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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
過去と今とその先と
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ソロモン王4

「ソロモン王……。何というお姿に……」


 ソロモン王を迎えるために準備された『龍脈の間』。


 変わり果てた王の姿を見たアガレスは愕然としていた。


「我ら72使徒もこれまで……?!」


 絶望したアガレスの視界に、あるものが入ってくる。


 それは王の右腕。


 おそらく戦いの最中に破損したのだろう。


 先ほど外に飛び出していった王の体に失われた部分は無い。


 龍脈の効果か狂戦士化の影響か、すでに再生した後なのだろう。


 ゆっくりとその右腕に近づくアガレス。


 王のモノだった右腕を見て、激しいショックを受ける。




「まずいわね、王がこの状態じゃ私にまで危害が及びかねない……」


 呟く勇魚の目の前で八岐大蛇とソロモンがフルパワーで激突する。


「あの〜、ご多忙のようですし我々もそろそろお(いとま)……」


 大蛇の1匹に、灰と共に拘束された九骸が申し訳なさそうに申しでる。


「逃がすわけないてしょ、虚空。元はといえばお前達が解体予定の支所に住み着くとか、ふざけた真似してくれたのが発端なんだから」


 一瞥もくれず、強い口調の八重子。


「かなり怒ってますね……。どうします?」


「いや〜、俺達を拘束してるせいで、首が1つ使えなくなってるじゃないてすか? ここは1つ……」


「うるさい。過剰戦力だって言ったでしょ」


 八重子がそう言うと、床を突き破って伸びた手が王の足を掴んで床下に引きずり込む。


「ひっ?! 何ですか、今の!!」


「温羅よ」


 灰の疑問にあっけらかんと応える八重子。


 72使徒の拠点の洋館。


 その地下に作られた龍脈の間に再び引き戻された王に、温羅の拳が容赦なく振り下ろされる。


「くそ、何なんだこいつは。効いてはいるんだが、すぐ回復しちまう。龍脈からのエネルギー供給はほとんど止まってるんだろ?」


 王を追って地下に降り立った八重子に、温羅が問いかける。


「どうやら虚空の連中が王を操るために用意した臓器の影響で、あんな風になっちゃったみたい。何でも回数制限有りの不死身で、あとどのくらいで死ぬかは殺ってみないとわかんないそうよ」


「なんどそりゃ……。待てよ、その臓器ってのをぶっ潰せばいいんじゃないのか?」


「臓器がどこにあるのかわかるの?」


「んなもん、胴体消し飛ばせば問題ねぇだろ!」


 そう言って右の拳に妖力を集中させる温羅。


「あの〜、すいません。たぶんそれだと……」


 九骸が話しかけている途中に、温羅の拳から、大砲の様な拳圧が放たれる。


 攻撃を受けた王は、両手をクロスさせて妖力を発してガードするが、温羅の拳圧に押し切られ、太ももから上が消し飛ぶ。


「よっしゃぁ、やったぜ!」


「なに? 何か言いかけてたみたいだけど」


 王の姿を見て勝利を確信する温羅を他所に、九骸の言葉が気になる八重子が問いただす。


「不死の心臓も凶月も、移植された時点で対象の肉体を侵食するんです。確かに肉体を不死にするのはその臓器なんてすけど、他の肉体も不死の臓器の情報を持っているので、そこから臓器を復元できるんですよ」


「ですって」


 九骸の説明に一言加える八重子。


 そして、王を見ていた温羅もそれを理解する。


 九骸の言うとおり、まず臓器らしき物が復元されると、あっという間に王の姿を再現する。


「本当にあの状態から再生するのね。で、どうやったらアレを倒せるの? 知っているなら教えなさい」


「心霊手術みたいな技術なら切り離せるかもしれないというのと、封印ぐらいですかね。対処法は。」


 九骸の言葉にため息をつく八重子。


「得意じゃないのよねぇ、封印術」


『どちらかといえば封印される方ですもんね』


 九骸と灰、両者ともの喉まで出かかった言葉を、必死に飲み込んだ。


「ん?! なんだ? 様子がおかしくないか?!」


 温羅の言葉を受け、一同は王を注視する。


「手足が肥大している?!」


「手足だけじゃなくて、胴体もなんかおかしくないですか?」


「こりゃ、リミッターが機能しなくなったか?」


『リミッター?!』


 八重子と温羅が同時に反応する。


 複数のホムンクルスを材料に作られたと言われるソロモン王。


 キメラと同じ問題を抱えるはずの彼の肉体が暴走しない理由として、よく使われる仮説が各パーツにリミッターを()けて俊紅による個別の暴走を抑えているというモノ。


 九骸は実際に王を調べて、リミッターらしきモノを確認していた。


「どっ、どうなっちゃうんですか? 王様……」


「暴走と再生を繰り返して、最後は自滅。問題は終焉までどのくらいかかるかだ……」


「とっとと終わらせるわよ、温羅」


 九骸と灰の会話を聞いた八重子が王の方に歩いていく。


「要は再生エネルギーを使い切らせればいいんだな!」


 指を鳴らしながが温羅も続く。


「ああ、僕らご一緒させられるんですね……」


 大蛇に巻き付かれた灰がボヤく。


 この時八重子はとある違和感に気づく。


 あれだけ王に執着していたアガレスが大人(おとな)しい事に。




『……そうです。生き残った72使徒を回収して脱出してください、フォルネウス。これ以上ここに残る意味はありません』


 龍脈を使ってフォルネウスに話しかけるアガレス。


「しかしアガレス殿。王がまだ……」


『アレは本物の王ではありません。何者かが……。いえ、おそらくバエル姉さまがすり替えた偽物です』


「バエル殿が?! なぜ?! なんのために?!」


『わかりません。それを問いただすためにもこの場を生き延びるのです、フォルネウス。もし、私が合流できなかった時は、貴方が72使徒を率いるのです』


「アガレス殿?!」


 フォルネウスとの会話を終えたアガレスは、先ほど回収した王の右腕を愛おしそうに見る。


『アガレス姉さま』


 それはかつて、アガレスを姉と(した)った72使徒、ウォレフォルの物だった。


 12年前に戦死した彼は、自分の持つ物と他人が持つ物を入れ替える能力の持ち主だったが、それを制御できなかったため両腕に制御用の術式を()っていた。


「おそらくあの王は過去に戦死した72使徒をベースに作られた偽物。フォルネウス、必ず真相を明かしてください」


 72使徒のナンバー2、アガレスは王に向かって歩を進める。

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