イグドラシル10
「酷い目にあったわ……。立つ鳥跡を濁さずって、あれ嘘ね。何なの、あの後先考えないトラップ」
支所内に調査に入ったエリス達だったが、虚空が潜伏していたと思われる、地下やそこに続く通路には落とし穴に釣り天井、迫る壁や飛び出してくる槍など、もう二度と戻ってこない事を前提にしたモノばかりだった。
「だからさぁ、何で私が止めているのにズカズカ行っちゃうのよ……。こっちにまでとばっちりが来たんだからぁ」
ボヤくエリスに突っ込む梨央。
『えっ?!』
その場にいた全員が巨大な妖力を感知する。
「えっ、この方向は……」
「自宅……。走矢?!」
察したエリスが声を荒らげると、翼を広げて飛び立つ。
「行かせませんよ」
そう言ってエリスの進行方向に浮遊する、痩せこけた男。
「はじめまして。ソロモン72使徒のガミジンと申します。以後お見知りおきを」
「うるさい! どけ!!」
ガミジンに突っ込んで行くエリスだったが、激突すると同時に痩せこけた男は四散し、飛び散ったそれらはカラスやコウモリとなる。
「なに?! 何なのコイツ!!」
思わず悲鳴をあげるアリス。
ガミジンだったカラスやコウモリは、頭が欠けていたり首が無かったりと、生きているそれらではなかった。
「夜分に失礼しますよ、佐伯清十郎さん。貴方達を佐伯走矢の元には行かせませんよ」
清十郎の自宅の分室にも現れたガミジンは12年前、72使徒との戦闘で殉職した職員達ののアンデッドを従えていた。
「きさま……」
清十郎の表情が険しくなる。
「こっちも第二ラウンド開始だ!!」
ベリトがそう叫ぶと、3体の新たなオートマタが召喚される。
「コイツラは自動で戦う、文字通りのオートマタだ」
レイカとレイコは新たなオートマタを迎え撃つ。
「行くぞ!」
グリフォンライダームルムルは自分の槍とグリフォンの吐く火球で、霧香を攻め立てる。
押され気味の連戦となった霧香。
槍での攻撃のために接近してくる所を狙って、グリフォンの真下から巨大骸骨を出現させる。
巨大骸骨の頭部がグリフォンの腹部にぶつかり、グリフォンもろともムルムルもふっ飛ぶ。
「これでようやく1対1だな!」
転倒したムルムルに霧香が襲いかかる。
「くっ……」
アモンの大規模攻撃を封じながらエリゴールの格闘戦にも対応する星垂。
しかし、それも限界に近づいていた。
「星垂さん、やっぱり2対1じゃきついんだわ」
走矢と共に戦闘から距離をおいていた小夜子が呟くと、背中から真紅の翼を広げる。
「小夜子ちゃん?!」
「私も焔緋のヴァンパイアです。格闘戦は不慣れでも、上空の赤い雲ぐらいなら……」
そう言って翼を羽ばたかせると、上空へと突っ込んで行く小夜子。
小夜子ちゃん無茶だ、という言葉が出てこない走矢。
代わりに自分に何かできるのかという自問に答えられないからだ。
炎に包まれた小夜子は全身から火炎弾を放出し続け、赤い雲が降らせる火炎弾を押し返していく。
「小夜子、無茶はやめて!」
星垂の絶叫が赤く照らされた夜空に響く。
「やるわね。なら厄介者と認めてあげる」
アモンは左手を小夜子に向けると、熱線を放ち、彼女を貫く。
「小夜子?!」
「姉貴、小夜子を! コイツラはあたいが!!」
レイコはこれまでにないくらいの大量の鱗粉を放ち、ベリトとそのオートマタを包囲する。
「くっ……」
様々な迷いを振り払うように飛ぶレイカ。
なんとか地面に激突する寸前に、小夜子を抱きかかえる。
「間に合った……。なに?!」
ベリト達を鱗粉のドームに閉じ込めていたレイコが、驚の声を上げる。
ドームが爆発し、中から閉じ込めたオートマタの1体が飛び出してきたのだ。
「これ以上、負けるわけにはいかないんだよ」
飛び出してきたオートマタの攻撃を飛翔して避けるレイコ。
そこへ2体目のオートマタが迫りくる。
「このぉ!」
レイコ渾身の回し蹴りがオートマタの頭部を捉える。
かなりのダメージのはずなのだが、怯む様子もなくレイコの足を掴み、引っ張ると引き寄せたレイコの身体にしがみつく。
「え?!」
次の瞬間、大爆発が起こり、吹き飛ぶレイコ。
「レイコ!!」
小夜子を地面に寝かせ、妹の元に飛翔するレイカ。
3体いたオートマタ。
1体目の自爆で鱗粉の壁を破り、2体目がレイコと相討ちになった。
「次はお前だ!」
「やってみなさいよ!」
感情をむき出しにして激突する2人。
残る1体のオートマタと格闘戦になるレイカ。
ベリトは自身の背後に魔法陣を描くと、そこから無数のオートマタの腕を生やし、ソレがレイカ目掛けて伸びる。
オートマタの腕でレイカの蝶の羽を掴むと、ベリトは口を開く。
「その脆そうな羽を引きちぎってやる!」
「やりなさいよ! 妹と妹分をこんな目に合わされて、羽の1枚や2枚でビビると思っているの!」
そう言って打ち込んだ拳でオートマタの腹部を貫き、後方にいるベリト目掛けて蹴り飛ばす。
レイカは羽を自ら引きちぎり、ベリトに迫るとオートマタ越しにその顔面を掴む。
「さぁどうするの? お得意の自爆? それとも逃げる算段でもする?」
「上等だ! 俺はソロモン72使徒のベリト、逃げも隠れもしない!!」
ベリトも引かず、オートマタを自爆させる。




