表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/160

乱戦4

 一方、ベテラン2人が相手するボアヘッドはやっかい名相手だった。


 攻撃自体は手に持った棍棒を振り回すだけの単調なモノだったが、分厚い脂肪に阻まれて、攻撃がほとんど通らないのである。


「たぁっ!」


 リリスが右手の爪を伸ばし、ボアヘッドの首を切り落とそうと(こころ)みるが、爪の(やいば)は脂肪に挟まれて、途中で止まる。


 動けなくなったリリスをボアヘッドの棍棒が襲うが、爪を切り離して事なきを得る。


「せぇい!」


 理奈が掛け声とともに正拳突きをボアヘッドの猪ヅラに見舞うが、これには素早く反応し、棍棒を盾代わりにして攻撃を防ぐ。


「顔への攻撃はしっかりと対応してきますね」


「さっき目を狙ったときも対応してたから、首よりも上だけ、やたらと反応が良いのよね」


 本能なのか訓練などによるものなのか、脂肪の少ない頭部だけは死守するという性質のようだ。


 そして攻撃が単調と言っても、攻撃力自体は高く、迂闊に食らえば戦線を離脱することになるだろう。


 そして、図体の割にはスピードも有り、攻撃面でも決して油断できない相手だった。


 リリスも理奈も百戦錬磨のヴァンパイア。


 エリスが以前使った『リミッター解除』は母であるリリスが彼女に教えたもので、当然自身も使える。


 理奈にもそれに匹敵する切り札があるのだが、この状況ではそれも迂闊に使えない。


 百戦錬磨であるがゆえに、切り札を使わずになんとかしたいと思ってしまうのだった。


「頭部に攻撃を集中させましょう。そこしかダメージが通る部位がないようですし」


 理奈の提案に、そうねと短く応えるリリス。


 左右に散って、両サイドからの攻撃を繰り出す。


 リリスはナイフのように伸ばした爪を頭部めがけて発射するが、腕で受けられてしまう。


 しかし腕に刺さった爪はドリルの様に回転し始め、同じ様に回転した状態の反対側の手の爪を、同じ場所に撃ち込むリリス。


 2射目の爪が最初の爪を押し出し、貫通させてボアヘッドの側頭部に突き刺さる。


 同時に反対側から理奈が飛び蹴りを食らわせようとするが、棍棒でガードされていた。


 しかし、彼女は(あらかじ)め自分の指を傷つけて出血させており、その指を弾くと、三日月状の刃のとなった血液が飛び、やはりボアヘッドの側頭部を切り裂く。


 2人の攻撃でほぼ致命傷なのだが、ベテランのヴァンパイア達は容赦なくトドメの回し蹴りをボアヘッドの頭部に見舞ってこの怪物を沈める。




 その頃、3階ではリザードマン兄弟の七、八、九郎(クロウ)がオーク達のリーダー。


 通称『キング』と交戦していた。


「ぐはぁっ?!」


八郎(はちろう)!」


 振り下ろされた棍棒を、槍で受け止めようとしたリザードマン、八郎だったが、槍ごと壁に叩きつけられてピクリとも動かなくなる。


七郎兄者(シチロウあにじゃ)、このオークのスピードは危険だ。何か手を打たないと!」


 九郎の叫びに何も応えられない七郎。


 脂肪の鎧に身を包んだ2メートルの巨漢。


 それでいて、ここにいるリザードマンの誰よりも素早い動きをするオーク。


 正直、七郎に打つ手は無かった。


「俊紅はどこだ!!」


 叫ぶオーク。


 そして『俊紅』と言う言葉にリザードマン達は眉をひそめる。


「俊紅だと?! いったいコイツは何を言っているんだ!」


「まさかこの施設のどこかに、俊紅が(かくま)われているとでも言うのか?」


 七郎はオークの襲撃理由を考える。


「七郎兄者、俺がコイツの気を引く。そこを兄者得意の居合で首を切り落としてくれ!」


 短剣や投げナイフを主な武器とする九郎は、距離を取りながら投げナイフで牽制する。


 それを見て日本刀の使い手、七郎は一旦(いったん)刀を鞘に戻すと居合の構えに入る。


「ここだ!」


 オークキングの一瞬のスキをついて居合斬りを繰り出す。


 しかし、七郎の斬撃はオークキングをすり抜け、それが残像だと理解する前に棍棒の餌食になる。


「くそっ、何なんだ?! 今の動きは?!」


 一瞬とはいえ、さらにスピードが上昇したオークキングの猛攻に九郎の心は折れていた。




「亜種だの突然変異だのと言うがどれも間違いだ。ボアヘッドはオークの獣人、『ワーボア』だ。」


 ホブゴブリンとボアヘッドの取っ組み合いの隣で、ゴブリンが解説する。


「なんであんたがそんな事知ってんのよ!」


  不審そうな顔でルリが言う。

 

「俺達ゴブリンとオーク中が悪くてな。よく衝突するんだよ。そういう関係だからこそ、オークの事は色々と調べたりしている。アレは薬か呪い(まじない)によって、後天的に変質させられたものだ」


「って、言うかさぁ、オーク自身が獣人…………」


「お前らがどう思おうと勝手だが、それはオーク共には言わない方がいいぞ。あいつ等は自分達の事を人間に近い見た目の種族と思い込んでるからな。豚の獣人なんて言ったら、烈火の如くぶちきれるぞ」


「ぐおっ?!」


 それはホブゴブリンの悲鳴だった。


 ボアヘッドは両方の牙を伸ばして、ホブゴブリンの両肩を貫いていたのだ。


「弟!!」


 両肩を貫かれたホブゴブリンが、力で押し負けはじめる。


「不味い!」


 兄ゴブリンはそう言うと、取り調べ用の机を持ち上げ、ボアヘッドめがけて放り投げる。


 頭部目掛けて飛んできた机を腕で叩き落とそうとするボアヘッドだったが、ホブゴブリンとの力比べで両手が(ふさ)がっており、頭部にもろに食らう。


 そしてゴブリンは次々とそのへんの物をボアヘッドに投げつけ、ガードしようとするも両手が塞がっているボアヘッドは対処できない。


「今だ、渾身のタックルを食らわせてやれ」


 兄の言葉通り、渾身の体当たりをボアヘッドに食らわせるホブゴブリン。


 この時、ホブゴブリンの頭部がボアヘッドの顎に命中し、ボアヘッドはフラフラとしはじめる。


「とっとと沈め!」


 ずっと参戦したくてウズウズしていたルリが、渾身のかかと落としで、ボアヘッドにトドメを刺す。




「本当にこの階で間違いないんだろうね?」


「ええ、あの姉妹の気配を感知しました。間違いありません」


 スーツ姿のサイクロプスとセーラー服姿の少女2人。


 サイクロプスの亜空間から現れた3人は、支所の4階に居る綾瀬姉妹を探し始める。                                             

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