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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
過去と今とその先と
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総力戦

 エリス達が72使徒の隠れ家にカチコミをかけた頃、ホテルの地下駐車場でも戦闘がはじまっていた。


 周辺に結界が張られ、地下からの脱出困難な状況下。


「んなもん張らなくても、こっちは逃げも隠れもしないしやしないよ」


「その言葉を真に受けるほど、ピュアではないんで」


 蓮美の言葉を一蹴するガミジン。


 そして彼が視線で合図すると、巨漢のミイラはその見た目からは想像のつかない速さで蓮美突進する。


 気がつけばそこには巨漢の姿だけで蓮美は跡形もなくなっていた。


「え……。先輩?!」


 灰が情けない声を漏らす。


「灰くん、虚空をなめすぎだよ」


 九骸が一瞥もくれずに言葉を放つ。


 その次の瞬間、蓮美が操る霊体の剣が天井と床を貫いて現れ、巨漢のミイラをズタズタに斬り裂く。


「なるほど、ただのデカブツではないようだな」


 九骸の言葉の意味。


 斬り裂かれたほうたいの中から現れたのは、ほとんど無傷の巨大なオークの姿。


「オーク?! けどこのサイズは……」


 灰が言葉をつまらせる。


「おそらくオークキング。かつて暴君と呼ばれた、もの凄くヤバい奴だ」


 そして九骸はその正体を推測する。


「ぶもぉー!」


 姿を消したままの蓮美をあきらめて、九骸と灰の方に突進するオークキング。


「ひいぃぃぃっ!!」


 情けない声をあげて何とかそれを回避する灰。


「酷いじゃないですか九骸さん! 僕も転移で連れてってくださいよ!」


「ごめんね〜、これ1人用なんだ」


「いや、今まで何度も複数人で転移してたじゃないですか!」


 怒りの矛先を九骸に向ける灰。


 その矛先を向けられた九骸にスキュラがスカートをつまみ上げながら、近づいてくる。


「そろそろ私もお仕事に取り掛かろうと思うのですが、よろしいでしょうか?」


「今日は都合が悪いんで、お引き取りください」


「そうですか。では後日改めて……」


 次の瞬間、九骸のいた場所は深々とえぐられていた。


「そちらですね」


 そう言うと、スキュラのスカートの中から、獣が1匹飛び出してくる。


「くっ?!」


 咄嗟にガードした九骸の腕に、スキュラの獣が食らいつく。


「この結界は感知も兼ねていますの。エネルギーの流れから、おおよその転移先は読めますのよ」


 九骸を見る事なく、カラクリを明かすスキュラ。


「そんな簡単に種明かしして良いのかな?」


 九骸のその言葉と共に、彼に食らいついていた獣が力無く地面に倒れる。


 スキュラが横目で九骸の方を見ると、彼の手の中に心臓らしきものが確認できた。


「転移でその子の心臓を奪ったのですね」


「ええ、まぁ」


 そう言って九骸は心臓を握りつぶす。




「このノロマが!」


 3倍の速さで時間が流れるケルベロスは、その手数で対峙した相手、鉄三を圧倒していたが……。


「くそ、こいつの硬さは何なんだ?!」


「先程から打撃や爪による攻撃は全くと言っていいほど、効いていないわね」


 一見、圧倒している様に見える、ケルベロスとヘルハウンドのコンビ。


 しかし、鉄三にはどんな攻撃も通じず、焦りが見えはじめていた。


「こうなったら冥府の大気で!」


 命あるものを衰弱させるヘルハウンドの能力。


 ここまでもそれを使っていたのだが、さらに出力を上げる。


「人間風情が冥府の猟犬に敵うなどと、思わない事ね」


 ダメージらしいダメージは入らないが、鉄三の動きが段々と鈍っていき、最後には動かなくなる。


「ふん、ようやく動かなくなったみたいね。さぁ、次はお嬢ちゃんの番よ」


「鉄三、起きろ」


 少女の抑揚の無い声に反応した、周囲を浮遊する人魂の1つが鉄三の中に消えていく。


「なんだ?! 何が起こったんだ!」


 驚き、鉄三に近づくケルベロス。


