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一応の決着

「うぃ〜す。散々だったね」


 疲れた様な口調で紗由理達に話しかけてきたのは、原口姉妹の妹、レイコだった。


 戦利品の曲刀を両手に持ってのご登場だ。


「随分と消耗しているようだな?」


「姉貴達が全然手伝ってくれねぇんだもん……。ただでさえ素手で武器持ち相手にしてんのにさぁ……。ってかガシャ(ねえ)、すげえ格好(かっこう)してんな!」


「人には言うなよ? 内緒だぞ?」


 そう言ってピンと立てた人差し指をレイコの口に当てるガシャドクロ。


「ちょっと、人の妹に変な事しないでもらえる?」


 そう言いながらレイカが割り込んでくる。


「妹がシスコンと見せかけて、実は姉の方がシスコンなのよねぇ、あんた達って」


 一連のやり取りを見てサキュバスこと夜純 夢子(ヤズミ ユメコ)が茶々を入れる。


「うるさいわよ、夢子!」


「そうだぜ、(ぜっ)てぇにあたいの方がシスコンだし!」


 譲れないのはそっちかい、と原口姉妹以外の全員が心の内外で突っ込むなか、紗由理が真面目な様子で口を開く。

 

「で、どうする?」


 それは復活したウィルウィスプに投げかけた言葉だった。


 どうする、とは今後の彼女の身の振り方を聞いており、このまま逃亡するのか、何かそれ以外の考えがあるのか?


 他の収容された面々と違い、彼女には封印も(ほどこ)されていないわけで、逃亡をはかる事もできる。


「逃げるんだったら、結界が中和されている今のうちだよ?」


「なぁに? そんなに私を追い払いたいの?」


「君の真意を知りたいんだよ。あたし達と違って力を封じられていない君の存在は凄く羨ましくって有用(ゆうよう)何だ。例えば今回みたいな事があったとしたら、フルパワーで戦える君の存在はとても重要だ」


 見た目幼い魔女は、ひと呼吸入れて続ける。


「結論から言うとあたしと契約して欲しい。その状態で施設に残って、何かあったとき力を貸して欲しいんだ。現状、あのキメラは倒されたけど、この街はいまだにおかしな状況が続いている。今回の襲撃者も1枚岩ではないみたいで、「敵」も困惑していたみたいなんだ」


「それでわたしは何を得られるの?」


「今は明確には提示できない。あたしも収容されている身だから。でもここにいる事で得られる情報とか有るんだ。この施設内のアチコチにアタシの土人形を(はな)ってあるから」


「あの、もし私達を守ってもらえるのでしたら、私の血を差し上げます。私達の血には妖の方の力を高める効果があると聞いています。決して多くはありませんが……」


 2人の話に綾瀬姉妹の姉、綾瀬 舞(アヤセ マイ)が入ってくる。


「御子の血ね……」


 何やら複雑な心境のウィルウィスプ。


 その理由は、一度俊紅を手に入れながらもその時の肉体をキメラこと浪川 栄子(ナミカワ エイコ)に捕食されて失っているという事。


 もう1つは自身が上沢高校に入り込むのに綾瀬姉妹と同じ血筋の藤崎 星垂(フジサキ ホタル)という女性の残留思念を宿した人魂を取り込んだ事。


 ウィルウィスプの中には彼女の記憶や意識のような物があり、それは少なからずこの妖の心情に影響していた。


(不思議な物ね。俊紅を殺める事には何の抵抗も無かったのに、御子のこの子達を見ていると……)


「少し、考える時間をちょうだい。結論が出るまでは仮契約って事でいいでしょ?」


 紗由理としては上出来の返事なのだが、そこはあえて隠して、少し不満げに承諾する。


「おっと、豚の王様を倒した俊紅の子達がこっちに向かっているわ。ウィル、また人魂の状態になれる?」


星垂(ホタル)藤崎 星垂(フジサキ ホタル)よ」


 ウィルウィスプこと藤崎星垂は紗由理の言葉を訂正すると、人魂に姿を変える。


「貴女達もお願いね。決して悪い様にはしないから」


 自分の唇に真っ直ぐ伸ばした人差し指を当てて、綾瀬姉妹に口止めをお願いする紗由理。


 姉の舞が勢い良く首を縦に振ると、それを見た妹の奏美もぎこちなく首を縦に振る。


「俊紅の子『達』か」


 ポツリとガシャドクロが呟くと、他の者達も反応する。


「ヴァンパイアと良縁のある子だよね」


「まぁ、お母さんがヴァンパイアだし」


 紗由理と羽月が感想を述べる。


「それだけ妖と人間の距離が近くなったって事でしょ?」


「昔から俊紅と妖の(つがい)は珍しくなかったぞ」


 そう、レイカの言葉を訂正するガシャドクロ。


「俊紅が人間に保護される様になったのはここ100年くらいの話だ。それ以前はむしろ、人間に命を奪われる事の方が多かったな」


 昔話でもする様に100年以上前の話をしだすガシャドクロ。


「君って歳いくつなの? 絶対あたしより上だよね?」


「女に歳の話をするのか?」


 と、紗由理の質問をはぐらかすガシャドクロ。


「私が見てきた限り、番には2種類あった。1つは俊紅をできるだけ生かし、長くその血を得るというモノ」


「なにそれ、番じゃなくって道具扱いじゃない」


「オメェだって似たような事、考えていたじゃねぇか」


 夢子の突っ込みにレイコがさらに突っ込む。


「それがそうでもない。人間に追われ、寝食すらままならない生活に比べれば、血を与える事で守ってもらえるというのは、俊紅にとっても願ったりな話だ」


 ガシャドクロ、ウィルウィスプ、そして紗由理の3人以外は100歳未満の妖で、ガシャドクロの話を聞いてもピントこなかった。


「そしてもう1つが、同じ人間に追われ、ボロボロになった俊紅を見て情が移ってしまったパターンだな。あの桜花(オウカ)走次郎(ソウジロウ)もこれに当てはまる」


 桜花と走次郎と聞いて、首をかしげる一同。


「それ、今は桜花と走助って呼ばれてるやつだよ」


 紗由理がフォローを入れると、


「さっ、最近はそう呼ぶのか……」


 ガシャドクロは必死に取り(つくろ)う。


『やっぱり歳……』


 誰かが言ったその言葉に、さり気なく傷つくガシャドクロだった。

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