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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
過去と今とその先と
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ソロモン王2

 72使徒の隠れ家手の戦いが大詰めを迎えた頃、とある倉庫の前に早川 由利歌(ハヤカワ ユリカ)とリザードマン兄弟の長男、一郎が立っていた。


「じゃあ、手はずどうりに頼むわよ」


 一郎は黙って頷くと、物陰に潜む兄弟に目配せする。


「いくわよ」


 そう言って倉庫の中に入っていく由利歌。


 倉庫の中には気配が1つ。


 その気配に向かって由利歌は声をあげる。


「ようやく尻尾を出したわね。ソロモン72使徒筆頭、バエル!」


 由利歌は暗がりに潜む者に、ゆっくりと近づいていく。




 勇魚に乗っ取られたフォカロルと対峙するダンタリアンだったが、彼女の相手は1人てはなかった。


「ぐおっ、おっ、おっ、おぉぉぉ!」


 奇声をあげながら、体が倍近くまで膨れあがるブエル。


 不意討ちで埋め込まれた凶月の影響だ。


「ブエル、なんて姿に……」


 変貌したブエル前に、ダンタリアンの表情は険しい。


「基本、後衛の貴女に、今のブエルの相手は厳しいわよ。大人(おとな)しく彼をおいて去りなさい」


「ふざけないで」


 そう言って両手に1冊ずつ、2冊の魔導書を構えるダンタリアン。


 魔法陣が出現すると、そこから複数の土製のゴーレムが出現する。


 しかし、そのゴーレム達は肥大化したブエルによって、あっけなく蹴散らされる。


「もう少し真面目にやったら?」


「私はいたって大真面目よ」


 ダンタリアンが冷静に返すと、バラバラになったゴーレムが1か所に集まり、巨大なゴーレムになる。


「大きくなったくらいで……」


「おバカさんね。大きくなったのは力比べをするためじゃないわ」


 ダンタリアンが言い放つと同時に、ゴーレムはブエルをその土の中に埋め込んでいく。


「なっ?! ならば……」


「させないわ!」


 ダンタリアンは別の魔法陣を出現させ、そこから水でできた龍が飛び出す。


「私に水攻め? 正気なの?」


 フォカロルは水流で渦巻く盾を作り出し、ダンタリアンの攻撃を防ぐ。


「だからおバカさんて言ったの」


 そう言ってさらに水龍を放つダンタリアン。


「同じ水と水なら小細工のしようがない。貴女は時間をかけて私に押し勝つしかない」


「最初から時間稼ぎが目的?!」


 ダンタリアンの狙いを理解したフォカロルが声を荒らげる。




「人妖機関の動きが早いですね。内通者でもいるんでしょうか?」


 72使徒の隠れ家と、その前に陣取る待機組を遠目に確認したラードンと熊田兄弟。


「それはそうと、先程からとんでもない妖力が立て続けに出現していますけど、何が起こっているんでしょうか……」


「ケルベロスと連絡が取れれば何かわかるかもしれませんが、たぶん取り込み中ですよねぇ。まぁ、母上は取り戻しましたから最低限の目的は果たしたと言っていいでしょ。王に関しては色々と不穏な噂もありますし」


「不穏な噂? 初耳ですね」


 ラードンの発言に興味を持つ総士。


「噂ですから、あまり真に受けないで聞いてほしいのですが……」




「九骸さん、だいぶ予定と違いませんか?」


 話が違うというのは予定では、九骸達プラス王に食われたくない72使徒VS王という大勢になるはずが、九骸達VS王VS八岐大蛇、温羅VSアガレスという四つ巴になってしまった事だ。


「いやぁ、上手くいかないね」


「過ぎた事はどうでもいいですから、次お願いできます?」


 誤魔化そうとする九骸と彼に次の転移攻撃の最速をするスキュラ。


「で、どいつを狙えばいい?」


「そりゃ王のエネルギー供給元を断たないと」


「でも王も無視できないですよ?」


 蓮美の質問に応える九骸だが、灰が異を唱える。


「ならいっその事両方攻めよう。君やあっちの|肉弾戦のスペシャリスト《ケルベロス》は王と相性が悪いし」


 そう言って九骸はスキュラの火炎弾を半分は王、残りの半分はアガレスにぶつける。


「ぐはっ?! 攻撃を転移させたの? ても残念ね、私が死んでも九頭龍は動き続ける。王の敵を殲滅するまで」


 アガレスの言葉どおり、土でできた九頭龍は容赦なく九骸達に襲いかかる。


 しかし、そこに八岐大蛇の攻撃を受け、九頭龍は転倒する。


「何があったか知らないけど、敵を作りすぎなんじゃない? 貴女(あなた)達」


 呆れた様子で八重子が言う。


「くっ、龍脈誘導!」


 アガレスがそう叫ぶと、龍脈のエネルギーが龍の(かたち)となって八重子に向かっていく。


 ソレを片手で(はじ)く八重子だったが、すでに2射目が放たれており、反対側の腕で受ける。


「オラァ!」


 アガレスと八重子の攻防の横で、温羅が王をぶん殴り、ピンポン玉のようにふっ飛ばす。


「王?!」


「スキあり!」


 大蛇の1体がアガレスに体当たりを食らわせ、壁に叩きつける。


「こりゃあ、勝負あったかな」


「もしそうなら、私は引かせてもらいますわ。依頼主が裏切った時点でこの依頼は無効ですから」


「まだ王も使徒も動けるみたいですよ。気が早いんじゃ……」


「そうそう、うまいこと王を手に入れるチャンスが巡ってくるかもしれないし……」


「迂闊なこと言わないでください。鬼の長と八岐大蛇がいるんですよ? とんでもない事になりますよ?」


 まだ王を諦めていない九骸と必死に説得する灰。


「なに、アレ?! 王が崩れていく……」


 蓮美の言葉に反応し、九骸と灰が王に視線をやる。


「イグドラシルが若すぎたようね。これだけのエネルギーに耐えきれなかった」


「龍脈を使った王の起動は短時間で済ませる予定でしたから……。貴女(あなた)(がた)といい、想定外事ばかり……」


 八重子の言葉にうなだれるアガレス。


 すでに勝敗の決したこの戦いの終わらせ方を考えていた。


(1人でも多くの使徒を逃さなくては)




「どこへいくガミジン。いや、いったい今どこにいる?!」


 洋館からこっそり立ち去ろうとするガミジンの本体らしき人物を、フォルネウスが呼び止める。


「残念ですがそれは言えません。そしてこれでお別れです、フォルネウス」


 そう言い残して、ガミジンの分体は崩れていく。

 

「ガミジン、一体何を考えている?! お前1人の仕業か? それともまだ他に裏切り者がいるのか?」


「フォルネウス、裏切り者なんて居ませんよ。我ら72使徒は全て同じ方向を向いていました。ただ一部の者が、少し違う場所に立っていただけです」


 そう言って、完全に崩れさるガミジン。


(もしお互いが生きていれば、また会うこともありましょう)


「ガミジン……」

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