家族3
「こんなに大きくなってぇ、新矢くんソックリだから、すぐにわかったわぁ」
そんなやり取りをしている横で、赤いレインコートの骸骨が、やはり肋骨を2本折って、曲刀二刀流の構えを見せる。
ドロップキックを食らった方も、まだピクピク動いており、まだ油断のならない状況だ。
ザシュ、っと何かが刺さる音がする。
見れば祖母の爪が伸び、赤いレインコートの骸骨の頭部を貫いていた。
「この子達の名前はスパルチス。龍の牙から産まれる使い魔の様な物よ。こうして頭を壊せば機能を停止するわ」
祖母の言葉通り、赤いレインコートの骸骨は動かなくなる。
祖母は起き上がろうとする黒いレインコートの骸骨の曲刀を、『ていっ!』と、つま先で蹴り上げると、そのままその足で頭部を踏みつけ、破壊する。
数分後、祖母をおぶった走矢が帰路についていた。
「ごめんねぇ。お祖母ちゃん、昨日から何も食べてなくってぇ……」
スパルチスを退けた後、力尽きた祖母。
どうやら道を間違えて、一晩中飛び回って体力が尽きたようだ。
「アンタ、なんでこっちのコンビニに来てんのよ!」
上空から聞き慣れた怒号が飛んでくる。
「げっ、母さん……」
「あっ、エリスちゃんだ! お〜い」
走矢の背中で、嬉しそうに母に向かって手をふる祖母。
「ママ?! 一体どうしたの?!」
帰宅後、出された食事にがっつく祖母の姿があった。
「あ〜、やっぱり反対方向の電車に乗っちゃったんだ」
呆れた様子でアリスが言う。
「モゴモゴ、モゴゴ?!」
「食べるか喋るか、どっちかにしてよ」
エリスが注意すると、一心不乱に食べる祖母。
「アンタは憶えてないでしょうから、紹介しておくわね。この女性は条牙咲 リリス。私とアリスのママで、アンタのお祖母ちゃんよ」
エリスの紹介を受け、慌てて口の中の物を飲み込み、
「はぁ〜い、走矢ちゃんのお祖母ちゃんよ〜。よろしくね〜」
と、両手を振りながら可愛らしくアピールする祖母。
母と祖母は、はっきり言って見た目は全くと言っていいほど変わらず、双子の姉妹でも通りそうなほどだ。
「ホント、オッチョコチョイなところは治ってないんだからぁ。アリス、アンタがしっかりしないからこうなるのよ?」
「なんであたしのせいになるのよ! あたしだって一生懸命、お母さんのこと、探したんだからね!」
話を聞いていると、2人は昨日のもっと早い時間にこの家を訪ねてくる予定だったようだ。
それが結局アリスは深夜、リリスに至っては翌日になってしまったわけだ。
話が一段落した頃、走矢が買ってきたコンビニスイーツのケーキがテーブルに並ぶ。
祖母の事を考えていなかったため、ケーキは3個。
自分が食べたかったわけではないが、2個だと母とアリスが気まずいと思い、3個買ってきたのだった。
買ってきた漫画雑誌を型手に、自室に戻ろうとしたのだったが、
「じゃあ、お祖母ちゃんと半分こしましょう」
「いいわよ、アタシのを半分あげるから」
「姉さんの好物なんでしょ? だったらあたしのを半分こにしましょ」
走矢が恐れていた事態になった。
仮に誰かのを半分もらうと、他の2人が面倒くさいことになる。
祖母はそのへん面倒くさく無さそうだが、母とアリスはそうはいかないだろう。
「3人揃ったのって久しぶりなんでしょ? 俺に気を遣わなくてもいいからさぁ。3人で食べなよ」
何とかその空間からの脱出を図るが、3人に呼び止められる。
(しかし、同じテーブルに同じ顔が3人って……。でも、アリス姉さんは母さんと比べてチョット幼い感じかな。髪の色も金髪だし。問題は母さんとお祖母ちゃんの方だな)
背格好から髪の色までおんなじ2人なのだが、表情があきらかに違う。
いつもムスッとしている母に対して、祖母の方はにこやかで、とても親しみやすい。
そのせいか、母の方が歳上に見えてしまう走矢。
(もしこんな事口にしたら、母さんメチャクチャ不機嫌になるだろうなぁ)
今な感想はなかったことにしようと誓う走矢が何かの気配に気づく。
「はいっ、あ〜ん」
ハムッ、と咄嗟に祖母が口元まで運んでくれたケーキを食べてしまう。
「ママだけズルい! アタシのも食べなさいよ!」
「じゃあ、みんなの一口ずつね」
結局、3人か一口ずつもらう羽目になってしまった。
「ああ、思い出した。さっき連絡があったんだけど、ママが倒したっていうスパルチス、人妖機関の職員が現場を調べたらしいんだけど、スパルチス本体は見つからなかったそうよ」
「そんな、確かにお祖母ちゃんが頭部を破壊して倒したのに……」
「落ち着きなさい、走矢。見つからなかったのはスパルチス本体で頭部の破片らしき物は発見されたそうよ」
「機関の職員さんが到着するまでに、誰かさんが持ち去っちゃったって事?」
「現場を調べた職員はそう考えているようね」
エリスの言葉に緊張感が走る。
それはつまり、あの現場の近くにスパルチスを片付ける様なヤツがいたという事。
そして、スパルチスを回収したのは、操っていた当人なのではないだろうか?
「逃げていた女の子については?」
「そっちはなんの手がかりも無しね。その子を見たのはアンタだけで、ママは見てないんでしょ?」
残念ながら、と言って首を横に振るリリス。
「それで、スパルチスがいた事は間違い無いって結論出たから、その女の子についてモンタージュ写真を作りたいそうなのよ。これから一緒に機関の方に行こうと思うんだけど、いいわよね?」
「何だあのスパルチス。安物使わせやがって」
陰から少女を監査する人影が2つ。
そのうちの1つがボヤく。
「支給品に文句を言うな。嫌なら自腹で用意しろ」
もう1人が強い口調でスパルチスを擁護する。
「おかげで人妖機関の知るところとなったんだぞ?これからどうするんだ?」
「タイミングを見てもう一度仕掛ける。人妖機関に知られた以上、猶予はない。多少強引でもやるしかない」
その言葉を最後に2人は沈黙に包まれる。




