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家族8

新崎(ニイザキ)達は失敗したようだ。姉妹揃って人妖機関の保護化に置かれる見込みとの事だ」


 おびき出した人妖機関の実働部隊を倉庫周辺ごと結界に閉じ込めた、リーダー格の男がスマホを片手に、(そば)にいるもう1人の男に伝える。


「揃いもそろって何やってるんだ、あいつ()!」


「落ち着け、二郎(ジロウ)。依頼主に連絡して直ぐに増援をよこしてもらえ。最終手段だ」


 最終手段と聞いて、緊張感が走る二郎と呼ばれた男。


一郎(イチロウ)兄者(あにじゃ)二郎(ジロウ)兄者(あにじゃ)四郎(シロウ)のヤツが結界封鎖が完了したと言っている。これからどうするんだ?」


三郎(サブロウ)か。四郎(シロウ)六郎(ロクロウ)に結界を強化するように伝えろ。この実働部隊の動きをできるだけ封じ込めて、機関の施設を襲撃する。恐らくこれが最後のチャンスだ。失敗すれば依頼は未遂行、報酬も無しだ。他の弟達にもそう伝えろ」


 三郎(サブロウ)と呼ばれた男は、


「わかった」


 と、手短に応えてその場を去る。


「あの連中は足止めだけで良いのか? 始末しちまった方が……」


「それをするには人員をそちらに回す必要がある。勘違いするなよ? 俺達の目的は姉妹の確保であって機関の殲滅では無い。あいつ等の足止めはそのための手段にすぎない」


 そう言って、一郎(イチロウ)二郎(ジロウ)(たしな)める。




 人妖機関の施設に到着した走矢達を機関の職員と清十郎が出迎える。


「ごめんなさい、2通目のメッセージを私がちゃんと伝えていれば……」


 舞の救助に向かった実働部隊からの連絡が途絶えた。


 その事に責任を感じる奏美、そもそもスマホを奪われた自分に非があると、妹を(かば)う舞。


「実働部隊の人達だって罠の可能性は考えて動いているわ。貴女達(あなたたち)が責任を感じる必要なんて無いのよ」


 と、エリスが優しくフォローを入れる。


「あの、宗十郎(ソウジュウロウ)さん。ご無沙汰しております」


 清十郎をそう呼んで深々と頭を下げる理奈。


「あの……。宗十郎は私の父で、私は息子の清十郎です……」


 困った様な表情で理奈の言葉を訂正する清十郎。


「えっ、随分と()けられて……。いえ、立派になられて……」


 そう言って取り乱す理奈。


「理奈さん、人間との付き合いがあんまり無い(かた)なのねぇ」


 小声でリリスがエリスに話しかけ、苦笑いで誤魔化す。


 宗十郎とは話の通り清十郎の父親で、新矢の育ての親でもあり、走矢にとって祖父でもある。


 今年、72歳になる老人だが仲介役として現在も活動していて現在、この街には居ない。


「父から新矢をウチで預かった経緯は聞いています」


 と、自分が事情を知っている事を話す清十郎。


「私も一応、新矢から経緯は聞いています」


 と、エリス。


 しかし、事情を知らない走矢のためにと、理奈は当時、宗十郎に話した事を孫に伝える。


 新矢の父親で走矢の祖父にあたる雨上 燈矢(ウガミ トウヤ)は、走矢達と同じ俊紅で、混血の産まれない妖である理奈と結ばれて新矢が産まれた。


 しかし新矢が5歳の時、燈矢が何者かに殺害され、俊紅が狙われたと判断した理奈は、彼を守るために佐伯家に養子に出したのだと言う。


「養子に出してからは、あの子に一度も会っていませんでした。その(ほう)があの子を守れると思ったから……」


 この時、話を聞いていた一同は新矢の素性を隠すためと解釈したのだが、実は理奈は燈矢と結ばれる前は非常に荒れていて、多くの敵を作っていた。


 燈矢の件も実は自分に原因が有った可能性も考えており、新矢にとばっちりが行かない様にとの配慮だった。


 そして、この短い時間、理奈を観察する事で、リリスだけはそれを察していた。




「妹さんから大体の話は聞いているんだけど、お姉さんからも聞かせてもらっていいかな?」


 機関施設の一室で改めて姉妹から事情を聞く清十郎と機関の職員。


 しかし、その場に居合わせた桜達の意識は、全然違う方に向いていた。


「ねぇ、あの女の人、走ちゃんのお父さんのお母さんなんだよね?」


「らしいわね……。なんかすっごく密着してるけど……」


 直と春香がコソコソと話していると、


「思いっきり片翼で走矢の事包むようにしてるよね? あれって有翼の妖にとって求愛行動なんじゃ……」


「求愛って、お祖母(ばあ)ちゃんだろ?!そんなこと……」


 言いかけた桜だったが、理奈が睨みつけている事に気づき口ごもる。


「駄目よ桜。その『祖』ホニャララにやたらと反応するの。あの人」


「だから走ちゃんのお父さんのお母さんって言い方してるんだよ」


 春香と直の解説を聞いて、無言で首を立てに何度も振る桜。


 今の一瞬で、相当なプレッシャーを感じた様だ。


綾瀬 藍華(アヤセ アイカ)さんが御子として覚醒したのは2年ほど前でした。」


 桜達のやり取りを他所(よそ)に本題に入る清十郎。


 藍華が23歳の時、現在高校1年生の舞が、25歳の時に奏美が産まれており、現在は39歳になる。


 その2年前と言う事は37歳。


 御子に限らず何らかの『血』に目覚める者は10代に圧倒的に多く、30代は非常に(まれ)と言う話だった。


 さらにもう1つ。


 藤崎家は確かに多くの御子を輩出しているが、それは『本流(ほんりゅう)』と呼ばれる血筋で、藍華は『支流(しりゅう)』と呼ばれる、20代以上、御子が産まれていない血筋なのだ。


 30代の覚醒も支流と呼ばれる血筋の目覚(めざ)めもソレ単独ならば『非常に(まれ)』なのだが、この2つの条件での覚醒は、さらに可能性が低い事になる。


 何者かの手によって覚醒させられたのではないか?


 その様な意見が担当した職員達の総意(そうい)だった。


 担当の職員は機関の保護化に入るよう説得したが、娘達との生活を大切にしたいと言う藍華の意思を汲んで、遠巻きに警護するにとどまったという。


 そして1年ほど前、藍華は娘達を連れて姿を消した。


 彼女達の住居の付近で当時、警護をしていた職員の遺体が1つ、発見されたと言う。 

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