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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
母はヴァンパイア
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暗躍するモノたち8

 エリスに圧倒され地に伏したサキュバス。


 その横で彼女を見下(みお)ろすエリスの(そば)に女武者が降り立つ。


「どうやら暗躍はここまでのようだな。ここからは小細工無しでいかせてもらう!」


 そう言って刀を抜き地面に刺すと、音も無く巨大な骸骨達がエリスを(かこ)む様に地面から現れる。


 エリスを包囲する巨大骸骨は全部で5体。


 そのうちの1体がエリス目がけて拳を振り下ろすが、彼女はソレを回避し、自分を狙った拳の上を骸骨の顔面目がけて走り出す。


 エリスの狙いを察した近くの骸骨2体が同胞(どうほう)もろともエリスを打ち抜かんと、容赦の無い鉄拳を浴びせてくる。


 しかし、そこにエリスの姿は無く、その鉄拳は仲間を打ち抜いただけだった。


 そして、鉄拳を繰り出した骸骨の片方の頭上に、右足を大きく振り上げたエリスの姿が。


 そのまま骸骨にかかと落としを炸裂させ、頭部どころか胸部付近まで縦にかち割り、戦闘不能にさせる。


 崩れ行く巨大骸骨の上で次の獲物を物色するエリス。


 そんな彼女に背後から女武者が斬りかかる。


 察していたエリスは、逃げもせずにカウンターの回し蹴りを繰り出す。


 女武者の斬撃を白刃取(しらはど)りの要領で両手で挟んで受けるエリス。


 一方、彼女の蹴りは女武者の横っ腹に深々とめり込んでいた。


「やるな……。相当な場数を踏んでいるのが分かるぞ……。あの女教師の時は邪魔が入ったが今度はちゃんと楽しめそうだな!」


「そう、アンタが先生を襲った連中の1人なの。ならその分も上乗せしとかないとね。あと、お遊戯かなんかのつもりでアタシと戦うって言うのならアンタ、これから地獄を見るわよ? アタシはねぇ、命かけて走矢のお母さんやっているの。あの子を狙うバカどもは全員例外なく、地の底に沈んでもらうわ!」


 そう言って立てた親指で地面を差すエリス。


「心外だな、楽しめそうだとは言ったが遊び半分で刀を抜いた事など一度も無いぞ。戦う以上は命を懸ける。それが私の信条だ!」


 そう言って真っ向から斬りかかる女武者の懐に目にも止まらぬ速さで潜り込むエリス。


 渾身の右ストレートを腹部に見舞(みま)われ女武者は驚く間もなくふっ飛ばされる。


 地面を転がるようにふっ飛び、仰向けに倒れる女武者。


 追撃を恐れ、必死に体勢を立て直そうと上半身を起こした彼女の見た光景。


 それは残りの巨大骸骨3体に囲まれながらも圧倒的な威圧感を放つ女ヴァンパイアの姿だった。




「結界の用途って言うのは主に2つ。外から入れないようにするか、中から出さないようにするか。でも、さっきまでこの街を(おお)っていた結界はそれ()とは全く違う用途よね。中の人間や妖の記憶を操作したり、気配を感知しにくくしたり。術者が支配する空間って感じよね」


 眼鏡を(いじ)りながら結界について解説する春香。


「空間内を支配するってんなら、あの魔女の亜空間結界がそれじゃねぇのか?」


 桜はかつて保険医としてこの学校に(もぐ)り込んでいた来島 紗由理(クルシマ サユリ)を例に出す。


「そうね。自身に有利に(はたら)かせる結界は、妖よりも人間の術師とかが好むモノなのかも……。で、走矢くん。さっきから死んだような顔してるけど、どうかしたの?」


「…………。いったい誰のせいで……」


 先程、春香にスカートで目隠しされた事が色々と尾を引いている走矢。


「仕方ないでしょ、走矢くんが操られちゃうのが一番最悪なんだから」


 鼻息荒くドヤる春香。


 桜達も突っ込みたい気持ちはあったのだが、走矢が操られて()()られるのは確かに最悪の展開。


 これを出されると反論できないのが分かっていたからだ。


「あともう1つ。原口さんを締め落とそうとしていたとき、俺まだ目隠しされていたんだけど……」


「まぁ、春香は昔っからそういうところがあったからなぁ……」


「目隠しされてたんだから何も問題無いでしょ? とにかく今は忘れて目の前の事態に集中しましょ? 終わった後に愚痴でも文句でも聞いてあげるから」


「…………。そうだな、そうする……」


 まだ割り切れていなさそうな走矢だが、口に出す事で踏ん切りをつける。


(いや、私だって(なん)でもないわけじゃ無いんだから……。あんまりほじくり返さないでぇ〜)


 春香も平常心というわけでは無かった。


「?! (あぶ)ねぇ!」


 突然桜が叫ぶと、前を歩いていた走矢と春香の頭を押さえて床に伏せさせると、3人の頭の上を円板の様な物が通過していく。


「あいつら、逃げたと思わせて待ちぶせしてやがったな」


 いざという時逃げやすい様にと1階に移動していた走矢達。


 原口姉妹はそれを見越して1階に(ひそ)んでいた様だ。


「今度はさっきの様にワいかないワよ」


 いつの間にか走矢達を挟むように陣どるレイカとレイコ。


 戻ってきた円板による攻撃と同時に姉妹がその羽を広げる。


「一瞬、前の奴の羽に目玉っぽいのが見えた。多分そっちが姉だ!」


「じゃあ、後ろが肉弾派(にくだんは)の妹ね。桜、そっちを頼むわ」


 春香は桜の言葉から状況を判断し、指示を出す。


「あたし達は3人がかりでおねーちゃんの方を押さえれば良いわけね。3人で囲っちゃえば誰かが動けるから、何とかなるでしょ」


「あんまり能天気なこと言ってると油断してやられちゃうよ? もっと気を引き締めて」


 春香と共に前方のレイカを包囲する直と咲花。


 しかし、無言で繰り出すレイカの足技に翻弄される。


「なに?! こっちも妹並に肉弾派(にくだんは)なの?」


 一方、レイコに向かっていった桜がだったが彼女の羽の模様がはがれ落ち、その下から目玉の模様が現れた事に驚愕する。


「くぞ、鱗粉で模様を変えて嫌がったのか……」


「なに?! 桜、どうしたの?!」


 桜が床に倒れるのを見て、ついそちらを向いてしまう一同。


「かかったな」


 レイカと思っていた方がレイコの口調で話す。


「かかったな、じゃないわよ。なんで女らしい喋り方すると違和感が生まれるのよ……」


「しょうがねぇだろ! 女言葉なんて産まれて一度も使った事、無い(ねぇ)んだから」


「やっぱり、女の子らしくする修行とかした方が良いわね」


『私もそれには賛成するわ』


 突然響き渡る春香の声に、姉妹はハッとなる。


 声は動けなくなっている春香とは全く違う方向から聞こえたからだ。


「なんで? どうして?!」


「何だこの紫の羽根は……」


 レイコは宙を舞う無数の春香の羽に気づく。


「結界が無くなったのを忘れてない? 貴女(あなた)達の待ち伏せは咲花がとっくに気づいていたのよ」


 そんな春香の声と共に罠にはめたはずの桜達の姿が消え、レイカの肩を何者かが叩く。


「今度は逃さないわよ」


 そう言って再び締めに入る春香。


姉貴(あねき)?!」


 レイカの元に駆け寄ろうとするレイコの腹部にいつの間にかそこに立っていた桜の蹴りが突き刺さる。


「んじゃ、続きやろうぜ」

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