乱戦6
「ちょっと、何これ?!」
ガシャドクロの陰にに隠れていた人魂状態のウィルウィスプが、慌てて紗由理の傘に逃げ込む。
「私も入れて!」
突然飛び出してきた人魂に驚きながらもそれに続く葉月。
1つの傘に3人は無理と諦めて、スプリンクラーの水を浴びるガシャドクロ。
そんな着物姿のガシャドクロを見て、ウィルウィスプがうわぁ、と声をあげる。
「貴女、凄いの着けているのね……」
濡れた着物が透けて、濃い色の下着が目で取れた。
「人には言うなよ?」
ため息まじりに口止めするガシャドクロだった。
「いやぁ! なにこれぇ!!」
「いや、君のやらかしだからね?」
スプリンクラーから逃げまどう火織に紗由理が突っ込む。
しかし、そんな喧騒の中、廊下の奥から近づいてくる足音に一同は気づく。
「誰? 職員?」
ポツリと呟く羽月。
「たぶん違うね。どれも見たこと無い顔だし……」
紗由理が応える。
現れたのはスーツ姿の女性とセーラー服姿の少女2人。
「お訪ねしたいのですが、綾瀬姉妹の部屋はどこでしょうか? 支部の方から彼女達を連れてくるように言われて来ました」
「職員証は? 人妖機関の職員なら当然持っているよね?」
スーツ姿の女性の質問に、間髪入れず紗由理が返す。
「その、慌てていたので、車に置いてきてしまいました。できるだけ速やかに彼女達を安全な場所に移動したいのですが……」
「悪いけど、それで通るようじゃ、人妖機関の信用なんて無いも同然だね。職員証を持って出直して来てね」
「もういいだろ。このチビ、完全にアタシ等の事、疑ってやがる」
セーラー服の少女の1人、ショートヘアの少女がスーツ姿の女性と紗由理のやり取りに割って入る。
「ふうっ、コチラはできるだけ穏便に済ませようとしたのに……」
「見す見すと姉妹を連れていかれたりなんてなったら、先ずあたし達が疑われるでしょ? それよりも、君達を撃退した方が刑も減らせるし」
そのやり取りを、火織が扉をふっ飛ばした部屋から見守る綾瀬姉妹。
その姉妹をもう1人のセーラー服の、ツインテールの少女が見つけ、にやりと笑う。
「居たわ」
そう言って親指で姉妹の部屋を指す、ツインテール。
「今度こそ一緒に来てもらうわよ」
そう言って姉妹の方を向く、スーツの女こと、サイクロプス。
そして、彼女と姉妹の間に火織が割って入る。
「こっちへ……」
小夜子が姉妹を部屋の奥に移動させるが、これはいざという時に火織が開けた穴から隣の部屋に逃げられるからだ。
「はっ、そんな所にいたのか!」
「そうはしゃぐな。お前の相手はコッチだぞ」
シートヘアの少女の背後から、彼女の首筋に曲刀を当てるガシャドクロ。
羽月も箒を構えて戦闘態勢に入る。
「貴方達、いったい何者なの? こんな事をしてタダで済むなんて思ってないわよね?」
作戦中央室に到着したエリス達だったが、そこを二郎と五郎のリザードマン兄弟に襲撃されていた。
「はっ、タダじゃねえってんならいくらだ? 踏み倒してやるよ!!」
威勢よく咆える二郎が、愛用の武器、グレートソードを振り下ろす。
エリスは軽快なステップでそれを回避するが、そこに火球が飛んでくる。
ギリギリのところでかわすエリスだが、服が焦げたのを見て、火球を放ったリザードマン五郎を睨みつける。
「今のをかわすか」
五郎も忌々しそうに言う。
リザードマン兄弟の5男で、肉弾戦もこなせる五郎。
どちらかと言えば脳筋寄りの二郎の補佐役でもあった。
4階を目指す走矢達は階段を駆け上がっていた。
「危ない?!」
咄嗟に大声を出して注意を促す春香。
彼女の注意の通り、3階を駆け抜けようとした一同の列の中心めがけて特大の棍棒が飛んできた。
幸いにも棍棒が誰かに当たることは無かったが、
「見つけたぞ! 俊紅!!」
声とともに、棍棒を投げた巨漢のオークがこちらに駆けてくるのが見えた。
「走矢、先に行きなさい」
そう言って理奈は走矢を先に行かせようとするが、
「させるか!」
そう言って一同を飛び越し、3階と4階の間の踊り場に立ち塞がる。
「なに?! 今のスピード!!」
「なんであの図体であんな動きができるんだよ!!」
春香と桜が驚愕する。
「ボアヘッドより厄介ね」
そう言って翼を広げる理奈。
リリスも無言で自分の腕を噛む体勢をとる。
「ブモォーッ!!」
と、巨漢のオークが雄叫びをあげると一同はケチらされ、オークは3階の踊り場に立っていた。
「桜?! 皆?!」
咄嗟に桜に庇われたため、ほぼ無傷で済んだ走矢。
目と鼻の先にオークが立っている。
桜達は初撃で全員倒れている状態でコレは非常に不味い。
比較的ダメージの少なかった理奈とリリスが慌てて走矢の元に駆けつけようとする。
リリスは自分の右手を噛み、リミッターを解除する。
理奈も指を弾いて血液を飛ばし、オークを縛りあげて拘束する。
動きを止められたオークに、理奈の鉄拳とリリスの蹴りが飛んでくるのだが、オークは血液の拘束をあっさりと破り、2人の攻撃をかわしながらカウンターを食らわせる。
「そんな……。あの2人が……」
春香が絶望するように呟く。
「何となく分かりました。この方、は体脂肪を燃やす事で、桁違いの運動量を生み出しているんです。体脂肪を使い切らせれば……」
「そうなる前に全員、始末してやる」
オークキングの咆哮が施設内に響き渡る。




