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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
過去と今とその先と
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総力戦11

 桜の渾身の一撃を食らったレラジェ。


「うぉらぁぁぉあ!」


 怒号と共に猛ラッシュを仕掛ける桜。


 レラジェの反撃がくる事も当然、考えられたが、この機を逃せばまた、血の矢の猛攻を受ける事になる。


「これで決める!」


 今にも崩れ落ちそうなレラジェに懇親の回し蹴りを決め、ふっ飛ばす。


「どうだ?!」


 ふっ飛んだレラジェの方を見る桜。


 しかしその表情が一気に(けわ)しくなる。


 まるで動画の逆再生の様な不自然な立ち上がり方をするレラジェ。


「なんだ……。こいつ?!」


 不気味な挙動に唖然とする桜だったが、


「桜、しっかりして! まだ終わってないのよ!」


「あ?! ああ、わりぃ!」


 春香の言葉に気を引き締める桜。


 その時、レラジェが頭部から縦に裂ける。


「なっ?!」


 今度は春香が絶句する。


 そして、裂けた頭部から大量の血が吹き出すのだが、ソレが大蛇となって桜に襲いかかる。


 液体の不規則な動きに翻弄され、巻き付かれる桜。


「噛み殺してあげるわ、小娘!」


「簡単に殺られるかよ!」


 血の大蛇に両手を当て、妖力を流し込む桜。


「グギャァァァ?!」


 悲鳴をあげて桜を放り出す大蛇。


「せめて誰か道連れに!」


「なら、彼女なんてどう?」


 自分に向かってくる血の大蛇に羽根を撃ち込む春香。


 血の大蛇に脳があるのかわからないが、春香は羽根を撃ち込むことで視覚以外の情報も誤認させられる。


 その能力でフードの少女を自分に見せて、同士討ちを仕組んだのだった。


「ちがう、レラジェ……」


 少女は、か細い声で話しかけるが大蛇にはとどかない。


 攻撃を避けようとする少女だったが、何かが足に触れ、動けなくなる。


「これは?!」


「やっと引っかかってくれた」


 直の仕掛けた糸に、足を止められる少女。


「レラジェ……」


 少女はレイコを吹き飛ばした魔法陣を足元に出現させ、レラジェだった血の大蛇を吹き飛ばす。


 しかし大蛇の首は、吹きどばされながらも少女の方に飛んでいき、その口で少女を捉える。


「これで残るはヒョウ(づら)とテレポートのヤツか」


 桜が呟いたその時、頭上の空間を砕いて2人、戦士風の男と修道女の様な姿の女がこの場に降り立つ。


「グラシャラボラスにブネ?! 一体、何をしにここへ!」


「ハッ、決まってんだろ? お前らが頼りにならないから俺が皆殺しに来てやったんだよ」


「俺達が、でしょ?」


 ヒョウ(づら)の戦士、シトリーの問に戦士風の男が答え、修道女が訂正する。


 そして、


「ザコが、目障りだ!」


 男は突然剣を抜き、シトリーを突き刺す。


「グラシャラボラス?! キサマ……」


「何をやっているの?!」


 突然、シトリーを突き刺した、グラシャラボラスと呼ばれた男。 


 それに対して声を荒らげる女、ブネだったが、


「殺すのなら私が、と言ったでしょ!」


 そう言ってシトリーの首を手刀で斬り落とす。


「うふふふっ、これで貴方も私の力となる」


 落ちたシトリーの首を掴み上げて微笑みながら話しかける。


 その光景を見て、桜達は呆気にとられる。


「何なんだ、コイツら……」


「てっきり増援かと思ったけど、1枚岩じゃないってこと?」


「う……、ぐっ」


 フードの少女が、まだ生きている事に気づく桜達。


「あら、貴女も生きていたの、ヴィネ。ちょうどいいわ、貴女も私の力になりなさい」


 そう言って少女、ヴィネに飛びかかるブネ。


 手刀を振り下ろすが、それは空を斬る。


「動けない仲間を殺すとか、あたし達の見えないところでやってくれない? ずっごく気分悪いんですけど!」


 咄嗟に、ヴィネの足に絡みついた糸を引っ張り、彼女を助けた直が嫌そうな顔をして言い放つ。


 見れば少女は目に大きな傷痕があり、視力が無いようだ。


「そいつをよこしな! そいつは私が殺してはじめて生まれた意味を持つんだ! よこせ!!」


 口調が荒くなるブネ。


「テメェ、いい加減にしろ!」


 ブネの背後からとび蹴りを食らわせようとする桜だったが、攻撃は空振りに終わり、代わりに桜が膝蹴りを見舞われ、吹っ飛ぶ。



『桜?!』


 直と春香が同時に叫ぶ。


「なんだ、こいつの動きは……。蹴りの威力も半端じゃなかった……」


 なんとか起きあがる桜。


「ふふん、言ったでしょ。私は殺せば殺すほど強くなるの。死体を操るなんて死霊術師としては3流。怨念無念を取り込み、己の力にしてこそ1流の死霊術師よ。さぁ、貴女達も私の力になりなさい!」


「ふん、よく喋る女だ」


 そう言ってグラシャラボラスはもう1本の剣を抜き、二刀流のか前をとる。


 同じく二刀流の火織。


 先程のシトリーとのやり取りで、このグラシャラボラスが彼より強い事がわかったが、正直自分1人でどこまでやれるか、全く想像がつかなかった。


「こいつ、そこが見えない……」


 星垂は倒れたレイコを、直もヴィネという少女を介抱している状態。


 桜はダメージを受け動けるのは春香のみ。


 とても援護を頼める状態じゃない。


「私がやるしかない!」


 覚悟を決めてグラシャラボラスに斬りかかる香り。


 剣で受けられ、恐ろしい力で押し返される。


「この敵にまともにいっては駄目だわ」


 そう考え、真紅の翼を広げて、至近距離から真紅の羽根を炎の矢に変えて、グラシャラボラスを狙い撃つ。


「ふんっ」


 グラシャラボラスは鼻で笑うと、片方の剣を高速で回転させ、それで炎の矢を撃ち落とす。


「なっ?!」


 驚愕する火織。


 そんな火織の肩を、もう片方の剣で繰り出した突きが斬り裂く。


「くっ?!」


「終わりだ」


 さらに追撃をかけようとするグラシャラボラスだったが、自分目掛けて飛んでくる何かに反応する。


「フンッ」


 冷静に剣で弾くグラシャラボラス。


 しかしその弾いた物を空中でキャッチし、着地と同時にポーズを決める羽月がいた。


「追いついたわね」


 エリス、余白、日奈子が続いて到着する。


「面白い。全員相手してやる……?! なんだ、この気配は?!」

 

 グラシャラボラスの言う気配はエリス達も感じていた。


「なに?! 突然現れた、このとんでもない気配は!」




 龍脈を操作するために フォルネウス達が用意した『龍脈の間』。


 そこではアガレスが王にエネルギーを送っていたのだが、その流れをたどって九骸達が王と共に転移してきたのだった。


「さあ、クライマックスですよ」


「まさかここまで飛んでくるとは……。私の見込みが甘かったようですね」


 アガレスの表情は険しかった。

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