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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
母はヴァンパイア
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暗躍するモノたち6

 その日昼休み、走矢達1年生のクラスのある2階で異常な事が起きた。


 走矢達の通う高校は4階建ての建物で、2階が1年生、3階が2年生、4階が3年生のフロアとなっている。


 その2階で一部の生徒が他の生徒を襲いだすという事件が起こった。


 その襲う側の生徒達が走矢達の1組にもなだれ込んできたのだ。


「くそっ! 何なんだコイツラ!!」


 入ってきた生徒達を一旦は廊下に押し戻し、前側の出入り口の引き戸を押さえる桜が叫ぶ。


「目が普通じゃなかったわ。何かに操られているのかも!」


 後ろ側の引き戸を押さえながら春香が応える。


 そんな中、1人の女子生徒がゆっくりと桜に近づいていく。


「何か様子が変? 誰か、その子を止めて!」


 慌てて直が羽交い締めにするが、ヴァンパイアの彼女達が引きずられるほどのパワーを見せる女子生徒。


 そして気づくと別の生徒が春香に迫っていた。




「サキュバスの奴、とうとう強硬手段に出たな……」


「本当に物を考えるのが苦手みたいね。私達よりよっぽど恵まれた環境なのに」


 屋上にて階下の惨状を気配で感じとる八嶋霧香ともう1人。


「しかし、これだけ大きく動いたらいくらアイツの結界の恩恵があっても正体を隠しきれないだろうに……。何か勝算が有ると思うか?」


 校庭の上空に当たる一点を見つめながらの霧香の問に、


「有るわけないでしょ……」


 もう1人があきれ顔で答える。


「んっ? 誰か外に飛び出したな。サキュバスの居場所に気づいたか」


「この気配……。佐伯エリス?! 母親が離れたのはチャンスだけど……。どうする? 騒ぎに便乗する?」


「便乗するにしてもタイミングがあるだろう? もう少し様子を見るぺきだ。他にも動くヤツがいるかも知れんしな」




「そこぉ!」


 外に飛び出したエリスは校庭の上空のとある空間に蹴りを放ち、その空間に亀裂を入れる。


 空間の亀裂が広がり、割れて崩れ落ちるとそこには悪魔の様な角、翼、尻尾の生えた女性の妖、サキュバスが居た。


「なんで?! どうして分かったの?!」


「バカにしてるの? それともバカなの? これだけ妖力を使って。何でバレないと思っているのよ……」


 呆れた様子で返すエリス。


「なによ……。どいつもこいつもあたしの事、バカだ何だってバカにして……」


 決して煽るつもりは無かったのだが、彼女にはそう聞こえたのだろう。


「いいわ、見せてあげる……。あたしの力を!」


 そう言ってサキュバスがパチンと指を鳴らすと、走矢の居る教室の隣の教室と真上の階の教室の窓が開き、外の壁づたいに操られた生徒達が1年1組の窓を割って入っていく。


「しまった……。なに……、この感覚……」


 急に意識が朦朧(もうろう)としてきたエリス。


「ふんっ。姿を隠す結界に回していた妖力を精神攻撃に使えるのよ? 言っとくけど、ここからが本番なんだから!」


 走矢の居る教室への予想外の攻撃。


 これに一瞬、動揺したエリスは精神攻撃を受けてしまい、意識を乗っ取られかけていた。


「くっ……。走矢! 逃げて……」




 その頃、1年1組の教室内は窓から突入してきた生徒達によってメチャクチャになっていた。


 桜達と(はな)(ばな)れになり、もみくちゃにされる走矢の手を誰かが引っ張る。


「大丈夫ですか、佐伯さん」


「えっ?! 原口さん!」


 走矢を救出したのは今朝、助けた原口レイだった。


 そして走矢が連れ込まれた安全地帯。


 それは女子トイレだった。


「はっ、原口さん……。ここは……」


「非常事態なんですから、しかたありませんわ」


 その時、外から大きな物音が聞こえる。


 何かが勢いよくぶつかる様な音が……。


「キャア!」


 悲鳴をあげて走矢に飛びつくレイ。


「原口さん……?!」


「すっ、すいません。ついビックリしちゃって……」


 ゆっくりと走矢から離れる原口レイの背後から、バサリと何かが広がる音がする。


 と、同時に女子トイレのドアが開き、春香、直、咲花の3人が飛び込んでくる。


「直、ドアドア!」


「ガッテン承知(しょうち)!」


 慌ててドアを閉める直、それを見て安堵する咲花だったが、異様な気配を感じて目をやったその先に蝶々の様な羽を広げた原口レイがいた。


 レイの蝶々の様な羽には目のような模様があり、それを見てしまった直と咲花は動けなくなる。


「な……に? 体が動かない……」


「この妖力……。ヴァンパイア?! でも、あの羽……」


「全く、とんだタイミングでとんだ邪魔者が入ってきたものね……」


 ポツリと呟くレイ。


「原口……さん?」


 直達が入ってきたとき、春香の下敷きになっていた走矢が顔を上げようとすると、


「駄目よ走矢くん!」


 春香はそう言うと、自分のスカートを走矢の顔にかぶせ、目隠しをする。


「おい、春香! 一体何で目隠ししてるんだ?!」


「走ちゃん、知らない方がいいと思う……」


 そして、春香も女子トイレに飛び込んできた時の反動で自分の眼鏡を落としていたため、難を(のが)れていた。




 女子トイレの外では桜が原口レイそっくりのヴァンパイアと戦闘していた。


「今入っていったのは春香達だったな……」


「くそっ、姉貴(あねき)に絶対に誰も入れるなって言われたのに……。コイツに気を取られていたせいで!」


 原口レイそっくりのヴァンパイアの正体。


 それはレイの双子の妹、レイコ。


 そして、レイの本当の名前はレイカ。


 『原口レイ』という架空の人物を作り出し、ソレを入れ替わりながら演じていたのだ。


 女子トイレに走矢を連れ込むため、邪魔が入らない様に門番の役割をさせられていたレイコ。


 しかし、桜にヴァンパイアと見破られ、戦闘中に持ち場を離れてしまいその間に春香達の侵入をゆるしてしまったのだった。


「また姉貴に怒られる……」


 誰に言うでもなく、レイコが呟く。




「誰も女子トイレに入れない。これだけの簡単な役目なのに……。後で折檻だわ」


 レイカの羽の目を見た者はほぼ完全に、肉体を支配されてしまう。


 しかしこの能力の効果は、あくまで羽の目と目が合っている(あいだ)だけの効果で、目が合わなくなった瞬間に支配は解かれる。


 直と咲花を支配下に置いているが、目が合わなくなった途端(とたん)にその効果は無くなるため、彼女達を操って走矢をどうにかするというのは、容易ではなかった。


「レイコ! 何をしているの?! こっちを手伝いなさい!!」


 一瞬の間をおいて桜とレイコが取っ組み合いながら女子トイレに転がり込んでくる。

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