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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
過去と今とその先と
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イグドラシル7

「四屍竜は僕の命を貸し与えた僕の眷属です」


 どこからともなく取り出した、四屍竜の人形を前に、彼女達との関係を話し出すラードン。


「命を貸しているということは、返してもらえば完全復活できるんじゃないですか? ラードんさん?」


「仮に今、僕が復活しても大した戦力になりませんから。彼女達にやらせたほうが合理的です」


 その言葉に反応する様に、人形の1体、ワイバーンが復活し、翼竜の翼を広げる。


「情報収集だけで構いません。戦闘はなるべく回避してください」


「了解しました」


 そう言って飛び立つワイバーン。


「この街のあちこちで、戦闘の気配がします。何が起こっているのか、それともこれがケルベロスが言っていたイグドラシルの影響なのか……。情報にとり残されるのが一番の致命傷になりますからね」


 そう言ってラードンは、残りの3体を復活させる。




「くそっ、バルバトスめ! 俺ごとふっ飛ばしやがった!!」


 横転したトラックを前に、ベリトは叫ぶ。


「だいたい、王もまだ回収できてないのに! 何考えてやがるんだ!」


 愚痴りながらも周囲への警戒を(おこた)らないベリト。


 視界にトラックがふっ飛んだとき、振り落とされた灰の姿が入ってくる。


「なんだ?! 死んだのか?」


 ピクリとも動かない、灰の様子を見て呟くベリト。


 運転席からも出てくる様子がない事に、違和感を覚える。


「なんだ?! 何を企んでいる? この程度で全滅するタマじゃないだろ?」


 そう言ってトラックのコンテナ部分に近づいていくベリト。


 しかし、直前で足を止め、パチンと指を鳴らす。


 するとアスファルトの地面を突き破って、巨大なミミズが出現する。


「ワーム、飲み込んでしまえ!」


 ベリトがそう指示すると、言われたとおり巨大ミミズはトラックを飲み込んでしまう。


 人間ほどの大きさのミミズの妖、ワーム。


 火頭魔にやられて死霊使いのガミジンの手でアンデッドとして蘇ったのだが、それとは別にベリトがワームの細胞から培養したクローンがこの巨大ミミズなのだ。


 ベリトいわく、急激に成長させすぎてしまったとの事だ。


「よし、このままアジトに戻って……?!」


 巨大ミミズが突然ブルブルと震えだすと、全身から刀剣類や槍を生やし、ソレに切り刻まれ、バラバラになる。


「最初からソレをヤレ! くだらん小細工をしやがって!」


「どうやら死んだフリ作戦はお気に召さなかったようだな」


 無数の武器を従えた虚空の女が挑発する様に言う。


「フリじゃなくって、本当に死ね! 俺がそうしてやる!」


 西洋の鎧を身に着けた騎士風の男、ソロモン72使徒の1人ベリト。


 剣を抜いて女に襲いかかるが、無数の刀剣の攻撃に阻まれ、近づけない。


「何だこの武器は?! これは……、霊的な物か?!」


「ご名答。戦場で死んでいった者達の怨念を武器化したものさ。そして、自分が使っていた武器よりも自分を殺した武器の方が怨念が強いみたいでね」


「くそっ!」


 再び攻撃態勢に入るおんなを見て、鎧の一部を多数の短剣に変化させ、先手を打って発射する。


「へぇ、そういう事もできるんだ」


 そう言って、怨念の武器を一斉に発射する虚空の女、御神楽 蓮美(ミカグラ ハスミ)


 戦巫女の異名をもつ女戦士でありシャーマンでもある。


 鎧を変化させた短剣の群れで、蓮美の攻撃を相殺しようとするが数で圧倒され、その猛攻を受けるベリト。


「殺ったか?」


 蓮美の後ろで観戦していた九骸が呟く。


「いや……」


 怨念の武器の猛攻を(すんで)(ところ)でかわし、すぐそこまで迫っていたベリト。


「鎧を脱いで軽くなったってかぁ?!」


 迎え撃たんとする蓮美だったが、


「何か来ます?! トラックをふっ飛ばしたヤツです!」


 灰の叫び声に反応する蓮美と九骸。


「俺に構えば、バルバトスの攻撃に対処できんぞ。どうする!」


 抜いた剣を槍に変化させ、投擲(とうてき)の構えのベリト。


 蓮美と九骸、両者が動かないのを見て勝利を確信する。


「観念したか!」


 槍を蓮美目掛けて(はな)ち、勝利宣言。


 しかしその直後、九骸が何やら印を結ぶと2人の姿は消え、その場にはベリトだけが残され、バルバトスの攻撃に1人、巻き込まれる。


「く……そ」


 辛うじて立っているベリト。


 そんな彼にゆっくりと近づいてくる蓮美。


「相打ち覚悟のコンビネーション。けどこうなっちゃ滑稽(こっけい)だね」


「黙れぇ!」


 最期の力を振り絞って蓮美に襲いかかるベリト。


 しかし、地面の下に隠していた怨念の武器が彼を貫き、切り刻む。


「んっ?! なんだこりゃ……」


 ベリトの残骸をのぞき込んだ蓮美が呆気(あっけ)にとられる。




「まんまとやられたな」


 弓を持ち、矢筒を腰につけた中学生ぐらいの少女が同い年ぐらいの別の少女に話しかける。


「この借りは必ず返してやる」


 もう1人の少女が応える。


「だいたい、お前がいきなり撃ってくるから……」


「王を奪還するためにはまず、足を止める必要があっただろうが。お前の方こそ考えなしに飛び出すなよ、ベリト。だいたいお前は先走りすぎなんだ。他の仲間が来るまで待てばいいものを」


 弓を持った少女の口撃にぐぬぬ、としか応えられなくなったベリトと呼ばれた少女。


「アイツらの尾行は使い魔にまかせて、我々は一度引くぞ。あのオートマターを失ってはお前は何もできまい」


「待て、バルバトス。あの九骸とか言う奴、転移の術を使うぞ。目を離したら逃げられる!」


「私も見ていたが、おそらく長距離の転移はできない。それができるのならば、最初からトラックなど使っていないはずだ。それにもし、長距離転移が可能なら、すぐにでもここに跳んできて延長戦が始まるぞ」


 再びぐぬぬ、と(うな)るベリトは(あきら)めてバルバトスに従う。




「虚空と戦っていたのは72使徒?! 虚空が退けたようだけど、あっちも気になるわね……」


 蝙蝠の翼を広げて夜空を舞う西倉 綾(ニシクラ アヤ)


 神崎 裕翔(カンザキ ユウト)らと支所に向かっていたのだが、怪しい運送会社の車とすれ違った事から、彼女1人でソレを尾行していたのだ。


「あのトラックて運んでいる物。私の予想が当たっていれば、ソロモン王の遺体……」


 そのまま虚空を尾行する綾。


 そんな綾を遠目に監視する四屍竜の1人、ワイバーン。


「72使徒の情報はケルベロスからも得られる。ここはあの女()同様、虚空を追うか」


 そう言って翼竜は翼を力強く羽ばたかせる。

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