「バカ、迂闊に近づくな!」


 ヘルハウンドが警告するがすでに遅く、倒れていた鉄三に足首を掴まれる。


「何だこいつ、復活しやがった!!」


「おそらくこの男は傀儡か何か。あの少女が操っているんだわ!」


 そう言うとヘルハウンドは、鉄三を無視して少女、鈴禍に向かっていく。


「操っているお前を倒せば!」


 しかし少女はヘルハウンドに迫られても冷静に人魂の1つを掴んで握り潰す。


 すると炎の魔法陣が出現し、そこから黒炎が放たれる。


「?!」


 地獄の猟犬は悲鳴をあげることもできずに黒炎の熱で蒸発する。


「何だありゃ……」


 その光景を物陰から見ていたボーイッシュな栄子が呟く。


 スキュラ達がホテルの地下駐車場に向かうのを偶然発見した彼女は、単独その後をつけてここにたどり着いた。


あいつ(眼鏡の栄子)にあんな事言っちまった以上、腹くくるしかねぇな……」




「ここから先は通行止めだぜ。オバサン」


「どうしてわざわざ怒らせる様な言葉をチョイスするんだ……」


 72使徒の隠れ家の洋館にて、走矢のもとに向かうエリスの前に、72使徒のベリトとバルバトスが立ちはだかる。


 ベリトが従える完成度90%の最新型錬金騎士。


 剣を抜き、エリスに向かっていくが、白兵戦で圧倒される。


 バルバトスが探検を抜いて援護に入るが、それでも状況は変わらなかった。


 振り下ろされる錬金騎士の剣を側面から叩き折り、盾を持つ左手を蹴り上げると、ガラ空きの胴体に右ストレートを打ち込むエリス。


 ナイフで刺しに来たバルバトスの右手を掴み、そのまま一本背負いで投げ飛ばすと、先の右ストレートで前のめりになった錬金騎士の顔面を蹴り飛ばす。


「離れろバルバトス、奥の手を使う!」


 ベリトの言葉に、エリスの元から離れるバルバトス。


 逆にエリスに掴みかかる錬金騎士。


 すでに自爆の話を聞いていたエリスは、騎士の両手をへし折ると、顔面を掴んでベリトの方に投げつける。


「まずい、自爆を中止しろ!」


「くそっ、間に合わない!!」


 覚悟を決めたベリトの眼前で、彼女の盾になったバルバトスが吹き飛ぶ。




 72使徒は人間と妖の細胞から造られたハイブリッドのホムンクルスだった。


 成功作は72使徒の72体と王のパーツとして使われた72体の計144体。


 その144体を生み出す過程でその何百倍もの失敗作を破棄していた。


 そのため、数を撃てば当たるというやり方で、数体から十数体を同時に造るというやり方で、ロット単位で生産された。


 バルバトスとベリトは同じロットで造られた、いわば姉妹の様なものだった。


 はたから見れば決して仲が良いわけではない。


 しかしいつも、どんな時でも一緒にいるという、関係。


 フォルネウスは喧嘩するほどなんとやらと、からかうでもなく、真面目に言うが、2人はそれを激しく拒絶した。


 そして12年前、当時の虚空どの戦いでバルバトスは命を落とし、ベリトも重症を負い、自らをオートマタに改造して生きながらえる。


 生き延びたベリトは自身の記憶と想いを頼りに、オートマタのバルバトスを造りあげた。


『痛覚まで再現すること無いでしょ? オートマタなんだから』


『うるさい、黙れ!』


 再現したバルバトスに痛覚や血を思わせるオイルが流れている事を色々言われたが、無視してやった。


 そんなかけがえの無い存在が目の前で、2度目の最期を迎えようとしていた。




「ベリト……。大丈夫か……」


「バルバトス、どうして?!」


「お前はバカだから言ってもわからないだろ……。わからなくていいさ、ベリト、お前は生きろ。お前が生き続けるかぎり、私はお前の中に()り続ける……」


 そう、言い残すとバルバトスは分解し、ベリトの身体に組み込まれる。


 オートマタ同士の融合。


 ソレが終わった時、大人の女性の姿となったベリトが立っていた。


「これが最期だ、佐伯エリス。王も72使徒もどうでもいい。俺とバルバトスのために、お前を倒す!」


 オートマタは静かに闘志を向ける。

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