのように横Vサインでポーズを決める。


「ちょっと、こんな街中で勝手に結界なんて張ったら、人妖機関に怒られますよ?」


「大丈夫よ桜ちゃん。見つかる前に終わらせるから」


 ロングヘアの少女が言う。


「そういう所が直のストレスになるんですよ。おばさん! おじさん!」


「おばさん……」


「おじさん?!」


 桜の言葉をなぞる走矢と春香。


「もう、ママもパパもいい加減にしてよ!」


「ママ?!」


「パパ!!」


 再び言葉をなぞる走矢と春香は思考が追いつかない。


「ねぇ直、パパって……」


「うん、うちのパパ……。男の娘……」


 その言葉を聞いて、走矢と春香は死んだ魚の様な目になる。


「どっち……? どっちがパパなの?」


「ロングヘアの方……」


「せめてショートヘアであって欲しかった」


 走矢も自分が何を言ってるんだか分からなかった。


「以前、あたしの家系は怪盗だったって言ったでしょ?  今は当時、盗み出した物を集めて元の所有者の元に返すって言う活動をしているの……?!」


 直が話し終わると同じくらいのタイミングで、彼女の両親が走矢の間近に立ち、彼の臭いを嗅ぐ仕草をする。


「ねぇ、君。なんだか凄くいい臭がするね。ちょっと血を貰っても良い?」


 ロングヘアの少女? が体を密着させて、走矢の首筋に狙いを定める。


「おじさん?!」


「やめてよ、パパ!」


 しかし、その牙が走矢の首筋に刺さることは無かった。


 突如現れた謎の乱入者によって直の両親は縛り上げられ、キュウっとなっている。


「怪盗夫婦、()()ったりぃ!!」


 それはエリスが、直の両親を縛り上げた光景だった。


「良かった、正義が成されたのね」


『いや、両親?!』


 すかさず走矢と春香がツッコミを入れる。

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