超人
「達郎……?!」
泣き崩れる達郎に声をかけるエリスだったが、その達郎越しに見える美幸の姿が、崩れていくのを見て声をあげる。
「美幸さんが崩れていくわ。他の人造人間は?!」
「バラバラにした人達も各部位が崩れてる!」
「他のもだ! 何なんだ、こりゃあ!!」
「人造人間の副作用か、あるいは証拠隠滅か……」
レイカの仮説にハッとなるエリス。
「カメラ! 動画でも写真でもいいから、証拠を残して!」
エリスの言葉に従ってスマホを取り出し、撮影を始める一同。
そんな状況下でエリスは次の行動を考えていた。
この事をまず、誰に報告するかだ。
達郎を訪ねて訪れた地は、上沢市外で第18支部の管轄外。
本来ならこの地域の人妖機関支所なり支部なりに連絡するのが筋なのだが、この敵は人妖機関のに潜んでいる者達だ。
エリスは意を決してとある人物に連絡を取る。
「あの、佐伯エリスです。雨上由利歌さんですか? ご報告したい事がありまして……」
『すぐに支所の者を行かせるわ。ああ、機関内の人間を疑っているのね? 大丈夫よ、機関に所属する人も妖も、そのほとんどは貴女達と同じ共存を望む者達よ? 超人機関何て奴らは少数。むしろ機関職員達の前に晒した方が動きづらいはずよ』
自分の心配を他所に、ことを進める由利歌に拍子抜けするエリスだった。
エリス達が達郎を訪ねて訪れた地、宮土市。
かつて達郎が両親とレイコと過ごした土地だ。
コチラに向かっているという由利歌を待つ間、達郎とレイコ、余白とレイカの4人はかつての事件現場、達郎とレイコの家のあった場所を訪れていた。
「あんな事件のあった場所だからね。買い手がつかず、家を取り壊して今はコインパーキングになっているよ」
「随分とこじんまりしたパーキングね」
レイカの言うとおり、車4台分のパーキング。
「元は普通の一軒家だからね。地元じゃ事件の噂が広まって、普通の月極めにしても借り手がつかなかったんだって……。え〜と……」
「貴方はレイコの弟で、私はレイコの姉よ? 私の事は大姉貴と呼びなさい、達郎」
「姉貴が増えるのか……」
「減るよりいいだろうが!」
乾いた笑い声が出る達郎に、レイコがヘッドロックを仕掛ける。
「あのさ〜、タツローに再会してからずっと思ってたんだけど、レイコがレイカを姉貴って呼ぶの、もしかしなくてもタツローの影響?」
「えっ?!」
「確かに、私もそれは思ったわ。昔、再会した時に姉貴呼びされてビッカリしたけど、レイコがそう呼ばれていたって事なのね。納得したわ」
「えっ?!」
「いや、さっきから『えっ?!』しか言ってないし……。もしかして無自覚だった?」
余白の質問にレイコは『えっ?!』とだけ応える。
「ええ、そう。もう一度その超人機関について聞きたいの」
『そう言われてもねぇ、この間話した以上の情報は持ってないわよ?』
エリスは超人機関について、電話でヘルハウンドに確認を取っていた。
「今の人妖機関から妖を排除した、人間だけの対超常機関として超人機関を立ちあげるのが、首謀者の目的って事よね?」
『そうよ。そして人間だけで治安を維持するための戦力不足の解決策が人造人間って言うわけ』
「その、人造人間の事なんだけど、ちょっと妙な事があったのよ……」
エリスは美幸の顔を持つ人造人間と左手を持つ人造人間がいた事、超人機関の目的が殉職した職員のパーツを組み替える事で、強力な戦士を作り出すことが目的なのでは、という仮説。
「アンタが言ったフランケンシュタインの怪物とは、ちょっとニュアンスが違う気がするんだけど」
『フランケンは言わば質を求めたモノで、貴女が遭遇したのは質と量を両立させようとしているように思えるわね。まぁ、私の情報は10年以上前のものだし、方針が変わってもおかしくはないし』
ヘルハウンドの説明に、一応納得するエリス。
「ところで、なんだかそっちが騒がしい気がするんだけど、例の工場にいるんでしょ?」
『いいえ、今後色々と聞かれると思って、貴女の新居に来ているわ。なんだかちょうど良さそうな犬小屋も見つけたし、しばらくやっかいになるわよ』
ちょうど良さそうな犬小屋と聞いて、余白ハウスが思いつくエリス。
「えっ、あっ、その犬小屋」
エリスが注意する前にヘルハウンドは電話をきってしまう。
かけ直そうとするエリスのスマホが着信音を鳴らす。
「はい、もしもし。……アリス?! どうしたの、いったい……」
『あっ、姉さん? 今、ここ10数年の殉職者についてしらべていんだけど。ちょっと妙な事に気がついて』
清十郎宅で過去の資料を漁っていたアリスが連絡を取ってくる。
『殉職者に大きな変化とかはないんだけど、退職者が年々増えているのよね』
退職者が増えている。
そう言われるとエリスにも思い当たる事がいくつもある。
ある日突然、同僚が前日付で退職したと知らされる。
そんな事が明らかに増えてきている。
『それで、いつもこの退職届けを受理しているのが同じ人物だったりするのよ。直接の上司とかじゃ無くって』
たしかにそれも思い当たる事があった。
超人機関は自分や由利歌が思っている以上に暗躍しているのではないか?
それは由利歌の励ましが相殺するほど、衝撃的な出来事だった。




