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刺客

「その〜、ペットとして狐はちょっとマニアックかな〜と思って……」


「それで、どうしてバニーガール?」


「可愛いウサギさん……。寂しいと死んじゃうやつ……」


 理奈に尋問する玲奈。


「寂しいと死ぬって迷信みたいなやつじゃ……」


「それ、ウサギは繊細だから放っておくと弱っている事に気づかずに死なせてしまうって意味らしいわ。母さんとは真逆よ」


 エリスの疑問に応える玲奈だった。




 12年前、新矢と余白のコンビはある事件を追っていた。


 新矢が命を落としたその日、ある職員が彼に『余白は先に現場に向かった』と伝え、余白には『新矢は別の現場に向かう事になって先に行った』と伝えた。


 この職員、後に何者かに襲われて入れ替わっていた事がわかる。


 新矢の死に責任を感じたのか、事件から1年も経たないうちに期間を辞め、この地を去っていった。


 これらの事から、エリスはこの事件にある違和感を覚えていた。


 偽者の職員を使ってまでおびき出した俊紅の新矢を、その場で血を吸って殺したという事。


 生け捕りにすれば時間をかけてその何倍、何十倍の俊紅を得られるのに、労力に見合わないのではないか?


 これはエリスが当時から疑問に思っていた事だ。


 新矢を殺害した犯人の狙いは俊紅ではなく、新矢の命だったのでは、と。




「混血の産まれない妖と人の間に生まれた子供は、どちらかの親のコピーとなる。君達も知っているよね?」


 とあるカラオケボックス内にて、(つど)う数人の男女。


 その中の年長者のらしき男が誰も歌わないカラオケの曲をバックに話し出す。


「よく間違えられるが、クローンではない。コピーだ。つまりは記憶も受け継ぐ可能性があるという事だ」


「もしかして、佐伯の事ですか?」


 別の男の言葉に、年長者の男は静かに頷く。


「でも、佐伯さんの子供が産まれたのは、事件の4年前。妊娠期間を考えれば5年ぐらい前ですよ? その頃から私達の事を調べていたとおっしゃりたいのですか?」


「事実、随分と調べあげていたてだろ? その頃から我々に疑いを持っていたとしても、おかしくはない」


 30代の女性の疑問に年長者の男は応える。


「じゃあ、彼を……」


「ああ、すでに手は打ってある。私が言いたいのは、近いうちにそういう事件が起きる。その時、疑われない範囲で協力してくれという事だ」


 参加者達は各々(おのおの)肯定返事をする。


「あと、あの女にも気をつけろよ。最近、本家の方での密会が増えているようだ。おそらく、機関全体に疑いの目を向けているのだろうな」




「はぁ〜っ、どうしたものかしら」


 雨上本家の当主の間で、1人大きなため息をつく由利歌。


 悩みの種というのが先日、八重子経由で伝わったアガレスがもたらした情報だ。


 この情報、走矢には伏せておく事になったのだが、エリスに対して、どこまで開示するべきか?


 当時の状況を考えれば、犯人の狙いが俊紅ではなく、新矢の命であった可能性は容易に思いつく。


 以前、走矢が、母が人妖機関に残っているのは父を殺害した犯人を探すためと考えていたが、それは半分当たりで半分外れていた。


 エリスが機関に残り続ける理由は機関内に犯人がいるのでは、と考えているからで、由利歌もソレを見抜いていた。


 迂闊に話せば暴走する危険性があるが、情報を餌に手綱を握る(たづなをにぎる)という選択肢もある。


 機関内に事件の首謀者がいるならば、自分がこうして機関の外で密会をすることで、動く可能性もある。


「一度本人に会って、それで決めるか……」




 その日の授業が終わり、帰路につく走矢。


 いつもの面子に加えて、河童姉妹の妹、リルが一緒だ


「なんか理奈さん、エスカレートしてない?」


 昨晩の話を走矢から聞き、春香が感想を述べる。


「前は一応、別の家って事になってたけど、同じ家に住むってなって、タガが外れちゃったのかな?」


「玲奈姉さんがいっつもそばに居たってのも関係あると思うぜ。あの人がいっつも最初の防壁になってたってわけだ」


 直や桜が独自の分析をするなか、


「止まって。変な気配がする!」


 咲花が一同の歩みを止める。


 ふと前を見ると、こちらに向かって歩いてくる女性が1人。


 ボサボサの黒髪に、上は少し大きめの黒いセーターで下は黒いロングスカート。


 まんまる眼鏡をかけた、身なりを気にしてなさそうなその女性は、不気味な気配を漂わせながら、真っ直ぐ走矢に向かってくる。


「ちょっとアンタ。コイツ(走矢)になんか用か?」


 女と走矢の間に、立ちはだかる桜が威嚇も込めて話しかける。


 桜の言葉を受け、ニヤリと笑う女が、右手を走矢の方に伸ばすと、その手の影が走矢に向かって伸び始める。


「あぶない?!」


 咲花は咄嗟に走矢を突き飛ばし、女の影から逃れる。


「なに?! 今の!!」


「何かしようとしたのは、確かね」

 

「この野郎!!」


 激高する桜、他の仲間達も戦闘態態勢に入る。


「アレ?!」


 急に立ちくらみが起こり、ふらつく走矢。


 そんな彼に咲花が肩を貸す。


「ふふっ、やっぱり俊紅は美味しいわね〜。不変の味だわ」


 不気味な笑い声と共に女は舌なめずりをする。


「このお! ご子息様に何したの!!」


 そう言って水流を放つリル。


 余裕で回避する女だったが、そこに春香の羽根が飛んでくる。


 しかし女は、それも手刀で叩き落とし余裕の笑みを浮かべて見せる。


「今日はあいさつがわりよ。少しだけど俊紅も頂いたし」


 女はそう、言い残して、自分の影に沈んでいき、跡形も無く消え失せる。




「少し遊びすぎじゃないの、チュパカブラ?」


「遊んでなんかいないわよ、敵が強かっただけ。これで準備はできたわ。次に私の姿を見れば絶対に追いかけ回すだろうから、そこをつくのよ、リャナンシーにトレント」


 黒ずくめの女はその場にいた2人に指示を出す。

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