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月宮レイコ

「あ〜、昨日は酷い目にあった……」


「自業自得でしょ。調子に乗るからよ」


 昨夜、エリスに枕をぶつけてしまった事で怒りを買い、エリスの部屋に引きずり込まれた羽月。


 走矢が眠る横で、エリスに釣天井固めをかけられ、いつの間にか気を失っていた。


「あっ、羽月。生きてたんだ」


 先にリビングに来ていた走矢が真顔で言う。


「君も相当ね。あの状況で爆睡できるんだから」


 そう言って呆れながら感心する羽月。


「それだけ疲れてたって事でしょ? そんな時に大騒ぎしていたら、そりゃあエリスさんも怒るわよ」


 火織の指摘に反論できず大人しくなる羽月。


「そういえばレイコ達はもう、出発したの?」


「貴女が出てくる少し前にね。土壇場でレイカも一緒に行くって言い出してひと悶着(もんちゃく)あったけど。結局、4人で車で行ったみたい。ホントあの姉妹、仲いいわよね」

 

 遅れて起きてきた羽月の疑問に応える火織。

 

「仲が良いって言うなら走矢くんとお母さんも相当な物じゃない? 彼の寝息が聞こえてきたらお母さん、母性愛に満ちた笑顔で見守っていたわよ?」


「釣天井固めをかけたまま?」


「釣天井固めをかけたまま!」


「いや、状況……」


 羽月の説明に疑問を(てい)する火織と、その回答に呆れる走矢だった。


 リビングには残りの収容組にエリス以外の走矢の家族、そして雪那と河童姉妹が揃っていた。


「でも驚いたわね。12年前の事件の関係者とレイコに接点があっただなんて」


「人間の家庭に預けられてたって事だろ? しかもレイコだけ」


「その事なんだけど、皆に伝えておきたい事があるの」


 羽月と走矢の会話を受けて、火織が口を開く。


「レイカとレイコの事何だけど……。本当は彼女達が自分の口で伝えるのが一番なのかも知れないけど、私の判断で話させてもらうわ」


 注目を集めた火織が原口姉妹について話し出す。


「まず、あの2人の本当の名字は『月宮(ツキミヤ)』。地の大天使、ウリエルの末裔の家系よ」


 火織の言葉に、その場にいた全員がザワつく。


「あの子達が月宮ですって?!」


「でも、彼女達は……」


 驚く玲奈と疑問を持つリリス。


 この2人リアクションの理由は同じ、あの姉妹の羽だ。


 蝶々の羽という、変わり種の羽を持つあの姉妹が、4大天使の末裔というのは考えられない事なのだ。


「その疑問の回答は、あの2人はギリギリ分家に入る程度の分家だから……。そしてレイコが人間の家庭に預けられた理由もたぶん、そこにあると、私は思っているわ」


「でも、月宮ってたしか……」


 さらに別の疑問が生まれたリリス。


「ええ、30年以上前に本家が何者かの手によって全滅して、お家騒動が始まった家よ」


 少し辛そうに火織が話す。


「だとすると、レイコが預けられたのも、別の理由が考えられるというわけか」


「月宮のお家騒動っていうのは全滅した本家に代わって、新たに中心になる分家を決めるって事なの。そのためにはより多くの分家の賛同が必要なんだけど、影響力の小さい弱小分家にそこまでするかって、話なのよ……」


 お家騒動絡みという線に火織は否定的なようだ。




「この辺のハズなんだけど……」


 車を停めて住所を確認するエリス。


「無いね、原口。引っ越しちゃったとか?」


「伊崎家とは今でも繋がりはあるみたいだし、何も伝えないでそれはしないでしょ。礼儀正しい真面目な子だったし……」


「アレ……、もしかして余白? それにエリスさん?!」


 声の方を見るエリスと余白。


 そこには眼鏡をかけた少し痩せた、30代後半くらいの男が立っていた。


「タツロー?!」


「達郎くん、久しぶりね」


「お久しぶりです。お2人とも元気そうで……。あの…僕に用事で?」


 達郎のリアクションに対してエリスは一瞬、戸惑うが余白は容赦なく質問を投げかける。


「新矢兄の息子の走矢、知ったいるよね? 彼が生命を狙われているみたいなんだ。12年前、新矢兄を殺した奴らが狙ってきたんだ。タツロー、なんでもいいから知ってる事、教えてよ」


「走矢くんが……」


 エリスと余白、2人の目には明らかに彼が迷っているように見えた。


 その時、エリスが何かに気づく。


「達郎くん、彼女が誰だかわかる?」


 エリスに言われて彼女の視線の先を見る達郎。


 その先には見た目、10代後半くらいの少女、原口レイコが駆け足でこちらに向かってくる姿があった。


「姉貴……」


 達郎のその言葉に、レイコは泣きながら笑顔になる。


「達郎、大きくなって……。アタイよりデカくなってんじゃねぇよ! ……なんてな。ホントに大きくなったな、達郎」


 そう言って、達郎に抱きつくレイコ。


 少し遅れてきたレイカが、その光景を優しく微笑みながら見ている。


「姉貴、ちょっとタンマ。姉貴のその見た目じゃ、援交とかと間違われそうだから……」


「誰がエンコーじゃ!」


「そんなこと言ったって姉貴、どう見たって女子高生じゃないか!」


「なんだと?! そんな事言う奴はこうだ!」


 そう言ってレイコは達郎の左腕に掴まり、身体を密着させてくる。


「あっ、姉貴……」


 一度言い出したら聞かないレイコの性格を、知る達郎はあきらめる。




 その日の放課後、走矢は桜達と共に市立病院に来ていた。


「相沢先生、入院してたんだね。知らなかった」


「何でも、空亡と最初に遭遇して負傷らしいわよ」


 直の言葉を受けて説明する春香。


「え〜と、507号室507号室」


 必死に愛美の病室を探す、咲花。


「シン?! 御見舞に来てくれたの!」


 声の主は愛美だった。


 愛美は速歩きで走矢に近づきながら、彼をシンと呼んだ。

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