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思い出の中

『記憶喪失?!』


 後から来た愛美の母、愛華から今の愛美の状態の説明を受けた一同。


 桜達のことがわからないうえに、走矢を父の新矢と思いこんでいる愛美。


 どうやら四半世紀分の記憶が失われている様だ。


「無防備な状態で強力な妖力を受けたせいで、一部の記憶に影響が出てしまったらしいの」


 愛美に起こった事を愛華が説明してくれる。


「シン、どこに行くの?」


 そう言って走矢の夏服のYシャツを摘んで引き止める愛美。


「ちょ、その、トイレ……。トイレに行ってくるから」


 逃げるように病室を出る走矢。


「先生、なんか別人みたいだ……」


 トイレで顔を洗い、自分を落ち着かせる走矢。


「シンって、父さんの事だよなぁ。父さんが小学生くらいの頃からの知り合いだって言ってたけど……」


 ただの知り合いではなかった。


 愛美の態度からそう解釈した走矢。


 そして、男子トイレを出ると、外で愛華が待っていた。


「ごめんなさいね、こんな所で待ち伏せしちゃって。ちょっと貴方と話がしたくって」


 そう前置きして、愛華は愛美と新矢について話し出す。


 愛華の話の内容は、大方走矢の予想したとおりのモノだった。


 父新矢と愛美は、友達以上恋人未満といった関係を続けていたが、愛美の方が新矢の気持ちを受け入れる事を避け続けた事で自然消滅し、世話を焼いていたエリスと互いに惹かれ合うようになったのだと言う。


あの子(愛美)は新矢くんの気持ちを知りながら種族の違いを理由に、ソレを受け入れなかったの。その結果、新矢くんの気持ちは離れていって貴方のお母さんと結ばれたわ。全部あの子の選択の結果。なのにずっとソレを引きずっていたの」


「あの、俺は……」


「貴方は何も気にすること無いわ。全部あの子の問題なんですもの。ただ、しばらく……。いえ、あの子の記憶が戻るまで、貴方は距離を置いた方がいいと思うの……。貴方と、あの子のためにも……」


 愛華の言っている事は理解できるし、たぶんそれが正解なんだと思う。


 しかし、愛美はこれまで何度も自分を助けてくれた恩人でもある。


 頭でわかっていても、走矢としては何か力になりたいという強い気持ちがある。


「あの、俺の俊紅で先生の記憶を取り戻せませんか? 妖力で受けたダメージが原因なら、俺の血で治せるかも……」


 走矢の言葉を受けて少し悲しそうに、愛華は首を横に振る。


「ちょっと場所を変えましょ」




 愛華に連れられて屋上に出た走矢。


 愛華はそんな彼に自分の思いを伝える。


「新矢くんの件があってからのあの子は、とても見ていられなかったわ。新矢くんを失った事、守れなかった事。そして自分の本当の気持ち。全部ひっくるめてあの子は背負って苦しんできたの。でもね、いま記憶を失っているあの子はその苦しみから解放されている。しばらくでいいから、私はあの子を休ませてあげたいの……」


 愛華の真意に、静かに頷く事しかできなかった。




「来た! やるよ、リル」


「ガッテンだよ、姉ちゃん!」


 走矢が上っていった屋上に通じる階段。


 そこに身を隠す河童姉妹のルリとリルは、走矢の後をつけてくる人物に気づき、待ち伏せをしていたのだ。


「うりゃ〜っ!」


「どっこいせ〜っ!」


 掛け声と同時に飛びかかる2人。


「相変わらず独特の掛け声だね、リルは」


「え? そうかなぁ……」


「いや、飛びかかるのに『どっこせ〜』は、私も珍しい部類だと思うわよ」


 2人に飛びかかられた人物もリルの掛け声にツッコミを入れる。


「あれ、この人どこかで見た事あるような……」


「あっ、姉ちゃんこの人、なんかクグツの人だよ。グレムリンの工場にいた人だ」


 河童姉妹が取り押さえたのはクグツの柚木島 深完(ユギシマ ミカン)だった。


「私は走矢くんの護衛に付いていたのよ。空亡の接近を感知する機能があるの、私」


 そんな話をしていると、屋上のドアが開いて愛華が顔を覗かせる。


「何やってるの? 貴女達(あなたたち)?」


 呆れたような態度で言う。




「貴女、ずっと走矢を付けていたわね。あの子に何か用があるのかしら?」


 病院の駐車場で、着物姿の女性を玲奈が呼び止めていた。


 走矢とはかなり距離を取っており、玲奈が辛うじて違和感に気づくぐらいの尾行能力。


 侮れない相手と、気を引き締めて玲奈は対峙していた。


 着物姿の女がクスリと笑ったように見えたと思うと、駐車場のアスファルトを突き破って、対峙する2人を囲むように大量の桜の木が生える。


「貴女が一番厄介そうだったから、上手くいったわね」


 女の言葉に一瞬の動揺を見せる玲奈だったが、すぐに気を取り直す。


「あの子達を甘く見ないことね」


「あら、私の仲間も甘く見ない方がいいですよ?」


 着物姿の女、トレントは右手の袖で口元を隠しながら微笑む。




「なに、この人達?! 操られてる?!」


 リルが声をあげる。


「工場を襲撃したリャナンシーの能力ね」


 走矢達に迫ってくる患者や見舞い客、看護師達。


「これは、走矢くんを狙った奴らの仕業なのね」


 そう言って愛華は、操られた者達との間に羽根を打ち込み、風の壁を作り出す。


「屋上から逃げましょ」


 そう言って愛華は走矢の手を引っ張る。


「桜達や先生が!」


「助けに行こうとしたらこの人達を傷つける事になるわ。それはあの子達も同じ。君がここから離れるのがベターよ!」


 愛華に説得され、走矢達は屋上に出る。


『4人か結構いるなぁ〜』


 突然、屋上に響く声。


「なに、アレ?!」


 リルが驚きながら屋上のある場所を指差す。


 そこには何も無いのに、影だけが広がっていた。


「チュパカブラだ、気をつけて。あの影に自分の影が触れられると、血を吸われるんだ!」


『やっぱり私の能力、バラていたんだね』


 そんな言葉と共に影が伸び、走矢達に襲いかかる。

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