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乱戦7

 オークキングの全身から湯気のようなモノが立ち昇り、最初に見たときよりも痩せているのが分かる。


「言ってしまえばアイツも私と同じ、ドーピングを使っているって事ね」


 リリスはそう呟くと、先ほど噛んだ手と反対側の手を噛み、リミッター解除中からの完全解除を行う。


 目にも止まらないスピードでオークキングに襲いかかり、スピードで優位を取る。


「やはり場数を踏んだヴァンパイアというのは切り札を隠し持ってるモノですね」


 理奈はそう言うと、自身の右手首を傷つけ、そこから流れ出す血液を頭から浴びる。


血粧(けっしょう)


 妖力と言うのは、妖の体内、それも血液に乗って循環し全身にいきわたると言われている。


 その血液を浴びる事で身体(からだ)の外にも妖力が循環するようにすると言うのがこの『血粧』と呼ばれる技術だ。


 パワーとスピードの両方でオークキングを上回り、リリスと共に強敵を追い詰めていく。


 このままではまずいと判断したオークキングは、リスクを負っても2人を振り払い、走矢を直接狙う判断をくだす。


 最大出力の鼻息で周囲のホコリを巻き上げ、目隠しと目潰しを同時に行う。


 目視してからでは間に合わない。


 2人がひるむ前提で動き出す、オークキング。


 見切り発車だが、2人の追撃は無く、あと少しで走矢に手が届くという瞬間、強烈な回し蹴りがその顔面に食い込んだ。


「ナイッシュー」


「ナイスイリュージョン」


 親指を立てて見せる春香に、ノールックで親指を立てて返す桜。


 倒れたオークの鼻先に、薄紫色の羽根が舞い降りる。


「走矢くんの(まぼろし)見せといたら、絶対飛んでくると思ったのよね」


「あの勢いでカウンターを食らえば、ほぼノックアウトでしょうけど……」


「念には念を入れちゃいましょ」


 桜のカウンターキックで戦闘不能に(おちい)っていたオークキングには、悲鳴をあげる力も残されていなった。




「現在、上沢高校の調査に入ってい人員の一部を『綾瀬 舞(アヤセ マイ)救出部隊』の救出に()てています」


 支部長室と書かれた部屋で、女性の部下から報告を受ける人物。


 名を芝崎 蓮太(シバサキ レンタ)といい、上沢支所を(ふく)む、周辺地域を統括する支部のトップだ。


(救出部隊の救出ってギャグみたいになっているな)


「襲撃を受けているという上沢支所の様子は? すでに増援を送っているのだろ?」


 心の中で思っている事と、全く違う話をしだす蓮太。


 救出部隊の救出と言うのが、彼にとって笑いのツボだった様だ。


「それが、結界に阻まれてまだ施設に到着していないそうです……」


 部下の報告を受け、ため息をつく支部長。


「施設の防衛について、色々と見直す時期に来ているのかもね。一応、他支部とも情報の共有を。考えたくはないが、ウチだけじゃ対応しきれない可能性も考えておかないと」


 支部長の言葉を了解し、部下の女性は退室する。


「キメラA号か……。まさかいきていたとはねぇ……」


 走矢達の通う、上沢高校の事件の報告書に目を通しながら呟く蓮太。


「1番最初に作った1番の失敗作が生きのびるとはねぇ」


 見た目40代の支部長は、部下には絶対に見せないような邪悪な笑みを浮かべる。




 上沢支所4階では綾瀬姉妹をめぐる攻防が繰り広げられていた。


「くっ?! 何だ今の動きは……」


 持っていた曲刀を蹴り飛ばされたガシャドクロが怪訝な表情で疑問を口にする。


「ぐあっ?」


 火織もツインテールの少女の攻撃を受け、前かがみになる。


「やっぱり力を封じられた状態じゃキツイか……」


 戦況が不利と見た羽月が愚痴をこぼす。


「そのセーラー服達、ケルベロスとオルトロスだね。普通の妖と同じ感覚でやったら負けるよ」


 紗由理の言葉に敵味方双方が驚く。


「ケルベロスって首が3つある犬?」


「そう、犬。それで首が2つとか3つって言うのは、コイツ等が普通の妖の2倍とか3倍の速さで動ける事への比喩みたいな(もん)なの。コイツ等の周囲の時間はあたし等の2倍とか3倍で流れていて、何もしなくてもあたし等が1回行動している間に、2回、3回と行動できるの」


 羽月の質問に紗由理は全力で答える。


 コレは味方に情報を伝える事によって、対策を促すためでもある。


「物知りなチビだな。そんで、そう、あたしが地獄の番犬、ケルベロス様だ。よ〜く憶えておけ」


 ショートヘアの少女は不敵な笑みを浮かべながら、自己紹介をする。


「ちゃん覚えておきなさいよ? これから殺されて地獄に行った後も、私達もてあそばれるんだから」


 ツインテールの少女は無邪気に笑う。


「何とかなりそ?」


 そう言いながら紗由理は曲刀を拾い、ガシャドクロに渡す。


「まあ、やってみる」


 そう応えると、曲刀の()ったみねの方で、羽月の持つ箒を引っかけて自分の方に寄せる。


「ちょっと!」


「少しの間、借りるぞ」


 そう言って、羽月の箒を奪い取るガシャドクロ。


 曲刀と箒の二刀流。


「これで私の手数も倍だ」


「なに? それが対策? 随分と甘く見られたものだなぁ!」


 叫びながらガシャドクロに襲いかかるケルベロス。


 しかしそれよりも早く、ガシャドクロは濡れた着物を脱いでケルベロスにかぶせる。


 濡れた着物が張り付き、一瞬怯んだところに曲刀と箒の二刀流が炸裂する。


「ぐあぁぁぁっ?!」


 今度はツインテールの少女、オルトロスが悲鳴をあげる。


「攻撃が2倍なら、炎が燃え移るのも2倍って事よ」


 火織は全身に炎を(まと)い、オルトロスの触れた拳を伝って彼女を火だるまにしたのだ。


「それと、さっきの分はこれからだから。覚悟しなさい」


 そう言って火織は炎の宿(やど)った拳を、オルトロスの腹部にお見舞する。

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